さまざまな視点からヘアスタイルを提案できるサロン『etone』
2015年仙台駅近くにオープンして以来、レベルの高いカットから生まれるヘアスタイルと、ていねいなカウンセリングが評判を呼んでいる『etone（エトネ）』。後編はオーナーの武田和也さんに、顧客が定着するまで苦労したことや、ヘアスタイリストに欠かせないことを伺います。
ピンチをチャンスにしたアシスタント時代
――今までで印象的だったお客様のエピソードはありますか？
「アシスタント二年目のときなんですが、お客様にシャンプーをしたあと“あなた、物を洗っているんじゃないのよ”と言われたんです。自分的には一生懸命やったのですが、お客様には雑に洗っているように感じた。その意識がまったくなかったので、ショックでした…。生まれてはじめて、自分の感覚と相手の感覚とのギャップが、こんなに大きいものなんだ！ というのを知りました。その日から、閉店後に先輩の頭を借りてシャンプーの練習を何度もしました。そして、そのお客様が来店したときに、またシャンプーを担当したんです」
――“失敗したら…”と思うと、とても緊張する場面ですね。お客様の反応はどうでしたか？
「良かったと言ってもらえて、そこからシャンプーの指名をもらうようになりました！ 問題に直面して、逃げないで対処したらちゃんと結果がついてきたんです。実はお客様はクレームを言ったわけではなくて、帰り際に“次来た時も、あの子にシャンプーをさせてね”ってスタッフに伝言していたんです。その方は飲食店のオーナーだったんですが、自分の店のスタッフでもないのに、僕を育てようっていう気持ちから言ってくれた。今自分がオーナーになってみて思うと、とてもありがたいことだなと感じます」
試行錯誤しながら自分の個性を磨
――スタイリストになってから顧客をつくるために苦労したことはありますか？
「僕は最初、技術さえあれば自然にお客様が付くものと思っていたので、余計なトークはせず、ただ黙々と施術していたんです。そのうちに、それではお客様はできないってことに気付き、自分の殻を破る努力をしました。口下手なところがあり、お客様と何を話していいかがまったく分からず悩んでいると、当時の先輩から“髪の話をしたら？”とアドバイスをもらったんです。当たり前のことですが、髪のことに関しては知っていたし、お客様との共通の話題でもあるので、そこから会話を広げるようにしました。そのうちに自然と世間話もできるようになってきて…。あとは以前働いていた店のオーナーのマネをして、自分に取り入れましたね。技術がないときは、見本になる人のマネをするって大事なことだと思っています。良かったと思うのは、元から話好きでなかったっていうこと。今ではもちろん楽しく会話はできますが、話しながらも客観的な視点を持っているので、お客様の言葉や表情から気付けることがたくさんあるんです。それは僕が元から持っている性格と美容師になってから磨かれたコミュニケーション力が、良いバランスになってるのかなと思います」
固定観念にとらわれない美容師に
――スタイリストになる前に身に付けておいた方がいいことはありますか？
「先ほども話しましたが、“客観的な視点”でしょうか。身に付けるのは大変なことなんですが、とにかく人を観察すること。例えば、友達がとった理解できない行動を分からないままにするのではなく、なんでそうしたんだろう？こういうことをしたかったのかな？とか予測して考えてみるんです。そうすると色んな視点での考え方が生まれます」
――それはスタイリストになったときに、どのように生きるんですか？
「カウンセリングをしてヘアスタイルを考えるときに、お客様が言った“A”という要望をそのまま受け入れるだけじゃなく、“A”が良いなら“B”と“C”も好きかもしれないなと一歩ひいて予測し、広い視野で考える。そういう習慣を身に付けることで、さまざまなお客様の要望に対応することができるんです。柔軟に対応できなければ、お客様は付かないので、これは大事なことだと思う。自然とできる人もいますが、スタイリストになってから“客観的な視点”の重要さに気付くのでは遅いです。ひとつのことを突き詰めながらも、どこかドライな視点で自分の考えをとらえる意識を、学生のうちからもっておくと良いですよ」
“記憶に残る施術”を目指し、親身なカウンセリングと高い技術で注目を集める『etone』。仙台の美容業界で、これからさらなる活躍が期待できそうです。
Salon Data
etone
住所：宮城県仙台市青葉区中央1-8-24 ラブリーKKビル3F
電話：022-721-5536
https://www.etonesendai.com/
Instagram：etone125
