有名店に就職も、気付いた「カットが楽しくない」。専属アシスタントという生き方を見つけて「NOT」岩崎綾さん
カミカリスマも受賞する人気美容師、長門政和さんの専属アシスタントとして「NOT」に勤める岩崎綾さん。
前職では有名店に新卒社員として採用され、順調にキャリアアップをしていたそうです。しかし入社2年目で、カットが面白くない、興味が持てないことに気付き、得意だったヘッドスパの技術を活かそうと退職を決意します。
そんな岩崎さんに、専属アシスタントとして一緒に独立しないかと声をかけたのが長門さんでした。コツコツとやりきる力があり、1つ1つの仕事を完璧にこなす岩崎さんの力を見込んでのことだったそうです。
今回、お話を伺ったのは…
岩崎綾さん
「NOT」アシスタント/スパリスト
美容専門学校卒業後、都内有名店に新卒採用で入社。アシスタントとして技術を磨くうちに、ヘッドスパへの思いが強くなり、4年の勤務を経て退職を決意。その際、「NOT」代表の長門政和さんから専属アシスタントの打診を受け、「NOT」に入社する。長門さんのYouTubeチャンネルにも数多く出演し、物怖じしないキャラクターにファンも多い。
有名店に入社。60項目、6人のチェックという厳しい技術練習を経験
――新卒で有名店に入ったとのことですが、入社のきっかけは?
当時「東京 有名店」で検索したら一番上に出てきたのがそのサロンだったので、受けてみたんです。採用試験ではとくに力を入れてアピールしたわけではなくて。最後にアピールタイムがあって、一発ギャグをやったりする人もいるくらい、どんなアピールをしてもいい時間なのですが、そこで私はY字バランスをしたら、合格することができました(笑)。
――それだけが理由ではない気がしますが(笑)、すごいですね。入社当初は、どのような仕事からスタートしましたか?
最初は掃除から始まりました。お客さまに入ることができないからこそ、お店をきれいにして、お客さまをきれいな空間で迎えるということで、掃き掃除の仕方など基礎的なところからしっかり教わりましたね。あとは、お店を開ける準備や閉める際の業務なども教えてもらいました。
その後、営業時間中はアシスタント業務をしながら、営業時間外で技術の練習も始まっていきました。以前働いていたサロンは当時、カリキュラムがとても多くて、細かいものも含めると60項目くらいあったと思います。そしてシャンプーのような重要な技術は、チェックをする人が6人くらいいまして、1人合格しないと次の技術に進めないほど厳しいものでした。
――そんなに細かかったのですね・・・!技術習得はどのような順番で進んでいくのでしょうか。
まずはシャンプーの試験を受けて、6人全員から合格をすることができたら、そこから並行してさまざまな技術練習が始まる形でした。カラー流し、パーマ。パーマのなかにも複数の項目があったので、パーマがある程度進んだらカラー、そのあとは縮毛矯正です。その後、カット、メイク、セットなど、試験に合格できた技術からお客さまに入れるというシステムでした。当然スタイリストデビューするには、そのすべての項目に合格しないといけません。
――それはかなり厳しいですね。
専門時代の友人のなかには、1年くらいでスタイリストデビューしている人もいたので、これだけ細かいのはかなり特殊だったと思います。先輩のなかで最速デビューした方が3年で、8年から10年くらいアシスタントを続けている人も多くいました。
ただ、ここでしっかり技術を身につけられたというメリットもあったと思っています。1年でデビューした友人に聞くと、技術が身についていない部分もあるのに、お客さまに入ることになって怖い、もっと練習したいと言っていたので、捉え方次第なのかなと思いますね。
カットが好きではない自分に気付き、退社を決意
――新人時代にアシスタントとして心がけていたことは、どんなことでしょうか。
カラーを塗るときも、シャンプーをしているときも、いつまでに終わらせるべきか、タイミングを常に気にするようにしていました。たとえばスタイリストが担当しているお客さまが店内に2人いらっしゃるとき、スタイリストがカット、私がシャンプーをしていたら、カットが終わったタイミングでシャンプーが終わるように調整したり。シャンプー台から常にスタイリストの動きを見るようにしていましたね。
――岩崎さんが、技術練習でとくに苦戦したことはありましたか?
ワインディングがとにかく苦手でした。でも苦手なことだからこそ早く済ませてしまおうと思い、むしろ積極的に取り組んだと思います。その後、2年目くらいからカットの練習が始まったのですが、カットにまったく興味を持てないということに気付いてしまって。
興味を持てないので練習もせず、カットのチェックになかなか通らないという日々が始まりました。それでも練習はしないといけないので、ウィッグは買う。ウィッグはすごく高い。だんだんと自分が興味を持てないことにお金や時間を割いても無駄だと思うようになって、それがきっかけとなり、入社から4年で退職をすることになりました。
――なんとか美容師の仕事を続けようと悩んだりはしませんでしたか?
お客さまのことは好きだったので会えなくなってしまうのは残念だと思っていましたが、その当時サロンにはたくさんのスタッフがいたので、自分が辞めても代わりはいくらでもいると考えていました。あとはその頃、ヘッドスパの技術に自信があったし、自分が一番好きな技術だったので、スパリストとして転職をしようと思いがかたまっていました。それもあって気持ちが揺れることは、あまりありませんでした。
――ヘッドスパの技術は、そのサロンで習得されたのですか?
そうです。カットのカリキュラムが始まったのと同時期くらいに、ヘッドスパのカリキュラムも始まって、試験に合格して。すべてのスタイリストのお客さまに、私のシャンプーやヘッドスパの指名のお客さまがいらっしゃるぐらい好きな施術でした。
――指名につながるコツはあるのでしょうか。
お客さまを絶対に寝かせるという気持ちで、施術に入っていました。お客さまの胸が、呼吸と一緒に上下するので、その動きと指圧のタイミングをあわせるんです。かなりのお客さまが、実際に眠っていたと思います。
――それは自分で編み出した方法なのですか?
シャンプーやヘッドスパが得意な先輩がいて、その方からのアドバイスでした。私はその先輩を抜かしたい気持ちが強かったので、営業終了後に先輩にお願いしてシャンプーやヘッドスパを実際にやらせてもらい、アドバイスをもらって改善することを繰り返していました。
「一回、やってみよう」という気持ちで、専属アシスタントの道へ
――退職の意向を伝えたあとのタイミングで長門さんから、独立の話を持ちかけられたのですか?
そうです。最初は冗談かと思っていました(笑)。たまたま他のサロンで働いている人と、私と長門さんの3人でご飯を食べていたときに、「独立するんだけど、一緒に来るか」と言われて、お酒も入っていたので冗談かなと思って、「まあ、いいですよ」と軽いノリで答えました。
その後、お酒の入っていないときにもう一度言われて「あ、本気だったんだ」って。だったらやってみようかなと思ったんです。
――ヘッドスパがやりたい気持ちがあったのに、長門さんと独立しようと思った理由は?
一回やってみよう、くらいの気持ちでした。だめならそのときは辞めればいいし、スパニストに転職するのは、またあとでもいいかなと思ったんです。
岩崎さんが新人時代に心がけていた、3つのポイント
1.スタイリストとお客さまにとって、最善のタイミングを見極めた対応
2.苦手なことは早く済ませる気持ちで、カリキュラムに取り組んだ
3.自分の気持ちに正直に、自分が心ときめくことで技術を磨いた
後編では、「NOT」に入社後の岩崎さんについて伺います。長門さんとお客さまを待たせないため常にスピード感のある対応を心がけ、同じことを繰り返しても、毎回完璧にこなせるという岩崎さん。一体どのようにして実現しているのでしょうか。後編もお楽しみに!