自分も楽しむことが仕事を続けていくコツ 介護リレーインタビュー Vol14【デイホーム施設長 高野 誠さん】#2
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、介護業界の魅力、多様な働き方を紹介する本連載。前回に続き、高齢者在宅支援事業を行う「社会福祉法人ふきのとうの会」の「ふきのとうデイホーム」で、施設長を務めている高野 誠さんにインタビュー。
前編では、介護業界に進んだきっかけや、施設長の業務内容とお仕事のやりがいについて伺いました。後編では、この仕事を続ける楽しさと大変さ、今後の展望についてお聞きします。
《プロフィール》
社会福祉法人ふきのとうの会 高野 誠さん…大学では教育学を専攻。社会教育主事の資格取得のため、老人福祉について学ぶ。大学卒業後、社会福祉協議会でのアルバイトを経て「社会福祉法人ふきのとうの会」に入職。2018年2月より「高齢者在宅サービスセンターふきのとうデイホーム」の施設長として勤務。
デイホームのお仕事の楽しいところ
利用者と一緒に楽しむことで、仕事全体も楽しくなる
―お仕事のなかで楽しいと思うことを教えてください。
いろいろありますけど、利用者さんが「楽しい」って言ってくださる時は、私も楽しいですね。例えば、脳トレのクイズが好きな方がいらっしゃって、テレビ番組から問題を見つけてきて出題したりするんですが、そういう風に一緒にできると楽しいですよね。みなさんと一緒に作品作りをすることも多く、一緒に作って完成した時は達成感があります。
大変なこともすごく多いですけど、「楽しい」と思って仕事ができたらいいですよね。利用者さんに楽しく時間を過ごしていただくことは、もちろん大事なことなんですけど、そのためには自分も一緒に楽しまないといけないと思うんです。
―たしかに、一緒に楽しめたほうが、お仕事自体が楽しくなりますね。
はい。それと、私たちが楽しんでいるのか、けっこう利用者さんにも伝わるんです。なんとなくやっているのか、楽しんでやっているのかで、やっぱり参加する姿勢や態度が違ってくると思います。そういう面でも、「自分も楽しむ」ということは大切だと思います。
―それは、デイホームで働くうえで必要な観点にもなりそうです。
そうですね。当会には、違う業種から転職してきた職員も多いですが、福祉以外の経験も意外と役に立つんですよ。例えば、学生時代にしていたクラブ活動での準備体操が運動の時間に使えたり、小学生のころにしていた指遊びが脳トレになったり。だから一緒に楽しめるところはあると思いますし、楽しむことでバラエティに富んだ活動もできるようになります。いろんな人が集まった方が、会としてもいいですよね。
デイホームのお仕事の大変なところ
読めない利用者の動きには、スタッフ間で意思疎通をして対応
―お仕事のなかで大変だなと感じることはありますか?
一番大変なのは、利用者さんの安全確保です。最近はコロナ対策も、その一つですよね。パーテーションを立てたり、マスクや手洗い・うがい、消毒などの基本的なことはしっかり行っています。高齢者施設のクラスターも多いですが、「ふきのとうデイホーム」ではこれまで陽性者は出ていません。そういう意味では、大変ながらも取り組んできた日頃の対策が、役立っているのかなと思います。
あとは、どうしても時間に追われてしまうところはありますね。利用者さんの動きは、読めないところがありますから、「このタイミングで?」と思うことはあります。運営するには決まった時間に動かなければいけませんし、少ない人数で対応しているので限界もあり、難しいところです。
―それは、どう対策していますか?
普段からスタッフ間の意思疎通をとることは大切だと思います。わからないことは何でも聞く。それができるような環境作りというのも、私の仕事です。抱え込んでしまうと辛くなる部分が出てきてしまうので、いいことも悪いことも共有できる人間関係ができると、意欲的に働くことにもつながると思います。
「ふきのとうの会」は、離職率が低いんです。スタッフもボランティアさんも、10年以上働いてくれている人がたくさんいます。それが、いい人間関係が築けている証だと思います。
―コロナ禍で活動に変化はありましたか?
コロナ前は、月の半分は、ボランティアさんによるプログラムの提供がありました。楽器の演奏やダンス鑑賞など、さまざまな催しがあり、それが「ふきのとうの会」の特徴でもあったんです。しかしコロナ禍で、そういうものが、まったくできなくなってしまいました。今の時期はいい気候なので、近くの公園へ外出活動もしていましたが、それも難しいです。施設内での活動になってしまうので、利用者さんには少し残念な想いをさせてしまっているかもしれません。
職員が提供する活動にはなってしまいますが、少しでも楽しんでもらえるように、いろいろ考えながら活動しています。いつものゲームでも、少しやり方を変えてみたり。また、現場の女性スタッフが、作って持って帰れるような制作物を考えてくれます。
何かご自宅に持ち帰られるものがあると、利用者さんにとっても、ご家庭でのコミュニケーションのひとつになると思います。そういったものを作ることで、活動の幅を広げています。
休日の過ごし方
きちんと睡眠をとり、愛犬たちと触れ合ってリフレッシュ
―仕事でたまった疲れは、どのようにリフレッシュしていますか?
基本的なことですが、しっかり睡眠をとることです。通勤に片道2時間かかり、どうしても朝が早くなるので、睡眠もしっかりとれていないと思うんです。なので、休日はほとんど何もしないで寝ていたり(笑)。あと、犬を3匹飼っているので、犬たちと触れ合うのも息抜きになりますね。
あとは、たまたま見ていたテレビでクイズをしていたりすると、「これ使えそうだな」とメモしたり…。自然と仕事にいかせそうなことを考えていたりします。
今後の目標と課題
しっかりコロナ対策をしつつ、もっと地域に出ていきたい
―今後の課題を教えてください。
施設長なので経営面を考えると、利用者さんを増やさなきゃいけないというのがひとつ。
ふきのとうの理念として、「地域はひとつの家族」というものがあります。「ふきのとうデイホーム」ができて9年目なので、この地域の施設としては新しい方なんです。だから、ボランティアさんや利用者さんなど地域の方と連携して、地域に根差した施設運営をしていけたらいいなと。
2年前にもっと地域に出ていこうと決めたところで、コロナ禍になってしまったので…。自分たちがやりたいことを全てできる状況ではありませんが、落ち着いたらどんどん活動して、「ふきのとうデイホーム」を知ってもらえたらいいなと思っています。
デイホームのお仕事、ここが魅力!
1. これまでのいろんな経験が役に立つ!
2. 利用者さんと一緒に楽しめばモチベーションもアップ
3. スタッフ同士の連携が円滑にいくと嬉しい
デイホームとしてより良い環境を作るため、スタッフとの連携、利用者さんの安全確保に尽力しながら、日々楽しい活動ができるように考えて施設運営をしている高野さん。
デイホームでのお仕事を続けるポイントは、「利用者さんと一緒に楽しむこと」と「わからないことは何でも聞くこと」。そう答えてくださった高野さんから、離職率が低いという「ふきのとうデイホーム」の魅力が伝わりました。これからデイホームでのお仕事を目指す方は、ぜひ参考にしてみてください。
▽後編はこちら▽
利用者の「ありがとう」のために施設をよくしていきたい 介護リレーインタビュー Vol.14【デイホーム施設長 高野 誠さん】#1>>
取材・文/山本二季
撮影/柴田大地(fort)