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特集・コラム 2023-08-18

栄養士になるためには?資格の取り方や働き方、給料や将来性を解説

栄養士とは、都道府県知事に申請して取得する認定資格で、食事や栄養の指導、献立の作成、栄養素の計算など食事の管理をするのが主な仕事です。

そのため、食事を提供する施設などに必ず必要な人材で、働く場所も、学校などの公的な機関から一般の企業までさまざま。この記事では、そんな栄養士になるための方法や働き方、給料や将来性などを詳しく紹介していきます。

栄養士について知っておきたい2つのポイント

栄養士になるために、まず基礎知識を知っておきましょう。ここでは、栄養士について2つのポイントを解説します。

1.栄養士とは?

栄養士とは、乳幼児から高齢者まで、主に健康な人々の食生活を支えるアドバイザーです。保育園から介護保険施設、企業の社員食堂や研究機関など、さまざまな施設で働いています。個人から団体まで、幅広い人々の食生活をサポートしていきます。主に、食事の献立・栄養計算・調理・食事提供などを行う、食と栄養の専門職です。

栄養士の詳しい仕事内容については、こちらの記事をご覧ください。

栄養士とは? 栄養士の仕事内容を紹介|栄養士になるにはどうすればいいの?

2.栄養士と管理栄養士の違いとは?

栄養士には、「栄養士」と「管理栄養士」の2つがあります。この2つの大きな違いは、資格とアドバイスをする対象者です。

栄養士と管理栄養士の違いとは?

管理栄養士は、栄養士よりも専門性が高いため、幅広く業務を行います。例えば、給食施設の運営管理や、診療報酬の算定対象となる栄養指導や栄養管理などです。栄養士の場合は、栄養バランスの取れた献立作成、調理などの食事提供の業務が主になります。

さらに、栄養士と管理栄養士の違いを知りたい方は、こちらをご覧ください。

栄養士と管理栄養士の違いとは? 3つのポイントを解説|2つの資格のメリットをチェック

栄養士になるには?必要な資格の取り方を紹介

栄養士になるためには、「栄養士免許」が必要になります。資格の取得方法・社会人になっても取得できるのかを解説します。

資格の取得方法は?

栄養士の資格を取るためには、栄養士養成施設に入学し、知識や技術を学んで卒業することが必要となります。施設によっては、2~3年で卒業することが可能です。国家試験はなく、養成施設で学べば栄養士の免許を取れます。

栄養士の資格を取った後に、管理栄養士になりたいと考えた場合、栄養士として1~3年以上の実務を経験した後、国家試験を受けなくてはなりません。

栄養士になるための養成施設を知りたい方は、こちらをチェックしましょう。

栄養士になるには資格が必要?|おすすめの栄養士養成施設を紹介

社会人でも取得できる?

栄養士の養成施設には、夜間部や通信学科はないため、昼間に通うことになります。

平日にフルタイムで働く社会人が栄養士の資格を取るには、今の生活を変える必要があります。例えば、仕事を辞めて最短2年で資格を取れる養成施設に通い、そのまま栄養士の仕事に転職するというのも一つの方法です。また、昼間は養成施設で学び、夜や土日に仕事をするという方法もあります。

主婦には栄養士の資格がおすすめです。取得するメリットを紹介していますので、ぜひご覧ください。

栄養士の資格は主婦にもおすすめ? 取得するメリットとは|主婦が栄養士を目指すには

養成施設ごとの年数と管理栄養士までの道

栄養士になるルートはいくつかありますが、いずれにしても厚生労働大臣に認可された養成施設で、単位を取得する必要があります。養成施設の種類は管理栄養士を視野に入れた管理栄養士養成施設、または2~4年間の短大や専門学校などの栄養士養成施設です。栄養士取得に必要な単位を取得したうえで、免許申請をしなければなりません。

栄養士は養成施設で必要な単位を取得し卒業することで取得できますが、管理栄養士は必要な単位を取得したうえで、国家試験に合格する必要があります。

また、4年間の管理栄養士養成施設の場合、卒業して栄養士免許を取得すれば国家試験の受験資格を得られますが、栄養士養成施設の場合、管理栄養士の国家試験を受験するには、卒業後に栄養士として1~3年の実務経験が必要です。

管理栄養士国家試験を受験するために必要な条件
修了までの期間 必要な実務経験
管理栄養士養成施設 4年間 なし
栄養士養成施設 4年間 1年間
栄養士養成施設 3年間 2年間
栄養士養成施設 2年間 3年間

栄養士の資格を取るために学ばなくてはならないこととは?

栄養士養成施設では、どのような勉強をするのでしょうか。栄養士は、栄養や食以外のジャンルについても知識を深めていきます。ここでは、学ぶ必要のある科目について紹介します。

栄養士・管理栄養士の専門学校についての詳しい紹介は、こちらからご覧ください。

栄養士・管理栄養士の専門学校ではどんなことを学ぶの?|おすすめの専門学校を紹介」

栄養学

栄養学は、栄養士にとって基礎知識です。タンパク質、炭水化物、ビタミンなどの栄養素が、体でどういった働きをするのか、健康にどのような影響を与えるのかを学んでいきます。主に以下の科目を学習します。

・栄養学
・公衆栄養学
・臨床栄養学
・栄養指導論
・食生活論

アレルギーや高血圧など食事療養が必要な病気についての知識も必要です。また、現代人の問題である運動不足や生活習慣病の改善について学ぶことも欠かせません。他にも、海外の食文化について気候・風習・歴史などが、食生活にどのような影響を与えたのかを学習していきます。

食品・衛生

食品学では、栄養成分の分析や、食品の安全性を調べます。熱することによって変化が起こる食品を通して、栄養素を損なわない保存方法を学ぶことも栄養学の一つです。主な科目は以下の通りです。

・食品学
・食品加工学
・食品衛生学
・食料経済
・公衆衛生学

味噌、チーズ、缶詰などの加工食品についての製造方法や、長期保存するためにはどうすればいいのかを研究する授業があります。食中毒の原因となる細菌などから食品の安全を確保する仕方や、予防接種・伝染病に関わる公衆衛生学なども押さえておくべき知識です。

給食運営

実習の授業が主になります。学校や病院に実習へ行く場合もあれば、養成施設に給食センターを模した施設が併設されている場合もあります。主に、以下の科目を学習します。

・調理学
・給食管理

献立作成を行ったり、原価を計算して食材を選んだりします。食材の検収から下処理を行い、調理、盛り付け、配膳をした後の食器の洗浄まで、実践しながら学んでいきます。給食運営は、実際に現場へ出て働くときに役立つものばかりです。

人体

人体の構造や臓器の働き、人体の機能と運動の関わりなどについて学びます。人が生きていく上で、栄養成分は切っても切り離せない関係にあり、人体の内部のことをより深く知ることが栄養士には欠かせません。主に学習する科目は、以下になります。

・解剖生理学
・生化学
・運動生理学

栄養素が体の中でどのように吸収・分解・作用していくのかも学んでいきます。糖質・脂質・タンパク質などの化学反応や代謝の経路についての知識も必要です。

栄養士として働く!気になる仕事内容と収入を紹介

栄養士として働く上で、気になる仕事の内容と収入について紹介します。

仕事の内容

栄養士の主な仕事内容は、以下の通りになります。

・献立の作成
・食材の発注作業
・調理
・衛生・安全管理
・栄養指導
・食育指導

働く施設によって異なりますが、食事の管理と提供や栄養についてのアドバイスが主な仕事です。高齢者、妊婦や乳幼児など、対象者によって必要な栄養は違ってくるため、献立やアドバイスの内容も変わってきます。また、児童がいる施設では、食育指導を行うこともあります。

ある栄養士の一日を紹介

栄養士の仕事を具体的にイメージするために、施設勤務と給食事業、それぞれの事業所に勤務する栄養士の一日の流れを紹介します。

入居型の高齢者施設勤務の栄養士の一日

【8:00】
出勤・納品書整理など事務作業。

【9:00】
朝・昼・夕食それぞれの献立を作成。原価計算や栄養計算もおこない、予算内でバランスのとれたメニューになるように気を配る。

【10:00】
打ち合わせ
管理栄養士や調理師と打ち合わせをする。栄養計算や栄養バランスのチェックをしてもらったり食材の在庫や調理師の意見などとすり合わせる。

【11:00】
昼食準備の確認とデイケアチェック、配膳をする。

【12:30】
配膳車の回収、食材の発注や事務処理。

【14:00】
昼食。後片付けや残りの仕事を片付け、おやつ・翌日の準備をする。

【15:00】
夕食の準備。昼食の準備同様、確認や配膳をする。

【16:00】
担当者会議に出席。情報の共有などをおこなう。

【17:00】
退勤。

給食事業会社勤務の栄養士の一日

【8:30】
出勤
食材の確認、調理器具の整理。配膳者の整理をする。

【9:00】
昼食の調理開始。調理師と打ち合わせをおこない、献立や調理手順、給食人数、アレルギー対応食などを確認する。

【11:50】
昼食の配膳のために配膳者に載せた料理を運ぶ。受け渡しが済んだら調理器具などの洗浄。

【13:00】
配膳車を回収し、食器類の片付け。残飯のチェックなどから献立の反省点を洗い出す。

【14:30】
栄養計算、原価計算、発注などをおこなう。書類や伝票整理などの事務作業をする。

【16:30】
厨房スタッフと、翌日の献立の打ち合わせをおこなう。

【17:00】
退勤

収入

栄養士と管理栄養士の収入の統計情報を紹介します。令和3年賃金構造基本統計調査によると、年収の全国平均は367万6,000円です。ハローワーク求人統計データでは、令和3年度の月収は21万円となっています。

最高年収は484.17万円でピークは55~59歳、月収の中央値は20~21.9万円で、決して高給ではありませんが、管理栄養士にステップアップすることで収入アップを目指すことも可能です。

引用元
栄養士|jobtag

栄養士の将来性は?

栄養士の全国平均の有効求人倍率は2.03%となっており、いま求められている職業といえるでしょう。入所型の福祉施設や学校、企業など栄養士を必要とする職場は多いため、求人がなくなることはないと考えられます。

栄養士の働き方は就職する企業や施設によっても大きく変わりますが、給食や入所施設だけでなく、飲食サービスや宿泊施設など幅広い業態の中から選ぶことができるのもメリットです。

引用元
栄養士|jobtag

認定栄養士資格取得でキャリアップの足掛かりに

栄養士がキャリアアップを目指す場合、その先にあるのは管理栄養士だけではありません。認定栄養士を取得することで、社会的な信頼度はぐんとアップします。

認定栄養士は、特定の分野に関する専門的な知識を有することの証明となる資格で、栄養士として活躍の場を広げることにも役立ちます。

認定栄養士の申請に必要な条件

認定栄養士になるためには、いくつかの条件があり、そのすべてを満たす必要があります。
日本国の管理栄養士・栄養士の免許を有していること
管理栄養士・栄養士としての実務経験が積算5年以上であること
基幹教育の基本研修を30単位以上、実務研修30単位以上を取得していること
研修や日々の業務をもとに、年に1テーマ以上(5年分)のキャリアシートを作成していること
申請の分野で、「栄養の指導」に関して学会での発表を1回以上している、かつ、学会に3回以上参加していること

以上の条件を満たしたうえで申請をし、認められればさらに試験を受けて合格することで、晴れて認定栄養士を取得することができるという難易度の高い資格です。ハードルが高い分、キャリアアップにつながる可能性は高いでしょう。

栄養士はどんなところで働いている?6つの職場を紹介

栄養士は、どんなところで勤務しているのでしょうか?ここでは、6つの職場を紹介します。

職場の選び方などを知りたい方は、こちらをチェックしましょう。

管理栄養士や栄養士が活躍できる就職先とは?|選び方のポイントを解説

1.病院

患者の病状や栄養状態に合わせた、調理や食事提供をおこないます。病院では、「食事をする」ということも治療の一部です。おいしい食事を提供することで、体だけではなく、心も健やかになってもらえるように心がけます。

管理栄養士の場合は、医療チームと連携して、手術後の患者や合併症の再発防止などに向けて、栄養管理・食事指導をするなど、栄養士よりも一歩踏み込んだ業務をします。

2.保育園・幼稚園・学校・社員食堂

保育園・幼稚園・学校では、給食の献立作成・衛生管理・食物アレルギーへの対応など給食運営をおこないます。対象年齢に合わせた食育の授業をしたり、保護者に向けて「給食だより」を作成したりすることも仕事の一部です。特に保育園や幼稚園では、昼食以外におやつの提供をすることもあります。

また、社員食堂に勤める場合は、成人向けの栄養を考えて献立を作成することが求められます。食事に対するカロリーや塩分の表示も大切な仕事です。

3.スポーツの現場

トップアスリートからスポーツを趣味でする大人、子どもたちを対象に、運動能力を高めるための栄養や食事に関するアドバイスをします。怪我をしない体づくりや、より高いレベルを目指すための体づくりのため、効果的な栄養の取り方について指導・献立作成をしていきます。スポーツクラブや実業団で働く栄養士や、選手個人の専属として働く栄養士もおり、働く場所はさまざまです。

4.給食会社

企業の社員食堂や学生食堂・給食センター・寮・工場など、委託を受けた場所で働き、栄養・健康管理・献立作成や調理をします。委託先の施設によっては、直雇用された栄養士が献立作成をおこなうこともあります。

全国に展開している給食会社で働くと、転職せずにさまざまな施設で経験を積むことが可能です。例えば、引越しのために別の地域で働きたいとなったときに、退職という判断ではなく、他の施設に異動願いを出すことで、環境を変えられることがあります。

5.介護福祉施設

高齢者一人ひとりの生活状況や身体の状況に合わせた調理や食事提供をおこないます。特に、人によっては噛む力や飲み込む力が弱っていることもあるため、個人の状況に合わせた調理方法でフードサービスをすることが必要です。

6.レストラン・カフェ

オーガニック料理やヘルシーな料理など、健康を意識した専門的な飲食店が増えてきています。そのため、レストラン・カフェで栄養士の活躍の場が広がっています。知識を活かした献立作成やカロリー・栄養の計算が求められるでしょう。また、栄養士と調理を兼任することが多く、調理のスキルが必要となります。

行政・地域活動

都道府県庁や各市町村の保健所、または保険センターなどで、地域の健康づくりに関する政策の企画や提案などをおこないます。地域住民に向けた講座の開催や栄養相談など担当することも。

また、地域の健康をサポートするさまざまな取り組みをするのも仕事です。病気や介護などでサポートを必要とする方への栄養指導や調理のアドバイスをしたり、料理教室の講師をしたりといった、地域に密着した働き方ができるのも栄養士の魅力といえます。

教育・研究機関

国や企業、大学などの研究室で、食に関するさまざまな研究をおこなうという働き方もあります。企業での食品研究を通して、健康をサポートする商品開発の一助を担ったり、食と健康に関する研究をして発信したりといった、やりがいのある仕事です。

また、管理栄養士や栄養士の養成に関わり、将来役立つ人材を育てるという重要な職に就くこともあります。

栄養士は多くの施設や機関で必要とされるお仕事!資格を取得してキャリアアップも目指そう

ここまで見てきたように、栄養士が求められる場所は、一般の企業から国や地域の施設、病院や学校など多岐にわたります。勤める施設や機関によっても働き方は変わる場合があり、選ぶ職によっては柔軟性のある働き方も可能です。

将来性もある仕事で自分に合った職場も見つけやすいといえます。頑張り次第でステップアップやキャリアアップも見込める資格なので、是非資格取得をめざしましょう。

引用元

栄養士|jobtag

管理栄養士・栄養士とは|公益財団法人日本栄養士会

栄養士になるには|一般社団法人全国栄養士養成施設協会

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