難民支援のためネイルサロンをオープン。話題性をうまく生かしお客さまの心を掴む『Arusha』の経営術に迫る
港区の虎ノ門にサロンを構えるネイルサロン『Arusha』。難民の生活支援を行っており、ミャンマーやタイ出身の外国人スタッフが働いています。文化も常識も日本人とは違うネイリストが働いているにもかかわらず、高いリピート率を誇る人気店です。
今回は代表の岩瀬香奈子さんにインタビュー。お客さまの満足度を高めるサロン作りの極意を伺いました。
難民支援と利益獲得の両立
————まずは『Arusha』の最大の特徴を教えてください。
「特徴は難民を支援していることです。『Arusha』は難民の方々とスタッフ契約を交わし、彼女たちの生活を確保する活動を行っています。支援の手段としてネイルサロンを選んだ理由はいくつかあります。
まずは利益率が高かったことです。『Arusha』がオープンした10年前、ネイルサロンは今よりも高価で1回の施術で1万円以上するところばかりだったので、価格を安くしても十分利益を上げられると思いました。次にスタッフが技術を習得できることです。難民の方々は事情がありずっと同じ場所に滞在できるとは限らず、生活が不安定になりやすい方が多くいます。そこでどの地域にいても働くことができるネイルのスキルを身につけてもらおうと思ったんです。
他にもサロンオープンの初期費用がそれほど高くないこと、資材が腐らないこと、定期的なケアが必要なのでリピート率も見込めることも大きな理由ですね」
————オープン当初はどのようにして集客を行ったのですか?
「とくに自分たちで発信は行いませんでしたが、メディアの取材を受けることができたので、その情報を見たお客さまが足を運んでくださいました。ネイルサロンと難民支援の掛け合わせが珍しかったため、さまざまな方面から注目をしていただけたんです。オープンの日には新聞社の方が取材に来てくださいました」
設備費用を抑えてお客さまにとって魅力的な価格帯を実現
————価格設定について詳しく教えてください。
「オープン時から3,000円〜5,000円で施術を行っていて、今後も変える予定はありません。『1本3,000円ですか?』という問い合わせがあるほど、港区のサロンにしてはかなり安い設定だと思います。ネイリスト歴が浅いスタッフもいるので、どうしても技術や接客が十分でないこともあるんです。そのため、他のサロンと同じような価格帯では集客が難しいと思い、できるだけ低価格で提供できるよう工夫しています」
————どのようにして低価格でのサービスを実現されたのでしょうか?
「設備や道具を最低限の価格に抑えました。オープンする際に安くて質のよい製品を徹底的に調べて理想の卸売業者と業務提携を結び、卸売から自社で行うことにしたんです。今では中国に直接訪問して、どこよりも安い原価で仕入れを行っています。売上はもちろん、元々の費用を工夫することも経営者の仕事ですからね。
現在はスタッフの技術力やコミュニケーション力が上がったので私は経営に専念できています。オープンから約10年経ち、スタッフと経営者の役割がようやくできるようになりましたね」
スタッフ同士が学び合える環境を作る
————スタッフの教育はどのように行っていますか?
「自分で考える癖が身につく指導を心掛けています。こちらでルールを決めても、育った国によって常識がまったく違うため、守ってもらえないことが多かったんです。それはある程度は、仕方がないと思っています。教える際に大切なのは最初に目的を話すことです。そのルールがある理由を伝えることで、ゴールに到達するための道のりを考える意識が生まれますからね。
『教える』ではなく、『一緒に考える』感覚のほうが強いかもしれません。また、決まったミーティングは設けず、悩んだ時に都度話し合うようにしています。スタッフ同士で解決する習慣ができるため、私がいなくてもコミュニケーションを頻繁に取り合う関係性が生まれるんです」
————接客の指導では、どのようなことを心掛けているのでしょうか?
「接客には正解がありませんから最低限のマナーを教えるくらいです。マニュアルを作ることで緊張して何も話せなったり、施術がうまくいかなかったりするほうが問題だと思います。
過去には接客態度を心配していたスタッフに熱狂的なファンがついたこともあって、『その人のよさは、ちゃんと伝わるんだ』とこちら側が気付かされました。1人ひとりが個性を生かして、日々のお客さまとのコミュニケーションのなかで、自分なりの接客術を作り上げてほしいですね」
お客さまの満足度を高めるサロン作りの極意
低価格の実現とスタッフの個性を伸ばす教育で独自のネイルサロン経営に成功した『Arusha』。お客さまの満足度を高めるサロン作りの極意をまとめると下記の3つでした。
1.他サロンが行っていない活動に取り組み、強みを作る
2.設備費用を抑え魅力的な価格設定を実現する
3.スタッフ同士が学び合える環境を整える
後編ではリピート率を上げる方法について迫ります。
▽後編はこちら▽
リピート率80%以上を実現! 独自の接客で幅広い客層から愛される『Arusha』の人気の秘密に迫る>>
Salon Data
Arusha
住所:東京都港区虎ノ門5-11-11 虎ノ門MKビル2階
TEL:080-8867-1405
URL :https://www.arusha.co.jp/nailSalon/
ネイル予約・お問い合わせ:arusha.nail@docomo.ne.jp