明日の接客から試してみてください! 視線に見る「面白心理学」
日々さまざまなお客様が来店するサロンやショップ。ありきたりな接客に飽きてきたら、ちょっとした心理学をトークにおり混ぜてみてはいかがでしょう。
お客様のことが今まで以上に理解できると同時に、会話の糸口にもなる心理学。
自分以外の人をより深く知ると同時に、自分の心のなかを見つめていっそうレベルの高い接客、人間関係を目指しましょう。
お客様と至近距離で向きあうネイリストをはじめ、鏡越しに接客する美容師、身体に直に触れるセラピストの皆さんも、お客様の視線の先が気になるってこと、意外に多いのではないかと思います。しかし、そんななにげない視線の動きに、じつはお客様が考えていることを知る大きなヒントが隠されていたりするってこと、ご存知でしょうか。
「目の動きと脳の働きには密接な関係がある」という説は、じっさいに心理学ではよく知られるところ。たとえば、施術方法や仕上がりについてのカウンセリングで、嫌なことを嫌とはっきり言えないお客様、会話上、調子を合わせているだけで違和感を感じているお客様は、意外と多いもの。そんなときに、いちはやくお客様の本音を察知し、すばやくリカバリーするためにひと役買うのが、この視線の動きから相手の心を察する心理術なのです。
ぜひご一読の上、誰よりも“空気の読める”接客術を身につけてください。
目線の位置が表す脳の働き
はじめに、おおまかな視線の向きが示す脳の働きについて知っておきましょう。まず、左右への視線はこんなイメージと関連づけられます。
※下記は視線を向けているご本人から見た方向を示しています。お客様と対面する場合はこれとは逆、鏡ごしなら鏡で見えている通りの方向でOKです。
※左利きの方は視線の向きが逆になります。
・左:過去のイメージ
・右:未来のイメージ
おわかりいただけるでしょうか。人の視線は、過去のことを語るときは左、未来のことを語るときは右に移動する傾向があるのです。
さらにわかりやすいように、ここで面白い例をあげましょう。
「3日前の午後8時にどこにいた?」と、過去に対する質問を投げかけたとき、相手が右側を向いて思い出すそぶりをしたら、その答えは嘘である可能性が高いのだとか。本来、過去を思い出すための質問なのに、未来のイメージで考えている=過去にはなかった「何か」を付け加えようとしていることにほかなりません。このように過去に対する質問にうっかり右側を向いて考えてしまった人は、嘘をついている可能性が高いことを示します。恋愛面で相手にこの心理術を使われたら、後ろめたい行動をしている人はひとたまりもありませんね。
また、視線の向きを上、横、下の3つに分けると、以下のようなイメージと関連づけられます。
・上:視覚のイメージ
・横:聴覚のイメージ
・下:感覚のイメージ
視線の上、横、下はそれぞれ五感を表しており、その位置によって考えている感覚が異なるということ、おわかりいただけたでしょうか。
視線の位置と思考の属性
無意識のうちになされる目の動きが表す脳内イメージをふまえて、つぎからは実際の視線の位置から相手が今考えていることの属性を探っていきましょう。
皆さんも(例)にある質問に対する答えを考えながら、自分の視線の動きも意識してみてください。※左利きの方は視線の向きが逆になります。
1 斜め上(左)を向いているとき
視覚的に記憶しているイメージ(過去に経験した出来事や、昔見た風景など)を思い出している。
(例)学生時代の親友が着ていたコートの色は?
2 斜め上(右)を向いているとき
視覚的に今までに見たことのないイメージを形成(想像)している。
(例)世界で一番美しいドレスと、その色を想像してみて。
3 左横を向いているとき
聴覚的に記憶しているイメージを思い出している。
(例)最寄り駅の発車メロディーは?
4 右横を向いているとき
聴覚的に今までにみたことのないイメージを形成(想像)している。
(例)宇宙人の声を想像してみて。
5 左下を向いているとき
感覚的(嗅覚・味覚・触覚他)など、身体的な感覚イメージを思い出している。
(例)昔の恋人が使っていた香水は、どんな匂いだった?
6 右下を向いているとき
感覚的(嗅覚・味覚・触覚他)で経験したことのないものを想像するとき。
または、内在的な言葉(ひとりごと)を言うとき。
(例)月の砂の匂いを想像してみて。
お客様の視線の動きに見る本心
接客中によくあるこんな視線の動きをピックアップ。現場で役立つ具体的な対処術も掲載しますので、ぜひ参考にしてみてください。冒頭の接客例のように、不本意な思いを抱えているお客様も、こんなふうに目線の動きを見れば、内に秘めた本当の気持ちが分かるかもしれません。
1 まばたきが多い
緊張や不安等で、落ち着かない心理状態を表します。
初めてのお店やスタッフに緊張しているのかもしれません。こんなふうに緊張しやすいお客様のなかには、萎縮するパターンのみならず、逆に攻撃的になってしまうというやっかいなパターンも。いずれにせよ、リラックスしていただけるよう和やかなトークや優しい声のトーンを心がけたいものですね。
2 視線が泳ぐ
自分に自信がないタイプ。こちらも不安感を表し、打ち解けるまでにはやや時間がかかります。急に距離を縮めようとすると不快に思う可能性があるので、軽い世間話から、徐々に距離感を縮めていきましょう。
3 目を合わせない
人は隠し事をしている時、こんなふうに相手の目を見ない傾向にあります。
顔では笑っていても施術後にいっさい目が合わなかったら、その施術があまり気に入っていなかった、なんて可能性も——。その日の施術を振り返り、相手が何を求めていたのか、もう一度考えてみましょう。
4 大きく目を見開く
自分のことをよく理解して欲しいという気持ちの表れです。同時に相手にどう思われているか非常に気になっているときに、この表情をするようです。
こんなふうにぱっちりと目を見開くお客様は、ささいな話でもしっかりと話を聞いてあげましょう。忙しいからと、適当な相づちは厳禁です。
5 目を閉じて話す
とくに男性に多いと言われるこのしぐさ。本音が漏れるのを防ぎたい心理と、頭のなかで言いたい事を整理しながら話したいという2パターンの心理があるとされています。状況からどちらの心理状態かを判断し、前者の場合はあまり深く突っ込みすぎず、早々に話題を切り替えましょう。
まとめ
いかがでしょう。何気ない視線の動きがこんなにも雄弁に心理状態を語るなんて、ちょっと意外だったのでは?
仮にネガティブな感情を読み取ってしまっても、いちはやくそれに気づくことができれば、リカバリーのチャンスも増すというもの。ぜひ、ポジティブに活用して、お客様とよりよいコミュニケーションを築いてくださいね。