離島でのサロン経営成功の秘訣は、ご近所への感謝と美容への情熱!【hair and make kacco 高田和子さん】#2

前回に続き、鹿児島県にある離島・徳之島で「hair and make kacco」を経営している高田和子さんにインタビュー。前編では、高田さんが移住&開業した経緯と、離島でのサロンの開業と経営について、お話をお聞きしました。

後編では、地方でサロン経営をするうえで大切なこと、今後の展望や地方開業を目指す方へのアドバイスをお聞きします。

お話を伺ったのは…
「hair and make kacco」オーナースタイリスト 高田和子さん

大阪のサロンに25年勤務し、うち7年を大阪市内サロンにて店長を経験。2018年5月、鹿児島県徳之島に移住し、2019年9月「hair and make kacco」をオープン。縮毛矯正やストレート、ハイライトヘアカラーなどを得意とし、20~60代まで幅広い世代に支持されている。

Instagram:@hairandmakekacco 

島の人たちも「生活している」ことを忘れずに
日ごろから感謝を伝え、アップデートし続ける

――地方で美容師をするうえで大切なことは何だと思いますか?

島と言えど住民は普通に生活しているんだということに、実は最近気づいたんです。もうサロンを始めて6年目になるんですが(笑)。

両親が徳之島出身なので、子どものころは島から大阪に出てきた人をすごくもてなしていた記憶があって、島の人は子どもの私にとても優しくしてくれたんです。だからどこかで、島のすべての人たちが、おとぎの国の住人のような、なんでも分けてくれる妖精のような人たちだと思い込んでいたんですよね。

でも実際に住んでみたら、もちろん都会よりは親身になってくれるけれど、妖精や天使というわけではなく、みんな普通に、ただやさしくて。自分が過度に幻想を抱いていたことに気づきました。

もしかしたら、離島にあこがれを持っていて、島で独立したいと考えている方々も、私と同じ幻想を持っているかもしれません。だから田舎の人だって普通に生活しているし、自然が大好きな人たちばかりではないし、新しいものやめずらしいものが好きなんだというのは、地方で仕事をするなら覚えておくといいんじゃないでしょうか。

相手は自分と同じく普通に生活している人ですから、美容師として働いていくうえで大切なのは、近所付き合いをすること、感謝を言葉や行動で表現することだと思います。本当に近所の人たちが、たくさん気を遣ってくださるんです。だから「ここで仕事ができて本当に私は幸せです」ということをきちんと伝えるし、どこかに行けばお土産を持って行ったり、季節の挨拶のちょっとした贈り物をしたり。そんな小さなことですけど、近所とのお付き合いを大切にしていくのは重要だと思います。

――技術面ではいかがですか?

技術者としては、本土の情報をしっかり入れておく習慣を作ること。島に住んでいる人も意外と定期的に外に出ているし、今はSNSで世界の情報にもつながれますから、いろんな情報を持っているんです。そこに答えるためには、同じくらいの頻度で外に出て、情報を得ることは大切だと思います。

私もよくInstagramで情報収集しますし、有料のオンラインサロンを受講したり、毎月1回は大阪に出て着付けの講習に参加したり、表参道の美容室に行ったりもします。技術的な部分のアップデートもですけど、都会での経験談をお客様にするだけでも、すごく喜んでもらえるんですよ。

――では集客面での取り組みは何かされていますか?

新規の入り口として多いのはInstagramです。美容室の数自体それほどありませんし、長年続けているご高齢の方も多いので、Instagramに若者向けのスタイルを掲載している美容室が少ないというのも大きいかもしれません。

あとは大抵の方が、次の次まで予約を取っていってくださるんです。美容室の数も限られているし私の営業時間も多いわけではないので、そうしないと自分が思う日時に予約が取れないこともあるんです。だから1度に半年ペースで予約される方もいますよ。

――リピートが絶えないというのはすごいことです。理由として思い当たることはありますか?

まわりの若い方向けのサロンとの違いを考えると、経験年数の差はあるかもしれません。都会に出て経験を積んで戻る方は、美容学校を出て5年くらいで帰ってくる。それではどうしても技術的に追いつかない部分はあるようで、リペアを依頼されることもあります。また私自身はケアも好きなので、髪を傷ませないための知識を持っているのもリピートにつながっているのかもしれません。

あと大きな違いとして、まわりより少し値段設定が高いんです。私としては大阪のサロンで教わってきた通り、売上のパーセンテージや時間などから計算した真っ当な値段しかいただいていないんですが、よく「高い」と言われますね。

だから、「その値段の施術のなかに、これだけの価値があるんだ」ということを、きちんと説明するようにしています。うちの場合はメニューのなかに眉カットやトリートメントを入れ込んでいるものもあるので、そう考えると実際は安かったりもするんです。そのあたりに価値を感じて、まわりより単価は高いけど来続けてくれている方は多いんじゃないでしょうか。

子育てをしていても、畑仕事をしていても
スタッフが美容に携わり続けられるよう
完全予約制&当日シフト変更OKに

――現在力を入れていることや、今後の展望を教えてください。

大阪時代に2人出産して、産休育休をいただきながら働いていたんですが、すごく働きにくさを感じたんです。子どもはいつ体調を崩すかわからないし、でも予約は入っているし…。今みたいにお客様と個人的に連絡先を交換する時代ではなかったので、急な休みの場合は一度店に行ってお客様に連絡してから休む…みたいな感じで、いろんなことが難しかったんですよね。

だからキャリアを積みながら…とまではいかなくても、どうにかして子育て中のお母さんが、忘れない程度に仕事に就きながら子育てをしていける方法はないだろうか、というところに取り組んでいるんです。

まずは、子育てを優先して無理なく出勤できる仕組みを考えました。うちで働いてくれているパートさんは、前日もしくは当日にしか出勤を決めません。パートさんが来られる時間はお客様の掛け持ちができるので、当日の朝にInstagramや公式LINEに投稿します。すると、すぐに予約が埋まるんですよね。

そうすれば通常ならなかなか新規さんは入りづらいけれど、当日にポンとは入れるかもしれない。パートさんにも、急に休まないといけなくなったとき、子どもを労わるよりも「店に連絡しなきゃ」と考えるような、胸を締め付けられるような思いをさせずに済む。そんな風に、お客様、パートさん、私、三方良しになる方法はないかと模索を続けています

――今後スタッフさんを増やしたり、店舗を増やすことは考えていますか?

島での生活には、普段は子育てしながら、作物の時期によっては畑仕事をしなきゃいけない、という本土にはない仕事の形態というのがあります。そういうことと両立しながらでも、一度足を踏み入れたのなら、美容の仕事を続けて欲しいなと私は思うんです。美容の技術って、本当に素晴らしくて、この仕事が廃れて欲しくないんですよね。

だから賛同してくださって、何らかのかたちで美容の仕事に携わりたいと思う方がいれば、是非一緒に働きたいですし、働ける環境を作りたいです。

――これから地方での独立開業を目指す方にアドバイスをお願いします。

開業資金を働いているうちに貯めるのは結構難しいので、サロンに勤めているうちに借りられるだけ借りておいた方がいいです(笑)。私も大きな借金をしたことがなかったので、最初はいろんなことを軽く見積もって少ない金額を借りました。でも今考えたら、そんな金額でサロンが開業できるわけがなくて…。夫の畜産の仕事が軌道に乗って、なんとか穴埋めできた部分もあったんです。それがなかったら、5回ぐらい潰れていました(笑)。

とは言え、資金面、技術面はやってみないとわからないですから。独立してしまったほうが、おしりに火がつくから、いろいろ必死でやりますしね。

あとは地方だったら、広く浅く何でも経験しておくといいと思います。私も、カット、カラー、パーマはもちろん、マツエクやエステ、着付けなどもしてきました。地方はそもそもの人手が足りないので、どの店も「予約が取れないサロン」。だから、できることが多いに越したことはないんです。

入り口を広げておいて、スタートしてから技術を高めていければ、なんとかなる! とくに若くして地方で独立するなら、体力もあるでしょうし、やれることはどんどん挑戦してみたらいいんじゃないでしょうか。

取材・文:山本二季

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