美容を通して地方の街をお洒落にするため、自分のスタイルを追求し続ける【美容師・凛太郎さん】#2
地方で働きながらも自分のスタイルを追求し続けてきたことで、Instagramでは約9,500人以上ものフォロワーを抱え、地元のお洒落感度の高い方から支持されている美容師の凛太郎さん。
後編では、都会に引けを取らないスタイルかつクオリティを再現し続ける凛太郎さんに、SNSの活用方法や美容師として必要なスキル、そして今後の目標について伺いました。
教えてくれたのは…
美容師・凛太郎さん
静岡県出身。静岡県東部の美容専門学校を卒業後、地元の美容室でアシスタント期間も含め約4年勤務。現在は静岡県三島市にある「WAVY’S(ウェイビーズ)」で、スタイリストとして活躍中。
届けたい人に届ける!効果的なSNSの活用方法とは
――フォロワーも多い凛太郎さんですが、SNSの運用で心がけていることはありますか?
SNS上と実際対面したときのギャップを極力なくしたいので、自然体の言葉で書くことを意識してます。たまにかっこつけて英語を使ったりするんですけど(笑)。トゲのある言葉を使いたくないですし、お客様がパッと文字だけ見て、それをどう捉えるかっていうのはすごく考えるタイプかもしれないですね。
あとはSNSって、自分が届けたいところに届いてないと意味ないと思うんです。ただ投稿するだけだと自己満足で終わっちゃうと思うので、常に近隣の方たちに向けてInstagramに広告を出しています。広告を出す地域も選べるので、自分のことをフォローしてない人の目にも届くようにして、サロンに来てもらえたらと。そこまで行けば、自分が得意としている領域では絶対に満足してもらえるっていう自信があります。
――実際に広告を出すことで集客につながっていますか?
つながっています。初めて来店してくださるお客様に来店理由をお伺いすると、Instagramを見てくださっている方が圧倒的に多いです。
フォロワーも多くいるように見えますけど、海外のユーザーもいるので密度が濃いかと言われるとそうではなくて。意外と「広告が出てきたから飛んでみたら友達がフォローしてて」とか「友達がいいって言ってて」と言っていただけることが多いですね。
でもお客様の口コミで広がるにしても、自分が実際にこれまでつくってきたスタイルがカタログのように並んでるInstgramがあることによって、来店につながりやすくなったりすると思うんです。ただ口だけでおすすめされるよりも、Instagramでどういうスタイルをつくるどういう人なのかがわかることで、説得力も増すのかなと思います。
投稿は1日1投稿するように心がけているんですけど、自然とできているという感じです。結局毎日投稿するってなると、毎日クオリティの高いスタイルをつくれていないと投稿できるものもなくなってしまうんですよね。そういう部分で自分の技術に対してもプレッシャーをかけられるから、日々Instagramに投稿するっていうことは心がけていますね。
自分の好きなもの・スタイルを追求し続けて
――アシスタントのときに学んだことで、今に生かされてるなって思うことがあれば教えてください。
アシスタントのときに学んだのは、仕事する上で視野を広く持ってお店を見ることです。自分が担当している方だけを見ればいいということではなく、お店全体のお客様に対して責任を持つことが大事だと学びました。自分はアシスタント全体の総リーダーもやらせてもらっていたので、みんながみんな同じ悩み抱えてるわけではないし、一人ひとり向き合い方を変えないといけないことも大切だと感じましたし、全体をしっかり把握できる能力も必要だなと。
一人ひとりに向き合い方を変えるっていうのは、お客様にもそうですしスタッフに対してもですね。やっぱり嫌な気持ちになりながら働いて欲しくないし、嫌な気持ちになりながら施術を受けて欲しくないから。
多分この手の質問でよく聞く「ひたすら技術を磨く」とか「がむしゃらにやること」って、さっき話した通りどちらかというとスタイリストになってから「これじゃ駄目だな」と思ってたくさん練習するようになりました。
――どんなスキルが美容師には必要だと感じますか?
自分の性質上すごく得してるなって思うのは、「相手が何を考えてるか深く考えてしまうところ」ですかね。対面したときはもちろんなんですけど、普段どういうライフスタイルを送っているかとか、サロンから帰った後のことまでを考えています。そこまでしっかり考えることで、「そのライフスタイルであればこういう髪型がいいかもしれない」など、ヘアスタイルの提案もより鮮明になると思っていて。なのでとにかく考えることが、大事なんじゃないかなと思っています。考えだけが先行してしまうといけないので、対話することももちろん大切にしています。
あとはたくさん服を着たり、色々な髪型にしたり、映画を観たり。芸能人でも別にいいし、韓国が好きだったら韓国アイドルをいっぱい見ればいいと思う。バランスを見て色々な服を着たり、自分の好きなものをしっかり落とし込んで感覚を研ぎ澄ますのは、地方にいる美容師にとっても大事なことかなと思います。流行りに乗っかるというわけではなくて、自分の好きなものを追求した方がいいかなと。
それからお洒落を捨てないことです。自分は「美容師だからお洒落」っていうよりは、「お洒落だから美容師」って感覚でいて。美容師って称号を得てたらお洒落な人っていうよりは、ちゃんとお洒落していいスタイルつくるから美容師なんだよって自分は解釈しています。自分のお洒落がすべてというわけではなくて、各々が持ってる系統だったり、好きなものに対してのお洒落は美容師は絶対にやめちゃいけないと思ってます。
――アシスタントの方にアドバイスするときに大事にしてることはありますか?
仕事としてやるべきこと、直した方がいいことに対してしか、自分の意見は言わないですね。技術に関して「もっと仕上げこうした方がいいよ」とか「これのがかわいいよ」って、別に自分2号をつくりたいわけではないので言わないです。
さっきも言ったように、自分が思うお洒落が浸透しきって欲しいってよりは、各々がお洒落だって思うものをもっと追求してやっていってほしいという思いがあって。スタイルに関してであれば、「どういうものをつくるためにそれができるようになりたいのか」「どういうものをかわいいと思っていて、なぜそれをやりたいと思ったのか」ということを先に聞きます。自分は、それぞれのアイデンティティを尊重した方がいいと思っているので。
苦しむというレベルまではいかないけれど、自分が地方で需要のないことに挑戦するときにちょっとブレる部分があったから、若い世代の子たちにはそういった苦労をして欲しくないと思っています。自分がやりたい方向性に対して必要なことをしっかり身につけて成長していってほしいから、技術に関しては最低限必要なポイントを伝えるのと、聴いてくれる子には+αの拘りを伝えるスタンスです。
あとはお客様に対して良くないなと思う対応や雰囲気作りに関しては、自分の方が長く生きている分、社会人として必要と感じるモラル的なことはしっかり伝えています。
「美容を通して、地方の街をお洒落にしたい」
――地方のサロンで働くことに対して今どのように感じていますか?
全部ひっくるめて今があるので、「あのときこうしてれば…」という思いはないかな。ただ、今ある程度形にできるようになってきたからこそ、本当にこのレベルで都内と遜色ないことができてるのか、戦えるのかというところは気になるけど、東京で働きたいという思いは今はないですね。
「地元で選ぶならこの人だよね」っていうよりは、「全国の数あるサロンのなかでもあなた選びたい」ってなるレベルまで持っていきたい。東京のサロンに劣らないクオリティを、地方でもできるようにしたいっていう思いが自分には強くあって。だから定期的に東京に足を運んで、歩いている人の髪型を見たり、実際にサロンに行ったりして、それを地方に上手く落とし込める存在にゆくゆくはなりたいと思っています。自分が地方のお洒落なお客様を総取りしたいとか、全員担当したいとかって感覚よりかは、誰でもお洒落なスタイルを叶えるようになるし、お客様から見てお洒落だなって思う美容師の数を増やしたいという感じです。恐れ多いけど、自分を見てそう思ってくれる人が増えたらなと。
自分がいる静岡県三島市は意外と東京に近いので、都会の方に感度が追いついていきやすくなっているのかなと感じていて。最近は街も発展していっていますし、駅近くのマンションには東京からの申し込みも多いとお客様から聞いて、10年後には今自分がつくっているスタイルの需要もより高まってくるのではないかなと思っています。そうなったときには、自分はその分野で圧倒的な存在でありたいというか、似たようなスタイルをつくる人が出てきても、「あの人はレベルが違うよね」って思ってもらえるところまで経験を積んでいきたいです。
近い将来、自分が今やっているような方向性でも、地域の美容が盛り上がってたらいいなと思っています。ただ時代の流れだけでベテランになっていくのは嫌なので、胸を張って実力が伴っている自分でいられるようこれからも熱意を持ってやっていきたいですね。
――では今後の目標について教えてください。
自分の感性や好みと違うという理由で、行きたいサロンがなくて困ってる人たちの行き場をより高いクオリティでつくれるようになりたいです。今の自分のクオリティで地方にいるそういう方々を満たせてるかっていうと、もっといいものを求めて東京に行っている人ってまだまだいると思うんです。なので自分も満足できるレベルまで、技術を磨いて行きたいです。人間力も。
それと美容を通して、東京に負けないくらい多種多様なお洒落が混在する街になるよう尽力していきたいです。
――最後に凛太郎さんにとって、「働くこと」とは?
形になって結果がついてくるまで、好きを追求し続けることです。
凛太郎さんの成功の秘訣
1.自分の好きなものを追求し続け、感覚を研ぎ澄ますこと
2.都会と同じクオリティを実現するために、勉強し続けること
3.視野を広く持って、一人ひとりに真摯に向き合うこと
取材・文/菊地菜々