スタッフの健康をサポートすることで生産性アップ&離職率ダウンを実現する施策【iii代表取締役 寺村優太さん】#1
「iii(スリー)」は、美容業界の多くの人が悩まされている働き方や低所得、離職率などのあらゆる問題を改善するために立ち上げられました。美容従事者がイキイキと過ごせる環境を目指すためにさまざまな事業へ取り組んでいます。
今回寺村さんと「Esthe Pro Labo® 」※コラボのもと行ったセミナーは、サロン経営者に向けてスタッフの健康を支援し、生産性アップや離職率ダウンを実現する新施策がテーマ。いち早くスタッフの健康管理に着目したiiiでは、Esthe Pro Labo®の商品を愛用していることから、今回のコラボが実現しました。
スタッフの健康がどのように発展や離職率につながっているのか、語っていただきます。
※Esthe Pro Labo® とは、エステティック・スパ・ヘアサロンなどの施術効率のサポートサービスを中心に行うほか、自然界に存在する生命力を活用して開発された「インナー・ビューティ・プロダクツ」を展開しているブランドです。
TERAMURA’S Profile
iii代表取締役 寺村優太さん
山野美容専門学校を卒業後、都内のサロン勤務を経てフリーランスに転身。「髪質改善」にいち早く注目したことで話題を集め、著書「美髪のルール」は3万部のベストセラーに。2020年には、株式会社iii(スリー)を立ち上げ、 VRを駆使した教育改革やプロダクトのプロデュース・開発に注力。さらには、採用・求人、集客、SNS活用法のコンサルティングや講習活動など、活動は多岐にわたる。
iiiが大事にしている3つの「ミッション・ビジョン・バリュー」とは?
寺村さんが代表を務めるiiiでは、「ミッション・ビジョン・バリュー」の3つを重要視しています。そもそも「ミッション・ビジョン・バリュー」とは?
★ミッションとは?
寺村さん:今の美容業界で常識とされている部分が、他業界では非常識とされていることが多々あります。例えば、会社と個人でスタイリストデビューを目標に設定するにあたって、勤務時間外に練習することが当たり前とされてきましたが、一般の業界ではブラックな働き方だと言われかねません。こうした問題一つ一つを解決するための根本を捉え、見直して改善策を見出すことを、ミッション(iiiの使命)としています。
★ビジョンとは?
日本の「髪結」の文化は約100年前に始まりましたが、自宅でのヘアセットが習慣化したのは約70年前。水道と電気が普及したことで、自宅でヘアスタイリングができるようになり、ヘアへの関心を持たれ始めた歴史があります。今の状態を鑑み、未来について考えたとき、VRやAIなどを駆使したサービスの在り方が求められるだろうと想定しました。未来のサービスのあり方や現在の改善策などのミッションには、必ず明確なビジョンが必要になります。
★バリューとは?
バリューは、ミッションについてどのように行動して達成するかの基準、社会から見たその企業の価値を指しています。
iiiが提示している5つのバリュー
1 仕事に情熱を注ごう
2 社員が公私共に幸福でいられる職場環境をみんなで作ろう
3 常識を疑い、変化を恐れず、新しいことに挑もう
4 より良い未来を作るために考え抜こう
5 チャレンジした人の失敗を責めない、称えよう
今回のセミナーに関係しているのが、2の部分です。会社で良い業績を獲得するためには、社員全員がハッピーでないと良いものは生み出せないと思っていて。達成するには幸福(ウェルビーイング)の基準を強化すること、つまりは所得の安定や健康状態、求められる役割の3つが必要だと考えました。
健康に着目した理由は、僕自身が病気を経験したこともありますが、業界的に体を壊す人を多く見てきたからです。健康でなければ、働くことや日常生活を送ることすら困難になりかねません。離職率を下げるためにも、スタッフの健康管理を経営戦略に入れることを考えるべきだと思い、iiiの経営戦略に取り入れました。
健康を経営戦略に組み込んだ理由は自身の病気の経験から
ご自身の経験により、健康管理に着目したと話す寺村さん。その背景とは? また、従業員が健康でいることで仕事に与える影響とは?
寺村さん:アシスタント時代に体を壊し、リーキーガット症候群を患ってしまいました。慢性的に小麦ばかり摂取したことで腸に炎症が起きてしまい、皮膚が荒れたり咳が出たりなど数々の不調に悩まされました。
病気になってしまう最大の理由は「知識」「お金」「時間」がないこと
寺村さん:過去の自分を含め、アシスタント時代といえばお金がない、勤務時間外を使った過度な労働環境、そもそも食への知識がない人が多い印象。時間もお金も知識もないと、その一瞬が満たされれば…と、添加物がたくさん入ったものや防腐剤が入ったものを選びがちになり、不摂生な食事が積み重なって、さまざまな病気に罹る原因を無意識で作り上げてしまっているのです。
スタッフの健康リテラシーの低さは、サロンにどう影響してしまうのか?
寺村さん:スタッフが体調悪そうにしていたら、お客様に満足度を与えるどころか心配されてしまいますよね。体調が良くないままだと、お客様の満足度も達成できずに売上も上がらず、最悪な場合は辞めなければいけないほど体調が悪化するなど、離職にもつながってしまう可能性があります。もちろん、サロンとしてもスタッフの売上が上がらなければ必然的に利益も低下するので、体調不良によって与えられる影響は大きいと言えます。
健康に気をつけろと呼びかけすることは簡単ですが、呼びかけだけでは身につきません。知識がないスタッフに対して、サロンや会社で健康リテラシーの強化をサポートする義務があると考えました。
スタッフが幸福で過ごせることがサロンの業績アップにつながると考え、iiiの経営戦略に、スタッフの健康管理をするために福利厚生を組み込んだのです。
寺村さん自身が経験した健康不良により、従業員の健康を維持することがiiiの経営戦略に組み込まれたとのこと。実際に、iiiが福利厚生に導入しているサービスとは?
寺村さん:従業員の健康を管理するために行っていることは3つあります。
まずは、健康の基礎知識を取り入れること。業務時間内で仕事に必要なことを身につけてもらうために、「チューニング」という時間を設けています。
――チューニングについて、詳しく教えてください。
お昼休憩の前にお互いの業務内容や状況を把握し合ったり、社内のメンバーの関係性を深めたりする目的のもと行っています。毎日30分の時間を設け、業務共有が早く終わったら残りの時間はインプットの時間として充ててもらいます。時間を確保することで健康における基礎知識を従業員に広めることを叶えました。
基礎知識を蓄えたらあとは、実践を習慣化。中途半端に知識だけ持ったままにしてしまうと、怪しいネットワークビジネスにハマってしまう人が現れてしまうリスクがあるので、知識がついたあとも継続して会社でサポートし続けることが大事です。
まずは、健康そのものの知識を社員に植え付けさせるのですね。実際にiiiで実践しているサービスとは、どんなもの?
寺村さん:健康志向の方が多く利用しているEsthe Pro Labo®のサプリメントやドリンク、食品を低コストで仕入れ、スタッフが自由に利用できるようにしています。
社内には酵素ドリンクバーやサプリメントを設置し、いつでも飲める環境を整えました。ほかにも、プロテインをシェイカーと共に支給し、約1ヶ月の期間を決めて各従業員に実践してもらい、自分の体で実感してもらう取り組みも実施。効き目を実感した結果、「疲れにくくなった」「肌が綺麗になった」など、一人一人の健康への関心が高まった様子が見られました。
どこよりも手厚いサポートの導入はほかのサロンとの差別化にもなり得る
会社の経営戦略のもと、スタッフの健康管理をしているiii。健康への取り組みを強化することで生まれるメリットとは?
寺村さん:美容業界の働き方改革はまだまだ改善する余地があります。福利厚生が整っていたり、働き方に合わせた雇用形態を選べたり…基本的なところをクリアするサロンはだいぶ増えました。ですが、同時に他のサロンと比べたときに差別化ができないとサロンを志願するメリットを感じられません。そこで注目してほしいのが従業員の「健康管理」です。
「このサロンで働きたい」と思わせる方法は、もはやサロン独自の技術やデザインを打ち出すだけではなく、そこにいることで受けられる唯一無二のサービスにあると思っていて。健康にフォーカスした取り組みは、ほかのサロンとの差別化につながります。サロン側からしても、スタッフが健康でいることは長期雇用への期待値も高まると考えます。
取材・文/東 菜々(レ・キャトル)