【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.23】「リハビリ、行きたくない」というAさんに、どう対応する?
働く場所や場面、職種も様々で、介護技術だけでなく、コミュニケーション力や対応力といった人間力も問われる仕事、それが介護職。ですが、現場では「先輩に聞きたくても忙しそうで…」という悩みも…。当企画はそんな悩みに寄り添うべく、現場で起こりがちな困りごとの対処法をご紹介します。
もともと運動が好きじゃないAさん。リハビリへのモチベーションを上げてもらうには…?
転倒がきっかけで骨折したAさん。しばらく入院生活を送った後、リハビリを始めました。ですが、リハビリの時間だと声をかけても、「今日はやめとくわ。」ということがしばしば。もともと面倒くさがり屋なうえ、動くことが好きではないようです。どうして行きたくないのかを尋ねると「だってきついんだもの。」と返ってきます。
とはいえ、リハビリをしないとよくなりません。Aさんにもそう伝えますが、「自然に動いていれば歩けるようになるでしょ。」と、動きたくない気持ちが勝ってしまうようです。どういう対応をすれば、Aさんのリハビリに対する気持ちをサポートすることができるでしょうか。ポイントおさえながら見ていきましょう。
ポイント1:無理強いにならないように気をつける
もともと動くことが好きではないAさんにとって、リハビリのモチベーションを上げるのは簡単なことではありません。治りたい気持ちがあっても、苦手なことに取り組むのは大変なものですよね。やる気を起こさせようとする働きかけは、こういう方にとっては特に無理強いになりかねません。アプローチの仕方には十分に気をつけましょう。
ポイント2:リハビリの成果で得られる楽しいことを目標に
Aさんのような人の場合、「リハビリをする」ということを直接的な目標とするのは、苦手でイヤなことを目標にするということ。モチベーションが上がらないのも当然ですよね。こういった場合は、リハビリそのものを目標とするのではなく、『リハビリを行うことで得られる楽しみ』を目標にしてみてはいかがでしょうか。例えば、前々から○○へ行きたいと話している場所があったら、「○○へ行きたいって楽しみにしていましたよね。」のように、歩けるようになったら叶えられる目標に目を向けられるような声かけをしてみましょう。
「リハビリが苦手」な利用者へ言ってはいけない2つのこと
1.「いつまでも治りませんよ!」
2.「□□までに○○に行くんでしょ!」
そもそも体を動かすことがあまり好きではない人にとって、リハビリは苦行でしかありません。はたから見るとやる気がないように見えたとしても、治りたいという思いはあるはずです。モチベーションをさらに下げかねない脅しのような声かけは避ける方が無難でしょう。
また、リハビリが思うように進まなかったり、『楽しみ』が変わることもあると思います。目標はあくまでもリハビリをやり遂げるために設けたものです。最初の設定にこだわりすぎず、目標となる『楽しいこと』を、状況を見ながら臨機応変に導いてあげられるといいですね。
文:細川光恵
参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい? 介護の言葉かけタブー集」誠文堂新光社
監修
中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役
1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。