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介護・看護・リハビリ 2021-05-15

介護するより感謝する、お世話するより共に生きるがモットー/介護リレーインタビューVol.12【介護士 井手雄大さん】#2

介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、介護業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。今回お話しを伺ったのは、さいたま市と東京都内に介護施設を展開する「株式会社ありがたい」社長の井手雄大さん。

前編ではファッションモデルから介護施設設立に転向した経緯、後編では一からスタートして人気の施設にまで昇り詰めたスタッフの育成方法などを伺います!

《お話を伺ったのは…》

株式会社ありがたい 井手雄大さん…介護士として介護施設で10年従事する傍ら、モデルとしても活動。介護施設でファッションショーを行うボランティアや「介護甲子園」などで注目を浴びる。2019年に「株式会社ありがたい」の取締役社長に就任。介護福祉に関わるセミナーやコンサルティングでも活躍。

現場のことはすべて各施設のスタッフにまかせるのが井手さん流

第8回「介護甲子園」でエントリー数7,812事業所の中から
「デイサービスありがたい池袋」が在宅部門で
最優秀賞に選出されたと嬉しそうに語る井手さん

―開設2年目の「リハデイありがたい浦和」も利用者さまの稼働率が高いと聞きました。その秘訣はなんでしょうか?

「稼働率予算を達成しよう」という意識は、私だけではなく現場スタッフも高く持っています。それはトップダウンではなく、社員が「やりたい、チャレンジしてみたい」が実行できる社風なので、おのずと責任感や覚悟にも繋がり、スタッフが率先して目標を達成しようと努力しているからです。

また、社員教育では「ひとつ上の役職のつもりで仕事をしてほしい」と伝えています。施設長だったら統括施設長の意識、社員だったら施設長の意識をもって取り組んでもらいます。ありがたいではスタッフが当事者意識を持っていることが稼働率90%以上をキープする秘訣かもしれません。

―ひとつ上の役職になった気持ちで仕事をしていると意識が変わりますね。

そうなんです。じつは予算も会社が決めるのではなく、現場で決めてもらっています。稼働率の予算を自分たちで決め、その目標に対してみんなで取り組んでいく、というシステムです。

―予算を現場スタッフの方が決めるのは、とても珍しいのではないでしょうか?

もともと飲食が主体の会社なので、その考え方を受け継いでいます。自分たちで決めて自分たちで達成する。そのための努力目標を掲げ、経営者の意識を持つことをスタッフ全員に意識づけしています。

―責任感も出ますし、「こんなことやってみたい」というアイデアも提案しやすそうですね。

散歩や遠足などのイベント企画もすべてスタッフが考えているんですよ。利用者の方が行きたいところはもちろんですが、スタッフが行きたいところも提案してもらいます。スタッフ一人一人のやりたいことが実現できる職場なので、スタッフも楽しんで働いてもらえています。

感謝の気持ちを忘れず、常に周りから見られている意識を持つ!

社長としての振る舞いを意識しているという井手さん。
インタビューに応じてくださる謙虚な姿勢にも、
人柄のよさが伝わってきます

―統括する立場として心がけていることはありますか?

感謝の気持ちです。日頃お年寄りと関わっているのは現場のスタッフです。そのスタッフを「元気に」「笑顔に」したいと思います。会った時には「いつもありがとう」と声をかけ、食事に誘うこともあります。

面談も2か月に1度は行っています。できるかぎりコミニュケーションの回数を増やし、何でも言い合える関係を作りたいんです。

―お仕事するうえで大切にしていることを教えてください。

楽しむことです。私たちが楽しくなかったらお年寄りが楽しいわけがありません。笑顔を忘れず、何事もプラスの解釈をして、前向きな行動や発言をするようにしています。

そのために日々、心がけていることは「信じ待ち許すこと」。代表の受け売りですが、毎日唱えています。あとは、見られている意識を持つ! 私たちリーダーは常に見られているので、スタッフのお手本にもなるよう、恥ずかしくない言動を心がけています。

―リーダーとしてご自身の成長のために何かしていることはありますか?

本を読んで知識を身につけたり、尊敬する方々と会って助言をいただいたり。いろいろなジャンルのスペシャリストの講演やセミナーへ行くこともあります。

技術より、人間としての魅力が付加価値

介護業界の課題や目標について語ってくださっている井手さん

―介護業界に課題を感じていますか?

人財の質です。介護は誰にでもできる仕事だと思われがちですが、僕は専門性の高い業種だと思っています。お世話ではなく、質の高い関わり、つまり人間力が大きく求められるんです。だからこそ人財育成(教育)が重要ですし、職場環境を整え、上長との壁のない関わりをつくっていくことが必要だと考えています。

―人材育成ではスタッフにどのようなことを伝えていますか?

介護士である前に、人として当たり前のことを、当たり前にできるようになって欲しいと伝えています。例えば、あいさつがしっかりできる、時間、約束を守る、と言ったことです。あいさつや声かけをすることができていないと、利用者の方から信頼は得られません。

―今後の目標を教えてください。

弊社の目標は、業界に良い影響を与えられる企業を目指すことです。介護だけでなく、子どもからお年寄りまで笑顔になれる場を継続的に創っていきたいと思っています。

あとは、人財育成(教育)をもっと尖らせていきます。介護の研修や勉強会だけでなく、人間力の高い魅力的な人財を育てていくことも行っていきたいです。コンサル業務や人財育成などの依頼は、今後も積極的に引き受けていきます。

―最後に、これから介護士を目指す方にメッセージをお願いします。

諸先輩方であるお年寄りから多くのことを深く学べる最幸の仕事です。私が大切にしているモットーは「介護するより感謝する、お世話するより共に生きる」です。関わったら関わった分だけ、その恩恵が返ってくる仕事なのでやりがいがありますし、利用者の方や一緒に働く仲間と心を通わせ、楽しみながら仕事ができるのも介護の魅力です。人生の諸先輩方との時間を大切に、キラキラ輝く介護士を目指してください。

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貴重なお話ありがとうございました。

施設の稼働率が高い理由は、代表の井手さんはじめ、現場スタッフの方が楽しんで仕事をしていることが、心地いいサービズにつながり、満足度の高い施設として名高いのだと感じました。

▽前編はこちら▽
ファッションショーを介護に導入した革命家! /介護リレーインタビューVol.12【介護士 井手雄大さん】#1>>

取材・文/ながいまき
撮影/石原麻里絵(fort)

Infomation

株式会社ありがたい

住所:東京都新宿区西新宿7-7-26 ワコーレ新宿第一ビル313
TEL:03-6304-0396

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