美容師の個人事業主とフリーランスの違いとは? 独立したら必要な5つの手続き

美容師には、どこかのサロンで働く方法と独立し個人事業主として仕事をする方法があります。「たくさん経験を積みたい」と、個人事業主として開業の道に進む人も、最近では珍しくありません。

では、個人事業主の美容師になるためにはどうすればいいでしょうか?

個人事業主は独立した美容師なので、開業届などの手続きをしなければなりません。今回はそんな個人事業主の美容師に必要な手続きは何かを解説します!

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美容師の個人事業主とフリーランスの違いとは?

美容師の働き方は、お店と雇用契約を結んで働く社員やパートなどと、個人事業主として独立して事業を行うという2つのかたちがあります。

個人事業主になるのは、美容室の店舗を開店することが多いかもしれません。一方で、昨今ではフリーランスとして独立する美容師も増えています。

フリーランスは個人事業主に含まれますが、なかでも店舗を持たずに活躍している美容師のことを指すことが多いです。個人事業主の主な働き方を紹介します。

個人事業主の主な働き方を紹介

個人事業主の主な働き方には、開業、店舗と契約する、または場所を借りて営業する方法の3つが挙げられます。それぞれを詳しく見ていきましょう。

1. 開業

雇用されて働いていた美容師が個人事業主になる方法のひとつが、自分のお店を持つこと。

美容室開業のためには、当然店舗を準備しなければなりません。自宅を改装したり店舗を借りたりする必要があり、内装や外装にそれなりのお金がかかることに注意が必要です。

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美容師として独立するベストなタイミングは?開業にかかる費用相場や独立に必要なことを詳しく解説!

2. 業務委託

業務委託とは、店舗と美容師の雇用関係ではなく、業務を請け負う業者として業務委託契約を結んで働くことをいいます。契約の内容にもよりますが、雇用関係がないため比較的自由に働けるケースが多いようです。

報酬の形態も契約によって決まります。多くの契約では、売上に対して決められた割合の金額を受け取れる成果報酬型で、その割合は40~60%です。

開業資金がなくても、店舗営業の美容師として独立できるひとつの働き方で、集客も店舗側が行ってくれることが多いのがメリットです。

店舗とは雇用関係がないため、売上を上げれば上げるほど高い報酬を受け取れますが、仕事で病気やケガをしても労災が適用されなかったり、休業の補償がされないといったデメリットもあります。

3. 面貸し

面貸しとは、美容室の空いているセット面を借りて営業することをいいます。あくまで間借りしている状態なので、業務委託のように店舗の業務を請け負うことはありません。

店舗内の一角を使用してフリーランスとして営業をするかわりに、店舗に利用料を支払います。これも店舗との契約によりますが、固定の利用料を支払うケースや売上に対するパーセンテージを支払うケースが多いようです。

業務委託と同じように、売上が上がれば上がるほど報酬は増えますが、集客は個人でしなければならないため、お客様を呼べない美容師には厳しい働き方だといえるでしょう。

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面貸しとは? 業務委託やシェアサロンとはどこが違うの? 美容師とオーナーのメリットと注意点を紹介

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美容師が個人事業主になるメリットと注意点とは?

店舗で雇われる美容師としての安定感と引き換えに、個人事業主として独立する大きなメリットのひとつが自由を手に入れることだといえるでしょう。ただし、個人事業主になるうえで、気をつけたい注意点もあります。

そこで、美容師が個人事業主になるメリットと注意点を確認しておきましょう。

美容師が個人事業主になるメリットとは?

個人事業主になる一番のメリットは、働く時間や働き方を自分で決められることです。安定した売上さえ上げることができれば、休憩や休日などを自由に設定することができます。

そのため、店舗勤務では難しかった、休みが合わない友人との友情を深めたり、こどもの行事に参加したりできるようになるのがメリットです。

また、朝礼や会議など、接客以外の業務負担も減らすことができ、店舗側からの要求で行っていた残業や休日出勤も発生しません。店舗内の人間関係に悩む機会も減るため、人によっては仕事のストレスの多くが解消することが考えられます。

美容師が個人事業主になる上での注意点とは?

自由を手に入れられる反面、義務も発生することに注意が必要です。たとえば、これまでは店舗が行ってくれていた経理・予約管理・売上管理などを、すべて自分でやらなければなりません。

お客様の来店数が収入に直結するため、収入が安定しない不安もあります。店舗での指導や講習会などもなくなるため、自分で積極的に学びの機会を作らなければ、最新情報やトレンドの移り変わりを知ることが遅れてしまうことも考えられるでしょう。

また、集客は自分ひとりでやらなければならないため、軌道に乗るまでは、思ったより自由な時間が得られないということもあるかもしれません。

収入はどれくらい違いがあるの?

個人事業主になった場合、雇用されている美容師とどのくらい収入に違いがあるのか気になる方も多いでしょう。

厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査を元にしたjobtagのデータによると、美容師・理容師全体の平均給与は約330万円です。

フリーランス美容師の場合、どの程度働くのかや、ひとりで運営するのか、スタッフを雇用するのか、店舗で開業するのか、フリーランスとして働くのかなどによってかわります。

当サイトのシミュレーションによると、店舗開業をした場合、ひとりで運営する場合は売上のおよそ半分が収入になり、スタッフを雇用した場合は人件費として売上の40%程度が必要とされるため、売上額次第では平均年収よりも低くなってしまうことも。

面貸しやシェアサロンで営業するフリーランス美容師の場合、店舗にかかる経費を抑えられるため、毎日予約で埋まっている状態だと仮定すると、年収1,000万円も夢ではありません。

興味がある方は、独立した美容師の年収シミュレーションについて、下記記事もご覧ください。
美容師が独立した場合の年収は?かかる費用やシミュレーションも公開
フリーランスの美容師の月収や年収はどれくらい?メリット・デメリットも紹介

引用元
厚生労働省|令和4年賃金構造基本統計調査
jobtag|美容師

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美容師が個人事業主になったら必要な5つの手続き

先述したようにフリーランスの美容師は「個人事業主」になります。自分で税金や年金の管理や手続きをしなければなりません。まず個人事業主の美容師になったら手続きしなければならないものは以下の5つです。

1. 国民健康保険に加入する

病院に行って保険証を出すと診察料が安くなりますよね。それは健康保険に加入しているからです。健康保険は、医療費を一部負担してくれます。会社に所属しない場合は国の「国民健康保険」に加入しなければなりません。

・申請する場所:自分の住んでいる市役所・区役所
・申請に必要なもの:マイナンバーと身分証明書(免許書やパスポートなど)
就職していた人は前職で加入していた社会保険の「資格喪失証明書」も一緒に提出します。

2. 国民年金に加入する

日本に住んでいる20歳から60歳までは国民年金を支払わなければなりません。会社に入っていると給料から引かれますが、個人事業主の美容師は自分で支払わなければなりません。

・申請する場所:市役所・区役所の年金窓口申請に必要なもの:年金手帳

個人事業主になってすぐは収入も安定しないため、年金の支払いが難しそうな場合は、年金窓口で相談してみてください。申請が通れば免除されることもあります。

3. 開業届を出す

個人事業主になるためには、開業届の提出が必要です。フリーランス美容師も個人事業主に含まれます。開業届は、「会社から給料をもらわずに自分で稼ぎます」という届けです。

・申請する場所:住んでいるところか事務所をおく地域の税務署
・申請に必要なもの:マイナンバーカード

引用元
国税庁|A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続

4. 確定申告をする|青色申告・白色申告

確定申告とは、年度末に1年の収入(所得)がいくらあったかを計算し税務署に提出することです。確定申告をしなければ、後から「加算税」をまとめて請求されてしまいます。

確定申告にも種類があります。「青色申告」と「白色申告」です。青色申告で確定申告する場合は、開業時に「青色申告承認申請」を税務署で一緒に出してください。

・申請する場所:自宅の住所地か店舗がある地域の税務署
・申請に必要なもの:所得税の青色申告承認申請書

引用元
国税庁|No.2070 青色申告制度
A1-9 所得税の青色申告承認申請手続

5. 保健所に登録する理容所・美容所の開設にあたっての届出

理容・美容の施術をするお店はすべて、美容所登録をする必要があります。

保健所に行って申請書を書き、後日お店に保健所の人に来てもらい、条件を満たしているかをチェックしてもらいます。美容所登録するための条件は各都道府県で少し異なりますが、待合室の場所・シャンプー台の設置など細かく決まっています。店舗を決める前に保健所で条件一覧をもらうのがおすすめです。

・申請する場所:管轄の保健所
・申請に必要なもの:開設届・構造設備の概要・施設の図面など・美容師免許証・従業者名簿・医師の診断書 など

フリーランス美容師として自分のお店を持たずに面貸し(他の人のサロンの場所を借りて施術すること)で営業する場合は美容所登録の必要はありません。

しかし、場所を借りるサロンがちゃんと美容所登録されていないお店だと急に営業停止になってしまうこともよくあります。面貸しで営業する場合もそこが美容所登録されているかはちゃんと聞くようにしましょう。

美容室開設の流れや開業費用について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
美容室を開業するまでの流れを紹介|開業費用はどれくらいかかるの?

引用元
東京都保健医療局 東京都西多摩保健所|美容所
東京都目黒区|美容所開設の手続き

確定申告は青色申告がおすすめ! メリットと注意点とは?

個人事業主が確定申告をする際は、所得税の申告で青色申告か白色申告かを選ぶ必要があります。

青色申告は細かく売上や経費を提出することで控除を受けることができます。一方で白色申告は、提出書類は簡易のもので大丈夫ですが、青色申告よりも税金が高くなってしまうことが多いです。

ここでは、青色申告をするメリットと注意点について紹介していきます。

青色申告を行うメリットとは?

青色申告を行う主なメリットは以下の4つです。

・一緒に働く家族の給料を必要経費にできる
・最高65万円まで控除が受けられる
・赤字が出た場合3年間は持ち越せる
・家事費用と事業費用が混在している場合事業用割合が50%以下でも必要経費にできる

個人事業主にとって、青色申告にはさまざまなメリットがあることがわかります。

青色申告を行う際の注意点とは?

青色申告でデメリットがあるとすれば、確定申告のときの記載が複雑になることくらいでしょう。青色申告では、法律で定められた正確な帳簿で、毎日売上を管理したものを確定申告しなければいけません。

正しい簿記の方法で会計処理を行う必要があり、書類の不備などがあった場合、控除を受けることができなくなることもあります。

個人事業主になったら開業届を出そう!

個人事業主の美容師になると決めたら、まずは開業届を出しに行きましょう。はじめての税務署でドキドキするかもしれませんが、書類は意外とシンプルなので心配することはありません。

開業届の手順や注意点を確認しておきましょう。

開業届には提出期限がある!

開業届は、開業日から一ヶ月以内に提出しなければなりません。期限を過ぎても罰則などはなく、過去の日付で提出することも可能ですが、青色申告の提出が遅れるとその年の確定申告で青色申告ができなくなるため、開業したらすぐに提出しに行きましょう。

また、土日祝は税務署がお休みなので注意してくださいね。書類の記入にハンコも必要です。忘れずに持って行きましょう。

開業届はどこでもらえる? 国税庁HPからダウンロードしよう

開業届は税務署で直接もらうこともできますが、事前に国税庁のHPからダウンロードすることもできます。時期によって税務署はとても混み合います。家で印刷してわかるところだけでも事前に書いていくと、手続きが早く進むのでおすすめです。

申請用紙は、提出用と控用と同じ内容で2枚記入します。カーボン紙を使って複写で書いても問題ありません。控えは事業の証明になるものなので、きちんと記入して税務署でハンコを押してもらい、大切に保管しましょう。

国税庁|個人事業の開業・廃業等届出書

開業届を書く時の7つのポイント

開業届に書く内容について、具体的に解説しましょう。書き方のポイントは以下の7つです。

1. 納税地|店舗や事務所の住所を記入

税金を納める場所を選択します。店舗と自宅どちらの住所で納税してもいいですが、店舗がないフリーランス美容師の場合は、自宅が納税地になります。

2. 上記以外の住所地・事業所等|店舗と自宅が別の場合は記入

自宅を納税地にした人はここに店舗の住所を書きますが、店舗がなければ記入しなくて大丈夫です。

3. 職業|美容師

職業欄は美容師でOKです。

4. 屋号|店舗の名前が決まっていれば記入

屋号とはお店の名前のことです。自分のお店を作るのであればその名前を記入してください。個人事業主は、自分の名前のままで屋号は決めなくてもいいです。

5. 開業日|自分で決めてOK

開業日は自分で決められます。今後1周年記念などを企画するのであれば、わかりやすい日にしてもいいかもしれませんね。

6. 事業の概要|美容師としての業務を記入

具体的にどういう仕事をするのかを書きます。美容師の場合は、ヘアセット業、ヘアメイク業、ヘアスタイリスト業などです。

7. 給与等の支払の状況|従業員を雇う場合は記入

従業員を雇って仕事をする場合、従業員の数と予定給料を記入します。1人で仕事する場合は未記入でいいです。

個人事業主になったら手続きは忘れずに!

個人事業主の美容師になったら、どんな仕事をしていこうかと楽しいことで頭がいっぱいですよね。仕事がスタートすると思った以上にお客様のこと・仕入・広告などで毎日やることがいっぱい、忙しくなります。

開業に関わる手続きは仕事が本格的にはじまる前に済ませておきましょう。ついつい手続きが多いため後回しにしてしまいがちですが、どの手続きも書く内容はびっくりするくらい簡単です。もし、わからなければ役所の人に聞けばちゃんと書き方も教えてもらえますよ。

青色申告は所得税の節税になるので、こちらも忘れずに手続きしておきましょう。開業届と一緒に提出すると無駄がありません。

忘れないうちに、手続きは素早く済ませて素敵な美容師デビューしてくださいね!

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