デザイン歴20年の意を注いだ「AWAKE Raw」は、じっくり育てていきたいブランド 私の履歴書 【フレグランスキャンドルデザイナー 福田恵子さん】#2

フリーランスのデザイナーとして活躍する福田恵子さんは、2024年秋、自身のフレグランスソイキャンドルのブランド「AWAKE Raw(アウェイク ロウ)」を立ち上げ、フレグランスキャンドルデザイナーとしても活動を開始。

前編では、フレグランスソイキャンドルに着目し、ブランドをローンチするきっかけとなったストーリーについてお聞きしました。

後編では、ブランドローンチまでの紆余曲折、デザイン業との両立やその知見の活用について、そして今後の展望などを、福田さんの仕事観を交えながら伺います。

 一から手がけた「AWAKE Raw」のフレグランスソイキャンドル製作は、試行錯誤の繰り返し

なんと、「AWAKE Raw」のキャンドルはすべて福田さんによるハンドメイド!

――「AWAKE Raw」のフレグランスソイキャンドルは、すべて福田さんが製作されているのですか?

そうです。キャンドル作りの工程を見直す際に、全ての素材から製法までも改めて見直すことにしました。今までは自宅用や友人へのプレゼント用として作っていましたが、ブランドを立ち上げるとなると販売しなければなりません。自分が使いたいと思える製品の品質、香り、そして価格を実現できる素材を探し回りました

蝋の部分には大豆が原料である植物性のソイワックスを使用することにしましたが、ソイワックスだけでも何種類もあって。それぞれ溶け方や色、さらに香りも様々なんです。デザインの仕事をする横で試作品を何時間も灯しながら検討する、といったことの繰り返し。数えきれないほど試した上で、現在の素材に決めました。

――キャンドルの製作は、どのようにして身につけられたのですか?

基本的には独学です。国内よりも国外の方がキャンドルの需要が高いこともあり、海外のキャンドル職人たちが製作方法や道具などについて発信している情報や動画がたくさんあります。それらから各プロセスの製造ポイントを学び実際に試してみて、自分が目指すものにとって最善だと思う製法を確立していきました。

調香も、ソイワックスが本来持つ香りを考慮した上で行っていますが、こちらも試行錯誤の連続でしたね。知人や友人たちにも試作品を渡してフィードバックをいただくなど、周囲の協力を仰ぐこともありました

――現在、3種類の香りを展開されていますよね。

はい。中でも、白い器の「WHITER(ホワイター)」は自信作。この香りが生まれた時から、個人的にも最も今回のブランドらしさが表現できている良い香りだと密かに自負していましたが、知人や友人を集めて試作品の香りのテストをした時にも一番好評でした。「自分の感覚は間違っていなかったな」と、印象に残った出来事です。

白い器が「AWAKE Raw」の代表的な香り「WHITER」、マーブルの器が「HOLIDAY(ホリディ)」。器の色ごとに香りのテーマがある(福田さん提供)

――もしかして、キャンドルが入っている容器も福田さんが…?

そうです。一つひとつハンドメイドです。環境に配慮した水溶性の樹脂を材料で取り寄せて製作しています。この素材もまた、扱いが難しいんです。

キャンドルや器の素材探しに製作、さらに調香と合わせて何度もプロセスを行き来しました。「これだ!」と思うものに行き着くまで、約1年はかかりました

福田さんが「器」と呼ぶこの容器は、もちろん耐熱性。石を削り出したような、マットな質感が印象的(福田さん提供)

「AWAKE Raw」には、デザイン業で培った自分の知見をすべて注ぎ込んだ

ブランドの随所に散りばめられた、福田さんのデザインのエッセンスを紐解いていく

――「AWAKE Raw」のブランドづくりやフレグランスソイキャンドルの製作において、福田さんのデザイナーとしてのご経験はどのように生きていますか?

すべてがリンクしていると言っていいと思います。デザイナーとして20年ほど歩んできた中で、乗り物やオフィス家具など大型のプロダクトから商品パッケージなどといった小さなものまで、様々な製品に関わってきました。

その上で、私なりに心がけていることがあります。それは「強く主張しすぎないこと」。これは、「AWAKE Raw」のフレグランスソイキャンドルにおいても同様です。

置く場所の環境や空気に溶け込んだ見た目や香りによって、自然と「なんか、いいな」と思えるような製品を目指しました。もちろん品質にもこだわっています。

――それらは、具体的にどのようなところに見られるのでしょうか?

ブランドに組み込んでいるサステナブルな取り組みにもつながるのですが、まずはソイワックスの特性ですね。煤や煙が出にくいため、燃焼時に部屋の空気を汚しません。また、一般的なフレグランスキャンドルよりも優しい香りに仕上げているため、犬や猫などのペットやお子様がいるご家庭でも使いやすいキャンドルにしています。さらに、器は環境に配慮した水溶性の樹脂を、その土台にはワインのコルク栓を再生したリサイクルコルクを採用しています。植物性のソイワックスと合わせて、芯を立てている金属製のベースパーツ以外は、すべて土に還る素材で構成しました。

これらはすべてさりげないことだけど、実際にご使用いただいたら「なんか、いいな」を感じ取っていただけるのではないかと思います。

パッケージにもこだわりました。キャンドルを入れるパッケージの箱は私の設計です。箱の製作時に出てしまう端切れを最小限に抑えた形状にすることで廃棄物を減らす試みをしています。シンプルな構造のパッケージなので耐久性を心配されるかもしれませんが、箱の底に紙の土台を作ることでキャンドル底面のコルク素材と相まって安定感が増します。巾着袋は、そのまま小物類などを入れたりと自由にリユースができることから採用しました。

ここまで、ほとんど0から100までを自分で手がけたのは、私の長いデザイナー歴からしても初めてのことでしたね。

底面のコルク素材は、見た目が素敵なだけでなく滑り止めの効果も。パッケージとの親和性も◎

――福田さんのデザインの知見が凝縮された「AWAKE Raw」ですが、逆に課題はありますか?

もちろんあります。マーケティングやPRの部分などは、まだまだ課題だらけです。ブランドローンチの際にオンラインストアを立ち上げ、Instagramのアカウントも開設しましたが、その運用やコンテンツ作りに関しては日々勉強です。Instagramに投稿しているキャンドルの製作風景は、本業で動画の撮影・編集をしている友人に仕事として依頼して作ってもらいました。動画はスチール撮影ともまた違って、現場ではいろいろ学ばせてもらいましたね。

「好き」を仕事にしたら、それはやがて「生きがい」になる

フレグランスソイキャンドルの事業もデザインの仕事も、目一杯楽しんでいると話す福田さん。その姿は、とても生き生きしていた

――まだ始まったばかりの「AWAKE Raw」ですが、今後の展望はありますか?

将来的に私は、例えば森の中のような、自然豊かな場所で暮らしたいんです。その環境でデザインやものづくりできるのが理想です。「AWAKE Raw」はその準備の一環として生まれたブランドなので、ゆっくりと育てていきたいと思っています。例えばこの一年間で急成長させたいといったことは、あまり考えていません。今後、徐々に認知度を上げつつ生産量を増やし、自然な流れでフレグランスソイキャンドルの事業を成長させられるといいな、と。

学生時代での出会いから始まったキャンドルは、私の生活に寄り添いながら違和感なく続いているものなんです。

――世の中には、福田さんのように別で仕事を持ちながら新しい事業を始めようとしている方も多いと思います。デザイン業とキャンドル事業を両立する上で、働き方として福田さんが工夫されていることはありますか?

タイムマネジメントです。デザイナーとは基本的に複数の案件を抱えているもので、それは会社員時代はもちろん、フリーランスになってからも変わりません。

そのため、最初からある程度の余裕を持たせたスケジュールを引くようにした上で、1つ1つの作業自体にも、少しでいいから余裕を持って取り組むのがコツです。

キャンドルの製作は、工程によってはある程度まとまった時間が必要です。休日なども活用して時間を作り、デザインの仕事と合わせてスケジュールに組み込むようにしています。

――美容やその関連業界を目指す方へ向けたアドバイスがあれば、ぜひ!

せっかくやるなら、「好きなこと」にこだわってほしいですね。

人は自分の好きなことになら素直になれるし、嘘をついたり妥協したりせずにやり遂げられると思うから。

また、好きなことって日常的に調べるじゃないですか。自然と情報が集まり、それに関する知見も深まっていきやすい。そして、それは次第に自分の強みになっていくこともあります。強みを仕事にすることに勝るものはないと思っています。

――福田さんにとって、「働く」とは?

「生きがい」ですね。私が生きる上で、ごく自然なこと。

デザインの仕事もフレグランスソイキャンドル製作も、私はどちらも大好きなんです。自分の好きなことが何かの役に立ち、仕事としてマネタイズできている私はとても恵まれていると思います。

仕事が楽しいです。楽しくて、ついやり過ぎてしまうくらい大好きです。

福田恵子さんの成功の秘訣

1. 将来への明確な目標と計画性

2. トライアンドエラーを繰り返す根気と探究心

3. 自身のスキルや知見を最大限に活用した設計や働き方への工夫

 撮影/内田 龍
取材・文/勝島春奈


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