サロンオーナー兼たびびとネイリスト、アートを武器に自分らしい働き方を叶えたネイリスト・山本杏里さん

場所を選ばない働き方が珍しくなくなってきた現代。たびびとネイリストの山本杏里さんも「楽美(たび)をしよう」をコンセプトにホテル暮らしをしながら、出張ネイルを行うという新しい働き方にチャレンジをしているひとりです。

前編ではネイルとの出会いやサロンと出張ネイル2つの形態で働くメリットなどを伺います。出張ネイルは独立したての山本さんにとっても、おうち時間を豊かにしたいお客さまにとってもメリットのある形だったそうです。

今回お話を伺ったのは…
山本杏里さん

ネイリスト
大学卒業後、約1年間ワーキングホリデーの制度を利用し、カナダに留学。現地のネイルサロンで技術を学び、ネイリストとして勤務する。その後ロサンゼルスでのアパレル勤務を2カ月経験してから日本に帰国。帰国後はオウンドメディアを運営するベンチャー企業に就職する。1年弱正社員として働いた後、勤務形態を契約社員・派遣社員に切り替え、勤務時間を調整しながらネイルの勉強を本格的に始めると同時に、出張ネイルを開始。2019年には原宿に自身のサロン「Our Jam」をオープン。個性的なデザインや細かなアートを得意とする。現在はホテル暮らしをしながら、サロンと出張の両方でネイリストとして働いている。
Instagram:@anri_nailart

1対1のコミュニケーションに魅力を感じカナダでネイリストの第一歩を踏み出す

カナダのサロン時代に指名していただいたカナディアンのお客さまと。

————カナダでネイリストとして働かれていたとのことですが、きっかけは?

大学での就職活動が始まり、将来を考えたときに自分が自信をもってできることが何もなかったんです。旅行が好きで国際的な仕事をしたいと思っていたので、自分の価値観や視野を広げるため、また英語力を身につけるためにワーキングホリデー制度を使って1年間カナダに行くことにしました。

コネクションがとくにない場合、ワーキングホリデーは行った先で自力で仕事を探すのが一般的。そこでたまたま見つけたのが未経験でも働くことのできるネイリストの募集でした。ネイリストという仕事は1対1でじっくり人と話せるイメージがあったので、多くの人とコミュニケーションが取れて、英語の勉強にもなりそうだと思い、応募することにしたんです。

————珍しい出会いですね。ネイルの勉強はそれまでされていなかったんですか?

はい。大学は経営学部だったのでまったくの未経験でした。そこではサロンに就職して約2週間、トレーニング費用の2、3万円を支払って技術を習得します。日本と違い、カナダはワンカラーが主流なんです。そのため、それさえできればあとは実践して覚えてという形で、お客さまを対応しながら技術を身につけていきました。1年弱で英語もネイルの技術も身につけられてよかったです。

ワーキングホリデーについての具体的は奮闘記は山本さんのブログから読めます→ https://www.anjam.jp/2019/12/28/post1/

原宿のサロンと出張ネイルを両立することでお客さまが増加

細かなアートもすべて手書き。
どんなアートも受けつけているとのこと。

————現在「たびびとネイリスト」という肩書きでご活躍されていますが、出張ネイルを行う理由を教えてください。

日本に帰ってからはネイリストではなく企業に就職して広告営業の仕事をしていました。そんななか趣味で友達にネイルをしていたのですが、その時間が楽しくて、友達もすごく喜んでくれたんです。それがうれしくて、もっとネイルが上手になりたい、仕事にしたいという想いが強くなり、独立を決意しました。しかしいきなりネイル1本で仕事をしていくのはリスクがあります。そこで営業の仕事は分量を減らして続けつつ、自分のペースでネイルの技術を磨いていくことに。イレギュラーな働き方だったので自由に動ける出張ネイルという手段を選んだんです。私にとっては場所代がかからない、お客さまにとっては交通機関を使わずに家に来てもらえるというお互いにとってメリットのある方法でした。

————原宿にサロンを持った後も出張ネイルを続けるのはなぜですか?

出張ネイリストは珍しいみたいでお客さまに好評だったからです。さらにコロナ禍になりおうち時間を大切にする人が増えたことで、ますます需要が高まってくるのではと思い、継続することに。ネイルサロンに所属する働き方はカナダで一度経験しましたし、自由に働きたいという気持ちがあったので、サロンに所属する選択肢はありませんでした。私自身いろいろな場所に行くのが好きなので、この働き方はとてもあっていると思います。遠いところでは名古屋まで出張に行ったことも。今後も活動範囲を広げていきたいです。

————サロンと出張、2つの働き方をすることでのメリットは?

まず、サロンという拠点がひとつあることは心の支えになりました。お客さまも住所があったほうが安心できるようです。さらにサロンは原宿というアクセスのよい場所で、仕事帰りにも来ていただけますし、美容サロンが集中している場所なので「今日は美容デーなんです」と美容院やエステをはしごして来てくださる方もいます。

また新規のお客さまのなかには他人を家に呼ぶことに抵抗感を感じる方もいらっしゃいます。そのため最初はサロンに来てもらって、ある程度距離が縮まってからじゃあ家でゆっくりしながらやりますか、とご提案の幅が広がったのはいい点ですね。その結果集客につながり、収入が安定しました。

日本人の繊細さが活きるアートを強みに集客に成功

カナダのネイルサロンで働いていたときのサロンメンバー。
サロンには7カ国のスタッフが集まる。

————拠点を持たない最初の頃はどのようにして集客を行なっていたのですか?

最初はすごく苦戦して、全然人が集まりませんでした。口コミで徐々に広がっていった感じです。とくにほかのサロンにはない個性的なデザインが話題になり、お客さまが増えました。私はどんなアートでも対応できることを売りにしているので、そこで評価をいただけたのだと思います。最近では日本酒の銘柄を爪に施して、それを投稿したお客さまのインスタグラムにかなりの反響がきているようです。

————メニューの設定はどのようになっているのですか?

シンプルに180分で1万円(リピーターさんは当日次回予約で9,000円)、そこから30分延長につき1,000円いただく形態にしています。時間以内ならどんな希望も受けつけており、アートで制限を設けていません。そのためお客さまは遠慮なく希望を伝えられるようで、みなさん仕上がりに満足してくださっていると思います。サロンに所属していたらそのお店のカラーだったり、アートの追加料金だったりいろいろ制約があるので個人でやっているからこそできる設定ですね。

————アートに力を入れる理由は?

カナダで働いていたネイルサロンのスタッフが多国籍で、中国やベトナム、ロシアなど7カ国の人がいたんです。いろんな国のネイリストを見たときに日本人ってすごく繊細なんだと改めて気づかされました。日本人の繊細さとホスピタリティと根気強さ、それを一番活かせるのはアートだと思い、日本人ネイリストとして技術を極めたいとそのときから思っていたんです。いつかは世界に日本のアートのすばらしさを伝えたいと思っています。

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自分にあった仕事を見つけるための極意

もともと絵を描くことや人とコミュニケーションをとることが好きだったという山本さんにとって、ネイリストは自分らしく働ける最高の職業だったようです。自分にあった仕事を見つけるための極意をまとめると以下の3つでした。

1.迷ったときは価値観や視野を広げるため新しいことにチャレンジする

2.自分のペースで働ける方法から始めてみる

3.ほかの人にはできない自分の強みを見つけて技術を極める

カナダに行くことで人生に大きな変化があった山本さん。迷ったときや理想の働き方が周りにないときは、既存の考え方にとらわれず自ら道を切り開く行動力がとても印象的でした。

後編では旅行好きという山本さんの旅と美容を掛け合わせたあらたな挑戦や、ホテル暮らしをしながら仕事を続ける目的などについてお伺いします。

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Salon Data

Our Jam
住所:東京都渋谷区神宮前2-6-17 ARAビル1F スタジオサンシード

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