「良いサロンを自分で探せる知識力」が身に付くチャンネルを目指して【YouTuber のべちゃん】#2
脱毛知識においては右に出るものはいないと言われる、美容系YouTuber・のべちゃん。エステティシャン・トレーナー・インストラクターとしての経歴に裏打ちされた信頼性の高い情報には、日々多くの女性たちからコメントが寄せられています。前編では、お客様目線を大切にしていた現役時代と同じように、YouTubeでは視聴者からの悩みや疑問を吸い上げ、動画づくりに反映させていることを伺いました。
後編では、自身の発信によって脱毛情報の質が変化してきていること、忖度なし=中立な姿勢を貫く理由、悪徳クリニックや脱毛広告の撲滅運動についてお話しいただきます。
教えてくれたのは・・・
のべちゃん
トータルビューティーエステサロン勤務後、大手脱毛サロンに転職し、トレーナーとして新人教育を担当。その後、美容インストラクターとして全国や海外のエステサロンやエステティシャンの教育・コンサルタントに携わる。2020年4月に独立し、自身のチャンネル「【のべちゃんねる】Beauty room♪」を開設。登録者数は約9万人(2022年3月現在)。「脱毛相談室」「美容&医療脱毛調査シリーズ」「施術者あるある」など、お客様と施術者双方の立場で発信している。
【のべちゃんねる】Beauty room♪:https://www.youtube.com/channel/UCLtGjUw65C5r7Snzw2HukPA
噛み砕いた情報提供により、視聴者の知識レベルが爆上がり
――やはり再生回数が伸びる動画は「VIO脱毛」ネタが多いのでしょうか?
んー…チャンネルを開設したばかりの1年半前は、まだYouTubeにはVIO脱毛の動画が少なかったので、プロの私が発信することでかなり注目されました。今は逆に、私がVIO脱毛の動画を投稿しすぎたために、そこまで再生回数が伸びなくなっちゃって(笑)。自分で自分の首を締めてしまった気がします(笑)。
でも、裏を返せば、それだけ一般市場でVIO脱毛の知識が広まったということでもあるので、自分がそこに貢献できたかなと思っています。
――VIO脱毛の知識が一般化してきたとのことですが、脱毛にまつわる情報の質も以前と変わってきた感じはありますか?
めちゃくちゃ変わりましたね。良くも悪くも、私のおかげかなと(笑)。なぜなら、普通なら専門スタッフしか知らないようなレベルの情報を、一般の人でも理解できるように、なるべく専門用語を使わずに噛み砕いて発信してきたので。
視聴者さんからの質問のレベルもかなり上がりました。昔だったら、例えば「VIO脱毛に行く前は事前に毛を剃るんですか?」というレベルだったのが、今では「この理論でいうと、〇〇式脱毛って効果ありますか?」というレベルに(笑)。
「良いクリニックやエステサロンを自分で探せるように知識を身につけてもらう」ということがこのチャンネルの目的の一つでもあります。知識がないばかりに、悪徳クリニック・エステサロンに丸め込まれてしまうのは私は嫌なので、みんなの知識力が上がっていることは嬉しいですね。
――クリニックやサロンに丸め込まれないために、という視点で動画を上げているのは面白いですが、ビジネスとしては中々難しいラインですね。
そうですね。クリニックやエステサロンを敵に回すつもりは全くないんです。私はあくまで中立の立場でいたい。消費者側の方が弱い立場になりやすいですが、インストラクター時代に全国のクリニックやサロンのコンサルに携わり、誠実に頑張っているところもたくさんありました。その苦労も知っているので、必要以上に向こうを悪く言うことはしたくない。そのバランスを上手く保ちながらやっています。
「脱毛広告の撲滅運動」で広告の質を変えた
――「実際にクリニックに行ってみた」という体験動画では、メリット・デメリットの両方を伝えていることにも中立さを感じます。
大抵は先方から「うちのサロンを紹介してほしい」という依頼をいただくのですが、お引き受けする前に「メリットだけでなくデメリットも伝えますが、それでも大丈夫ですか?」と必ず許可を取っています。
ちなみに、私が絶対に答えないと決めている質問があるんです。それは「どのクリニックやサロンが一番良いですか?」という質問。これ、かなり多いんですよ。でも、人それぞれ感じ方は違いますから、「最後は自分で決めるのが大切。情報や知識は提供しているから、自分で選べるよね?」というスタンスを貫きます。嫌な思いをするのも、お金を払うのも全部自分自身ですからね。
――「悪徳クリニックの実態を暴露する」という動画も勇気がいったと思いますが、なぜ投稿しようと?
クリニック名を出していないので、見る人によっては中途半端な情報だったかもしれませんが、「こういうクリニックもある」という情報を知っているのといないのとでは、カウンセリングへの臨み方は変わってくるんじゃないかなと。例えば、医療クリニックで契約する際に「施術スタッフは全員看護師ですか?」と確認できるわけですから。
一般の方以外にも、現場の看護師さんやエステティシャンさんにも動画を見ていただいているようで、「教科書だと思っている」というメッセージをいただくこともあります。ある意味、現場で働く方々にもプレッシャーをかけてしまっているかもしれませんが(笑)。
――「脱毛に通っていないと彼氏にフラれる・バカにされる」というタイプの脱毛広告に対して物申す動画もかなり共感を得ているようですね。
実際、私自身も過剰に自己肯定感を下げるような脱毛広告に対してはちょっとおかしいよな…と思っていたんです。
視聴者さんからの反響も大きかったですし、「のべちゃんのおかげで広告の質が変わってきた」というお声もいただきました。「彼氏にフラれる・男の子に笑われる」という設定が多かったのが、今では「お肌すべすべになってもっと可愛く見えるね!」に変わってきたみたいです。
広告制作サイドからもコメントをいただいたんです。「つくりながら正直おかしいとは思っていました。動画の意見を今後参考にさせていただきます」と。
現役時代のように、自身のキャラクターも好きになってもらいたい
――これから挑戦してみたいことはありますか?
チャンネルとしては「のべちゃんが好きだから、美容以外のことも知りたい」と思ってもらえる人が増えたら良いなと思っています。今はまだ単純に美容の知識を知りたいという人の方が多いと思っていて、もちろんそういう理由で見てもらえるのも嬉しいのですが、私自身のキャラクターも少しずつ好きになってもらいたい(笑)。
あと、エステサロンから「新人研修をしてほしい」というオファーもいただくんです。若手のモチベーションが上がるような話をしてほしいということなのですが、それなら私の得意分野なので、やってみたい気持ちはありますね。
――YouTuberとなってからも現場スタッフのお悩み相談を受けてきましたもんね。そんなのべちゃんから、最後に美容従事者の方々にメッセージをお願いします。
美容業界って離職率が高い業界と言われると思うんですが、『辞めたい』と思った時に、「ただ辛いから辞めたい」と突発的な感情で動かないことは大事だなって。私が向き合ってきた若手エステティシャンには「辛い」というざっくりとした感情で辞めてしまう人がかなり多かったんですよ。辛いのは分かったけど、「何が辛くてやめたいのか」という理由を自分自身でハッキリ明確にしてから次に行かないと、結局同じことを繰り返します。『自分にとって何が働く上で1番大事なのか』を理解することは、美容業界で働く上で大事なポイントになるはずだから、そこをしっかり考えてみてほしいです! 楽しむのが1番です〜!
信頼される美容系チャンネルにするには?
1 一般の人でもわかるように、専門知識をなるべく使わず、噛み砕いて説明する
2 メリットとデメリットの両方を伝える
3 自分の意見を押し付けず、最終的には視聴者に選ばせる
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄