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プラウドライフ_薗田宏
介護・看護・リハビリ 2019-08-13

プラウドライフ株式会社 代表・薗?宏(後編)「介護は尊くて成?できる仕事」と?い切れる覚悟と信念

ソニー・ライフケアのグループの⼀員として⽼⼈ホーム・デイサービス『はなことば』を運営するプラウドライフ株式会社・代表取締役社⻑の薗⽥宏さんのインタビュー。介護業界を知ったきっかけ、介護業界と縁を切ろうと思った理由などを語っていただいた前編に続き、薗⽥さんが仲間を⼤切にする背景や薗⽥さんの介護の仕事に対する価値観について語ってもらいました。

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介護業界に従事する者として「⼀⽪むけた感」を感じられるようになった⽇々を過ごしていたとき、ある⼈から1本の電話が⼊ります。ちょうど前職を退職して約5年がたったタイミングでした。

「薗⽥、そろそろ戻ってこないか?」

電話の主は、他社に移ってもたびたび飲みに連れて行ってくれた前職の社⻑。聞けば、薗⽥さんが退職してからこれまでの約5年間で『はなことば』の事業規模が相当なスピードで拡⼤したものの、その勢いに組織や経営が追いつけておらず、さまざまなエラーが発⽣していたそうです。

「組織の⾵通しの悪さも相まって、退職者がたくさん出ている現状でした。話を聞いてすぐ思ったのは、『お客さまやスタッフに何らかの犠牲が⽣まれている可能性があるんじゃないか』ということでしたね。当時の⾃分は営業課⻑。出世願望もあったんですが、権限の⾏使に壁を感じてやりたいことがやれない気もしていたのと⾃分の原点かつ介護業界の⼀歩を踏み出した古巣のピンチだったので、戻ることを決めたんです。これ以上、不幸せな⼈たちを出しちゃダメだし⾒て⾒ぬふりはできないよなって」

実際に戻ってみると……確かに組織は以前に⽐べて⼤きくなっていたものの、構造は複雑になっており、あちこちにひずみが⽣まれていました。経営状況も苦しく、前向きな材料は圧倒的に少なかったそうです。しかし、薗⽥さんの⼿腕によって会社内のしがらみや問題は徐々に解消・改善。分社化されていた会社を統合していき、最終的には⼀社化統合に成功しました。そして 2017 年8⽉、会社はソニー・ライフケアグループの⼀員になり、社名を「プラウドライフ株式会社」として新スタートを切ることになったのです。

⼀緒に働く仲間を⼤事にしなければならない理由

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とはいえ、⼀社化統合の道のりは簡単なものではなかったそうです。

「『会社統合』と聞くと『会社を⼀つにするだけ』と思われがちですが、会社によって異なる就業規則、給与、資格⼿当などを統⼀していく過程は全く楽ではありません。現場のスタッフからしたら『また変わるの?』という感じですよね。組織の都合で⼤きなストレスを与えてしまったのは本当に申し訳なかったと思っています」

⼈間関係が固定化しやすい現場の中でのルーティンワーク、夜勤、⼊居者の急変、事故のリスク̶̶ 。そういった介護業界の特有の環境に、不可抗⼒の組織変更が加わる。当時のストレスを⾝に染みて感じたからこそ、薗⽥さんは⼀緒に働く仲間を⼤事にすること、そして働きやすい環境を整えることが何より優先されるべきだと語ります。

「介護の仕事は⼀⼈でできる仕事ではないんですよ。だからこそ、⼀緒に働く仲間を⼤事にできるかは介護業界で働く上でとても⼤切な要素だと思います。仲間を⼤事にできない⼈がお客さまを⼤事にできるわけがない。そもそも、介護業界は⼀⼈でモチベーションを維持するのが難しい業界なんですよ。声を掛け合って励まし合ったり⽀え合ったりする仲間が必要なんです」

薗⽥さんの⼀貫した「仲間への思い」がベースになっている「仲間を⼤事にするチームづくり」は年々進化しています。前編の冒頭で触れた「私服⾵のユニフォームへの刷新」は、もしかするとその進化の一環なのかもしれません。

会社で何かしらの具体的な取り組みをする際に薗⽥さんが⼼掛けていること。それは、まず仲間たちに現状を知ってもらった上で会社の理念を⽰し、なぜそれに取り組む必要があるのかをしっかりと理解してもらってから実⾏に移すことです。

「未来の『ありたい姿』をみんなに共有し納得を得るためには、過去を含めた現在の位置を知ってもらう必要があると思っています。その上で、どうしてその未来予想図に向かう必要があるのか、なぜその⼿段で取り組む必要があるのかといった『根拠』を⽰すことが⼤事です。

現場で運営をやっていたときは重い責任を負わされるけれども、権限がない感覚だったんですよね。その感覚の理由って、根拠が⽰されていなかったから、なんですよ。上から『やれ』と指⽰されても、何のためにそれをやるのか⽬的が不明瞭で納得感がなかったんです。

そうなると、仕事は『やらされている』になりますよね。例えば、『⾃分が取り組むことで会社にどういった利益があるのか』『指⽰された技術を⾝に付けたら、⾃分にどんな利点があるのか』。こういった⼀つ⼀つの事象にちゃんと根拠を添えるだけで、スタッフも会社も成⻑するはずなんです」

他責にしている限り、誰も幸せにならない

「⽣まれたての⾚ちゃんって、すごくポジティブじゃないですか。何度転んでも⽴ち上がろうとする。けれど、歳を重ねると消極的になってしまう⼈が多い。なぜなら、⼈は失敗することで悔しさや惨めさ、悲しさなどのマイナスの感情を経験し、それらを蓄積していくからです。⾏動する前に失敗を予想する⼒が付いてしまうと、『できない理由』を先に⾒つけ出すんですよね。その⼈が持っている能⼒に関わらず、⼈間は誰しもそういう⽣き物です。だから、『できる理由』をたくさん⾒つけられる⼈は強いなって感じますよね」

何か問題が発⽣したとき、⾃分以外の組織や環境、仲間に原因を⾒出すのは間違ってはいないかもしれません。けれど誰かのせいにしたり、問題を⾒て⾒ぬふりをしたり……。そういった「負のサイクル」の種を⽣んでしまうと、頑張っている⼈や責任感がある⼈に余計な負荷がかかり、結果その⼈たちがドロップアウトしてしまうケースがあります。

「他責にしている限り、誰も幸せになりません。さらにいうと、問題から逃げ続けていたら⾃分の求めている環境は⼿に⼊らないんです。物事を『⾃分事』でいかに捉えられるか。問題に対して『⾃分は何ができるんだろう』と考えられる⼈が、周囲を幸せにできます。まず、『負のサイクル』を⽣み出す仕組みに気付き、発想を転換できるポジティブな⼈が⼀⼈また⼀⼈と出てきてくれたら、うれしいですね」

胸を張って⾔える「介護の仕事は尊くて、成⻑できる仕事だよ」

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「同じ給料であれば、⼈間関係や仕事のやりがいや⾃⼰成⻑が得られる職場がいい」。⽇本の産業全体が⼈材不⾜といわれる中、現在(いま)、「働きやすさ」を仕事に求める⼈々が増えています。世の中の「働くこと」への価値観がそのようにシフトしている中で、薗⽥さんは「介護業界で働くこと」について、どのように考えているのでしょうか?

「まだまだ、介護業界のイメージは『きつい』『薄給』といったネガティブなものが先⾏していると思います。確かに『働きやすさ』を連想できる業界ではないし、そういう現場や会社はあるかもしれません。

ただ、少しだけ⾒⽅を変えてほしいんですよね。⼈はさまざまな経験をし、いろいろな『気付き』を経て、成⻑していきます。介護の仕事は、たくさんの経験を重ねてきた⼈たちの『死』も含めた⼈⽣の集⼤成を共有させてもらえる仕事。その⼈たちの価値観に多く触れる機会があるということはつまり、働く側も『気付き』の量が増えるんです。実際、僕⾃⾝、介護の仕事を通じて、⼈として大きく成⻑させてもらえた実感がありますし、『介護業界で働くこと』の実体験も重ねてきました。だから、胸を張って⾔えるんです。『介護の仕事は尊くて、成⻑できる仕事だよ』って」

インタビュー終了後、薗⽥さんは付け加えるように「介護業界で差別化を図れるのは結局、そこで働く⼈なんです。どんなに施設が素晴らしくても、⼈です」と話してくれました。薗⽥さんとプラウドライフがつくる介護と介護職の未来に、これからも注⽬していきます。

>>⼀度、介護の世界から⾜を洗おうと思った̶̶ プラウドライフ株式会社_代表・薗⽥宏インタビュー(前編)

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