美容師としてもオーナーとしても「ひとりでも多くの人を幸せに」したい【PHEME 中島健之さん】#2

西東京エリアの中核都市である立川で、ヘアサロン「PHEME(フェメ)」を立ち上げた中島健之さん。カットのスペシャリストとして高い技術を誇り、大人の女性を中心とした多くのお客様に支持されています。

後編では、サロン作りのこだわりや今後の目標についてお聞きしました。

お話を伺ったのは…

PHEME

代表・美容師 中島健之さん

2009年、美容学校卒業後kakimoto arms(カキモトアームズ)に入社。青山店に所属し、2011年スタイリストデビュー。2018年に新宿店に異動するとともにスタイリストチーフに就任。スタッフ教育や雑誌撮影、セミナー講師を任され幅広く活動。2022年、PHEMEを設立。

Instagram:@takeyukinakajima

大人の女性が非日常を味わえるサロンを立川にオープン

PHEMEは毎日忙しい日々を送る大人の女性に「髪も心も整う場所」を提供。ラグジュアリー感漂う空間で癒やしの時間を過ごせるとお客様にも好評です。

――自分のお店を出す時に、なぜ立川にしたのでしょうか。何かご縁が?

いえ、何のご縁もない場所なんです(笑)。

今もわりと、青山や銀座が美容を牽引するエリアのようなイメージがありますよね。でも、都心以外にもいい美容室がもっと増えてほしいし、おこがましいですが自分がそういう美容室を作りたいと思ったんです。

前職で青山店にいた時、遠くからカットやカラーのお直しで来店される方が一定数いらっしゃいました。新宿店に異動してみると、アクセスが良いせいかさらにそういうお客様が多くなって。もちろん郊外や地方の美容師さんを悪く言うつもりはまったくありません。ですが、もっと頑張ってほしいと思ったのも事実です。

――それで都心を離れたのですね。

とはいえ、突然遠い街でサロンを出す勇気がなかったので、場所は横浜、立川、大宮、柏あたりのいわゆる「第二の都心」で考えました。それぞれ実際に見に行きましたが、感覚的に立川が一番しっくりきたんです。

――立川なら新宿から1本ですから、これまでのお客様も来やすそうです。

意図してはいませんでしたが、結果的にお客様がついて来てくださった。オープン当初、その方たちがいなかったらとっくに潰れていたかもしれませんね。本当に感謝しています。

僕はずっと技術を頑張って磨いてきたと自負しているのですが、スタッフからもお客様からも人柄を褒めていただくことが多かったんです。とてもありがたいことなのですが、実はあまり喜べなかった。

でもPHEMEに来てくださったお客様は、「一度は違うサロンで切ったけれど、その時に中島さんの技術の良さをあらためて感じた」とおっしゃる方が多かったので、それがすごく嬉しかったです。

――技術者冥利に尽きる言葉ですね!「PHEME」という店名の由来を教えていただけますか。

ハワイに住んでいる知り合いの娘さんに、響きのいい言葉を教えてもらった中に、「フェメ」というのがありました。やんちゃな女神様の名前らしくて、響きも意味もいいなと思って決めました。

美容師ってコンサバを敬遠しがちなんですけど、コンサバってわりと万人に好まれるものでもあるんです。僕自身はコンサバのちょっと先ぐらいが好きで、それを意識してヘアスタイルを作って来たので、「フェメ」という名前は狙っているイメージにもぴったりだったんですね。

――お店のターゲット層やコンセプトは?

メインターゲットは30代、40代の女性で、コンセプトは「都心に行かなくても都心の技術を受けられるサロン」です。技術の高さだけでなく、店の内装や雰囲気も都会的にして、大人の女性が非日常を味わえるようなサロンを作りたいと思いました。

――接客やサービス面でのこだわりはありますか。

スタッフの立ち居振る舞いや言葉使いも店のコンセプトに合ったものを心がけていますし、ホスピタリティを一番大事にしています。痒いところに手が届くというか、お客様にとって言いづらいところにも気づけるような人間であるようにと思っています。

実は今いるメンバーはみんなkakimoto arms出身なんです。それぞれの理由で辞めて、いったん違うサロンに勤めたりして、結果的にここに再集合したような感じで。共通のベースがあったのである意味やりやすかったですし、そこからPHEMEとしてどうしていくかをみんなで考えることもできました。

武器やこだわりがあっても、知ってもらわなきゃ始まらない

「僕は飛び抜けたデザインをするタイプの美容師ではない。嫌なんですけど、良くも悪くも『バランス型美容師』」と中島さん。

――既存のお客様以外の、新規客へのアピールはどのようにしていますか。

最初は僕とカラーリストのふたりだけだったので、これまでの顧客様やご紹介だけでも充分でした。オープン1年後くらいに新しいメンバーが増えてから、大手集客サイトに掲載をして集客につなげました。あとは新規流入の方がちゃんとリピートしてくださるかどうかは、自分たち次第ですよね。

――中島さんのプロフィールに「リピート率90%、くせ毛に悩むお客様が8割」とありましたが、そういった強みはいつ頃からあったのでしょう。

前サロン時代からですね。お客様の悩みを解決する美容師でありたくて、20代の頃は毎日のようにカットモデルさんを呼んで、営業後にいろいろな練習をさせてもらっていました。日本人はくせ毛や生えぐせに悩む人が多いのですが、日々の練習の中で対応力を磨けたと思います。

中島さん愛用の道具。「ぱつっと切れるシザー、毛先が逃げるシザー、毛量を取りすぎないセニング、しっかり毛量を取れるセニング、レザーの5つを使い分けています」。

――やっぱり、髪のくせをなくしたい方が多いですか。

多いかもしれないですね。でも最近は、くせを活かす方向にちょっとずつシフトしてきているんです。活かすと似合うし、やっぱりナチュラルって素敵なんですよね。うまく自分を受け入れたり、くせをポジティブに考えたり、そういう提案ができる美容師でありたいです。そのためにはやっぱり技術が必要ですけど。

僕がやってることって地味すぎて(笑)、集客面では伝わりにくいんですよね。1回来たらわかってもらえるというのが強みではあるんですけど、その1回がまずハードル。0から1が大変です。来ていただけなかったら意味がない。そこが難しいなと思います。

――知ってもらう手段のひとつとして、SNSにも力を入れている?

例えばインスタグラムは今や誰もがやっていて、いろいろな情報や発信が溢れています。だから工夫や差別化がカギになりますよね。

僕はそこまで詳しくないので、ひとりのスタッフにSNSリーダーを任せているのですが、アプローチ方法がだいぶ変わって来たなと感じています。最初の頃は可愛いモデルさんのおしゃれなスタイル写真にある程度の需要があった。そこから徐々にリアルな方向にシフトし、お客様のビフォーアフター写真が増えていきました。

最近は、サロンに来てもらう前に、いかにお店のことを知ってもらうかが重要になってきたなと感じています。みんなが施術している風景を動画で撮ってリールで流したりとか。見てくれた方が「行ったことがないけど、PHEMEのことを語れる」くらいまでアピールできたら、集客にも求人にもつながるのかなと思います。

目指すのは「一生安心して働ける会社」作り

「集客も他のスタッフの売り上げもさらに伸ばさないと」と中島さん。課題の求人に関しては、求人媒体の使い方を工夫するなど試行錯誤中。

――オープンして3年目に入り、今感じている手応えと課題を教えてください。

まだまだな部分が多いのですが、リピート率がすごくいいことに関しては手応えを感じています。課題は求人ですね。現在スタッフは全部で4人ですが、そろそろ新卒採用を考えるフェーズに入ってきました。美容学生さんたちにいつでも来てもらえるように、教育カリキュラムは準備万端です。

――今いるスタッフさんや、これから入ってくる人たちのために、働く環境作りはどのようにされていますか。

大前提として、福利厚生の充実ですね。完全週休2日制、有休消化推奨、適正な労働時間などは整えてあります。プラスアルファ、教育がうちのウリかなと思います。カットとカラー、それぞれのスペシャリストがいるので、技術をしっかりと学べます。さらに、技術だけにとどまらない教育にもこだわっているんです。

――というと?

僕自身、はじめは美容師としての人生しか考えていませんでした。でもひとりの人間としての人生を考えた時に、テクニカルスキルだけだと限界がある。まず人としてのスキルや社会人としてのスキルが重要だし、目指す将来によってはマネジメントスキルや教育スキルも必要になる。年齢を重ねて体力や視力が落ちた時のことを考えれば、人を動かすスキルもあった方がいいはず。

美容師をずっと続けるために、美容の技術以外のスキルも磨けるように、幅広い研修にも力を入れています。

――長い目で見た時の、夢や目標はありますか。

「一生安心して働ける会社」「ひとりでも多くの人を幸せに」というビジョンを掲げているので、いずれは店舗展開が必須になるし、店長やマネージャーといったポジションを増やしていかなければと思っています。

店舗や人が増えれば本部を作って、そうすると経理やマーケティングなどさまざまな仕事が生まれます。例えば子育てのために働き方を変えたくなっても、もし腕を怪我して美容師ができなくなっても、何か違う役割を任せられる会社にするのが夢です。

働き方が変わっても、同じ会社でずっと活躍できる。それは僕自身が願っていたことでもあります

――最後に、中島さんにとって「働く」ということは?

「人を幸せにする」、それがすべてですね。人のためになっていない仕事ってないと思います。特に美容師という仕事は、お客様の外側を変えるだけでなく、内側にも関わるものですよね。サロンに来てリラックスしたりおしゃべりしたりして、気持ちまですっきりして帰る方がとても多いんです。

人を幸せにすることで対価としてお金をいただけて、幸せにした数だけ利益が上がるのだと思います。

――確かに、内側も満足してこそ「また行きたい」と思いますね。

そうなんです。だからテクニカルスキルだけじゃなくて、ヒューマンスキルも大切なのかなと。

中島さんが大切にしている3つのこと

1. ひとりでも多くの人を幸せにする

2.  常に技術を磨き続ける

3.  美容の技術以外のスキルも意欲的に学ぶ

撮影/高嶋佳代
取材・文/井上菜々子


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PHEME
住所:東京都立川市曙町2-32-3 立川三和ビル1F
TEL:042-518-9559

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