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コラム・特集 2019-09-29

【理美容業界の動向】2020年注目のシェアサロンという選択肢。差別化とセット面稼働率UPが安定した経営につながる

一昔前までは、できる限り大手で、正社員として安定した給料を得ながら定年まで働くことが一番良い働き方とされてきました。しかしながら現在の世の中では、少子化や不況・税制の影響、過労問題などを受けて、今まで通りの正社員としての働き方では十分な安心と満足を得られなくなりつつあります。

企業側としても人材不足による問題や、働き方改革への対応が急浮上してきました。理美容業界は、給料の低さや拘束時間の長さが元々問題視されており、待遇に不満を持つ美容師・理容師は他業種に比べて非常に多いと言えます。そのため働き方の多様化が他業界より早く浸透し、フリーランス美容師という働き方が現在非常に注目を集めています。

美容師が「もっと効率よく稼ぎたい」と思う一方で、美容院側の受け皿としての機能はまだまだこれからと言えます。店舗側としても、「いかに店舗を効率よく回転させるか」ということは今後の大きな課題であり、フリーランス美容師の活用は実は利害がぴったりと一致する施策なのです。

このような背景を受けて、最近急激に成長を見せているのが、フリーランス美容師を活用する“シェアサロン”という業態です。これは今後の働き方改革において、大きなヒントとなる経営スキームと言えます。

シェアサロンとは何か


まず、シェアサロンという言葉自体聞きなれない言葉だと思いますので、シェアサロンそのものについて説明します。その名の通りサロンをシェアリングするシステムです。

元々、面貸しやレンタルサロンもしくはミラーレンタルという呼び名で店舗をシェアする制度は存在しており、美容室の場合だと店舗の休業日や、スタッフに欠員がでる曜日にセット面もしくは店舗を貸し出すところがいくつか見られました。いわば場所貸しで、貸す側は美容室だけではなく、貸会議室の運営企業や、不動産の管理会社など全く美容業に関係ない企業が運営することもあります。

シェアサロンの主なシステム

従来の場所貸しシステムに対し、最近注目されているシェアサロンは、稼働中の店舗に業務委託として入るというシステムをとっています。単発で借りられる時間貸しのシステムところもありますが、特定の曜日や日にちでまとめてレンタルする月極めの店舗も増えてきています。

支払いに関しては、スペース代=家賃として納める場合と、売り上げに対しての手数料を納めるパターンに分かれます。長期的にその店舗と契約をする場合は、業務委託契約を結んで金額設定を行うことが多いようです。歩合給に近いイメージです。

歩合というと、プレッシャーが大きく不安定なイメージが強いですが、一定数の固定客を持っている美容師からすると、歩合にした方が収入が跳ね上がる可能性も大いにあります。業務委託契約をするということは、美容師側だけでなく、サロン側としても集客せず収入の見込みが予測できることになります。

また、紹介以外では双方に信頼関係のない場合がほとんどですので、契約がある方がドタキャンなどのトラブル防止にもなります。シェアサロンの伸びとしては、人材採用の軸としてシステム化した企業の取り組みの影響が大きいです。

船井総研の富成さんも、理美容業界に大きな風穴を開けた異業種参入の動向については、非常に注目しているそうです。

異業種の企業による美容室業界参入が増えることで、発想の違いや、異業種の勢いが美容業界にいい風を吹かせる形になりそうです。特に人材育成や働き方においては、異業種が参入してきたことで大きな変化を生むことを期待しています。

今まで副業的扱いだったシェアサロンですが、そのスキームを経営基盤に組み込んだ例を、具体的な事例をあげながらご紹介したいと思います。

異業種参入の美容院から学ぶシェアサロンのスキーム


最近では、シェアサロンのシステムに重きを置き、業務委託メインで経営するスタイルの美容院もいくつか出てきました。

まず、シェアサロンの火付け役としては、3年前に民泊で知られるAirbnbのヘアサロン版として、AirSalonというサロンシェアサービスが始まり話題となりました。実は、このAirSalonを立ち上げた代表の阿部氏は、IT業界で名を馳せたまさに異業種参入組なのです。

新卒でグリー株式会社に入社してソーシャルゲームの運用責任者を経験後、社内新規事業にて美容系事業の責任者として実績を積みます。その後株式会社ミクシィにて、当時カットモデルアプリだったminimo(ミニモ)の集客アプリ路線への転換に貢献。プロモーション責任者/店舗開拓担当として従事。そして株式会社AirSalonを設立します。

美容業界を変えるには、美容師という働き方そのものの変化が必要だと感じ、新たな働き方を美容業界に提供するというスタンスで、美容師に使い勝手の良い面貸しシステムを構築しました。

AirSalonはサロンが貸したい空き席を登録し、フリーランスのスタイリストが登録されている空き席から選んで予約するという面貸しのマッチングシステムです。双方に手間がかからず、効率よく探すことができるので注目を浴びました。

AirSalonの特徴

・利用条件は美容師であること
・売上や利用頻度に規定はなく、誰でも1時間からの利用が可能
・施術料金の設定も売上管理も全て美容師自身が行い、支払うのは席料のみ
・店舗にある機材や備品は全て使用可能(※店舗により一部例外あり)
・使用頻度に合わせての1時間1000円のスポットから月極まで4段階の契約設定
・税務支援、社会保険、集客支援、賠償保険などのサポート
・コミュニティを作り、孤立や情報不足からサポート

上記のようなサポート体制をとっており、特にフリーランス美容師になるにあたって不安となる経理面でのサポート体制を敷き、わかりやすい収益構造にしているのが特徴です。フリーランスの美容師を雇ってみたい、セット面をうまく回したいけどどうしていいかわからないというサロン側のフリーランスに対するニーズもうまくくみ取り、サロン側の受け入れ態勢を大きく広げました。

そしてもう一社、現在最も成長が注目されているのはGOTODAY SHAiRE SALONというシェアサロン。大手3社からもバックアップを受けたことでしっかりとした資本力を持ち、店舗を順調に増やしています。こちらは、店舗全体を運営し、外からフリーランスの美容師にきてもらうシステムです。

個室空間の確保や、フルフラットのシャンプー台、備品ストックのための個人ロッカーの完備など、フリーランスの美容師に上質な施術空間を提供しています。業務委託をうまく使い、急速な成長を見せています。

GOTODAY SHAiRE SALONの特徴

・個室制でより一人の空間で接客することができる
・店舗自体がシェアサロン専用の仕様なので、フリーランス美容師にとって使い勝手が良い
・利用時は『LiME』スマホアプリから予約でき、リアルタイムで店舗に反映
・タオルの洗濯やつり銭の準備、ドリンクに至るまで店舗側で準備
・約350名の参加するコミュニティで、現場の生の情報を常に共有
・月額からスポットまで細かい料金設定がされており、深夜や早朝も対応可能

GOTODAY SHAiRE SALONについても、フリーランス美容師の働きやすい環境への配慮や、横のつながりの強化に工夫が見られます。また、リアルタイムでの反映を常に行うことで、ダブルブッキングなどのトラブル防止にもなり、利用者にとって使い勝手の良いシステムとなっています。

若く、ポテンシャルの高い人材をうまく抱え込んでいるため、人の成長とともにサロンが成長し、スピード感のある経営拡大を進めています。

フリーランス向けのシェアサロンは、これまで東京都心部のみのテスト的な展開でしたが、今年は首都圏以外の政令指定都市にも展開が広がってきています。こういった企業の展開を見て、シェアサロンに参入してくる企業は今後増える見込みがあり、この後も注目のスキームです。

フリーランス向けのシェアサロンの登場によって、今まで独立できなかったけれど独立の希望を持っていた人たちが、より気軽に低リスクで独立できるようになりました。

美容室×○○(異業種)という形で、他の業態と組むことで他サロンとの差別化も図ることができるため、シェアサロンの波は都市部だけでなく、政令指定都市を中心に広がっていく見込みです。

シェアサロン成功の分かれ道は即戦力が働ける環境かどうか


GOTODAY SHAiRE SALONに見られるように、まずは立地の選択は非常に重要なポイントです。都心部で独立する美容師が少ないのは、家賃の高さにあります。

都心部だと目安として1坪あたりでおよそ35万の内装費がかかるといわれており、20坪で5~6席でセット面が確保できるとして、内装費だけでおおよそ700万円程度はかかってしまいます。保証金や水回りの設備も考えると1500万くらい出費を考えておいた方がよいでしょう。

いざ独立をするにあたり首都圏都心部の高い家賃のところに出店すると、個人では初期投資回収が非常に時間がかかり、リスクが上がってしまいます。そういった経緯からも、独立したくてもできない美容師が増えているのが実情です。

そのため、独立に対してコストがかさみ、競合店が多く集客のしがいがある都心部がシェアサロンに向いていると言えるでしょう。競合店が多いということはその分美容師が多く在籍しているということなので、シェアサロンを利用する可能性は人数が増える分上がります。

逆に言うと、郊外については、美容師の人数もお客様の人数も、全体のパイ自体が少なくなります。そして、郊外に行けば行くほど独立時にかかる初期投資のコストは下がってきます。

そのため、郊外店の場合顧客を抱えた美容師は自分で独立するという選択肢を持つことができ、シェアサロンには向いていません。うまく人材を確保できずに行き詰る事態も想定できますので、この場合は素直に店舗経営し、優秀な人材がやめないよう囲い込むほうが正しいと言えます。

無理にシェアスキームを導入せず、社内でフランチャイズ制度を作ってオーナー経営者を輩出したり、幹部にしてしまうことも一つの選択肢です。時代の潮流としては、専門店化が進んでおり、企業体としていかに強くしていくかという点がどの美容院も今後の課題と言えます。
他社との差別化する要素が見いだせない場合、異業種の企業や、存在感のあるフリーランス美容師と組んでサロンのブランディングを行うということも、サロンの付加価値を見出す形になるかもしれません。

シェアサロン活用で後継者問題を対策

サロンの付加価値問題で一番頭を悩ませているのは、40代を越え、リタイアを視野に入れたオーナーだと言えます。

一昔前までは稼ぐ=独立!というのが正解でしたので、独立を最優先で考える美容師が多くいました。実際に30代半ばで店舗を出された方は、10年ほどで肉体的な限界が見え始めます。その後、どのような形で事業継承していくかは50歳くらいになったオーナーであれば誰しも考えるでしょう。

船井総研のデータ調査によると、この10年ほどで、事業所数が2万軒ほど増加しているのに対し、市場規模が800億円ほど縮小しています。

1事業所の平均年商が100万円低下、マーケットサイズも600円ほど低下しているので、以前に比べて店舗の維持が苦戦しやすくなっていると言えるでしょう。そして後継者なしというサロンはなんと7割を超えます。

先述したように、立地によっては店舗のランニングコストが非常にかかるため、セット面の回転率や人権費を綿密に計算しないと赤字になってしまいます。かといって、引退を視野に入れていく場合、たくさんの人を雇い育てるのはリスクとも言えます。大手ですら即戦力人材の確保が難しい現在、個店の美容室にとって優秀な人材の確保はもっと厳しい状況です。

本当は後継者に実務を任せ、経営だけを見ながら徐々にフェードアウトしていくのがハッピーリタイアと言えますが、都心部ではランニングコスト問題、郊外では人材不足の問題が大きな懸念事項になり、理想通りのリタイアが叶わないのが現状です。

一般的な考えでいくと、店舗(会社)をたたむ際は利益が出ていればM&Aで買い取ってもらうこともできるためうまく売却できればオーナーは退職金代わりとなりますが、理美容業界の場合はそうもいかないようです。

買い手がいないのがもっとも大きな問題です。大手10社の占める売上の割合が業界全体の5%程度しかなく、他の業界とは売上比率が逆だと言えます。個人サロンが圧倒的に多いため、そもそも買えるだけの体力があるところがないという状況が続いています。

売り手は多いのに、買い手が少なく、もし買える企業が出てきたとしても、買収後うまくマネジメントできていないケースが見受けられます。

店舗を個人事業主として運営しているケースも多い点も、法人のM&Aのようにスムーズに事が運ばない要因です。いずれ店舗を手放したいけど、新しく人を雇って育てるリスクをとりたくないというオーナーにとって、シェアサロンとしてフリーランス美容師や異業種企業と組むことは経営の助けやリスク分散になると言えます。

サブスクという名のあたらしい収益スキーム


他者との差別化と店舗の効率化の部分で、最後に異業種参入のサービスで注目すべき例をご紹介します。

サブスクリプション、通称サブスクと呼ばれる定期購入のサービスです。そんなの利用したことないとおっしゃる方も多いかもしれませんが、新聞や雑誌の定期購読やサプリメントの定期購入なんかもサブスクのひとつです。

最近、このサブスクの動きが非常に多様化しており、音楽や映画の見放題・聞き放題のような趣味のサブスクや、アクセサリーやお花のサブスクなど、ちょっと福袋的要素も加わりつつあります。一時期話題になった高級バッグのレンタルなんかもサブスクになります。理美容業界にもその波はやってきていて、要注目の動向なのです。

サブスクで定額のサービスは加盟店が200店、会員3000人を突破しています。実はアメリカではサブスクのサービスは一般的であり、シャンプー&ブロー専門のDry Bar(ドライバー)がブームになっています。今後生み出されるであろう市場であるといえるでしょう。

このドライバーの日本における先駆けとしては、「女性のライフスタイルを変える、髪を切らない美容室」が合言葉のJetset(ジェットセット)という美容院でしょう。シャンプー時のマッサージもついてブローし放題で月に16000円という金額です。

ゆっくりお風呂に入るか、1時間長く睡眠時間を確保するかというのは忙しい方ならどなたも考えたことがあるのではないでしょうか。お風呂の時間が短縮できる上、30分ゆっくりシャンプー&ブローしてもらうことで、翌朝のスタイリング時間はほぼゼロになります。髪のクセが強く毎日のセットが大変な方はいっそのことプロにお任せしてしまう方が効率的な場合もあります。

日本の場合、ゆっくりとお風呂の入るのも文化であり、月に16000円という金額に価値を感じられるのかどうかが大きく影響するでしょう。まさに、自分で洗えるけれど、他人に洗ってもらってその分家でのんびりする時間を確保するという付加価値のブランディングです。

ただ、日本の場合そういった忙しい女性は残業も多く、利用したい時間帯がかぶってしまい非効率なのも懸念点です。予約したい時に受け入れられるのかも重要なポイントになるでしょう。いずれにせよ、日本でどう受け入れられるのか、今後の動向が注目のサービスの1つです。

こういった今までなかったシェアサロンの存在が、美容師が独立しなくても稼ぎやすく、かつハッピーリタイアしやすい土壌作りをしたことは間違いありません。この勢いは当面続くと予測されていますので、引き続きシェアサロンの動向については注目が高まると言えそうです。

出典元:
ウォンテッドリー阿部竜作氏プロフィールページより
ジェットセット
日経MJ 2017年11月1日号(紙面)

Profile

富成将矢さん Masaya Tominari

1991年生まれ。立命館大学卒業後、船井総合研究所入社。美容室の業績アップを得意としており、売上2000万円の美容室から、県内No.1美容室まで、規模に応じた経営戦略を組み立てながら、業績アップに必要なものを的確に提案するスタイルが経営者から高く評価されている。業界内有名美容室もクライアントに多数抱える実力のあるコンサルタント。日本各地にクライアントを持ち、今日も全国を駆け巡っている。
「富が成る」美容室経営ブログ:http://www.funaisoken.me/m-tominari/
美容室経営のことをもう少し聞きたいという方は、m-tominari@funaisoken.co.jpまで

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