生まれ育った愛媛で美意識を高め「継続美」を支えたい【美髪クリニック Courbe 代表 水野年朗さん】#1
愛媛県松山市で美容師として長年活動している水野年朗さん。Instagramのヘアアレンジ投稿で人気を集め、地方美容師ながらフォロワー数は26万人超に。現在は「美髪クリニック Courbe」のオーナーとして、美しい髪の継続のための活動もされています。
前編では、水野さんのこれまでの経歴と、独立してオーナーとなった「美髪クリニック Courbe」についてお聞きします。
お話を伺ったのは…
美髪クリニック Courbe 代表 水野年朗さん
愛媛県松山市の美容室で15年勤務し、2019年に「美髪クリニック Courbe」をオープン。2020年、完全独立するかたちで「Courbe」代表に。2016年から投稿し始めたヘアアレンジ解説が人気を集め、セルフアレンジ本『TOSHI’S 5min. HAIR MAGIC』の出版やセミナー活動なども行う。
Instagram:@mizunotoshirou
ブログ:mizunotoshirouオフィシャルブログ
愛媛で生まれ育ったから、自然な流れで地元の美容師に
――まずはこれまでの経歴を教えてください。
愛媛県の美容室で15年ほど勤務し、そこで店長やディレクターを務め、講師活動などもしていました。その後、2019年に「美髪クリニック Courbe」を作り、2020年に完全独立しました。
――ずっと愛媛県で活動されている理由は?
昔から「都会に行きたい」という気持ちがなかったんです。だからと言って、地元愛が強いというわけでもないんですが(笑)。愛媛で生まれて、愛媛で育ったので、愛媛で美容師になっただけというか。
講師活動などで都会に行くこともありますが、実は最初あまり乗り気ではなくて。SNSで反響をいただいて依頼がくるようになり、当時は店長をしていたので「若いスタッフの刺激になったり、次の子の講師活動の道すじができたらいいな」という感じでした。
でもやっぱり、「サロンワークは愛媛がいいな」とは思っています。こうして働いていると、都会との差はあまり感じないんですよね。
美容師として重視している「継続美」を作るサロンをオープン
――15年勤めたサロンから独立した経緯は?
僕は「継続美」を大切にしていて、お客様の美意識を上げ、サロンでの仕上がりのキレイさを継続してもらうことが好きなんです。だから美髪とか髪質改善といったメニューも好きで、それに特化したサロンを作りたいという気持ちがありました。
また長年在籍していると若い子たちも増え、その世代に合わせたメニューも増えていきました。その状況で僕の発信ばかり中心にしてサロン作りをしても、逆に迷惑がかかってしまうと感じていたんです。だから棲み分けのため、大人女性向けのサロンを出させてもらうことになったのが「Courbe」の始まりでした。
――籍を置いたまま出店されたんですね。
はい。やっぱりお世話になったし後輩の指導もあったので、自分の気持ちだけでは辞めづらかった部分もありますが、両立できたらベストだなと思って籍を残すかたちで出店しました。
でも結局、経営をなめていたんだと思います。オープンしてから1年近く、僕はほとんど「Courbe」に顔を出していませんでした。僕がサロンを空ければ、その分売上が落ちてしまうので、申し訳ないと思っていたんです。
その結果、売上も安定しないしスタッフもまとまらず、運転資金や貯金もギリギリになってしまって…。そこでオーナーに相談して、完全に独立するかたちで「Courbe」に専念することにしたんです。それから少しずつ経営も回復していき、半年経つ頃にはなんとか安定しました。今では拡張移転できるくらいに成長しています。
――経営が回復した理由はなんだったのでしょうか。
「美髪専門」を謳っていたこともあり、最初はカットメニューがありませんでした。でもスパやトリートメントだけでは、なかなかお客様が続かなかったんです。
やっぱりカットをして似合わせ方などをお伝えして美意識が高まることで、ケアにも通っていただけるんだと気づきました。そこで僕もサロンに立ち、カットができるスタイリストを現場に置くようにしてからは、徐々に安定していきました。
また僕が現場に参加するようになって、改めてスタッフにサロンコンセプトを共有したり、スタイリングの教育をし直したりできるようになりました。スタッフのクオリティが上がり、まとまりが生まれたのも大きかったと思います。
地域で一番、美意識の高いお客様になってもらいたい
――改めて、「Courbe」のサロンコンセプトや他サロンとの差別化ポイントを教えてください。
目指しているのは、「Courbe」に通っていただいているお客様たちを、地域で一番自分のヘアケアやスタイリング方法に詳しく、「美意識が高い人」にすること。その美意識を高めることで、来店したサロン帰りだけでなく、継続した美しさをお手伝いすることがサロンのコンセプトです。
そのための差別化として、トリートメントや縮毛矯正などのメニューを豊富にそろえ、スコープを用いてお客様の髪と頭皮の状態を確認したうえで、その方に会ったメニューを提案するようにしています。また、ご提案の際には、なぜそのメニューが必要なのかをしっかり説明することも意識しています。そうすることで自分事として考えていただけるようになり、美意識も高まっていくんです。
――続けてみて、お客様の意識の変化は感じますか?
そうですね。「美髪専門」と謳っているので、来店される方は髪がボロボロになっていたり、困っていたりする方が多いんです。だから、きちんと納得すれば継続していただけますし、意識も髪も変わっていくんですよね。それを見られるのは、とても嬉しくて楽しいです。
地元で活動しながら、ご自身の理想を追求したサロンをオープンした水野さん。オープン当初は大変なことも多かったようですが、今では地域の美意識向上に欠かせない存在になっています。次回後編では、「継続美」を伝えるために始めたSNSでの発信についてや、地方でサロン経営をするうえで大切なことを教えていただきます。
取材・文:山本二季