保育士の初任給はどれくらいなの? 知っておきたい給与の基礎知識
保育士を目指す人のなかには、初任給がどのくらいなのかを知りたいという人もいるでしょう。給料では、税金や保険料などが差し引かれるため、内訳についてもきちんと理解しておくことが大切です。
今回は、保育士の初任給の相場はもちろん、知って役立つ給与の基礎知識について、くわしく解説します。
保育士の初任給はどれくらい?|令和2年賃金構造基本統計調査データ
保育士の初任給は、どのくらいもらえるものなのでしょうか。ここでは保育士の初任給について、令和2年賃金構造基本統計調査のデータをもとにくわしく解説します。
そもそも「初任給」とは?|就職・転職で意味は違う?
初任給とは、社会人になってはじめて会社からもらえる給料のこと。「社会人になってはじめて」という定義なので、最初の就職先での給料で使用される言葉です。一般的に初任給は、基本給に住宅手当などの各種諸手当を加えた額となります。
一方、厚生労働省における初任給の定義は、「残業手当を含まない金額から通勤手当を除いた金額」となっています。そのため、残業手当や通勤手当以外の手当を加えた金額を初任給としています。
初任給の平均額は約20万8,000円
令和2年賃金構造基本統計調査によると、保育士の新卒年齢の初任給(勤務年数0年)の平均月給は20万7,900円です。あくまで平均の月給なので、この金額よりも高いところもあれば低いところもあります。
賞与(ボーナス)の平均額は7万3,000円
保育士の賞与(ボーナス)の平均額は、7万3,000円です。保育士の賞与は給料の何カ月分として支払われ、勤続年数の増加や役職などによってもらえる賞与の額も増える傾向にあります。
ただし、働いて間もない場合は、勤続年数やキャリアなどが反映されません。そのため、もらえる賞与の額も低くなる傾向にあります。
公務員保育士の場合は?|令和2年 地方公務員給与の実態
公立の保育園および地方自治体が運営する保育施設で勤務する保育士を、公務員保育士といいます。
令和2年 地方公務員給与の実態によると、公務員保育士の全国平均初任給は、北海道、関東から九州・沖縄まで自治体によって差があるようです。
学校別で見ると、大学卒で約18~19万円、短大卒で約16~17万円、高校卒で約14~15万円となっており、大学卒がもっとも高い金額となっています。
2年目からのお給料はどうなる? 勤務年数ごとの平均給与を紹介
令和2年賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均の給料は、1~4年目で22万2,500円、5~9年目で23万8,400円、10~14年目で25万4,400円、15年以上で28万1,000円となっていました。
基本的には、勤続年数が長くなるにつれて平均の給料も高くなる傾向にあるようです。
保育士のお給料・平均年収はどれくらい?|収入UPを目指す4つの方法
経験を積むとどれくらい増える? 平均年収の推移を紹介
令和2年賃金構造基本統計調査によると、保育士の賞与を加えた平均年収は、勤続年数1~4年目で85万4,700円、5~9年目で98万8,100円、10~14年目で102万700円、15年以上で131万4,700円となっていました。
このことから、勤続年数に応じてもらえる賞与の平均額も増え、平均年収の金額も高くなっていることがわかります。
私立・公立ではどれくらい金額の違いがある?
保育士が働く施設には、私立と公立の施設がありますが、もらえる給料にどの程度の違いがあるのでしょうか。
ここでは、2019年におこなわれた幼稚園・保育所・認定こども園などの経営実態調査の集計結果を踏まえて、施設ごとの給料の違いをご紹介します。
公立保育園の方がやや高めな傾向
公立の保育園で働く保育士の平均の給与は賞与込みで30万3,113円、私立の保育園で働く保育士の場合は賞与込みで30万1,823円となっています。
平均勤続年数に違いがあるので正確には比較できませんが、公立保育園で働く保育士の給与のほうが高くなっていることがわかるでしょう。
手取りとは? 手当とは? 知っておきたい給与の基礎知識
毎月もらう給料は給料明細をみるとわかりますが、手取りといって実際に手元に残る金額が給料より少なくなるのが特徴です。
ここでは、事前に知っておきたい役立つ給与の基礎知識や各種用語についてくわしく解説します。
なぜ? 給料が全額もらえない理由|手取りとは
手取りとは給料から税金や保険料が差し引かれて、実際に手元に残る金額のことです。
給与明細書をみれば一目瞭然ですが、社会保険料や各種税金などが給料から毎月天引きされるため、実際に手元で受け取れる額は全額よりも低くなります。
どんなものが引かれるの?|保険料・税金など
手取りは給料全額よりも低くなりますが、実際にどのような項目で金額が差し引かれるのでしょうか。
ここでは、給料から差し引かれる保険料や税金の種類や例を解説します。
健康保険料|医療費の負担を軽減するためのもの
健康保険料は、医療費の負担をみなで軽減するための公的な医療保険料です。会社に勤める人が加入し、労働者ひとりひとりが健康保険料を支払うことによって、けがや事故、病気などによる受診費の負担が安く済む仕組みとなっています。
また、この保険料を毎月支払っていると、病気やけがなどで休業せざるを得ない場合に傷病手当金を受けられるなどのメリットがあります。
雇用保険料|失業したときに手当を受け取るためのもの
雇用保険は会社の事業主が加入する保険制度で、労働者と事業主とで雇用保険料を支払う仕組みです。
雇用保険料を支払っておくと、万が一失業したときに、失業手当金をもらえるほか、育児休業給付金や就職促進給与など、さまざまな給付金を受けられるというメリットがあります。
年金保険料|老後に年金を受け取るためのもの
厚生年金は国が定める公的な年金制度であり、会社に勤める人は要件を満たしていれば加入して、厚生年金保険料を支払う必要があります。年金保険料を支払っていると、退職後に年金を受給でき、老後の生活費などにあてることが可能です。
また、遺族厚生年金や障害年金など被保険者の万が一のときにそなえて、本人やその家族にも年金が支給されるなど保障が手厚いのがメリットとなります。
所得税|収入額によって変動する
所得税とは、収入からもろもろの経費を引いて残った「所得」にかかる税金で収入額によって金額は変動します。所得税は国に納付する必要があり、給料だけでなくボーナス、賞与からも差し引かれるのが特徴です。
所得税の仕組みがあることによって、個人間での収入の格差による貧富の差をできるだけ減らすことができています。
住民税|勤務1年目は支払い義務なし
住民税とは、都道府県や市区町村に対して納付する地方税のひとつで、通知書に記載の金額を会社が給料から天引きして代わりに納付する仕組みです。勤務して1年目は住民税を支払う必要はなく、2年目以降から支払いの義務が発生します。
住民税は地方自治体の公的なサービスの財源となり、地域を支えるのになくてはならない税金です。
手当とは? どんなものがあるの?|求人募集票をチェックしてみよう
保育士として働いていると、さまざまな手当の支給が期待できます。通勤手当や残業手当、住宅手当などのほかに、保育士ならではの資格手当や役職手当なども含まれるのが特徴です。
ここでは、保育士がもらえる手当の例を解説します。ただし、すべての園で支給されるとは限らないので、必ず求人要項をチェックするようにしてくださいね。
資格手当|保育士資格
資格手当は、保育士資格など保有する資格に対してつく手当のことであり、給料にプラスアルファでもらえる手当です。
手当をもらうことで働くモチベーションの維持、向上につながるでしょう。また、資格をとって専門性を実践に活かしたいという人が増えれば、園で提供するサービスの質の向上にもつながるなど、さまざまなメリットがあります。
役職手当|役職に応じて支給
保育園などで働く際に、役職手当といって分野別リーダーや専門リーダー、副主任や主任、園長と各役職に応じて手当が支給されます。
幼稚園・保育所・認定こども園などの経営実態調査の集計結果によると、常勤で働く保育士の月々の給料は賞与込みで平均して約30万円となっていました。しかし、主任になると私立保育園で約42万円、公立保育園で約56万円と約10~20万円ほど上乗せされた金額となっています。
さらに園長となると私立保育園で約56万円、公立保育園で約63万円となっており、約20~30万円プラスの給料となります。
特殊業務手当|行事に関する手当
保育園では特殊業務手当といって、運動会や謝恩会、生活発表会など、さまざまな行事に関連して支給される手当があります。
行事にともなって、道具や衣装の準備、プログラムの作成など、さまざまな準備や裏方の仕事が増えると、保育士の負担も増えてしまい、残業や持ち帰りの仕事が発生することもあるでしょう。このような負担を考慮して、特殊業務手当を支給する園も存在します。
給料の支払日は施設によって違う|締め日と支払日をチェック
給料の締め日や支払日は、働く園や施設によってさまざまです。一般的な例としては、当月末締めの当月10日払い、当月15日締めの当月25日払いなどがあります。
支払いが当月でなく翌月の場合もあり、給料の計算や振り込み、クレジットカードの引き落としなどにも影響することなので、事前によく確認しておくと安心でしょう。
とくに初任給では、締め日や支払日によっては働いた当月に給料をもらえない可能性も出てくるため、注意が必要です。
初任給と併せて手当なども前もってチェックしておこう!
保育士の初任給では、どのような税金や保険料が差し引かれるのかを確認し、実際に手元に残るお金は給料よりも低くなることを理解しておきましょう。また、保育士の資格手当や経験やキャリアに応じた役職手当など、給料にプラスアルファで手当てがつくケースも見受けられます。
勤続年数や個人の努力に応じて報酬を受けられるチャンスもあるため、求人票の内容をよく確認しておくことが大切です。また、各種振込などにも関わるため、給料の支払い日や締め日についても事前に調べておくと安心でしょう。
引用元サイト
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