介護職員処遇改善支援補助金とは? 目的と取得要件について解説
介護現場の人手不足の一因でもある介護職員の賃金を引き上げるために、これまでにもさまざまな対策が取られてきました。
今回さらに、内閣府による「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」の一環として介護職員処遇改善支援補助金が設けられています。
すでに申請の締め切りは過ぎていますが、こちらでは介護職員処遇改善支援補助金についてくわしく解説します。
介護職員処遇改善支援補助金とは? どんな目的なの?
経済対策としておこなわれる介護職員の賃上げのための対策である「介護職員処遇改善支援補助金」とはどのような補助金なのでしょうか。また、どんな職種や業種で、どのくらい賃金が上がるのかも気になるところでしょう。
ここでは、介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算との違い、補助金の対象となる期間、サービス区分による交付率の違いなどを解説します。
介護職員処遇改善支援補助金とは|介護職員の処遇改善の措置のひとつ
この補助金は、介護職員処遇改善加算や介護職員等特定処遇改善加算といった従来の仕組みによる介護職員に限った賃上げ効果を維持することが前提となっています。
さらに前倒しで3%程度の賃金の引き上げを目指して、必要な経費を都道府県経由で事業所に支援する制度です。介護職員処遇改善加算とは異なり、介護職員以外の処遇改善にも充てられます。
対象職種|介護職員
さらなる賃上げ効果を狙った介護職員処遇改善支援補助金は、介護職員が対象であることに変わりありません。しかし、対象の職種を広げています。
厚生労働省の文書によれば「事業所の判断により、他の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める」との文言があるため、事業所の裁量で運用することが認められているということです。
対象期間|2022年2月~9月の賃金引上げ分
対象期間は2022年2月~9月とされているので、「この期間以降の人件費が捻出できるかどうかが気にかかる」と躊躇してしまう事業所もあることでしょう。
厚生労働省によれば「以降も別途賃上げ効果が継続される取組みを行う」とのことですので、なんらかの形で、介護職員の賃金引き上げのための処遇改善の取り組みが継続されることが見込まれます。そのため、ベースアップに充てやすいでしょう。
対象サービスと交付率|サービスによって交付率が違うので注意
提供する介護サービスなどの区分によって、介護職員処遇改善支援補助金の交付率は異なります。訪問系の在宅介護保険サービスでは0.9~2.1%、入所系の介護保険サービスでは0.5~0.8%の交付率です。
もっとも高い2.1%は訪問介護や夜間対応型訪問介護などの施設で、反対にもっとも低い0.5%は医療系事業所の短期入所となっています。
福祉用具貸与、特定福祉用具販売、居宅療養管理指導などの直に介護をおこなわない業務や要支援の利用者対象の居宅介護支援、介護予防支援は対象外です。
補助金額|1人当たり月額平均9,000円の賃金引上げに相当する額
補助金の金額は、対象サービスごとに常勤換算された介護職員の人数に応じて必要となる交付率を設定します。つまり、各事業所の総報酬に上記の交付率を掛け合わせた金額が支給され、それを各職員に割り振るということです。支給額は賃金の一定の割合となるので、職員それぞれの勤務形態にも影響されます。
1人当たり月額平均9,000円に相当する額が補助金額とはなりますが、職員の給与が一律月額9,000円引き上げられるわけではないので、誤解がないように説明する必要があるでしょう。
介護職員処遇改善支援補助金の目的とは|コロナ対策・賃上げ効果
この補助金は、内閣府によればコロナの克服や新時代開拓のための経済対策といった施策のひとつです。「未来社会を切り拓く『新しい資本主義』の起動」の人に向けた投資の強化として、位置づけられています。
介護保険事業所のような公的分野における分配を強化することで、社会の安心を確保することを目指しています。
補助金はどうすれば取得できるの? 要件について解説
介護職員処遇改善支援補助金を取得するためには、その介護保険事業所が補助金申請の要件を満たしていることが必要です。
交付を受ける前提条件である、介護職員処遇改善加算とはどのような加算なのでしょうか。ここでは、取得要件について解説します。
条件1|介護職員処遇改善加算I、II、IIIのいずれかを取得していること
介護職員処遇改善加算は、2009年度に介護職員の賃金改善のために設けられた介護保険制度の報酬の枠組みです。取得するには、職員の賃金体系の整備や研修などの要件を満たさなければなりません。
介護職員処遇改善加算にはI~Ⅴの5段階がありましたが、よりよい環境を整えるためにⅣとⅤは2019年の改定の際に廃止になりました。処遇改善加算のI、II、IIIのいずれかを取得していることが、介護職員処遇改善支援補助金を取得する要件のひとつとなっています。
介護職員処遇改善加算の算定要件とは? 5つの加算区分を詳しく解説 2019年10月からはどうなる?
条件2|原則として、2022年2月分から賃金改善を実施すること
介護職員処遇改善支援補助金を受けた場合、原則として2022年2月から賃金を引き上げることとなっています。
ただし、事業所によっては賃金規程等を定めている就業規則などの改正に時間がかかることがあることを考慮して、2022年2月分と3月分については、まとめて2カ月分の賃金改善を3月の一時金として支給することも可能になりました。
条件3|補助金の全額を賃金改善に充てるなど
介護保険事業所の職員の賃金を改善するための補助金なので、設備投資に使うなどの目的外使用はできません。つまり、補助金の全額を賃金改善に充てなければならないということです。
さらに賃金を改善した合計額の3分の2以上は、一時金などとしてではなく、基本給などで賃金のベースアップに使うことが条件となります。賃金とすることがむずかしい場合には、「決まって毎月支払われる手当」として支給することも認められているようです。
いつから交付されるの? 補助金交付のスケジュールを紹介
介護職員処遇改善支援補助金を申請する際には、通常の介護報酬や加算の申請とは異なる手続きを踏まなければなりません。
ここでは、その申請方法と補助金が交付され終わったあとに実施報告を提出するまでの流れをご紹介します。
交付方法|都道府県が対象事業所に対して補助金支払い
2022年の2~9月に補助金を上回る賃金改革をおこなう介護事業所が都道府県に申請して、都道府県が対象となった事業所へ補助金を支払います。
都道府県は、介護報酬の支払い事務をおこなっている国保連(国民健康保険団体連合会)に介護保険事業所への支払いを委託する場合もあるようです。
交付には申請が必要|各事業所が都道府県へ4月15日までに計画書を提出
交付を受けるためには、2022年4月15日までに都道府県へ申請書を提出しなければなりません。地域密着型サービスや介護予防・日常生活支援総合事業などの事業所は、区市町村に計画書を提出することになります。
しかし、介護職員処遇改善支援補助金の計画書は、これらの事業所の提出先も都道府県となっています。
交付のスケジュールを紹介|申請~実績報告書提出まで
補助金を申請する事業所は、まず2022年2月から賃金改善を実施したうえで、賃上げ開始の報告をします。次いで4月15日までに計画書を提出し、介護職員処遇改善支援補助金を申請するという流れです。
6~11月までの間に2~9月分までの補助金が支払われ、補助金の全額を受け取ったあとの2023年1月には、賃上げに関する実績報告書を提出します。報告書で要件を満たしていないと、補助金を返さなければならなくなることもあるので注意が必要です。
介護職員処遇改善支援補助金は厚生労働省がおこなう処遇改善のひとつ
この補助金は介護職員処遇改善加算を受けている事業所で、2022年2月から職員のベースアップをおこなうなどの要件を満たした事業所に交付されるものです。
4月15日までに都道府県に申請書を提出した事業所のうち、対象となった事業所に6月から11月まで補助金が支払われます。また、2023年1月には実施報告をおこなわなければなりません。
コロナ対策で賃上げ効果を狙った補助金ですが、処遇改善のための対策のひとつでもあります。申請したあとは、支給されるのを待ちましょう。
引用元サイト
厚生労働省 介護職員の処遇改善