suiの技術を伝承するには何が必要なのか、これが経営を継続させるポイント Sui代表 冬木慎一さん #2
起業から5年経っても経営を続けているのは15%という厳しい数字があるなか、順調に数字を伸ばしているサロンにその秘訣を伺うこの企画。前編では予約が取れないほど人気のサロン、Suiの代表を務める冬木さんに起業したきっかけや経営が軌道に乗るまでのお話をご紹介しました。後編では、これからSuiをどのように発展させていくのか、そのために心がけていることなどを伺います。
お話を伺ったのは…
Sui 代表 冬木慎一さん
2002年に高津理美容専門学校を卒業後、都内の大手サロンに入社。そこで順調にキャリアを形成して店長、アートディレクターを歴任。2015年サロンの倒産により退社し、同年表参道にSuiを立ち上げる。現在はサロンワークのかたわら撮影の現場でヘアメイクを担当したり、美容師外部講師として講義をするなど、美容業全般に携わって人の美しさを探究している。
人気は続かない。だからこそ「次」が重要
──suiの店舗は表参道だけでなく、奈良にもできたのですね?
実は前のサロンに勤めていたころから奈良に店を出したくて、ようやく実現しました。
自然に囲まれたなかで、最先端の美容が体感できる…そんなライフスタイルがあってもいいと思っていたからです。コロナ禍の真っ只なか、一人で半年間かけて立ち上げてきました。今まで僕1人でやってきたように見えて、実は常にサポートしてくれる人がいたのですね。アシストしてくれる人が誰もいない状態で作業する辛さをしみじみ感じました(笑)。オープンしたときは、毎晩12時近くまで仕事をしていました。今はアシスタントを連れて1か月のうち10日間は奈良、他の日は表参道で仕事をしています。
月に10日間しか開けていないので、ご近所の方は「ここは一体何をやっているんだ?」と思っているでしょうね(笑)。今年22年5月からは別のスタイリストが常駐するので、期間限定のサロンではなくなる予定です。
──奈良と表参道の両店舗を掛け持ちするのは大変ですね。
奈良では10日で100人のスタイリングをこなしています。奈良でアシスタントを務めるのが、以前「海外に行くから辞める」と言って一時期、店を離れていたスタッフなんですよ。人の縁は不思議なものですね。僕はこれから10年を目標に奈良と表参道を行き来して、美容師を育成していきます。関西でもヘアメークの仕事をする予定です。関西では美容院とヘアメークを両立しているところがないので、この強みを生かして育成に力を入れたいですね。
──まさに順風満帆ですね。
前のサロンで学んだことですが、「流行」や「新しいこと」に注目は集まりますが、3~4年も経つと廃れてしまうもの。そこからが正念場だと思います。スタッフを成長させるには、彼らにも売上を伸ばす機会を与える必要があります。僕1人が売上をつくっていても、業績は上がるかもしれませんがスタッフの成長は望めません。
──スタッフが売上を伸ばすために、どんな工夫をしていますか?
僕たち幹部はお客様の予約を平日に入れるようにして、お客様が集中する週末は他のスタッフが働けるようにしています。ただ僕たちの目が届かないと、技術的なことやサービスのことで「これはSuiらしくない」ということが起こります。どんなに些細なことでも、共通の意識を持つように話し合い、注意するようにしています。
今後はフランチャイズや支店も視野に
──これからのSuiをどのようにしていくのか教えてください。
スタッフがどんどん増えて、成長していくのは自然なこと。スタッフが活動する場をつくるのは必要です。最初に「店舗」ありきで支店を増やすことはしたくありません。‘21年にオープンした東京店は同じビルの1F部分なのですが、オープンから一緒に立ち上げに参加してくれた若手メンバーに任せることにしました。若手から意見が出ると、会社の活性化になっていい刺激になっています。まだまだ結果は出ていませんが、「成果が出るまでの努力が面白いんだよ」って言いながら励ましています。
──将来はフリーランスになりたいとか、撮影の仕事を中心にしたいとか、スタッフのみなさんにも夢がいろいろあると思います。
ミーティング以外にも、スタッフと話し合う時間をつくって意見や希望を聞くようにしています。「のれん分け」だったり「フランチャイズ」だったり、選択肢の数は多い方がいいですよね。スタッフにやりたいことがあるなら、応援したいと思っています。
──Suiを立ち上げて、冬木さんが嬉しいと感じることは何ですか?
スタッフの売上が上がったことですね。僕だけでなく他のスタッフにもヘアメイクの仕事が入るようになり、一人前の美容師として仕事をするようになりました。Suiの看板を背負ったスタッフが活躍していることが嬉しいです。これから長い年月のうちにSuiの名前が消えてしまったとしても、人材育成のカリキュラムやSuiの技術が残ってくれたら、それで本望です。
──事業を継続させることはとても難しいこと。その秘訣は何でしょうか?
代表が何をしたいのかが問われると思います。だからこそ、僕は機会があるごとに、接客に必要なことや技術的なことをスタッフに伝えています。Suiを選んでくださったお客様に「イメージと違う」と思われてしまうのは避けなくてはいけません。
僕たちは有名人のヘアメイクもしますが、相手がタレントだから、一般の方だから…という区別はしません。どんな方だろうと「美しくしたい」という想いは変わりません。スタッフにも接客に差をつけないように伝えています。
僕が伝えたいこと、やって欲しいこととスタッフが感じていることにズレがないように、いつでも会話できる関係性を築くことが大事だと思います。あとは、未来がどれくらい見えているか…でしょうか。自分が思い描いている未来をスタッフが理解し、一緒に歩んでいけるのかが問われると思います。
事業を継続させるために必要な3つのポイント
1.接客や技術のクオリティを下げないように絶えずチェックする
2.スタッフの意見や要望を聞き取り、モチベーションを上げる
3.順調な時こそ油断をせず、「次」を考えて戦略を練る
Suiというブランドを慈しむのと同じように、スタッフ1人1人のことを真剣に考えている冬木さん。お客様の肩書きや職業にこだわらないのと同じように、スタッフに対しても在籍年数に関係なく真摯に向き合うことを信条としているとか。Suiの揺るぎない人気の秘密は、あらゆるシーンで「人」を大切にしていることにあるようです。
Salon Data
Sui 表参道本店
住所/東京都渋谷区神宮前4-1-20神宮前フォレストビル3F
TEL:03-6455-5802
東京店
住所:東京都渋谷区神宮前4-1-20神宮前フォレストビル1F
電話:03-6812-9712
URL:https://sui-beauty.net/salon/tokyo
奈良店
住所:奈良県生駒市小瀬町100-1
電話:0743-61-5616
URL:https://sui-beauty.net/salon/nara