一生できる仕事を探し、美容師に。「提案型」と「次回予約」に注力して多数の指名客を獲得【美容師 鈴木恵子さん】#1

個室型美容室GULGULの鈴木恵子さんは、少しユニークなキャリアを持つ美容師です。会社勤めや自営業、専業主婦を経験したあと、子育てしながら美容師免許を取得。いずれは独立して一人美容室を開くという目標を持って働き始めました。今では店でトップの指名数や売り上げを誇る人気スタイリストとして活躍中。

前編では、子育て中に美容師を目指した理由や働き方のこだわり、指名のお客様を増やすために工夫したことなどをお聞きしました。

お話を伺ったのは…
GULGUL libera
トップスタイリスト 鈴木恵子さん


子育てをしながら32歳で美容学校入学、35歳で美容師免許取得。現在勤めるGULGULでは入社7ヶ月で月間指名100人を突破。週4の時短勤務、日・祝休みでも売り上げや店販の数字を伸ばし、社内のミセスコンテストでは1位に。30代〜40代のお客様支持率ナンバーワンを誇る。2020年からはドライヘッドスパ専門店「王様の昼寝」の経営にも携わる。一人息子は中学3年生。

30代で一念発起し、美容師を目指す

美容師資格取得のために学び始めたのは、子どもが幼稚園に入ってから。「1学期のうちは子どもが体調を崩しやすいと聞いていたので、様子を見て夏休み明けからスタートしました」(鈴木さん)。

――子育て中に美容師を目指したのはなぜですか。

もともと高校生のときに美容師になりたいと思ったことがあるのですが、家庭の事情などで難しく別の仕事に就きました。そこから結婚するまで、化粧品関係やホテル、自営の配送業などさまざまな職を点々と。妊娠を機に、3年は子育てに専念したくて仕事を辞めました。

子どもが3歳になったら働くつもりで、いろいろな仕事をリサーチしたのですが、私のまわりには何かの資格や技術を持っているママ友が多かったんです。彼女たちが良い条件で仕事に復帰していくのを見て、すごく憧れて、私も一生できる仕事を見つけたいと思いました。
そのときに、高校生の頃になりたかった美容師を思い出し、専門学校を探したら通信制で学べるところがあって。夫と自分の母親に相談したら、賛成してもらえました。母には、「私もまだ若いから協力してあげられる。やるならやりなさい」と言われましたね。

――専門学校ではどのように学ばれたのですか。

まず、面倒を見てもらう美容室を自分で見つけなければいけませんでした。そこで接客や技術を学びながら、学校の教材でも勉強して試験を受けるという感じです。

そのとき私が目指した働き方は、夫や子どもに迷惑をかけないというのが前提。週3回で、子どもを幼稚園に送ってから働ける11時〜16時勤務で美容室を探しました。が、そんなお店はもちろんありません。感覚がズレていたんでしょうね(笑)。
結局は知り合いの美容室の協力で書類を準備して、とりあえず入学。その後もダメもとでたくさんの美容室に電話をかけ続け、とあるお店にOKをいただいて。昼間は働き、いったん帰って子どもを寝かしつけたあと20時半〜23時くらいまで練習をするという生活が始まりました。

――それは、かなりハードですね…。

子どもはいつもスムーズに寝てくれるわけではないし、私が出かけるのを察知して追いかけて来たり。正直かなり辛くて、間違えた道を選んでしまったのでは…と泣いたことも。でも専門学校のお金を払ってしまっているので、絶対資格を取らなきゃと思って耐えました。

半年ほどお世話になり、シャンプーができるようになったタイミングで2軒目の美容室に移りました。そこは、「勤務時間内で育ててあげられる」と言ってくださったんです。9時半に出勤して11時まで練習、11時〜17時まで仕事というタイムスケジュール。メイクのタッチアップや化粧品販売も行なうサロンだったのですが、実は以前、化粧品メーカーの美容部員を5年ほどしていたので、その経験を活かすことができました。

――アシスタントをしながら練習も子育ても…というのは、かなり大変だったのでは。

それが、すごく楽しかったんですよ!少しずつ自分が進化していくというか、成長していく手応えがあったので。カラーが塗れるようになった、パーマが巻けるようになった、とステップアップしていくのが嬉しかった。自主的にお休みの日に練習をさせてもらったり、いろいろな講習会に参加させてもらったりもしました。大変は大変でしたけど、今振り返れば、一所懸命だったな、楽しかったなという感じがします

――その間、ご家族と協力したことや工夫はありましたか。

子どもの幼稚園の送り迎えを分担するなど、自営業の夫と連絡を取り合いながら体制を整えていました。帰宅してから夕飯を作るのが難しかったので、朝のうちに準備しておいたり、休日におかずを作り置きしたりと、時間の使い方を工夫しましたね。

店内最速記録で指名100人を達成

GULGULの面接時、「いずれ独立して一人美容室をしたいので、たくさんお客様をつけられるように育ちたい」と正直に伝えた鈴木さん。その目標に向かって着実に前進中。

――30代半ばでスタイリストデビューされたんですよね。

4年のアシスタント期間を経て、36歳でスタイリストデビューしました。その頃すでに、いずれは独立したいという思いがあったので、とにかく自分のお客様を獲得するのが第一目標に。私が学ばせていただいた講習会の講師の助言で、「提案型」と「次回予約」という2点に注力しました。

ただ、デビューしたての私はなかなか女性のお客様を担当させてもらえず、このままでは自分がなりたい美容師になれないと感じて。そのほかの問題もあり、スタイリストとして丸1年働いてから今のお店に移ることになりました。

――GULGULに決めた理由は何ですか。

社長のブログが決め手でした。「社員には、家族として一生働いてもらいたいと思っている」と書かれていて、とても共感できたんですよね。そこにたまたま、1軒目のお店でアシスタントとして一緒に働いていた人がいたんです。その人に電話をして「GULGULってどう?」と聞いたところから、社長とFacebookでつながり、トントン拍子で面接してもらうことに。

採用が決まったとき、社長には「1年後には100人の指名を持つ美容師になっているから」と言われて、「単価にこだわらず、来店率を上げなさい」と具体的なアドバイスももらいました。

――そのときは時短勤務だったんですよね。

子どもがまだ小学3年生くらいで、私としては一緒にごはんを食べる日をなるべく作りたいと思い、勤務は週4日。お客様が切れたら帰るというパートタイムで働き始めました。ただ、新規入客を優遇できるのは最初の1年間とも言われていたので、結局20時くらいまで店にいることも多かったのですが。

カットモデルに協力してくれたママ友がそのままお客様になってくれたり、前のお店のときのお客様が来てくださったりしたので、GULGULで働き始めたときは20〜30人ほどの指名がありました。そこから少しずつ数字を伸ばして、週4時短勤務でも7ヶ月で月間指名100人を達成。それが、GULGULで最速記録だったんですね。緊急事態宣言時を除けば、その数字はずっとキープしています。

私自身、目標を達成するのが楽しくなってしまって(笑)。「次は200人を目指そう」「次は売り上げ300万を目標に」など社長からお題をもらい、それらをクリアしていきました。

――次回予約をしてもらうために、どんな工夫をしましたか。

まずは全員に「次の予約を入れておきませんか」と言ってみること。その際に、カットなら「45日で“賞美期限”が切れますよ」とか、カラーは「おしゃれに見せるなら最低でも2ヶ月以内に染め直しましょう」とか、次の来店目安を具体的に話します。お客様に「この人はちゃんと美容のことを教えてくれる」と感じてもらうことが来店につながると思ったので、そこは徹底しました

お見送りのときにも「今日はありがとうございました。次回も必ず担当させてください、絶対きれいにします」というお声をかけました。本当にそう思っていましたし、最後までしっかり印象を残さないと。それからブログのアピールもしていました。「毎日更新しているので読んでみてください」って。

――ブログを読むと、何となく親近感がわきますよね。

そうなんですよ。お客様のBefore&Afterを載せたり、「おまかせ」でできますよと書いたり、たまにプライベートの話もしたり。そうすると、最初は不安そうだったお客様が、次にいらしたときに「私もおまかせにしていいですか」と言ってくださることも。知らないうちに、お客様が私のスタイルにハマってくれたというか…。美容師として成長する過程で、ブログはとても役立ちました。

お客様がきれいになれる方法を多方向から提案

鈴木さんの顧客には子育て世代の忙しい女性もたくさん。具体的かつ的確なアドバイスで信頼を得るのはもちろん、明るくサバサバとした人柄でもファンを増やしているように感じます。

――お客様への「提案」に関しては、どのようなこだわりがありますか。

お客様がきれいになるためのアドバイスをしたいと思っています。無料でできることも、とにかく最短でできる方法もお伝えします。そして、「毎日のセルフケアがとても大事」とか、「今は必要なくても、何か悩みが出てきたときに相談してください」というお話もしっかりしています。お客様自身が必要だと感じてくださったときに、自然とトリートメントの追加や店販アイテムの購入につながるんです。

私が実際使ってみて良いと思った商品を取り寄せて、社長の許可を取って店内で販売することもあります。完売するくらい、ちゃんと売れるんですよね。一番きれいになる方法だと自信を持っていますし、お客様もそれを信頼してくださっているからこそだと思います

――良いものを見極める目があるんですね。

アイテム探しが好きなんですよ!流行りものや新しいものに目がありません。ヘアケア製品や化粧品に限らず、ファッションも大好き。ただ、新しいものを最短で取り入れるのはやっぱり若い子なんですよね。若い子のおしゃれを、40代や50代の大人世代にうまく落とし込んでいくことがすごく大事で。大人に似合う取り入れ方を具体的にアドバイスすると、最初は「それは若い子のでしょ」「可愛いけど私の年では…」と言っていた方がトライしてくださる。だから今は、髪やメイク、アクセサリー、洋服から靴までトータルでお話ししています。

――もはやトータルビューティーアドバイザー!

そうなりたいですね!お客様が私にまかせてくれる以上、トータルで素敵にしてあげたい。身長、体型、ファッション、声のトーンや話し方などまで全体を見て、違和感なく髪型を作るべきだと思っています。
「おまかせで」と言われたときも、まずは違和感を探すんです。それを解決すれば絶対素敵になるんですよ。もっとツヤツヤだったらいいなとか、少しカール感を足すと可愛いなとか、このカラーがぴったりだなとか。

私が今すごく大事にしているのは、お客様がサロンできれいになって帰るだけじゃなくて、その後の生活の中で何かチャレンジするきっかけをつくってあげたいということ。苦手なものをひとつひとつ得意にしてあげて、素敵になっていってくれたらいいなと思っているので。

息子は私の“応援団”

息子さんは中学3年の受験生。「最近は塾から帰宅するのが遅いので、ゆっくり話す時間をあまり取れていない」と鈴木さん。

――パートタイムではなく社員になったのはいつから?

息子が小学5年生くらいのときに、会社の事務の方が私の売り上げと給料が見合っていないということを社長に言ってくださったんです。そこで社長と話し合い、水曜から土曜の週4日、10時〜19時と勤務時間を固定して社員になりました。

――働くママのことを、お子さんがどう思っているか聞いたことはありますか。

直接聞いたことはないのですが。子どもがまだ小さいときから、私の仕事の話をたくさんしていたんです。「今日はママ、シャンプーをほめられたよ」とか。そのせいか、息子はわりと私の応援団的な感じです。勝手にそう思っているだけかもしれませんけど(笑)。

子どもにはかわいそうなことをしたなと思う時期もあったんです。幼稚園のお迎えに行けないとか、一緒にいられる時間が限られてしまうとか。でも、小学4年生のハーフ成人式で、「ママはすごく仕事を頑張っている」「仕事がすごく楽しそう」と書いてくれたのを覚えています。小6のときの作文でも「ママがとても頑張っているので、僕も野球の練習を頑張ります」って。

その子ももう中学3年生。昨日、店に髪を切りに来たのですが、アシスタントの子に「反抗期なさそうだね」と言われて、「親がこんななので」と返していました(笑)。

――中学生男子ならではの反応では?

飲みに行ってつぶれて帰ったりもするので、「ママ」としてはやっぱり自由すぎるんですよ。夫にはいつも怒られています(笑)。


後編では、鈴木さんが美容師に向けて働き方の講演会をするようになったきっかけや、美容師を続けながら新たな仕事にも取り組んでいる話などをインタビュー。また、これまでを振り返り、子育てと自分の夢の実現に必要だったことをお聞きします。

取材・文/井上菜々子
撮影/喜多二三雄

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GULGUL libera
住所:千葉県市川市南八幡4-10-16-2F
電話:047-702-5530
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