男性ネイリストによる上質デザインが話題『FALCO NAIL』
閑静なエリアの一角に店を構える「FALCO NAIL」は、一見カフェのような雰囲気が漂うおしゃれな路面店。こちらはオーナーでありネイリストでもある立石さんが昨年オープンさせたネイルサロンで、まだ業界でも数が少ない男性ネイリストのお店として注目を集めています。実は立石さんがネイルの世界に入ったのは26歳の時で、そこから10年で自身の店を構えるまでになりました。今回は男性ネイリストとしてネイル界の第一線を走る立石さんにお話を伺います。
一般職からネイリストへの転身
――26歳でネイル業界に進んだと伺いましたが、その経緯やそれまでのお仕事はどのようなものですか?
「この業界に入る以前は一般企業に勤務しており、全くネイルや美容とは縁のない職種でした。その会社の福利厚生の一環として興味のあるスクールでの習い事ができる制度があったのですが、そこでたまたまネイルスクールを見つけました。昔から工作のような作業が好きなので、挑戦してみようと習い始めたのが最初ですね。それまでは僕自身が男だということもあってネイルを意識したことはなかったのですが、習っていくうちに作業がどんどん楽しくなり、スクールに通っている時にネイリスト3級の資格に合格しました。それがきっかけで当時の先生から、ネイリストとしてその先生のお店で働かないかと誘われ、思い切ってこの世界に飛び込んだのです。その後はしばらくそのサロンでお世話になる一方、再び一般職の会社で勤務し始めました。当時は友人や知人からオーダーを受けてネイルの仕事もするという、いわば2足のわらじで、フリーのネイリストのような状態でしたね」
SNSで発信したネイルデザインが転機
――ダブルワーク状態からネイル一本に絞られた転機はどこにあったのですか?
「フリーの時代から自分の作品を頻繁にインスタグラムなどのSNSにアップしていて、その時々で気に入って使用している商品なども併せて紹介していました。たまたまそうした投稿を、紹介した商品のメーカーの方が見てくださったご縁でそのまま契約。ネイリストとしての活動が忙しくなったので、一般職を退職しました。実は僕が最初に、ネイルスクールに通ったのには、それまでの仕事や僕自身の何かを変えたかったという想いがあったんです。当時、具体的にその“変えたいもの”が何なのかは漠然としていたのですが、もともと細かい作業が好きという性格もあって、すんなりネイルの世界に馴染めましたね。そのメーカーでは商材の開発やセミナーの講師などの経験を積ませてもらうことができ、サロンに勤めるネイリストとは異なる目線で、ネイルの面白さや奥深さを学ぶこともできました。当時も街のネイルサロンで働く男性ネイリストの数はそんなに多くありませんでしたが、メーカーでセミナーや商材開発に携わる男性ネイリストは多く、そういった意味でも性別的な違和感は感じなかったですね。」
男性だからこその目線やこだわり
――男性ネイリストだからこそできることや逆に難しいことはありますか?
「技術に関しては性差による違いはありませんが、例えばネイルアートの場合なら、男性目線での“綺麗”や“可愛い”を提案できることがメリットの一つだと思います。僕自身は、やり過ぎず盛りすぎず、少し引いた上品なデザインを得意としているのですが、異性から見て好感度の高いデザインを作れるのは僕が男性だからではないでしょうか。難しい面は、強いて言うならやはり自分で店を持つ時の条件でしょうか。当サロンは現在僕が1人でやっているのですが、オーナースタイリストが1人で営業するネイルサロンの場合、マンションの一室を利用するという店舗形態が多いですよね。ただ、その場合だとドアを閉めてしまえば完全に閉鎖空間になってしまうので、ネイリストが男性の場合、もしかしたら不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。だからこそ僕はあえて路面店にこだわり、閉鎖的な空間にはしたくなかったんです。ネイルは約2時間の間マンツーマンでお客様の手に触れる仕事なので、お客様にとって居心地の良い空間を作ることは、店を出すと決めた時の絶対に譲れない条件でしたね」
上品な中にもモード感や愛らしさのあるネイルデザインにファンが多い立石さんは、現在もセミナーや海外の美容イベントでのデモンストレーターを務めるなど幅広く活躍中。そんな多忙な中であえて自身のサロンをオープンさせた理由について、後編でより詳細に伺います。
Profile
立石準さん
オーナーネイリスト
大阪出身。IT関連の企業で勤めていた時に、趣味として何気なく始めたネイルスクールでその才能を見出されネイリストに転身。現在は自身のネイルサロンでのサロンワークを中心に、アジア各国で開催される美容関連イベントでのデモンストレーションをはじめ、ネイル関連のセミナーで講師も務める。