お客様満足はもちろん、その周りの人たちにもハッピーが派生するメンズサロンに【Bee dandy オーナー 松井祐太さん】#1
ビジネスマンが集う街・新橋に店舗を構えるメンズ専門サロン「Bee dandy」。オーナーの松井祐太さんが目指すのは「お客様本人はもちろん、家族や恋人など第三者にも満足してもらえるヘアサロン」です。「世の中の男性をもっとカッコ良くしたい!」そんなアツい想いを持っている松井さんのもとには「うちの彼氏をカッコ良くしてください」と女性から予約が入ることも多いのだそう。
前編では、サロン開業までの道のり、ハッピーが派生するサロンづくりについて語っていただきました。
教えてくれたのは…
「Bee dandy」オーナー 松井祐太さん
地元・福岡県のサロンで数年間勤務した後、30歳で関東に進出。神奈川県のメンズサロンで店長を経験し、2021年に「Bee dandy」を開業。どんな男性もカッコ良いスタイルに導くセンスと技術力のみならず、愛嬌たっぷりの人柄にもファンが多数。
男性の美容ニーズが拡大することを前提に、広い店舗スペースを確保
――これまでのご経歴から教えてください。
専門学校に在籍しながら福岡のサロンで5年ほど働いたのち、個人サロンを5〜6年ほど経営しました。しかし、50〜60歳になったときにこのまま一人で続けているのは難しいだろうから、「組織をつくりたい」と思うようになったんです。そこで、まず管理職を経験してみようと美容師の先輩に相談し、30歳を機に関東に出てきたんです。
数店舗を展開する新横浜のサロンに入り、2年目で新店のメンズサロンの店長に抜擢されました。組織に入り部下を持ち、店舗を経営することの大変さを学びましたね。2年ほど働いた頃、自分の店を展開したいという気持ちが強くなり、独立することを決断しました。
――やはり、起業家志向だったのですね。
色々なセンスを持っていると思っていたので、僕(笑)。
――なぜメンズ専門にしたのですか?
新横浜のメンズサロンで働いたときに「メンズ」が好きになったというか。カッコ良くなっていく様と、それを自分でつくり出しているということにグッときて。自分はメンズをメインにやっていきたいという気持ちがそこで固まりました。
男性にも身嗜みが求められるようになり、仕事をする上で必須になっていますよね。しかも髪を切る周期が女性よりも短いですから、コロナ禍のようなことがあっても男性ニーズはなくならないだろうと。そこは狙いでした。
――働く男性をターゲットにするため、新橋にサロンを構えたのでしょうか?
福岡から上京して間もなかったので、東京をほとんど知らなくて…。不動産屋に「男性向けのサロンを出したいので、男性がたくさんいるエリアを紹介してほしい」と伝えたら、「だったらビジネス街が良いですよ」ということで。最初は半蔵門や日本橋も候補に上がっていました。
僕、虎ノ門ヒルズが好きで、将来的にはそこにオフィスをおきたいと思っているんです。名刺の住所に「虎ノ門ヒルズ」と入れたくて(笑)。その近くで調べていたら、ふと美容室の空白地帯が見つかったんです。それが新橋でした。
――意外な理由でした(笑)。こちらは4つの半個室がおかれ、だいぶ大きな店舗のようですが、最初からこの大きさで考えていたのですか?
成功するイメージしかありませんでしたから(笑)、最初から広いスペースを借りて、スタッフを増やしていく方が良いなと。確かに最初は固定費がかさむので大変ですが、そこは何とかなるでしょ!と。というか何とかするしかないという状況が僕をやる気にさせるんです(笑)。今は二人体制でやっていますが、これからどんどんスタッフを増やしていきます。
――ところで、半個室にしたのにはどんな狙いが?
まずはお客様にリラックスしてほしいからですね。他のお客様や担当外の美容師からの視線が気になるというご意見が多いんですよ。
それと、スタッフも働きやすいよう、例えば隣の席と間隔が近く、技術者同士ぶつかることがないように。完全個室にしなかった理由は、オーナーとしてスタッフたちがどんな風に接客しているのか確認して、彼らにアドバイスができる環境にしたかったから。
本人も、周りの人も満足するサロンに
――改めてサロンコンセプトを伺ってもよろしいですか?
「Bee dandy」の「Bee」は蜂をイメージしていますが、他にも「働く人たちの集いの場」という意味もあるんです。その集いの場で美容としてできることを提供したくて。
お客様にカッコ良くなってもらうのはもちろんですが、その方の家族、奥さん、彼女、同僚にも「その髪型カッコ良いね」と言ってもらえる美容室をつくりたいと思ったんです。「カッコ良くなったじゃん」と自分自身が満足するのはもちろんですが、周りから褒めてもらうともっとテンションが上がりませんか?
2回目来店していただいたお客様に「松井くんに切ってもらったら、奥さんと仲良くなったんだよね」と言われたことがあって。そのときに、僕はそれが嬉しいんだ!と気づいたんですよね。
――「奥さんと仲良くなった」は嬉しいですね!
他にも「僕がお洒落になったことで奥さんもお洒落に気を遣うようになって、夫婦で服を買いに行くようになった」「若い頃のように、最近また楽しく過ごせている」というお声もいただきます。
ご新規様の来店理由に「奥さんに『Bee dandyに行け』と言われたから」という方も多いんです。面白いことに、女性のお名前で予約が入ることも。うちのスタイルを見て「彼氏にもこんな感じになってほしいので、本人を連れてきました」とか、「誕生日のサプライズでうちの彼氏をカッコ良くしてあげたい」とか。彼氏さんは意味もわからないままこの店に連れて来られるわけですが、新しい自分に気づき、そこからリピートしてくださる方も多いです。
「お客様の満足度」を謳うサロンは多いですが、お客様の満足度のその先の満足度がなければダメだと思うんです。その人がカッコ良くなることで、その人に関わる周りの人たちも心地よくなります。第三者も満足できるような髪型を提案していく。これが僕のポリシーであり、同じように考える美容師と一緒に働きたいですね。
――このサロンを訪れるとお客様だけでなく、その周りの人たちにもハッピーが派生するというのが素敵ですね。
担当してくれているコンサルタントの方から「松井さんは技術だけでなく人柄も良いから、施術中も楽しい。松井さんと関わるとハッピーになることしかない」と言っていただいたことがあって嬉しかったです。
――松井さんからハッピーオーラが十分伝わってきます! ちなみに、こちらは脱毛メニューも揃える計画があるようですね。
一番奥の部屋が脱毛サービスを見据えたルームになっているんです。「どの脱毛サロンに行ったら良いのかわからない」という男性も多く、髪を切ったついでにうちで脱毛もしていけるなら便利かなと思っているんです。例えば、カットしてみたら「もみあげがちょっと気になる」「髭が薄い方が良いかも」といった要望が出てくると思うので、その場ですぐに脱毛ができるのは魅力的だなと。それに、経営的にも単価アップを見込めますからね。
「女性から予約が入るんですよ」と最初にお聞きしたときは正直「??」でしたが、第三者の満足度もコンセプトにしていることから、その理由に納得。後編では、「美容室を一般企業に近づけたい」と語る松井さんの働き方改革について伺います。
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/SHOHEI