提出書類には社会人としての意識と美意識の高さが表れる/grico #2
美容師を目指す学生、新天地を目指すスタイリストさんにとって、避けては通れない就職活動。晴れて採用を勝ち取るためには、どんな準備が必要? 心がまえは? そんな疑問を、実際のサロン採用担当者にインタビュー!
前回に続き、美容業界内外から注目され、成長意識の高い就活生が集まる「grico」の店長・寺尾フミヤさんにお話をお聞きします。
#2では、書類選考について。履歴書やスタイルブックなど、提出する書類の重要性、力を入れるポイントなどを教えていただきました。
お話を伺ったのは…
grico 店長 寺尾フミヤさん
島根県出身、関西美容専門学校卒、美容学生時代からgricoに通いつめ、採用後は1年目から代表エザキヨシタカさんの専属アシスタントとして国内外のセミナーやヘアショーに同行。grico史上最速でスタイリストデビュー。2023年8月より最年少27歳で店長に就任。
提出書類で見ているのは
「社会人としての意識」と「美意識の高さ」
――今回は最初の書類選考についてお聞きします。
提出書類の内容と、書類選考の重要度を教えてください。
最初に提出してもらうのは、履歴書、スタイルブック、作文、84円切手付き返信用封筒、くわえて新卒の場合は成績証明書です。
多い年では書類選考で5~7割ほど落選することもありました。でも近年は各学校のトップレベルの子が受けに来てくれる感じになってきた分、応募者数も凝縮されましたし、面接でちゃんと見たいと思える子が増えたので、そこまで書類で人数を減らすことはなくなりました。
――書類選考全体で重視していることは何ですか?
書類選考で重視しているのは、すべての書類に共通して、オフィシャルで提出するものに対しての価値基準がどのレベルなのかという部分です。
まずは、提出書類という形式的な部分がしっかりできているか。あくまでも社会人になるわけですから「美容師だからできない」というのは格好悪いし、gricoの場合は外部との関わりがとても多いので、大卒で就活する人なら当たり前のレベルで、書類やメールの書き方などの知識は持っていて欲しいんです。
またgricoのスタッフとして外に出て何かをするとなったときには、「見せ方」に対するレベルも大切なので、提出書類の見映えというところも見ています。
履歴書や作文なら、シャーペンで書いていないか、誤字脱字がないかは当然として、最後のページに1行だけ…という見映えはどうなんだろう?という部分まで考えられているか。スタイルブックなら、すべてのページが意味を持っているか。20枚綴りのブックでも、最後の2ページが空白なら、2ページ省いた方が見映えがいいですよね。そこまで意識して欲しいです。
どんなスタイルが好きで、gricoで何がしたいのかを
作文とスタイルブックで伝えて
――では提出物の中で力を入れて目を通すのは?
上の点を見るためにも、作文とスタイルブックは重視しています。大切なのは、きちんと完成したかたちで提出できること。「やっつけ」で作ったものは、やっぱりわかりますから。
見映えや提出物としてのレベルに加え、作文ではその人がどんなことをgricoでしたいのかも見ますし、それを言葉にできる文章力があるかも確認しています。
またスタイルブックでは、その子の好きなものが見られるといいなと思っています。技術を見るというより、「こういうスタイルが好きなんだ」というところを見ているんです。
自分が作ったスタイルを入れる子は多いんですが、例えば好きな雰囲気の洋書の切り抜きだったり、好みの質感の海外の雑誌とかをファイリングしたりしてもOK。それが自分の作ったスタイルとちゃんとリンクしていると、一貫性があっていいなと思います。
――スタイルブックは自己紹介のような位置付けなんですね。
こちらも好きなもののほうが伸ばしていきやすいので、「こういうスタイルが好きで、こういう雰囲気のものを美容師になって作りたい」という部分が伝わる内容だといいですよね。
あと先ほど言った通り、作品としての完成度はもちろん見ます。本当にその子の価値基準だと思うんですが、「100均のファイルだな」と感じるもので提出する子もいるんです。そういうペラペラのブックは、大体内容も薄かったりするんですよね。しっかりこだわって作る子の方が、実際に働き出してからも強い。そういう部分も、提出物には全部出ると思います。
志望動機は自分の想いをきちんと言葉にできるかが大切
――そのほかの提出物についてお聞きします。
まず履歴書ですが、形式などの決まりはありますか?
履歴書の形式になっているものであれば、どんなものでもOK。市販のものや、学校の履歴書で提出されることが多いです。
――共通する項目として志望動機や自己PRなどが重要項目でしょうか。
応募前の来店が必須条件な分、スタッフと志望者がある程度関わっている状態ではあるので、志望動機など想いの部分はすでに直接聞いているんです。どういう子かわかった状態で履歴書を見るので、再確認のための資料という面が大きいです。
ただ来店して関わったときの熱量を、最初の書類でしっかり出せているかは重要かもしれません。直接関わるといい子なのにテキストにするとちょっと弱い…という感じなら、面接でちゃんと言葉にできれば問題ありません。でも1回来店しただけで提出物もちょっと熱量が感じられないなら難しいですよね。
――成績証明書にも目を通しますか?
はい。でも成績というよりも、遅刻と欠席の数を見ています。遅刻や欠席が多ければ、面接時に理由を聞きますね。また成績があまりにも悪ければ、それも確認します。例えば1学期の成績がすごく悪いけど2学期から改善していて、そのきっかけが「gricoに入りたいから」なら理解できますよね。でもgricoを目指し始めたのに改善されていないなら、「意識が変わるほどではなかったのかな?」とは感じます。
書類全体の見映えのよさは好感度アップにつながる
――書類には幹部の方々で目を通すとのことでしたが、共通して好感が持たれる書類の特徴はありますか?
たくさんの書類に目を通すので、パッと見たときの印象がいいものは好感度が高いです。内容度返しで言えば、やっぱり字が丁寧なものは、こちらの読みやすさも考えられている感じがしますし目を引きます。
あとはスタイルブックのクオリティが高いと、「おっ!」と思います。センスがわかるものなので、「おしゃれだな」「センスがいいな」と感じるものは気になりますね。
――逆に好感度の低いものの特徴は?
その書類を見る相手のことを考えられていないものは、ちょっと残念な気持ちになります。例えばですが、作文を400字で10枚以上となると、想いがあるのはいいけれど、4000字を読む労力がかかることを考えられていないんじゃないかなと感じます。それで内容がしっかりしていればいいですが、インパクトがある文章やわかりやすい内容で2枚くらいにまとめられている方が伝わりやすいですよね。
提出物を見ると、その人の性格的な部分がちょっと見えるんです。見る相手のことが考えられていないと「利己的な人なのかな」とか、最後のページの1・2行目くらいで終わっていると「前のページに収めるのが面倒だったのかな」とか。
想いを伝えるだけじゃなく、見た相手がどう感じるかというのが仕事でも大事。それを書類の段階で意識できているといいですよね。
採用される提出書類のポイントまとめ
1.読む相手のことを考えて見やすく作る
2.社会人として最低限の書類マナーを守る
3.提出書類を作品と考え見映えまでこだわる
次回は、採用される面接のポイントについて詳しくお聞きします。
取材・文:山本二季