ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
介護・看護・リハビリ 2021-02-16

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.28】気の合わない人がいるからと来なくなった…どう対処すれば?

介護技術だけじゃなく、コミュニケーション力や調整力などが求められる場面に遭遇することも多い介護の現場。当企画では、そんな時に役立つ「困りごとの対処法」をご紹介します。

仲の悪かった同級生がいるからと、デイサービスに来なくなったPさん。家族が心配して連絡をしてきた

自営業を長男に譲った後に体調を崩し、要介護1の認定を受けたPさん。QOL維持のためにデイサービスを週2回利用しています。自営業の傍ら、少年野球の顧問や町内会の会長、民生委員などをしていたPさん。知人も多く、デイサービスでも顔見知りの仲間との交流を楽しんでいました。

ところが、ある日の活動で小学校時代に仲の悪かった同級生Xさんに出合ってしまったそうで、その日以来、デイサービスに来なくなってしまいました。Pさんは家の中で元気なく過ごしているようで、心配した同居の長男から事業所に連絡が…。

解決のためにはどうすればよいでしょうか。ポイントをおさえながら見ていきましょう。

ポイント1:Pさん自身の問題ではない

起こっていることだけを見ると、Pさんが落ち込んでいる理由はPさん自身の問題。「来たくないなら仕方ない」と思ってしまうかもしれません。しかし、利用者のQOLの維持や心身機能の低下が生じないようにすることは、介護職の役割です。

Pさんのデイサービス利用中止を容認しても、これらを満たす手立てを講じられればよいのですが、「デイサービスで交流を楽しんでいた」というPさんの本来の状況を別の方法で提供するのは困難です。つまり、介護職としてはまず、「同級生Xさんと顔を合わせず」にPさんがデイサービスに通えるような手立てを検討しましょう。

ポイント2:Pさんの意向を確認し、解決策を提案する

まずは、Pさんや長男夫婦と話し合い、通所しなくなった理由や、今後の要望を確認しましょう。PさんのQOLや心身機能を維持するためには、何らかの形で通所できるようにすることが大前提。その上で考えられる解決策は次の3つが考えられます。

1. 同級生Xさんと顔を合わせなければ通所したい
二人が顔を合わせなくてすむように日程の調整を工夫する

2. 別のデイサービスならいってもいい
ケアマネージャーと相談し、受け入れ可能な施設を探す

3. 同級生Xさんと和解して通所したい
PさんとXさん双方の尊厳に配慮して、和解に向けて支援する

調整にあたって注意すべき2つのこと

1.Pさんの気持ち
2.Xさんに不利益が生じないこと

今回のケースでは、「自分の都合で迷惑をかけてしまう」とPさん自身は遠慮を感じているかもしれません。ですが、介護現場における問題解決の原則では、あくまでもPさんの気持ちが一番です。Pさんの思いを最優先することを伝え、寄り添いながら一緒に解決できるといいですね。ただし、ご本人の生き方に干渉しすぎないよう注意も必要です。3はPさんが希望された場合のみに限りましょう。その上で、1や3の解決方法をとるのであれば、Xさんへの配慮も必要です。Xさんに危害や不利益が生じないよう注意をしましょう。

文:細川光恵
参考:「介護現場の「困りごと」解決マニュアル」中央法規

監修

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事