余裕を持った働き方で、介護の質を高める!長時間労働から抜け出すための業務効率化
「突然、利用者の体調が悪化した」「徘徊してどこかに行ってしまった」など、介護の現場では予想できないことばかりが起きます。そのため、余裕を持った時間配分でうまく時間を使わないと、勤務時間内に仕事が終わりません。
介護士は、身体もたくさん動かす職業ですから、しっかりと休むことも必要です。しかし、長時間労働が続けば、休む時間は当然少なくなっていきます。プライベートの時間が削られれば、リフレッシュすることさえ難しいでしょう。そうなれば、悶々とした気分で働き続けることになるため、利用者の小さな変化を見逃す危険があります。時間をうまく使うことは、介護士が自分の心身を守るだけではなく、利用者の安全を守るためにも必要なのです。
今回は、実際に24時間体制の特別養護老人ホームで働いていたIさんの事例を交えながら、介護現場で使える業務効率化の方法をご紹介します。
不測の事態に備えて、「先読みする力」を身につける
業務を効率よく回せる人は、これから何が起こるかを想像し、先を読む習慣があります。介護現場では、毎日のように不測の事態が起こりえます。どんなときでも余裕を持った介護ケアができないと、利用者の何気ない会話から感じとれる訴えや要望をしっかりと聞くことができず、利用者を満足させるケアができません。
また、業務に追われバタバタと騒がしく動くことで、利用者を不安にさせることもあります。すると、利用者の心に影響を及ぼして問題行動が起きるかもしれません。その結果、その対応に時間がかかることも考えられます。
そうならないためにも、目の前で発生している仕事から、常にやるべきことを洗い出して、やるべきことには何が必要か、どんな準備をしておけばスムーズに業務をこなせるか、を考えておく必要があります。
たとえば、老人介護を担当していたIさんは、入浴介助をするとき、「この利用者は下剤を飲んでいるので、風呂場で便粗相をするかもしれない」と先読みしていたそうです。便粗相により風呂場が汚れてしまえば、感染症などの恐れもあり、のちに入る利用者に影響が出ます。そのような場合に備えて、粗相した事態をあらかじめ予測していました。そして、「湯船には入らずにシャワー浴にしよう」と判断して、風呂場が汚れてもよい順番で浴槽に入れていたと言います。
万が一、便粗相をした場合にも、どのような対応をすべきかを予測することで、時間をかけずに対応することが可能になります。
他にもIさんは、実際に不測の事態が起きたとき、先読みする力が求められたと言います。Iさんが働いていた施設は、介護士1人につき10人の利用者を見守る現場でした。よって、1人の利用者に問題が起これば、他の9人を見ることができません。
そこで不測の事態が起きたときには、「他の9人にも何かトラブルが起きるかもしれない」と先読みをして、応援してもらう介護士を電話で呼べる体制を取っていたと言います。それは、介護士要員をもう一人増やすことで、他の9人の利用者に対する観察力を高めるためだったそうです。こうした体制づくりも、起こりうる事態の先を読んだ結果と言えるでしょう。
介護の現場では、「利用者全員を安全に、平等に接する」ことが目的です。そのために何をすべきか、先を読みながら行動してみましょう。
「業務を引き継ぐ人」のことを考える
介護現場では、チームプレイが強く求められます。施設によっては、「早番、遅番、夜勤」といった交代制度もあるでしょうし、訪問介護であれば利用者の家族に介護を引き継ぐ場面もあるでしょう。
業務を効率よく回せる人は、後工程の人にどんな内容を共有しておけば仕事がしやすいか、を常に考えながら仕事しています。そうしないと、引き継いだ相手に迷惑がかかるだけでなく、チーム全体の仕事に影響を及ぼします。自分の仕事をうまく完結させないまま引き継げば、ときには業務の「やり直し」を命じられることもあるでしょう。それはのちのち、利用者のケアにも影響を及ぼします。
早番〜夜勤までバトンタッチで働いていたIさんも、次の勤務体制の人のことを考えて仕事していました。たとえば、遅番で入ったときには、夜勤の人のために、「利用者が排泄する時間」に注意します。夜勤の人は、1人で10人を見守るわけですから、1人の利用者が粗相をすれば、全員の管理が大変になるからです。
また、後工程の人が仕事しやすいように、「この人は早めに排泄をしたので、いつもより早めに排泄に入ってください」とお願いするようにしていました。そのような声掛けや、引き継ぎノートなどのメモを残しておくことで、後工程の人は次にすべき行動が明確になり「利用者のために何ができるか」を心構えしながら動くことができるでしょう。
細々とした作業は「スキマ時間」を使おう
次の仕事に取り掛かるまでにできた、5〜10分の「スキマ時間」を有効に使えば、全体の仕事をもっと効率よく回すことができます。スキマ時間に行うとよいのは、作業系の仕事です。
たとえば、Iさんは簡単な書類作成や、シャンプーや石鹸などの在庫管理をスキマ時間に行っていました。Iさんがスキマ時間を活用するようになったのは、家に仕事を持ち込みたくなかったからです。
Iさんは、スキマ時間を作り出すことを意識しだしてから、他の仕事のスピードも速くなったと言います。利用者への声掛けも、「無理のない範囲で、どうすれば効率的に動いてくれるか」を意識した声掛けに変わりました。
スキマ時間を賢く使うために、日頃から「スキマ時間にできること」を考えておきます。「計画書はこういうふうに書こう」などと、思いついたことをメモしておくだけでも、作業スピードは変わります。
まとめ
業務を効率的に回すには、以下の4つを意識してみましょう。
1.次の行動を予測する
2.起こりうる事象を想定して、あらかじめ準備をしておく
3.引き継ぎノート等のメモを残すなど、相手の立場を考えた上で引き継ぎ内容を伝える
4.スキマ時間を有効に使う
先を読む習慣をつけることで、先を読む力が身につきます。また、スキマ時間を有効に使うことで、他の業務処理スピードもアップするでしょう。
「仕事が終わらない!」と心身ともに疲れ果ててしまう前に、まずは自分が行動する場面を想像して、起こりえる事象を書き出すことからはじめましょう。業務に余裕を持ち、良いケアを実践するためにも、今回ご紹介した「仕事を速く終わらせるための考え方」を参考にしてみてはいかがでしょうか。