役者として舞台に立つ。美容師にとって技術より大切な「見られ方」 「ORIKA」KAORIさん

「技術で毎回100%満足いただくのは、私は無理だと思っています」。そう話すのは、大阪で美容室「ORIKA」のオーナーを務めるKAORIさん。独立前に働いていた業務委託サロンで、売上1位を1年半キープし続け、歴代最高売上を樹立した過去をもつ人気の美容師だけに、意外な言葉でした。

そんなKAORIさんが意識し、技術の向上と同じくらい大事にしてきたのが「人からの見られ方」なのだそう。接客やカウンセリング、インスタ術にいたるまで、見られ方を意識し、自分の美学を貫き通すKAORIさんに、お話を伺います。

今回、お話を伺ったのは…

KAORIさん

美容師/「ORIKA」オーナー
兵庫県生まれ。16歳で美容師になり、某有名店3店舗、アイリストとして5年勤務を経験。2018年大阪に拠点を移し、業務委託美容師に。大阪で300名以上が所属する大手サロンに勤務し、 顧客0の状態から 社内スタイリスト売上ランキングNo. 1を獲り続け 同時に歴代最高売上を樹立。予約の取れない超売れっ子美容師に。2021年5月、大阪堀江にカフェを併設したヘアサロン「ORI」をオープンその後、店名を「ORIKA」に変更。「お城みたいな美容室」をコンセプトに 集客サイトを使わず生産性100万円以上をキープし続けるブランドサロンとなる。 求人費用0で開業後からスタッフも自然と集まり現在9名に。

Instagram:@ori_kaori/

リピートしてくれるのは、自分を許してくれている人

YouTubeチャンネル「サロンの虎」に、虎の1人として出演もしているKAORIさん

――前職のサロンから、予約の取れない売れっ子美容師になったとお聞きしました。美容師として求められるために、どんなことを心がけてきましたか?

自分の見られ方を常に意識してきました。技術の追求はもちろん大切ですが、美容師の仕事は、技術面で毎回100%満足してもらうことが、なかなか難しいと思っていているからです。というのも細かな部分の好みが把握できていなかったり、求められても履歴的に難しいこともあります。ずっと通ってくださっているお客さまは私の技術に100%満足している人ではなくて、ちょっと失望があっても許してくれる人だと私は思うんです

だからどうお客さまからこの人に任せたいと思ってもらえるような見られ方、つまりブランディングですね、それがとても重要だと思っています。

――具体的にはどういうブランディングをされているのでしょうか?

たとえば、仕事を楽しんでいるように見せること。仕事を楽しんでいる美容師に対して、お客さまはこの人に担当してもらいたい、また会いたいと思うのではないかと。実際お客さまからも「いつも楽しそうだよね。髪の毛をかわいくするのが本当に好きなんだね」と言わることが多いです。

でも、実際の私は、朝起きたときはかなりの確率で「あー、仕事行きたくない」と思うんです(笑)。ですが、だるくても、眠くてもお客さまには絶対に見ないようにしています。お客さまがまるで舞台を見ているように、惹き込まれるような、楽しんでいる美容師の姿を見せるようにしていますね

――演じているという感覚なのでしょうか?

そういう部分もあるかもしれませんが、「楽しんでいる自分」を意識しているうちに、それが当たり前になって、演じている自分と素の自分の境目はなくなっていく気がします。楽しんでいる自分を全面に出していると、そこに惹かれたスタッフやお客さまが集まってきて、そういう自分でいざるを得ないというか。でも求められることがうれしいから、苦しいと感じることはあまりないです。むしろもっと求められるように新たな知識を学ぼうとか、技術を身につけようと思うようになり、いい循環に入っていく気がします。スタッフにも「サロンは舞台だと思って」といつも伝えていますね

――ほかにもブランディングで意識していることはありますか?

お客さまから見たときに、前向きで、前のめりで、自信がある美容師だと思ってもらうことも大事にしています。これは、意見が別れるかもしれませんが、私はフロア中に聞こえるぐらい、大きな声でハキハキしゃべるようにしています。そうすると自信があると思ってもらえるはずだし、前のめりな様子もより伝わると思います。お客さまが「また会って話したい」、「自分のことをよくわかってくれている」と思ってくだされば、技術に100%満足できなかったとしても、次の来店につながると思うんです

全部はいわせない、リスクを伝える。心をつかむカウンセリング術

カウンセリングには、とくに力を入れているというKAORIさん

――施術中に心がけていることはどんなことでしょうか。

カウンセリングで美容師の印象が決まるといっても過言ではないので、とくに大切にしている時間です。まず、履歴などの情報はなるべくお客さまに言わせない。「前回は○○をされたんですね」、「○○をされていますね」と履歴について見てわかる部分はこちらから伝えるようにしています。「そうなんです」とお客さまに何回か言わせることができたら、「この人はわかってくれている」と思ってもらえるはずです。

また髪の履歴によっては、お客さまのオーダー通りにはならないこともあるので、そのリスクの部分がきちんと伝わるようにすることも大切にしています。ここで重要なのが、「伝える」ではなく「伝わっているか」。ただリスクを並べても、お客さまが納得できていなければ伝えていないのも同じだと思うんです。お客さまが理解できるように、確認しながら伝えるようにしています。カウンセリングでは、あまり期待をふくらませすぎると、うまくいかなかったときの落差が大きくなってしまうので注意が必要です

あとは細かい情報を集めること。他店の失客が原因で今このサロンにきているということなので、前のサロンの何が嫌だったかはお聞きします。ほかにもシャンプーは強めがいいのか弱めがいいのかなどを聞くことも。好みを聞いたら、それにあわせたアシスタントをつけるようにしています。

――施術中は、お客さまとよくしゃべりますか?

施術中はあまりしゃべりすぎないようにしています。会いたい美容師だと思ってもらえることが大事だと思うので、いろいろ話しすぎて、「この人のことは全部わかった。満腹」となってしまわないように。お客さまが、「ああいうことも聞いてみたかったな」と思うくらいがちょうどいいと思っています。またお話しましょうね、という感じで終わらせます。

技術に関しても同じですね。技術の引き出しがいろいろあると思ってもらうことが大事なので、「次回、楽しみにしていてくださいね」と、期待を次につなげるようにします

可愛く見える写真を徹底的に研究。インスタ集客に成功

KAORIさんのインスタより。ハイトーンやカラーも得意とする

――大阪の業務委託サロンで、顧客ゼロから歴代最高売上を樹立したそうですが、集客はどのようにされたのですか?

1日2、3回と決めてインスタを投稿し、そこから集客ができるようになりました。ただ入社から1年くらいは、地元の友達が来てくれたり、集客サイトからぽつぽつお客さまが入るくらいで、お客さまがそこまで入っていたわけではないので、インスタに投稿するネタがなくて。アレンジ動画や、自分やスタッフのヘアカラーを載せたり、用もないのにカフェに行ったりしてなんとかネタを作っていましたね。

流れが変わってきたのは、「KAORIさんに撮ってもらうと盛れる」という評判が広がって、お客さまの方から撮影をしてほしいと言われるようになったことです。その写真をお客さまが自分のインスタに載せてくれて、紹介につながっていきました。

――撮影の際、何か工夫をされていたのですか?

どう撮れば可愛く見えるのかを徹底的に研究していました。写真にレタッチをしていましたし、インスタでほかの美容師さんの撮影した写真を見るのにもすごく時間をかけていました。なんでこのスタイルが可愛いのか、とにかく観察して、ひたすらに真似していましたね。私はどちらかというとスタイルを作るのがうまいというより、写真を撮ること、見せ方がうまいのかもしれません。

――撮影方法にこだわられていたんですね。

当時在籍していたサロンからは、お客さまのバックスタイルを撮影してくださいと言われていたのですが、顔周りの写真を撮ったほうが可愛く見えるとわかっていたので、それには断固として従わず(笑)。私は美容室行くのがすごく好きなのですが、どの美容師さんがうまいかを判断できるのはバックスタイルではなくて、顔周りのカットや、作り方だと思っていて。顔周りを見たいのに、なんでバックスタイルやねんって思っていたので(笑)。今の私を作っていることのほとんどが、自分がお客として通っていたときに感じた、「こんな美容師だったらいいのに」がベースになっているかもしれません。


KAORIさんが人気美容師となった3つの理由

1.お客さまにどう見られているかを意識し続けた

2.初回ですべてを出し切らず、次回への期待を高めた

3.可愛く見える写真を徹底的に研究し、集客に成功した

後編では、2021年に独立したKAORIさんに、経営について伺います。集客サイトも求人サイトも使わずに経営を軌道に乗せているKAORIさん。はたから見ると順風満帆に見えますが、オープンから1年ほど経ったころから、お店をスタッフに任せた方がいいのか、自分がプレイヤーとしてお店に立ち続けるか悩んだこともあったといいます。またブランドサロンを確立するためKAORIさんがやられてきたことも伺いました。後編もお楽しみに!

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ORIKA
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住所:大阪府 大阪市西区南堀江3-3-3
電話:06-7898-0879

 

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