人と人、人とモノを繋げるサロンを超えたアート空間『mono.hair』
「人とヒト、人とモノ。そんな「者」と「物」が繋がり合えるような場所を創りたい」という思いから誕生したヘアサロン「mono.hair」。クリエイティブ系の事務所が多数入っている大阪・南船場の順慶ビルの2階にあるこのヘアサロンは、アートギャラリーでもあるという特殊な空間。髪を切ってもらうだけでなく自分の生活をより豊かにしてくれる作品と巡り合うこともできます。ライフデザイン全般をも向上してくれるこの店の魅力を、オーナー永井章宣さんに伺いました。
自分の思いを実現するために
――まず、このヘアサロンをオープンされたきっかけとは何だったのでしょうか。
「僕は和歌山の田舎の出身なので、大阪の専門学校を卒業した後、若さならではの憧れもあって東京のサロンで働き出しました。結局、そんな軽い気持ちで続くわけもなく大阪に戻ってきて…。当時はちょっともう美容師を辞めようかなと思っていたのですが、この仕事の楽しさが忘れられず、結局大阪でも美容師を続けようと思ったのです。その後、先輩が、大阪にも新店を出すということで、その店のスタッフとして5年働きました。しかし自分の店ではないので、当然ながら自分のしたいことはなかなか通りません。正直、自分の店を出したいという強い思いはなかったのですが、“自分の好きなことがしたい”という気持ちが勝って、結果的に独立することになったのです」
人と人、人とモノを繋ぐ
――アートギャラリーとしても機能している特殊なヘアサロン。このコンセプトはどのように生まれたのでしょうか。
「昔カフェでバイトしたことがあって、そこには若いアーティストたちが集まっていました。そこでさまざまな人との接点を持つことができ、たくさんのアート作品にも触れることができて、自分自身の考え方も変わって世界観も広がりました。カフェバイトは短い期間ではありましたが、自分の人生において大きな転機になったと思います。この経験を基に『人と人、者と物がつながる美容室』みたいなコンセプトを考えるようになりました。僕らは単に美容師なので人の髪を切ることしかできないのですが、ここに作品展示してくださるアーティストさんを含めたさまざまな方々がこの店を通じて繋がることで、お客様のライフスタイルを豊かにしていくことができるのではないか、と考えたのです。単に髪を切ることだけでなく、そこから先に拡がっていくような店にしたいなと」
客同士が交わるイベントも
――具体的にどのような状況で人と人、人とモノが繋がるのでしょうか。
「端的な例でいえば、店内に飾っているイラストを気に入って下さったお客さんがいて、その方がご結婚される際、その結婚式で使うイラストを描いてほしい、と作家さんにお願いされるということもありました。それだけでなく、お客さんを招いてのライブイベントや仲良くしている作家さんのフリーマーケットなども開催していて、そこでお客さん同士の繋がりができ、作家さんの作品に触れることでライフスタイルを豊かにしてもらえるのではないかと。私たちにとっても新たなお客さんとの出会いの場にもなりますし、ヘアデザインのインスピレーションを受けることもあります。また、年1回、写真館として撮影会もやっているのですが、家族全員で髪の毛もキレイにして撮影される方も多いです。そうなるとお客さんのご家族とも触れ合える機会となるのです」
ヘアサロンに新たな意味をもたらしたこの店。後編では、内装に関するこだわり、施術メニューの特徴、そしてスタッフの育て方についても語って頂きました。
開店以来14年を経て繋がりは世代を超える『mono.hair』>>