【美容師あるある】周囲が見えていなかった一年目。技術「以外」の大切さに気づいた【GARDEN W. トップアシスタント 中村大海さん】#1
美容業界でよくあるお悩みや課題にフォーカスする本企画。今回は、アシスタント美容師の「困った」に向き合います。今回、取材させていただいたのは「GARDEN W.」のトップアシスタント・中村大海さん。スタイリストたちにとって頼れる右腕である一方、後輩アシスタントをまとめる存在でもあります。そんな中村さんの一年目の頃は、技術のことでいっぱいいっぱいで、「気配り」が後回しになってしまっていたと言います。
前編では、接客中に先輩に注意されたことで気配りの意識が芽生えたこと、サロンワーク中の立ち回り、オフでの先輩付き合いについてお話しいただきました。
教えてくれたのは
GARDEN W. トップアシスタント 中村大海さん
アシスタント3年目。デビューを目前に控える、GARDEN期待の若手。誠実な接客スタイルと、謙虚な人柄、体育会系のメンタルで、お客様と先輩の双方に愛される。Instagramのフォロワー数は2万人越えで、ショート・ミディアムヘアを得意とする。
美容師の接客中の失敗:目の前の技術をこなすことに必死で、周囲に対する気配りが足りていなかった
――接客中の失敗はありましたか?
一年目のときは技術面での失敗もたくさんありましたが、それ以上に周囲への気配りができていないことの方が課題だなと思っていました。
はじめて実践でやる技術の場合は緊張してしまうことも多くて。目の前の技術を全力でこなさなければいけない一方、他のお客様もスムーズに回さなければいけないので、テンパるんですよね。うちみたいな大型サロンだと、インカムをつけているため色々な情報が入ってくるので、余計焦ってしまう(笑)。手元だけに集中しすぎて、周囲を見れていなくて先輩に注意されることも結構ありました。今は、できるだけ平常心を心がけるようにしています。早くやらなきゃと思っちゃうんですけど、焦りは厳禁。時間がかかっても良いから落ち着いて、丁寧にやることがまず大事かなと思います。
――どのくらいで落ち着いてこなせるようになりましたか?
一年目は毎日ずっと注意されていました(笑)。しかも、僕が入社したのはコロナ禍になった最初の年だったので、サロンワークで接客に入らせてもらったのは9月くらいからだったんです。だから、一年目は一瞬で終わってしまい、二年目で必死に遅れを取り戻し、三年目になってようやく注意されなくても一人で考えて動けるようになった感じですね。
――中村さんは、お客様とお話しする際にどんなことに気をつけていますか?
素を出すことですかね。というか僕、つくり笑顔とか苦手なんです。
あと、来店予定のお客様の情報をきちんと予習しておくことも大事。2回目以降の来店の方は前回のカルテを見たり、担当スタイリストに聞くなどしています。
お客様の方は結構覚えているので、前回も僕がお手伝いさせていただいたのに、「はじめまして」の体で入っちゃうと残念な気持ちにさせちゃうじゃないですか。逆にこちらが少しでもお客様のことを覚えていれば喜んでいただけるので、サロンワークが忙しい日でも、朝のうちに「今日はどんなお客様が来るのか」「前回はどういう施術をしたのか」「どんな会話をしたのか」を全員分頭に入れるようにしているんです。
――スタイリストだけでなく、アシスタントにも覚えてもらっているというのは、お客様からしたらすごく嬉しいと思います。
担当スタイリストのDMにお客様から「アシスタントの中村さんがとても親切でした」というメッセージが届くこともあるみたいで、嬉しいですね。
美容師の人間関係:プライベートでも先輩と一緒に過ごしていれば、接客中も盛り上れる
――先輩から受けた指導の中で、印象に残っていることはありますか?
技術のことより、やっぱりお客様への気遣いのことですね。営業が忙しくなると早く作業をこなさなければと焦っていましたし、技術を早くこなすことを第一に考えていたのですが、「技術に集中するためには、お客様に関わっていない時間でいかに完璧にこなすかが大事だよ」と先輩にはよく言われていたんです。
カラー剤をつくる時間だったり、クロスを準備する時間だったり、常に1歩2歩先のことを読んで、スムーズに準備に入れるように意識することも大事なこと。準備がおざなりになると結局サロンワークが上手く回らなくなるし、最終的にお客様に不快な気持ちにさせてしまいます。技術だけできれば良いのではなく、お客様に見えない部分でどう動くかもよく考えなければいけないのだと気づかされました。
――サロンワーク中、担当スタイリストのもとで動く上で気をつけていることはありますか?
忙しいときは単語で指示されるときもあるのですが、それでわからない場合は何回も聞きます。僕、ほんとよく聞き返す方で。聞き返しにくいな…という気持ちはありますが、そこで絶対に折れちゃいけない。逆に負けないようにこちらも強気でいきます(笑)。
――施術中、スタイリストに話しかけるタイミングも難しそうです。
お客様とめっちゃ盛り上がっているときはあまり入らないようにはしていますが、こちらが聞くに聞けないままだとサロンワークが止まってしまうので、そこもやはり強気で(笑)。お客様に対して「失礼します」と言って入り、出るときも「ありがとうございました」と言って出るようにすれば意外に大丈夫です。逆にそろ〜っと入ろうとするとお客様も「何この人…」と感じてしまいますし、メリハリをつけて入った方がお客様も安心感があるんじゃないかと。
――先輩と良好な関係を築く上でのコツはありますか?
このサロンは先輩・後輩関わらず仲が良く、営業終わりにみんなでご飯に行くことも多いです。僕もそういうときは毎回断らないし、断りたいと思ったこともありません。先輩たちがフレンドリーにしてくれるので、昔ほど食事の場での礼儀は厳しくないですし、最低限の「気配り」ができれば大丈夫。
今年の夏は休日にみんなで花火大会に行ったり、後輩も交えてBBQをしたりしました。プライベートでも先輩と過ごしていると、営業中に一緒にお客様に入るときも盛り上がり、楽しんでもらえると思うんです。だから、日頃から先輩たちとご飯に行くことは大事なことかなと。
あとは、仕事の場面で先輩に注意されたときは「すみませんでした」と素直に謝ることが大事。僕は今トップアシスタントの立場にありますが、一年目の後輩を見ていると、「これ教えてください」と前のめりに来る子には、こっちからも色々教えたいという気持ちになります。逆に何かを教えても反応があまりない子だと、こっちから話しかけづらいかも…。素直にレスポンスする方が先輩も伝えやすいし、話しかけやすいのかなと。
アシスタントが接客と先輩付き合いで気をつけたいポイント
1. 一年目は技術の向上より先に、お客様への「気配り」を学ぶ
2.接客に入る前は必ずカルテを見て、お客様の前歴を頭に入れておく
3.プライベートで先輩と仲良くすれば、接客中も盛り上がり、お客様を楽しませられる
取材時の雰囲気から、中村さんが日頃から先輩たちに可愛がられていることが伝わってきました。ノリの良さ、人懐っこさ、持ち前のコミュ力もあると思いますが、技術に対する向上心と努力する姿もきっと関係しているのでしょう。後編では、中村さんの技術練習に対する心構えと、社会人マナーについて教えていただきます。
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄