森田敦子 interview #1:伝統的な自然療法フィトテラピーの魅力に迫る
風邪の気配がしたらタイムを煎じ、キッチンでやけどをしてしまったらラべンダーの精油を塗る、フィトテラピーはさまざまな薬草を用いて不調を緩和する伝統的な自然療法です。そんなフィトテラピーを日本に広めた第一人者が森田敦子さん。『ルボア フィトテラピースクール』の代表として身心ともに健康になる方法を伝えており、多くの生徒さんの不調を改善しています。
今回は、森田さんがフィトテラピーに出会った経緯や、生徒さんにどのような変化が起こるかなどについて伺いました。前編では、体調不良で苦しんだ過去の経験や、本場フランスで学ぶなかで感じたことを語っていただきます。
歴史ある伝統療法フィトテラピーの魅力
――まずは、フィトテラピーとはどのような療法でしょうか?
「フィトテラピーは薬理効果がある植物を用いた伝統療法であり、飲んだり、塗ったり、アロマとして取り入れたりと処方はさまざまです。薬草が身体のなかで生理活性を起こし、不調の解決や病気になることを防ぐ効果があります。ちなみに、ローマ時代にはすでにギリシャに根付いていて、その後1800年代には薬草学としてフランスで研究が進んだという歴史ある療法です」
――フィトテラピーと出会った経緯について教えてください。
「体を壊したことにより、自分の身体について考えるようになったことがきっかけです。大学を卒業後、客室乗務員として働き始めて1年が経った頃にダストアレルギー性気管支喘息を発症し、休職をよぎなくされました。数ヵ月後に復帰できましたが、薬を手放すことができず、身体の不調も続いていたんです。今振り返ってみると、食生活をおざなりにしていたり、夜まで遊んでいたりと、ライフバランスが崩れていたことも原因のひとつだったと思います。そこで、身体のケアに興味を持ち始め、呼吸法、瞑想、鍼灸などさまざまな療法を試してみました。その後、友人がフランスから持ち帰ってきたアロマなどを見て、フィトテラピーにすごく興味を持ったんです。ちなみに当時は、無農薬という言葉も一般的ではない時代で、フィトテラピーは日本でまったく認知されていませんでした」
本場フランスで学んだ日々
――その後、どのようにフィトテラピーを学んだのでしょうか?
「友人からすすめられてすぐに本格的にフィトテラピーを学ぶことを決めフランス語を勉強し、2年後の1982年にパリ13大学に留学し専門的な知識を身に付けました。ちなみに、フランスではフィトテラピーが日常生活に深く根付いています。たとえば、街にはエルボリステリアと呼ばれる薬草専門の薬局があるんです。店内には、症状や目的に応じて処方された煎じ薬、精油やクリームなどがずらりと並んでおり、薬草の専門家が症状にあった商品を選んでくれます。言葉では同じ症状でも、現れ方やつらさの度合い、要因も人によってさまざまですから、知識と理論、観察眼をもって最適なマッチングを提案するのが彼らの仕事です」
40代で自然妊娠。フィトテラピーの効果を肌で感じる
――ご自身の体調にも変化はありましたか?
「すごく身体が楽になりましたね。よく眠れるし、食べ物はおいしい、もちろん身体の不調も改善しました。20代の頃に『妊娠はできない』と診断されましたが、フィトテラピーを開始して40代で自然妊娠しましたし、薬の副作用によりカツラが必要なほど薄くなっていた髪の毛も、毛量や髪色が回復したんです。また、体調が回復したことで、まわりの人に優しく接するゆとりが生まれ、人間関係のプレッシャーも感じなくなりました。そして、それが体調をさらによくしていき、ライフスタイルで好循環を作ることができましたね」
日本にフィトテラピーを持ち込んだ当初は、なかなか受け入れられなかったと言う森田さん。地道な活動により、美容や介護、女性サッカーチームのケアなどさまざまな分野で、徐々に取り入れられていったそうです。後編では、フランスで感じた健康についての考え方の違いや今後の目標について語っていただきます。
Profile
森田敦子さん
ルボア フィトテラピースクール代表、植物療法士
フランスにおいて植物薬理学、フィトテラピーを学ぶ。女性がイキイキと生きられる社会の実現を使命として、フィトテラピーを生かした製品「アンティーム オーガニック」「インティメール」の開発、フィトテラピストの育成に力を注ぐ。著書に『自然ぐすり』『潤うからだ』(ワニブックス刊)、『自然のお守り薬』(永岡書店)がある。
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