【人材育成の極意を探る】kakimoto armsの目標は世界ブランドになること。共通の目標を掲げることで1つになれる! kakimoto arms 教育統括 古市浩弥さん#2

サロンの運営に関わる大きな問題、「人材の育成」について、担当者にお話を伺うこの企画。前編に続いて、kakimoto armsの教育統括を担っている古市浩弥さんのインタビューをお届けします。

前編では、古市さんが敬愛するkakimoto armsの創設者、柿本榮三さんから脈々と伝わっている人材育成の考え方についてお話しいただきました。後編では、スタイリストやカラーリストなど8つの職能に分けている理由と、今kakimoto armsが目指していることについて伺います。

お話を伺ったのは…
kakimoto arms 教育統括 古市浩弥さん

理美容専門学校を卒業後、1997年kakimoto armsに入社し、自由が丘店に配属される。2002年トップスタイリストに昇格し、自由が丘CREO店、銀座店の店長を歴任する。2020年に教育統括に就任する。

1人では限界があってもチームなら可能性は無限大。だからスペシャリスト制を導入

kakimoto armsの春夏コレクションのビジュアル。コピーと写真からも、型にはまらない力強さが伝わってくる。

――kakimoto armsさんというと、スタイリスト以外にカラーリストやレセプショニストなどの職能をいち早く取り入れています。これには何か理由があるんですか?

カットのデザインもカラーもすべて担当したいという考え方もあるでしょう。でも、1人でできることや発想には限界があると思いませんか? チームならアイデアを出し合ったり協力し合ったり、できることがどんどん広がっていきます。同じプロフェッショナルとして、刺激し合えるのがスペシャリスト制です

接客しながら電話の対応をしなければならないとか、お客さまのシャンプーをしながらロットも洗わなくちゃいけないとか、仕事を掛け持ちするのは効率が悪いですよね。それなら専任のプロに任せるのがいい。スペシャリストとして、自分の仕事に専念できます

――今、いくつの職種に分かれているんですか?

スタイリスト、カラーリスト、ネイリスト、アイリスト、セラピスト、メンズグルーミング、ビューティーアドバイザー、レセプショニストの8つのセクションと、掃除を専門にお願いしているクリーンスタッフがいます。

美容師の資格を取っても、「スタイリスト以外の仕事がいい」という考え方も増えています。採用の時にkakimoto armsで何をしたいのか、職能別に選んでもらいますが、入社してから進路を変更することも可能です。

――入社後に進路を選べても、離職者はいますか?

考え方は人それぞれなので、留めようがないですね。僕が銀座店を任されていたころは、「一緒に成長しよう!」という情熱を持ってスタッフに接していました。ですから、あるスタッフから「辞めたい」と言われたときは「絶対に辞めさせない!」と、熱く引き留めたこともありましたが(笑)。じっくり考えて、自分で導き出した答えが「退社」だったら、そうした方がいいのかもしれませんね

自分たちが目指すのは世界。目標を共有することで結束できる!

「世界に通用する美容師を育てたい」と熱く語る古市さん。

――個性的な方が多い美容師。その個性をどうやって伸ばしていますか?

スタッフたちが「いい」と考えていることを大切にしています。今はバランスのいいスタッフが多くて、以前のような「目立ってやろう」とか、「やんちゃ」なタイプがなかなか出てこない。逆に彼らの芽生えていない個性を見つけて、成長させるきっかけを作るのも僕の仕事だと思っています。いろいろな個性の花が開いたら楽しいでしょうね。

――kakimoto armsという会社は社員を大切にしている…という印象を受けました。

柿本も「スタッフは資産」だと常々言っています。その証拠に、kakimoto armsには不動産の資産がないらしいです(笑) ほとんどスタッフの教育やサロンの環境整備に投資しています。

例えば、月1回のペースで開催される全体集会もその1つ。300人以上のスタッフ全員が収容できる会場を借りて、そこで売上の報告やランキングの発表をします。11店舗それぞれの店長が自分たちの店から「今月のヒーロー」を選び、選ばれた11人がスピーチをするのも恒例です。

わざわざ会場を予約してスタッフを集めるだけで、お金も手間もかかります。それでもこの集会を創業以来ずっと続けているのは、会社が目指す目標をスタッフ全員で共有できるからなんです。

――会社が目指している目標は何ですか?

世界ブランドになることです。スタッフ全員がこの想いを共有していなければ、この目標は達成できません。僕としても、世界を目指す人と一緒に仕事をしたい。「そのために何ができる?」とか「世界に通じる美容師って何?」とか、いろいろな考えがあって、正解は1つに限りません。今は「何をしたらいいのか分からない」でもいい。いずれ何をすべきか分かるようになって、「僕も目指したい!」というスタッフが増えてくれればうれしいですね。

スタッフの証言
kakimoto arms GINZA トップスタイリスト・友原由維さん

お客さま・スタイリスト・カラーリストの3人で作るのがkakimoto armsのスペシャリスト制

2013年に入社して9年目を迎えました。雑誌など撮影の仕事がしたくてkakimoto armsを選んだものの、1年目にフラストレーションが溜まって辞めようとしたことがあります。そのときに先輩たちから「自分がやりたいことをやって、そのほかのことは放っておけばいい」とアドバイスされました。お説教するわけでもなく、ただただ話を聞いてくれる先輩もいて、「続けてみよう」と思い直しました。

そのときの先輩の1人、古市はすべてを受け入れて認めてくれる人。決して「NO!」とは言いません。その代わり、自分で考えさせる教育です。この点を私も受け継いで、実践しています。

kakimoto armsのいいところは、スペシャリスト制をとっていることです。1つの脳みそではアイデアが限られますが、お客さま、カラーリスト、そしてスタイリストの3人が集まれば、デザインも2倍3倍に広がるもの。自分の専門性を突き詰めた仕事ができるのは、ほかのサロンにはない魅力だと思います。

kakimoto armsに学ぶ人材育成のヒント

1.年齢や経験にかかわらず互いにリスペクトし合う関係を築く
2.いいところを見つけて自信をつけさせる
3.マニュアルに頼らず、自分の力で考えさせる
4.スタッフを資産と考えて教育や環境整備に重きを置く
5.スタッフ全員で共有できる目標をもつこと

今回の取材で「歴史のあるサロンだからこそ、きっちりとしたルールやマニュアルがあるに違いない」という思い込みが、見事に覆されました。kakimoto armsのモットーは、自分の頭で考えて行動できる、自立した人材を育てること。そのための機会と学びに必要な環境を整えることを惜しんでいません。柿本榮三氏によって築かれたkakimotoイズムは、創業から46年経った今なお、脈々と受け継がれているのを感じました。

撮影/森 浩司

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Salon Data

kakimoto arms GINZA
住所:東京都中央区銀座6-8-7 交詢ビル3F
電話:03-5537-1088
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