ライバルに打ち勝つ“より濃い”美容師を輩出していきたい【LANVERY代表 菅野太一朗さん】#2
大手有名サロンの総店長を経て、自身のサロン「LANVERY」をオープンさせた菅野太一朗さん。絶え間ない努力で培ってきた技術力と、実直で優しい人柄で、お客様のみならず美容業界からも厚い信頼を得ています。
後編では、LANVERYの魅力をさらに詳しく。菅野さんが考える美容師のこれから、働き方や教育についてもお聞きしました。
お話を伺ったのは…
LANVERY代表 菅野太一朗さん
都内2店舗を経て独立。2016年、表参道に「LANVERY」をオープン。ビューティ、ホリスティック、ウェルネスをコンセプトにしたサロンは、人生をより豊かに、自然体な美しさと共に歳を重ねていきたいと願う大人の女性たちから支持を集める。カットはもちろん、専属スパニストによるヘッドスパメニューも好評。
素敵に歳を重ねていきたい大人の女性のためのサロン
――LANVERYのコンセプトを教えてください。
ビューティ、ホリスティック、ウェルネスという3点を柱にしています。
自分も美容の仕事とともに歳を重ねてきて、大人になるほど人生の豊かさとか自然体な美しさが大切になってくるのかなと感じます。40代、50代と素敵に歳を重ねていけるよう、そのために美容師がどんな提案をできるのか。
大人世代に向けたコンセプトでもあったのですが、意外と若い子たちからの共感も得られているようで。時代はそういう方へ向かっているのかもしれません。
――どういったメニューを打ち出していますか?
まず自分たちの技術でそもそもの髪を傷めてしまったらいけないので、極力ダメージをゼロに近づける。限りなくゼロにする。その上で、プラスαのどういったケアができるのか。
年齢で髪にツヤがなくなってきた、白髪が増えてきた、頭皮の悩み……それらに応えられるようなところを意識してメニュー構成しています。
髪質改善や水素ケアカラーは人気ですね。専門のスパニストが在籍しているので、ヘッドスパだけでも予約を入れてくださるお客様が多いです。
――「頭頭脳プログラム」というのも気になりました。
これは、毛根に溜まった老化脂を真空圧で取り除いて、薬剤で栄養をしっかり入れていくというもの。特殊なマシンを使って行います。
毛髪サイクルが整うので抜け毛、薄毛の予防になるのと、肩凝りや眼精疲労の改善、根元の立ち上がりがふんわり軽くなるなど、相乗効果も高いようです。リラクゼーションよりもしっかり効果を追求するタイプ。女性だけでなく男性にもおすすめです。
――施術メニューもプロダクトも色濃く充実している印象です。
常によいものへのアンテナを張って、情報を取りにいくようにしています。入れ替えもけっこうしますよ。
サロン、美容師としてのブランド価値を高めていきたいので、いろんなものを勉強して、それをスピード感を持って取り入れていく。スタッフは次々と覚えることがあって大変かもしれませんけどね(!)
自分の仕事に没頭できる。そんな働く環境をサロン側から提供する
――サロンでの働く環境についての考えは?
働きやすい環境というのはやはり考えますね。例えば、女性が子育てをしながらでも美容師を続けていける勤務体制。
うちも産休明けの美容師が一人いまして、今はオープン〜16:30まで時短で働いてもらってます。どんなサポートがあるといいのか、何が必要なのか、そういう具体的な部分は勉強して取り入れるようにしています。
――今は働き方も自由になってきました。
「ワークライフバランス」なんて言葉がちょっと前にありましたよね。仕事と家庭・プライベートを両立させる、充実させるというのは確かに理想の形。
最近は、環境や時間、給料なんかの側面からこの仕事を選ぶ人も増えています。それはもちろん大事ですけど、やはり美容師を本気でがんばろう、質を高めていこうという姿勢が大前提であってほしい。
給料も休みも心配せずに、自分の仕事に没頭できる。そんな環境をサロン側から提供できればいいのかなと考えます。
――仕事に対してのモチベーションも高まりそうです。
うちは、スタッフ全員が毛髪診断士かヘアケアマイスターの資格を必ず取るようにしています。受講料だったり、資格を取るのに必要な費用はもちろん会社が負担。
土台は会社が整えて、その上でしっかり勉強してほしいということ。そういった知識を得て、積み重ねて働いていくことが、美容師としての価値を高めてくれるはずなので。資格だけの話ではないですが、より濃い美容師を目指してほしいです。
――自分にとっての強みにもなりますね。
そうなんですよね。世の中やっぱり競争社会なので、そこをどう勝ち抜いて進んで行けるか。若い頃からしっかり練習してスキルをみがいて、知識をつけることは、時代関係なく大切。
僕も昔はめちゃくちゃ練習して技術を高めるためにがんばった。その全集中は青春だったし、その後の糧になっているのは確か。働く上で、誰しもそういう時期があってもいいんじゃないかと思います。
美容師がもっと身近になって志高く目指す若者が増えてほしい
――スタッフへの教育面でのモットーは?
感情や自分だけの解釈は抜きにして、事実だけを伝えること。例えば、「それじゃ遅いよ!」ではなく、「無駄はどこにあったと思う? このコーミングいらなかったんじゃないかな?」という具合に、物事のファクトだけを伝えていく。
それが理解しやすいと思うし、その方が修正力もつくと思います。そのためにはマンツーマンでしっかり見てあげることが大事になってきます。個人や個性を見て、その子に合ったカリキュラムの進め方や順番を変えたりなどもしていますね。
――自分らしい成長ができそうです。新しいスタッフも入ってくる予定ですか?
来年度の4月から入る新卒がすでに内定しています。その子は高校一年生から美容室でアルバイトをたくさんしていたそうで、うちにも今バイトに来てもらっています。
バイトの後に練習もすでに見ています。入客はできませんが、バイトをしながらサロンの現場は見られるので、学びはいろいろあると思います。
目指すは、「入社0日でスタイリストデビュー、初月から売り上げをガンガン作る!」という。そんなチャレンジをしています。
――新しい形ですね。入社前からサロンの現場を体験できるのも魅力。
美容学校で学んできたことが全てではないし、いざ就職して働いてみて分かることだっていろいろありますよね。美容師を目指していても、その辺のギャップで続かない、辞めてしまう人も多いのではと思います。
学生の頃から、将来携わりたい職の現場を見て、肌で感じてもらえればイメージもつけやすい。そこからなじんでいって、スライドするように就職できたらいいんじゃないかと。
練習できる環境も用意して、サロン側もアルバイトで手伝ってもらうからには生産性も高めていく。そんな循環ができたら理想。美容師という職業がもっと身近になって、志高く目指す人が増えてほしいです。
菅野さんがオーナーとして大切にしている3つのこと
1.若い頃に本気で打ち込む情熱
2.「事実だけを伝える」教育
3.仕事に没頭できる環境作り
取材・文/青木麻理(tokiwa)
撮影/高嶋佳代