心身ともに健康になれる運動指導を提供したい/介護リレーインタビュー Vol.31【運動指導員 渡部悟史さん】#2
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。前回につづき、機能訓練を中心としたリハビリ型デイサービス「レコードブック八千代台」の運動指導員 渡部悟史さんにインタビュー。
後編では、渡部さんが介護業界に入って感じているやりがいや、前向きに働き続けるためのアドバイスをお聞きします。
お話を伺ったのは…
レコードブック八千代台 運動指導員 渡部悟史さん
大学卒業後、スポーツクラブでインストラクターとして3年勤務。2018年、株式会社三和薬品に入社し、「レコードブック八千代台」に勤務。要支援者、要介護者の機能訓練を中心とした運動指導を行っている。
運動による体の変化を喜んでくれるのが嬉しい
——介護のお仕事に感じる魅力ややりがいを教えてください。
ここに来る方は、今まで運動をしてこなかった方がほとんどなので、通い始めて3カ月~半年という短期間でも体の変化が出やすいんです。ご利用者さんから「こんなことができるようになったよ」と声をかけてくださると、やってきてよかったなと思います。
車いすでいらした方が、数か月後には杖で立てるようになり、最後は杖なしで歩けるようになったこともありました。最初は運動意欲が低く週1回の通所だったんですが、だんだん運動が楽しくなってきて週3回通ってくださるようになって。運動の機会が増えると体も大きく変わるので、どんどんできることが増えました。その変化を喜んで報告してくださるのが、すごく嬉しかったですね。運動することで機能面もメンタル面も、良い方向にいく。心身ともに健康になっていただくのが、僕らが一番理想としているところです。
——逆に大変だと感じることは何ですか?
スポーツクラブもそうですが、やはり肉体労働にはなるので、体的な大変さはあります。また要介護の方で心に重いものを持たれている方だと、時につらい言葉をかけられることも。そういった体と心のケアを、いかに自分でできるかは大切だと思います。
働き続けるには休日に体と心をケアすることが大切
——渡部さんのケア法は?
家で好きな音楽を聴いたり、コロナ禍になってできていませんが以前は休日に野球をするのがリフレッシュになっていました。また面倒見のいい先輩が多いので、よく話を聞いてもらっています。以前は休日前の終業後、一緒にご飯を食べに行ったり、お酒を飲みに行ったりしていました。そういうコミュニケーションも心のケアになっていたのかなと思います。
同じ経験をしてきた先輩ばかりですから、理解してもらえるのは気持ちが落ち着きますよね。僕も後輩に同じようにしていきたいと思っていたんですが、コロナ禍で難しいので、お店のなかでたくさん話を聞いてケアしていけたらと思っています。
——休日に仕事のことを考えたりしますか?
入社したてのころは覚えることがたくさんあったので、仕事のことを考えることもありました。とくに先輩から宿題を出されるわけではなく、「どうしたら段取り良くできるかな」とチラッと考えたり。でも慣れてくるにつれて、業務時間内で消化できるようになったので、以前ほどは考えることは減ったと思います。今はオンとオフをしっかり切り替えられるようになりました。
自分と周りのステップアップのために知識を蓄え続けたい
——ご利用者さんと接するときに気を付けていることはありますか?
こういった機能訓練をしている施設ですと、ご利用者さんとフランクな口調で会話するところは多いんです。でも僕たちは、タメ口で話すことだけが距離を縮める方法ではないと考えているので、言葉使いや接遇という点はすごく丁寧にしています。
もし、ご利用者さんがフランクな会話を許してくださっていたとしても、ご家族や外部の方が見に来たときに「うちのおじいちゃん、おばあちゃん、こんな風に接されているけど大丈夫なの?」と心配になってしまいますし、それはよくないと思うんです。
こちらが相手を怖がらないことも大切です。認知症の方ですと、自分が怖がってしまうと、お相手も拒否感が出てしまいます。またご高齢の場合は認知機能や耳の聞こえなどによって、指示が届きにくいことも多いです。そういった声掛けの仕方や接し方は、すごく重要なところなので、その都度先輩から教わってきましたし、僕自身も後輩に伝えています。
——離職率の高い業界ですが、前向きに働くコツはありますか?
一般的なデイサービスや老人ホームに比べると介護度の軽い方が多いので、そこまで離職率の高さは感じていません。前向きに働くには、やはり休日にしっかりと自分の体や心のケアをしていくのが一番大切だと思います。
僕自身は、働いていて不安や負担を感じたことはありません。それは職場の人間関係がよく、相談できる人が周りにいるからかなと思います。
——今後の課題や目標を教えてください。
スポーツクラブでの経験を含め運動指導は長く続けてきましたが、新しいご利用者さんが増えると今まで触れてこなかった課題が見えてくることもまだ多いです。そういった課題に直面しても動揺しないように、蓄えられる知識はこれからも吸収し続け、自分が持っている知識をフル活用して、ご利用者さんのためになれたらと思っています。
また自分のステップアップとして運動指導員に限らず、生活指導員や所長といった役職も視野に入れ、もっと介護保険の知識も増やしていきたいです。自分自身の成長とともに、より「レコードブック八千代台」がいい方向に行けるように、目標をもって続けていけたらと思います。
取材中も大きな声で運動指導をしているスタッフさんたちの様子が見られ、明るい雰囲気が印象的だった「レコードブック八千代台」。人間関係のよさが引き継がれていくことで、施設全体の雰囲気もよくなるのだなと感じました。
大変なことも多い介護業界では、職場の雰囲気がとても大切。渡部さんのように後輩のことを考えてくれる先輩がいたら、初めての介護のお仕事でも安心して働けそうですね。
取材・文/山本二季
撮影/本名由果(fort)