鍼灸師の仕事内容とは? 活躍の場や目指せる方法を紹介
ヘルスケアに関わる国家資格の一つである、鍼灸師。鍼灸師という職業は知っていても、どんな仕事をしているのか、どんな場所で働いてるのかなど、具体的にはよく知らない、という人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「鍼灸師」という仕事に焦点を当て、仕事内容や活躍の場、鍼灸師を目指す方法や求人を探すポイントなどについて解説します。
鍼灸師の仕事内容とは?
はじめに、「鍼灸師」とはどういうものなのか、どんな仕事をしているのかについて見ていきましょう。
鍼灸師とは、金属製の鍼(はり)や艾(もぐさ)から作られた灸を利用し、全身にあるツボや皮膚・筋肉に刺激を与え、自然治癒力を高めたり、病気の改善や予防をしたり、健康回復を目的とした治療をおこなう職業です。「はり師」と「きゅう師」の両方の資格を持つ人が鍼灸師と呼ばれます。
鍼と灸は東洋医学にもとづく技術で、日本に伝わってから千年以上の歴史があるといわれており、鍼灸師はいわば東洋医学の専門家といえるでしょう。
なお、「はり師」と「きゅう師」はそれぞれ別の国家資格で、どちらか一方だけを取得することも可能です。両方の資格を取得する人が多いため、両方持つ人を「鍼灸師」と呼んでおり、「鍼灸師」という資格があるわけではありません。
鍼灸師の仕事内容について、次からそれぞれ詳しく紹介します。
引用元
job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))|はり師・きゅう師 – 職業詳細
鍼(はり)による施術
鍼による施術は、はり師がおこないます。髪の毛程度のごく細い金属製の鍼を皮膚に素早く突き刺し、筋肉やツボを刺激して、体の不調を改善したり痛みを和らげたりします。
灸(きゅう)による施術
よもぎを原料としたお灸を使った施術は、きゅう師がおこないます。皮膚に直接お灸を乗せて火をつける「直接灸」と、皮膚の上にスライスした生姜やにんにく、びわの葉などを置いてからお灸を乗せる「間接灸」の二種類があり、施術の目的によって挟むものが変わります。
筋肉やツボを刺激することは鍼の施術と同じですが、こちらは熱による刺激です。
脈診
鍼灸師の施術に、脈診というものがあります。脈診とは東洋医学の診療法の一つで、身体の気の流れやバランスを診たり、施術がどのような効果を与えたか確認したりするためにおこないます。
望診
望診という、目で見て判断する診療もあります。望診とは、患者の皮膚の状態や色・表情・細かい動作や体つき・舌の様子などから、現在の病状や栄養状態などを判断することです。
美容鍼灸
鍼灸は症状の改善だけでなく、美容にも効果があるといわれています。美容鍼灸をおこなっている鍼灸院では、肌トラブルやむくみなどの改善を目的とした施術メニューがあることも。
リジョブでは、美容鍼灸で多くの人の美と健康を支える上田隆勇さんのインタビュー記事を公開しています。
上田さんは、美容鍼灸についてこう語ります。
「鍼灸師が美容をやる目的は、体の乱れを整え、土台を整え、その上でキレイな肌に導くこと。表面だけをキレイにするのであれば、化粧品や美顔器に取って代わられるので、生き残る道はありません。」
「逆を言えば、根本原因である土台の乱れを整えてあげられるのは、鍼灸しかいないと思っています。」
「なので今後の目標は、鍼灸師が美容をおこなう意義をしっかり伝え、その思いを受け継ぐ鍼灸師を育成すること。そうすれば少しずつ予防医学も発展するだろうし、社会貢献にもつながると思っています。」
引用元
美容鍼灸の真髄は、体の乱れを整え、土台を整え、その上でキレイな肌に導くこと【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.77 /治療家・上田隆勇さん】#2
スポーツ鍼灸
鍼灸師の施術は、近年ではスポーツ業界からも注目されており、「スポーツ鍼灸」という需要もあります。身体の疲労を和らげたり、怪我の治療をしたり、コンディションを整えたりといったことが目的です。
リジョブでは、鍼灸師として多くの施術をおこないつつ、スポーツトレーナーとしても活躍する高林孝光さんのインタビュー記事を公開しています。
スポーツ鍼灸について、高林さんはこう語ります。
「高校卒業後、柔道整復師の専門学校に入り、21歳から柔道整復師として働き始めました。すごく忙しかったんですが、1日中仕事をしていると、なぜか「また勉強したいな」と思うようになって(笑)。「30歳までに取れる資格は全部とりたい」と思って、鍼灸の専門学校に通い始めたんです。
特に力を入れているのはスポーツ障害の治療です。自分も怪我をして接骨院に通った経験があるので、スポーツをしている子どもも大人も、大事な試合に間に合わせてあげたいし、選手には最大限のパフォーマンスを引き出してあげたいという想いがあります。
「スポーツ障害で夢を諦めさせない」というのは開業当時からのテーマです。
「対症療法ではなく、しっかり原因にアプローチすること。リラクゼーションではない、痛みが取れる接骨院として、そこはいつも大切にしているところです。」
引用元
子どもからプロ選手まで、スポーツ障害で夢を諦めさせない!【もっと知りたい『ヘルスケア』のお仕事vol.96/アスリートゴリラ鍼灸接骨院 高林孝光さん】#1
鍼灸師はどんな職場で活躍できる?
さまざまな施術をおこなう鍼灸師は、活躍できる場も幅広いです。ここからは、鍼灸師が活躍できる職場について見ていきましょう。
引用元
job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))|はり師・きゅう師 – 職業詳細
お茶の水はりきゅう専門学校|鍼灸師(はり師きゅう師)の仕事内容
日本医学柔整鍼灸専門学校|【2024年最新版】鍼灸師とは?仕事内容や資格の取り方、就職先など
鍼灸院
鍼灸師が活躍するメインの職場は、鍼灸院です。老若男女さまざまなお客様が訪れますが、一人ひとりの症状に合わせて鍼灸の施術をおこないます。
病院・医療機関
鍼灸院だけでなく、整形外科やリハビリテーション科などの病院・クリニックといった医療機関で活躍する鍼灸師もいます。医療機関では医師の指示のもと施術をおこなうため、医師や看護師など、所属するほかの専門職と連携を密にする必要があります。
介護福祉施設
鍼灸の施術は、介護福祉施設でも注目されています。介護福祉施設では、入所・通所の利用者を対象に、体の機能回復および健康維持を目的とした鍼灸の施術をおこないます。
機能訓練指導員としても活躍できる
機能訓練指導員は「日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者」とされていますが、そういった名前の資格を取得するのではなく、特定の国家資格の所持者が職務にあたる際に任用される資格です。
引用元
e-Gov|指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十七号)
対象となる資格のひとつに、一定の実務経験を持つはり師・きゅう師が含まれています。
日本は今後ますます高齢化社会になっていくと見られており、とくに指定通所介護事業所では事業所ごとに1名以上の機能訓練指導員の配置基準が設けられているため、機能訓練指導員の需要も高まると考えられるでしょう。
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機能訓練指導員は鍼灸師もなれる! 鍼灸師に必要な実務経験とは?
引用元
公益社団法人 日本鍼灸師会|機能訓練指導員『実務経験証明書』について』
美容鍼灸サロン
美容鍼灸という施術があると前述したように、美容業界も鍼灸師が活躍できる職場です。美容鍼灸サロンや、美容鍼灸があるエステサロンなどで、美容に特化した鍼灸の施術をおこないます。
スポーツ施設
部活動や実業団・プロスポーツなどの現場で、スポーツトレーナーとして働く鍼灸師もいます。鍼灸のスキルを活かし、選手の疲労回復やケガのサポートをおこないます。
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スポーツトレーナーの仕事内容とは? 目指せる方法と活躍の場を紹介
鍼灸師の給料はどれくらい?
鍼灸師の仕事についておわかりいただいたところで、次は給料について見ていきましょう。
厚生労働省がさまざまな職業情報を公開しているサイト「job tag」では、はり師・きゅう師の平均年収は443万3,000円とされています。はり師ときゅう師は別々の職業ですが、両方の資格を取り「鍼灸師」として活躍する人が多いため、同じデータとして公開されているようです。
また、『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、鍼灸師を含む『その他の保健医療従事者』の平均月収は30万5,300円とされています。
なお、このデータは鍼灸師だけでなくほかの医療従事職も含みますので、あくまで参考程度にとどめておきましょう。
引用元
job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))|はり師・きゅう師 – 職業詳細
政府統計の総合窓口(e-Stat)|賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 | ファイル | 統計データを探す
鍼灸師を目指すにはどうすればいいの?
ここからは、鍼灸師を目指す方法を見ていきましょう。
引用元
job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))はり師・きゅう師 – 職業詳細
厚生労働省|はり師国家試験の施行
厚生労働省|きゅう師国家試験の施行
日本医学柔整鍼灸専門学校|【2024年最新版】鍼灸師とは?仕事内容や資格の取り方、就職先など
国家試験の受験資格を手に入れよう!
前述ではり師・きゅう師ともに国家資格であると紹介しました。そのため、資格を取得するには国家試験を受験して合格することが必要です。
また、国家試験には受験資格があるため、要件を満たさないと受験することすらできません。認定された養成施設(専門学校・大学・短大など)で、はり・きゅうのスキルを3年以上修学することで、受験資格が得られます。
国家試験に合格しよう!
はり師・きゅう師ともに、原則として1年に1回試験が開催されます。参考までに、令和5年度第32回はり師・きゅう師国家試験は、令和6年2月25日(日曜日)におこなわれました。
はり師・きゅう師国家試験の試験科目は、以下の通りです。
医療概論(医学史を除く。)
衛生学・公衆衛生学
関係法規
解剖学
生理学
病理学概論
臨床医学総論
臨床医学各論
リハビリテーション医学
東洋医学概論
経絡経穴概論
はり理論及び東洋医学臨床論またはきゅう理論及び東洋医学臨床論
引用元
厚生労働省|はり師国家試験の施行
厚生労働省|きゅう師国家試験の施行
また、はり師・きゅう師の国家試験を同時に受ける人に対しては、はり理論又はきゅう理論以外の共通科目について、受験者の申請によりその一方の試験を免除する制度もあります。
引用元
公益財団法人東洋療法研修試験財団|試験概要 | 国家試験の実施
合格率はどれくらい?
はり師・きゅう師国家試験の、直近5回の合格率は以下の通りです。
はり師国家試験
年度 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
令和元年度(第28回) | 4,431 | 3,263 | 73.6 |
令和2年度(第29回) | 3,853 | 2,698 | 70.0 |
令和3年度(第30回) | 3,982 | 2,956 | 74.2 |
令和4年度(第31回) | 4,084 | 2,877 | 70.4 |
令和5年度(第32回) | 4,176 | 2,892 | 69.3 |
きゅう師国家試験
年度 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
令和元年度(第28回) | 4,308 | 3,201 | 74.3 |
令和2年度(第29回) | 3,797 | 2,740 | 72.2 |
令和3年度(第30回) | 3,892 | 2,963 | 76.1 |
令和4年度(第31回) | 4,010 | 2,875 | 71.7 |
令和5年度(第32回) | 4,111 | 2,887 | 70.2 |
引用元
公益財団法人東洋療法研修試験財団|過去の受験者数 | 国家試験の実施
自分に合った職場を探すには?
鍼灸師になって活躍したいと考えても、どうやって求人を探せばよいのかわからず、一歩を踏み出せないという方もいるかもしれません。ここからは、自分に合った職場を探す方法を2つ紹介します。
就職・転職エージェントを利用する
一つめは、就職・転職エージェントを利用する方法です。エージェントを利用すると、専任のアドバイザーが就職活動をサポートしてくれます。持っているスキルや自分の強み、希望する条件などを考慮して合いそうな求人を紹介してくれるサービスです。
就職・転職エージェントのなかには、医療系や美容系など特定の業界に強いエージェントもあります。
求人サイトで探す
二つめは、求人Webサイトを利用する方法です。求人サイトはさまざまな企業の求人情報をまとめて掲載したサイトで、インターネットに繋がる端末があればいつでも閲覧することができます。
求人サイトも医療系や美容系などの業界に特化しているものがあります。リジョブのような医療・美容・ヘルスケアに特化した求人サイトでは、鍼灸師ならではの条件や希望で検索をすることができるので利用がおすすめです。
鍼灸師の履歴書で押さえておきたいポイントとは?
鍼灸師として就職・転職活動をする際には、履歴書を作成しなければなりません。履歴書の作成で押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
まず、鍼灸師に関わらず押さえておきたいのは、丁寧に作成することです。誤字や脱字には充分注意し、もしも間違えてしまったら新しい用紙に書き直しましょう。また、略字や略語は使用せず、正式名称で記載することも大切です。
志望動機では、なぜ鍼灸師を目指したのか、その職場で働きたいと思った理由、就職したあとにどんな貢献ができるかなど、鍼灸師や仕事に対する熱意を、できるだけ具体的に書きましょう。
鍼灸師の面接で好印象を与えるには?
面接では、清潔感のある服装が大切です。とくに鍼灸師は医療業界や介護・福祉業界、美容業界など、清潔感が重要な業界です。
さらに、サービス・接客業でもあるため、服装や髪型は厳しく見られると考えましょう。私服の指定がなければ、スーツを着用するのが基本です。
また、明るくハキハキとした声で、相手の目を見て笑顔で答えるなど、挨拶や受け答えなどの社会人の基本的なマナーも大切です。
面接ではさまざまな質問がされますが、そのなかでもよく聞かれる質問があります。どんな職業でも聞かれる、プロフィールやこれまでの経歴などの質問と、鍼灸師ならではの質問がありますので、どんなことを聞かれやすいのか前もって確認し、回答を想定しておきましょう。
鍼灸師は鍼と灸で体の不調を改善させる仕事!
鍼灸師は、鍼と灸を用いて施術をおこない、症状を緩和したり痛みを和らげたりなど、体の不調を改善させる仕事です。国家資格である「はり師」と「きゅう師」の二つの資格を取得することで、鍼灸師になることができます。
資格を取得するためには、認定された養成施設(専門学校・大学・短大など)で、はり・きゅうのスキルを3年以上修学したのち、国家試験を受験して合格する必要があります。
業界をこえた幅広い場で活躍できる職業のため、鍼灸師を目指してみてはいかがでしょうか。
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※※リジョブ経由で採用された1,242名を対象に実施した満足度自社調査より(実施期間:2023年2月8日〜2023年3月8日)