夫婦でサロン経営をする心構え 独立を目指すあなたへ vol.4【PearL MATSUさん】#1

キャリアのひとつとして考える、「自分のお店を持つ」ということ。お世話になったサロンを離れ、新しいお店をオープンさせるという人生の転機に、何を考え行動すべきなのか。先輩たちの体験談から、学べることがあるかもしれません。今回お話を伺ったのは、人気サロンからご夫婦で独立された「PearL」のMATSUさん。

前編は、独立をしたきっかけと、「PearL」オープンまでのお話。「ずっと自分のお店が持ちたかった」というMATSUさんが、どんな経緯で独立したのかお伺いします。

美容師を目指したときから考えていた「お店を持つ」こと

ヘアサロン「PearL」代表のMATSUさん。前サロンにインターンから16年所属後、2014年に独立。

――「独立」についての企画ですが、独立をめざしたきっかけは?

実は、きっかけというものはなくて…。美容師になろうと思ったのが高校生のときなんですけど、それもはっきりとした志があったわけではなくて、「カッコいい大人になりたい」とかそういう感じでしたから(笑)。でも美容師になると決めたときから、お店を持つことはイメージしていましたね。今振り返ってみると、父親や祖父が自分で経営をしているから、それが当たり前だったのかもしれません。自分では意識したことありませんでしたが、そういう影響もあって、自分で何かできる仕事がしたいと思って、美容師を選んだのかもしれませんね。

――では、入社時から独立のことは想定していたんでしょうか?

僕の時代はインターン制だったので、19歳で前サロンに入社しました。「いつかお店を出そう」というのは考えていましたけど、具体的に師匠に話をしだしたのは、20代後半くらいだったかな。若いうちに辞めることは考えていませんでした。辞めるときは、周りに、とくに師匠に認められてから、と思っていたので。大きいサロンだと人数も多いので、お店に影響がない段階で辞める人も多いんですけど、それだと情けないなと思って。だから、ある程度の立ち位置になるまでは頑張ろうと。27歳くらいでトップスタイリストになって、それからも努力しつつ、29歳くらいから独立の相談をするようになりました。

前サロン所属時から、撮影やショーなどで活躍し、技術を磨いていたMATSUさん。オーナーになってからも変わらず精力的に活動している。

――実際に退職されたのは、もっと後ですよね?

35歳のときですね。自分本位になり過ぎないように、ということは意識していたので、「2か月後に辞めたいからよろしく」っていうのは僕の中では無くて。師匠の判断を仰ぎつつ、お店の状況も見ながら、辞める日を決めたいと思っていたんです。そんななかで、32歳のとき、同じサロンに勤めていたCHIEと結婚しました。前サロンは基本的に社内恋愛禁止だったので、どちらかが辞めるなら僕が辞めようと思って、師匠に結婚の報告をしたんです。そしたら、師匠が笑って祝ってくれて。2人でお店を持つという選択肢もあっていいんじゃないかと。そこで独立の話は1回ゼロに戻すことにしました。

――ご結婚で、状況が少し変わったんですね。

お店を持つ話は、僕だけのこととして、それまで師匠と話していたので。2人辞めるっていうのは、お店への影響の大きさも変わってきますからね。CHIEは肩書も僕より上で、すごく優秀なスタイリストなので、当時のサロンでも人気でしたから、もっと勝手なことはできないし、しちゃいけないと思いました。だからもう1回、ゼロから師匠と3年くらい話し合いました。長いですね(笑)。

――では、円満退社ですね!

はい、退社日も気持ちよく送っていただいて。最後のあいさつのときに、師匠の口からスタッフみんなに、僕たちのお客様から連絡があったら新しいお店の電話番号を伝えるようにと言ってくれたんですよね。当時は、そんなのあり得ないことですから。実際にお客様からの電話もつないでくれて、お店の準備のために早めにディーラーさんを紹介してもらったりと、バックアップもしてくれました。変な辞め方していたら、協力は得られなかったでしょうね。

退社後、15日で「PearL」オープン

2014年6月、代官山に「PearL」をオープン。代官山駅から徒歩2分という好立地に、かわいらしいお店が完成した。

――5月末に退社、6月に「PearL」がオープンしました。開店準備は?

開店準備は年末くらいからスタートしていたんですけど、初めてのことなので、めちゃくちゃ大変でした。サロンワークをしつつ、同時進行で「物件」「融資」「人材」の3つを動かさないといけないんですけど、退社日も6月オープンも決めていたので、「いろいろ決めなきゃ」っていうプレッシャーがすごくて。1か月で8kgやせました(笑)。基本的には、全部「待ち」なんですよね。しかも全部なかなか決まらなくて。ひと段落ついたのが2月の終わりでした。そのころに、この物件が出てきて。

――最初から代官山に決めていたんですか?

最初は表参道で探していました。前のサロンが表参道だったので、お客様のことを考えると同じ場所がいいかなと。何十件と見たけど、駅からの動線や外観の雰囲気とか、いいなと思えるものはゼロでした。お店の雰囲気も、今まで担当させてもらっていたお客様の顔や雰囲気を考えて、来たいと思ってもらえるか、来たときに気持ちよく過ごせるかを考えると、なかなかイメージ通りの物件がなくて。僕たちの仕事は、お客様が来てくれないと成り立たないので、そこは譲れなかったんですよね。

――そんななかで、イメージに合う物件が代官山にあったんですね。

2月の終わりにここが出てきて、新築なので建物が建つ前だったんですけど、駅からも近いし良さげだから、とりあえず見に行こうよとなって。CHIEさんは乗り気じゃなかったんですよ、代官山はターゲットが今までと違いますし、それまでのお客様も駅が変わっちゃいますから。でも実際に見に来て、駅からの動線を確認して、「いいんじゃない」と。でもその時点で、美容室として使えるテナントは全部埋まっていたんですよね。うちは4番手で、しかも初めての起業なので、絶対ムリだろうなと思いました。でも、できることは全部やろうと思って、大家さんに手紙を書いたり、それまでの仕事の資料を送ったりして。そしたら、借りられることになったんです。

――ひと安心ですね。

それが3月頭ですね。ひと安心ではあるんですけど、そこからの工事もトラブルだらけで(笑)。美容室だと居抜きの物件を使うことが多いんですけど、僕たちは新築だったので、シャンプー台用の水周りを作るために、土台の配水のところから始めないといけなかったりして。6月オープンを目指してるのに、このままだと8月になっても終わらないぞ…っていうくらい。そこでも神経がすり減りましたね(笑)。

夫婦でスタートさせた、自分のお店

前サロンでの先輩でもあるCHIEさんと32歳で結婚、35歳で独立&開業した。

――ご夫婦でサロンをオープンさせることのメリットは?

経営面でメリットって言えるものは、思っている以上に少ないかもしれないですね。最近は「共同経営」って増えていますけど、夫婦の場合は、夫ないし妻が共同経営者になるわけで。そうなると、離婚しない限り辞めないだろうっていうリスクヘッジしか、メリットはないですよね。サロンワークの面でいえば、例えばCHIEさんの産休中に、彼女のお客様を僕が代わりにカットするとか、子どもが体調崩したときに、どちらかがすぐに対応できるっていうメリットはあります。でもそれって、ひとりのスタイリストとして、相手からも、お客様からも、きちんと信頼していただいていないと、できないなとも思うんです。

――夫婦だから任せる、ということではなく。

はい。そういう、甘えみたいなものは絶対にやめようという話はしました。夫婦だから、相手がダメなことをしているのに何も言わないとか。なれ合いになるのは、お互いにとっても、お客様にとっても良くないと思うので。だから、家では仕事の話は極力しませんし、サロンではお互いに「さん」付けで呼びます。そもそも僕は、CHIEさんのことを美容師として、とてもリスペクトしているんです。師匠の次に尊敬してる人なので、夫婦というよりは、いち美容師として信頼して一緒に仕事をしているって感覚ですね。

夫婦でサロン経営をする心構え

ご夫婦で一緒に独立し、サロンをオープンしたMATSUさん。オープンまで、お二人でいろいろ話し合われながら、「PearL」を作り上げました。「夫婦というより、サロンでは共同経営者」。そう語るMATSUさんが考える、夫婦でのサロン経営の心構えを教えていただきました。

1.「夫婦」を理由に慣れあわない

2.いちスタイリストとして尊敬しあえるよう腕を磨く

3.家庭とサロンは、できるだけ切り分ける

後編では、MATSUさんが立ち上げた「PearL」の今について。オーナーになってからの変化と、経営者として感じていることについてお伺いします。

▽後編はこちら▽
独立を目指すあなたへ vol.4【PearL MATSUさん】#2>>

取材・文:山本二季
撮影:高嶋佳代

Salon Data

PearL(パール)

住所 東京都渋谷区恵比寿西1-32-3 トラッドゴード代官山C
TEL 03-6455-3038
URL http://www.pearl-salon.com/

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