美容師の勤務時間はどれくらい?残業・休憩問題とは?|サロンの労働環境を改善するコツ

美容サロンでは、雇用契約で勤務時間を決めています。しかし、忙しいときには、残業が生じたりすることもあるでしょう。

残業、つまり時間外労働が発生したら、サロンオーナーは残業代を支払わなければなりません。しかし、「サービス残業」と見なされて残業代が支払われないなどのトラブルも見られます。

今回は美容サロンの労働環境について、残業時間、美容師の平均収入、残業代のトラブルを防ぐ方法などを解説します。

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美容師の勤務時間はどれくらい? 知っておきたい労働基準法の規定


美容師の勤務時間は、労働基準法で定められた規定とともに把握しておくのがおすすめです。ここではこの法律で規定されているルールを解説しながら、美容師のおおまかな勤務時間をご紹介していきます。

労働基準法で定められているスタッフの勤務時間とは?

美容師に限らず、勤務時間は労働基準法で定められた規定に則って調整されなければなりません。まずは、法律で定められている勤務時間について見ていきましょう。

労働時間は1日8時間、週に40時間

労働基準法では、勤務時間に関して「1日8時間、週に40時間」という基準を設けています。この基準は美容師に限らず、あらゆる職種で遵守されなければなりません。また、超過分については残業扱いとなり、別途給与の支払いが必要となります。

必要な休憩時間は労働時間によって違う

労働基準法では、休憩時間に関する規定も設けられているのが特徴です。必ず確保される必要がある休憩時間は労働時間によって異なり、1日の勤務時間が8時間未満だと休憩時間が短くなることもあります。このことは、美容師でも同様です。

週の残業時間は15時間まで

労働基準法では、週の残業時間の上限を15時間までに設定。15時間を超える残業をする場合、あらかじめ「36協定」を締結し、労働基準監督署へ届け出なければいけません。

違反すると、雇用主は罰則の対象となってしまいます。美容師は残業をすることも少なくないため、この基準は必ず覚えておくようにしましょう。

休日・有給休暇の規定もある

労働基準法では、休日と有給休暇に関する規定も設けられています。それぞれの日数に関しては勤務日数などによって異なり、詳細に関しては自身の勤務スタイルをもとに計算する必要があるということです。

美容師は不規則な勤務を命じられることも少なくないため、毎月の最低休日数や残り有給休暇日数などはつねに把握しておくようにしましょう。

厚生労働省の統計では?|2021年賃金構造基本統計調査の結果


厚生労働省が発表した「2021年賃金構造基本統計調査」によると、美容師の月給(企業規模10人以上)は、きまって支給する現金給与額が25万4,800円、年間賞与その他特別給与額が4万7,500円となっています。

男女比でいうと収入は男性のほうが多く、男性の現金給与額が28万6,100円、年間賞与その他特別給与額が4万2,500円です。

一方、女性の現金給与額が23万7,100円、年間賞与その他特別給与額5万300円となっています。所定内実労働時間数は171時間、超過実労働時間数は3時間です。

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これってどうなの?美容室にありがちな残業問題を解説


実は美容師が働く美容室やサロンなどは、残業時間問題が発生しやすいといわれています。つづいては、ありがちな残業問題について見ていきましょう。

営業時間外にアシスタントがカット練習|残業代は発生する?

美容室などでは、アシスタントが営業時間外にカット練習をすることが多いといわれています。ただし、このような勤務時間外でのカット練習は、使用者(賃金を支払う人のこと)の指揮命令下でおこなう場合に限り残業が発生するものです。そのため、アシスタントが自主的におこなう場合には残業代は発生しません。

フリーランスと面借り契約|残業代は発生する?

美容室などでは、フリーランスの美容師と面借り契約を締結したうえで働いてもらっていることも少なくありません。

この場合の残業代の発生条件については、使用者と美容師のあいだで勤務時間を決めているなど、使用者と労働者(賃金を支払われる人のこと)の関係が明確であることが重要となります。この関係が明確である状況で残業をした場合、使用者は残業代を支払う必要があるということです。

店長などの管理職|管理監督者には残業代は不要だけど…

美容室などでは、店長などの管理職の残業代をどうするかという問題もあります。通常、管理監督者への残業代の支払いは不要ではあるものの、管理監督者と管理職は必ずしも同じ扱いとはいえません。

そもそも管理監督者とは、労働基準法で定義された役職のひとつです。この役職に該当しない店長などの管理職については、残業代が発生することとなります。

残業代でのトラブルを未然に防ぐには?


美容サロンで、閉店後に業務として施術練習や研修を命じた場合は残業として扱い、残業代を支払わねばなりません。

しかし、業務命令で残業しているにもかかわらず残業代を支払わないケースもあります。このような残業を「サービス残業」と呼びますが、これは労働基準法に違反する行為です。

サービス残業を続けると、美容師は拘束時間の割には収入が増えず、労働意欲が低下して離職しかねません。美容サロンは従業員に訴えられるリスクが高まります。

残業代でのトラブルを未然に防ぐ方法について、労働基準法における残業の定義なども交えながら解説します。

残業代が発生するのはどんな時?

まずは残業代がどのような状況で発生するのかを、正しく把握することが重要です。

労働基準法32条では、「法定労働時間」として「1日8時間・1週40時間」という労働時間の上限を定めており、この法定労働時間を超えたときに残業代が発生します。

8時間分の労働を終えたのち、自発的に練習や研修のために美容サロンに残った場合は、残業代の対象外です。しかし、美容サロンが残業を命じた場合は残業代が支払われます。ただし、自発的な練習や研修であっても残業代を支払うサロンもあるようです。

残業代のトラブルを防ぐには?

トラブルは時間が経つと解決しづらくなるため、残業代のトラブルを未然に防ぐための方法を知っておくと安心です。残業代のトラブルを防ぐ方法を二つ解説します。

サロン|固定残業代を導入する

「固定残業代」とは、毎月の残業時間を想定して、その分の残業代を固定給に加えて支払うものです。「みなし残業手当」とも呼ばれます。時給と固定残業代から、おおよそ何時間分の残業時間が含まれているかを計算することが可能です。

たとえば、東京都の最低賃金1,072円(2023年1月時点)を用いて、固定残業代として3万円が支払われていたときの残業時間数を計算してみましょう。

1時間あたりの残業代は1.25倍で計算するため、1,072円を1.25倍して1,340円です。固定残業代3万円を1,340円で割ると、22.38時間分が支払われていることになります。

なお、固定残業代は残業がなくても支払われますが、月の残業代が固定残業代分を超えた場合、従業員は差分を請求することが可能です。

サロン・美容師|出勤管理をしっかり行う

固定残業代を導入しても、労働時間数を正しく把握できていなければ、残業したことの確認や証明ができず、トラブルになるおそれがあります。そのため、出勤簿などによる出勤管理が欠かせません。

出勤簿は残業だけでなく、「出勤日と労働日数(出社・退社時刻)」「労働時間数」「残業をした日付、時刻、時間」「休日労働、時刻、時間」なども記録できます。エクセルで出勤簿を作ることもできますが、出勤簿アプリを使うと入力や管理がかんたんです。

従業員側もオーナー側も正確な残業時間を把握でき、残業代を正しく計算できるようになります。また、出勤簿に残業をした目的や、残業を命じた人を記載する欄を設けておくと、オーナーは残業と認める否かを判断しやすいでしょう。

未払いの残業代がある場合には?

実際に未払いの残業代がある場合、従業員は支払いを請求することが可能です。美容サロンのオーナー側と従業員側に分けて、未払いの請求における注意点を説明します。

サロン|適切な請求であるかどうかをチェック

オーナーは、まず適切な請求かを確認しましょう。

たとえば、従業員が実際に残業した時間よりも多く請求してきた場合は「過大請求」と見なされ、オーナーは過大分を支払う必要はありません。また、残業代請求の時効は3年となっており、時効を超えた残業代は支払わなくてよいとされています。

しかし、正当な残業代が支払われていないと従業員が判断した場合、訴訟に発展することもあります。この場合は従業員とじゅうぶんに話し合い、正当な請求だと判明したら、速やかに支払うべきです。

美容師|未払いがある証拠を集める

従業員側は、過大請求ではないことを証明するために、確固たる証拠が必要です。次のようなデータや書類を集めると、残業時間と拘束時間を証明できます。

・タイムカード
・出退勤時刻を記載したメモ書き
・顧客からの指名履歴
・同僚の証言

希望の金額を支払ってもらうためには、オーナー側との交渉も必要です。交渉に不安がある場合は、弁護士に頼ることも検討しましょう。

知っておきたい休憩時間の問題を解説!


労働基準法では、労働時間が6時間超で45分以上、8時間超で1時間以上の休憩を取ることが定められています。しかし、美容サロンでは、じゅうぶんに休憩時間が取れないことも少なくありません。

ここでは、美容サロンは休憩が取りづらい理由と、美容サロンでの休憩時間の取り扱いについて解説します。

休憩を取るのは難しい?

休憩時間の取りやすさは、美容師のランクによって変わります。スタイリストとアシスタントが休憩を取りづらい理由をみてみましょう。

スタイリスト|まとまった休憩がしづらい

クリニックや飲食店では、昼休憩などの名目で店舗を一時的にクローズすることがありますが、多くの美容室はこのようなクローズを挟まずに営業します。また、飛び込みのお客様が来たら、多くのサロンは可能な限り受けるでしょう。

カットパーマカラーリングなどすべての施術を担当するスタイリストは、つねにお客様の対応に追われます。そのため、まとまった休憩が取りづらいのです。

決まった時間にランチや休憩を取れることはほとんどなく、お客様がいないときを見計らって、食事をしたり休憩を取ったりするスタイリストも多く見られます。

アシスタント|休憩時間がスキル磨きに

アシスタントはお客様の対応を直接することは少ないため、スタイリストよりも休憩時間は取りやすいでしょう。

しかし、美容サロンに入ったばかりのアシスタントは学ぶべきことが多く、休憩時間を使って施術の練習やスキル磨きに充てることがあります。そのため、アシスタントであっても、まとまった休憩時間を取れるとは限りません。

パートやアルバイトでも休憩できるの?

労働基準法が定める休憩時間は、従業員の就業形態は関係ありません。パートやアルバイトでも、休憩時間は労働時間が6時間超で45分上、8時間超で1時間の休憩が義務付けられています。

つまり、パートやアルバイトでも、一定の労働時間を超えたら休憩を取らなければなりません。パートやアルバイトを理由に、美容サロンが休憩を与えないことは違法行為であり、刑罰の対象となります。

残業中でも休憩はあるの?

一定の労働時間を超えたら、残業中であっても休憩が発生します。休憩時間はあくまでも労働時間によって与えられるものであり、勤務時間内か残業中かは関係ありません。

たとえば、もともと6時間勤務だった従業員が残業して8時間勤務した場合、45分ではなく1時間の休憩を取る必要があります。

美容サロンのなかには、勤務時間内の休憩とは別に、2時間以上の残業で15分から30分ほどの休憩を認めているところもあるようです。ただし、このような休憩の付与は義務ではありません。残業中の休憩の有無については、美容サロンの就業規則を確認しましょう。

待機時間は休憩時間になる?

雇用形態に関わらず、待機時間は休憩時間とみなしません。

美容サロンは日によっては予約がなかったり、お客様が予約をキャンセルしたり、予約時間に遅れたりすることもあるため、美容師には待機時間(手持ち時間)があります。

待機時間にはとくにすることがないこともありますが、業務から完全に離れているわけではないため、休憩時間扱いにならないのです。

サロンの労働環境を改善したい! どんな改善策があるの?


美容室やサロンにおける美容室の勤務時間の調整は、労働基準法に則っておこなわれなければなりません。しかし、実際には勤務時間の調整がむずかしい状態にある美容室・サロンも多いのが現状です。

美容室やサロンにおいて美容師の勤務時間を労働基準法の規定どおりに調整するには、労働環境を改善するのが有効となります。つづいては、その具体的な改善策を見ていきましょう。

スタッフとの契約関係を見直す

美容室・サロンにおける美容師の勤務時間を調整することを目的とした労働環境の改善では、スタッフとの契約関係や働き方の形態を見直し、労働時間超過などを防ぐことが重要です。ここでは、その具体的な方法やメリットをご紹介します。

パート・アルバイト勤務のメリット

美容師の勤務時間を調整するうえでは、パート・アルバイト契約を上手に活用するのが有効です。パート・アルバイト契約を結ぶと、雇用する側には時間帯によって美容師の人数を調整でき、無駄な人件費を削減できるといったメリットが生じます。

また、パート・アルバイト契約を締結した場合、雇用される側は勤務時間帯や労働時間などの調節がしやすくなるというメリットが得られるでしょう。

業務委託・業務契約のメリット

美容室やサロンで業務委託あるいは業務契約で美容師に働いてもらう場合、雇用する側は繁忙期などに合わせて短期・単発のスタッフを確保できるという点でメリットが得られます。

一方、雇用される側にはさまざまな環境で働けるため多様な経験を積みやすくなる点や、フリーランスとして独立しやすくなるといった点でメリットが生まれるでしょう。

福利厚生の充実

美容師の士気を高めるという点や優秀なスタッフを確保するという点においては、福利厚生の充実もまた美容室・サロンにおける有効な環境改善策として挙げられます。

その一例が、リフレッシュ休暇や慶弔休暇などを取りやすくするといったものです。また、残業代をしっかりと支払うことなども労働環境の改善策として有効でしょう。

業務の効率化を考える

美容室やサロンにおいて労働環境の改善をおこなうと、業務効率が低下する場合もあります。そのため、労働環境の改善では業務の見直しによる効率化も並行しておこなうことが大切です。ここでは、その際に有効な対策について見ていきましょう。

ワークフローのマニュアル化|閉店後の作業など

労働環境の改善の一環で残業時間の削減をおこなう場合、閉店後の作業などのワークフローをマニュアル化するのが有効です。スタッフが迷わずに同じ流れで営業終了後の作業をできるようにしておけば、無駄な残業代の発生を防げるという点で使用者側にもメリットが生じます。

また、閉店作業に限らず、ワークフローのマニュアル化は進めることがおすすめです。たとえば、連絡網を作成しておけば緊急時の情報伝達もスムーズにおこなえるため、特定のスタッフだけに余計な作業が発生することも防ぐことができます。

POSシステムの導入|顧客管理の効率化

美容室やサロンにおける業務の効率化ではPOSシステムの導入を検討するのもおすすめです。POSシステムでは顧客情報の管理ができるため、たとえば予約情報の管理やそれに応じた必要なスタッフ数の確保などがしやすくなるといった点でメリットが得られます。

一方、POSシステムの導入にはある程度のコストがかかることから、費用対効果をよく考えたうえで検討することも重要です。

シフト制の導入|勤務時間・ルーティンワーク

スタッフにとっての働きやすい職場づくりをすすめるためには、シフト制の導入による業務効率の向上を図ることも大切です。早番・遅番などのシフト勤務を導入すれば、個々のスタッフの残業の削減なども可能となり、使用者側にもメリットとなるでしょう。

また、それと同時にルーティンワークの明確化などもしっかりとおこなえば、業務の引き継ぎでトラブルが生じてしまうのも防ぐことができ、さらなる業務の効率化が可能になります。

スタッフがいきいきと働ける美容室を作ろう!


労働基準法では労働時間や労働日数、残業時間などに関する規定がこまかく定められています。これらは美容師に限らず、あらゆる職業で遵守しなければならないものです。そのため、美容室やサロンにおける勤務時間の調整でも基準とする必要があります。

一方、スタッフが働きやすい美容室を作り上げるには、勤務時間だけでなく個々のスタッフの雇用形態の再確認や労働環境の改善などを図ることが不可欠です。そのうえで職場としての問題を把握・改善できれば、スタッフが働きやすい職場を作ることができるでしょう。

休憩問題や残業代トラブルが原因で訴訟に発展する可能性もありますので、オーナー側も従業員側も、休憩時間と残業に関する知識を深め対策を取っておくことが大切です。

引用元
厚生労働省:「令和3年賃金構造基本統計調査」
厚生労働省東京労働局:「東京都最低賃金は10月1日から時間額1,0:72円になります」

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