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特集・コラム 2020-09-17

視能訓練士(CO)になる方法とは? 仕事内容や必要な能力を分かりやすく解説

私たちが生活する上で、目はとても大切な器官です。そんな目の健康を守るためのアシストをしてくれるのが「視能訓練士」です。この記事では、視能訓練士になるための方法や仕事内容、必要となる能力などを解説します。

視能訓練士になるためのルート

視能訓練士になるには、視能訓練士国家試験に合格する必要があります。この試験を受けるためには、

・視能訓練関連の課程がある大学で4年以上学んでいる
・視能訓練士養成校で1年から3年学んでいる

上記2つのどちらかをクリアしていなければなりません。

視能訓練士養成校は高校や短大、看護学校、保育士養成校などを卒業していれば入学できます。高卒の場合は3年間、短大や看護学校、保育士養成校などを卒業している場合は1年間学ぶと、国家試験の受験資格を得られます。

なお外国の視能訓練士養成校を卒業している場合や、外国で視能訓練士に準ずる資格を所持している場合も、厚生労働大臣が資格ありと認めれば国家試験を受験できます。

厚生労働省の調査では、専門学校を卒業した人が68.4%、大学を卒業した人が54.4%です。

視能訓練士養成校はどんなところ?

視能訓練士養成校は、全国におよそ30校(2020年7月現在)あります。北は北海道、南は宮崎県と、数は多くありませんが全国に広く分布しています。1年制の専門学校は土日祝日や夜間に通学できるため、昼間や平日に働いている人でも通うことが可能です。

養成校では筆記試験に合格するための勉強のほか、視能訓練士として必要な実技を学びます。実技では主に検査器具を正確に使用するための方法を習得し、卒業前には試験も行います。学校によっては、実技試験に合格しないと実習を行えない場合もあるようです。

どの養成校に通うかは、どのような視能訓練士になりたいかを考えて慎重に選びましょう。なるべく早く即戦力として働きたいのなら専門学校、深い知識を身に付けじっくりと勉強をしたいなら大学がおすすめです。視能訓練士以外の働き方を検討しているなら、看護学校や保育士養成校などを卒業してから、視能訓練士養成校に入るのも良いでしょう。

国家試験の内容と合格率

試験は、毎年2月下旬に東京と大阪で行われます。試験科目は、基礎視能矯正学や視能検査学、視能障害学、視能訓練学などです。

視能訓練士の試験は、他の医療関連の資格に比べて合格率が高くなっています。近年の合格率は、およそ70%~90%です。2020年2月に行われた試験でも受験者843名中804名が合格、合格率は96.1%でした。

また視能訓練士の資格には、有効期限がありません。そのため、1度合格すれば資格は一生涯有効となります。

視能訓練士とはどんな職業か?

視能訓練士はCertified Orthoptist(CO)とも呼ばれ、目の機能回復訓練や検査を専門とする職業です。

もともと視能訓練士が行っている仕事は、無資格で行うことが可能でした。しかし正しい知識を持った者が行わないと患者さんの健康に害を及ぼす可能性もあります。以前は日本眼科医会が認定する「眼科検査員」という民間資格がありましたが、視能訓練士という国家資格ができたことによって現在は廃止されています。

日本で視能訓練士が生まれたのは、1971年です。この年に「視能訓練士法」が制定され、同年に第1回の国家試験が行われました。もともとは矯正訓練のみを専門に行っていましたが、のちに検査業務を行うようになると視能訓練士の需要は増加し、現在では眼科検査が視能訓練士のメイン業務になっています。

しかし、眼科医の数に対して視能訓練士は不足していると言われています。本来視能訓練士は眼科医1人に対して2人~3人ほど必要とされていますが、およそ1万3,000人の眼科医(2016年時点)に対し、視能訓練士はおよそ2万人(2020年)です。今後はより視能訓練士の領域が広がることで、さらに需要が増えると見込まれています。

外国にも視能訓練士に準ずる資格はありますが、日本と比べると学校や生徒数が少ない傾向にあります。

視能訓練士に必要とされる能力・知識

視能訓練士は人と接することの多い仕事です。医療人としての知識はもちろん、人と良好な関係を築いていくことも大切になります。ここからは視能訓練士に必要な能力や知識についてご紹介します。

コミュニケーション能力

視能訓練士に必要とされるものは、高いコミュニケーション能力です。視能訓練士は患者さんの検査を行ってデータを取ったり、視機能を回復するための訓練を行ったりすることが仕事です。正確な検査結果や訓練の効果を出すには、じっくりと患者さんの話を聞き、どうすれば良いのか、どうしてほしいのかを伝えるなど、患者さんとの間にしっかりとした信頼関係を築かなければなりません。

また視能訓練士が接するのは、患者さんだけではありません。検査の結果を医師に伝えたり、医師と相談して機能回復のプログラムを作ったりすることもあります。そのため、医師やほかの医療スタッフとの連携も大切です。患者さんとスタッフ、両方と良い人間関係を築くためには、コミュニケーション能力が重要と言えます。話を聞く能力はもちろん、説明する能力も身に付けましょう。

また視能訓練士は、子どもと接することが多い仕事です。弱視(眼鏡を掛けても視力が良くならない)や斜視(両目でひとつのものを見られない)にならないようにする訓練は、主に子どもを相手にします。子どもが訓練をしたくなる環境を整えるためにも、子どもと上手に接する能力が必要です。

正確さと根気強さ

視能訓練士には正確さと根気強さも必要です。患者さんの多い病院では、多くの方が診察や治療に通いますが、それらの検査を正確にこなし、正しいデータを医師と共有しなければなりません。患者さんの健康のためにも、的確な仕事が求められます。

また視能訓練士の仕事である回復訓練は、繰り返し行って徐々に回復させていくものです。場合によっては回復までに非常に長い時間がかかることもあります。どんなに時間がかかってもいら立たず、患者さんに寄り添える根気強さが必要です。

目に関する知識と医療の基礎教養

目の機能や疾病に関するもの、医療人としての基礎教養は、視能訓練士になるにあたって非常に大切な知識です。

また検査機器の使い方も知る必要があります。検査機器の使い方は経験を積まないと難しいものもあるため、繰り返し練習を行うことが大切です。これらの知識は専門学校や大学などで学べます。ただし、医療は日々進歩していくため、常に最新の技術を学んでいく必要があるでしょう。

視能訓練士の労働条件と仕事内容

視能訓練士は、19,210人(2015年国勢調査)おり、多くが病院や眼科などに勤務しています。日本視能訓練士協会の「視能訓練士実態調査報告書2015年」によると、国公立の医療機関に勤務しているのは33%、私立の医療機関に勤務しているのは62%、その他が5%となっています。このほかにも大学の研究機関で眼病の研究を行ったり、教員免許を取得して養成施設で後進の教育にあたったりする人もいます。

勤務形態としては、正規職員が74.8%、非常勤職員が16.3%、契約職員3.5%と、正規職員の割合が多いです。ただし、女性の場合は男性に比べて非常勤職員の割合が多くなっています。

正規職員の平均年収は405.7万円、非正規職員は216万9,000円で、ほかのコメディカル職(看護師や助産師など、医師と連携して医療を行う専門職)と同程度です。非正規職員でも、比較的安定した収入が期待できます。勤務場所別に見ると、私立大学病院が最も高い収入を得ています。

視能訓練士の9割は女性です。実際上記の調査では86.8%が女性との結果が出ました。しかし、男性の視能訓練士も年々わずかながら増加傾向にあります。年齢は20代が20.5%、30代が40.2%、40代が25.3%と約6割が30代~40代です。夜勤もなく、事務職と同じ勤務時間のところが多いため、小さな子どもがいる家庭でも働きやすい仕事と言えます。

勤務は屋内で行うため、空調がきいた快適な環境で仕事ができます。ただし検査器具を使用したり、訓練の指示を行ったりする場合には立ったまま対応することが多く、患者さんと目線を合わせる際に中腰になることがあります。

視能訓練士の仕事内容

前述したように、視能訓練士は目の機能回復訓練や検査を主な仕事内容としています。具体的には、下記の3つの仕事があります。

・視能矯正

視能矯正は、弱視や斜視にならないよう、子どもの頃に訓練を行うことです。子どもの目の状態や目の機能が異常となる原因などを考慮し、医師と相談しながら訓練プログラムを作ります。

・視機能検査

視機能検査はさまざまな検査を行い、患者さんの目の状態を正確に把握することです。検査は一般的な視力検査のほか、眼圧検査や角膜形状検査、超音波検査など非常に多くの種類があります。また3歳児健診や生活習慣病検診などで検査を行い、眼病の早期発見に努めます。

さまざまな検査を行って、それを医師に報告することは、視能訓練士の主となる仕事です。的確な検査データがあることによって、その後の治療もスムーズに進みます。

・ロービジョンケア

ロービジョンケアとは、加齢や病気で視力が落ちてしまった人にアドバイスや補助具を用意するなどして、生活のサポートを行うことです。機能検査はもちろんですが、視力が落ちたことによってどのようなことに困っているかを聞き出し、患者さんがこれまでと同じように日常生活を送れるようにします。

具体的には拡大鏡や拡大読書器などの視力を補助する道具の選定、リハビリ施設との連携、支援施設の紹介などです。

おわりに

視能訓練士は視力の弱い人を助け、また眼科医のサポートをして患者さんの目の健康を助ける、とてもやりがいのある仕事です。まだ広く知られてはいませんが、今後医療が細分化していくことによって、注目度が増す仕事になっていくと考えられています。目の医療に携わるプロフェッショナルとして、活躍が期待できるでしょう。

参考元:
視能訓練士|職業情報提供サイト(日本版O-NET)
視能訓練士になるには|公益社団法人 日本視能訓練士協会
視能訓練士とは?|公益社団法人 日本視能訓練士協会/
視能訓練士の業務内容|公益社団法人 日本視能訓練士協会
公益社団法人 日本視能訓練士協会「視能訓練士の現状と展望(2010 年) 」
視能訓練士業務と生産性|公益社団法人 日本視能訓練士協会
公益社団法人 日本視能訓練士協会「視能訓練士実態調査報告書 2015年」
視能訓練士国家試験の施行|厚生労働省
国家試験について|全国視能訓練士学校協会 事務局
よくある質問|全国視能訓練士学校協会 事務局
加盟校一覧|全国視能訓練士学校協会 事務局
視能訓練士とは|全国視能訓練士学校協会 事務局

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