「相手のために動ける人だけが成功する」。この世の真理を知って、人格を総入れ替え「CHAINON」坂口貴徳さん

美容師は個性を活かしてこそ、輝ける仕事。その信念を貫き、スタッフ1人ひとりの個性を活かす「プロダクション型経営」を実践しているのが「CHAINON」代表の坂口貴徳さんです。スタッフがやりたいことを実現しつつ、売上の管理などを行わない新しい経営スタイルで成功し、創業からたった4年で10億円企業まで成長させました。

前編では坂口さんの確立した「プロダクション型経営」について詳しく伺います。きっかけとなったのは、独立前に働いていたサロンで人間関係に失敗したこと。すべてのスタッフから無視されるようになって売上も落ち、失意のなかにいました。そこから本やセミナーなどで学ぶようになり、行き着いたのが「相手のために動く人だけが成功する」という成功哲学。元々は人嫌いだったという坂口さんですが、人格をすべて入れ替える覚悟で、人のために動き始めたことで、人生が180度変わったそうです。

今回、お話を伺ったのは…

坂口貴徳さん

美容師/「CHAINON」代表、CHAINONエンターテインメント代表取締役

大阪市内で2店舗を経て、2019年に夫婦2人で独立。スタッフ1人ひとりの個性を伸ばす「プロダクション型経営」を確立し、たった4年で14店舗を出店。10億円企業に成長させる。また美容室経営者を集めたオンラインサロンも盛況で、現在の会員数は約240名。美容業界でもっとも注目を集める経営者のひとり。

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独立の「負の連鎖」から抜け出す、プロダクション型経営を確立

坂口さんが2019年に開業した「CHAINON」。現在は東京にも出店している

――坂口さんが経営している「CHAINON」では、年商が10億を超えたと伺いました。 なぜそのようなことが実現できているのでしょうか?

美容師1人ひとりの個性を活かす「プロダクション型経営」を実践しているからです。たとえば花屋やアクセサリー作りなどスタッフがやってみたいことを事業として展開したり、働き方もスタッフ個人の考えにあわせることも可能です。またサロン内に上下関係を作らず、所属するスタッフは同じコミュニティの仲間であるという企業文化があります。店長ではなく、コミュニティマネージャーという、スタッフとのコミュニケーションをとる役職を置く形で店舗運営を行っています。売上目標には意味がないと思っており、開業から一度もスタッフに数字の話をしたことはありません。

――なぜそのような形で経営をしようと思ったのでしょうか?

独立前に働いていた会社で、美容業界全体の経営方法について疑問を持つことが多かったからです。美容師というのは、個性が売りの商売。美容師を目指す人は、言い方が少し悪いですが、一般社会に馴染めない人、普通の会社に勤めるのが難しい個性的な人が多いですよね(笑)。それなのに一括教育する体制やオペレーションをがちっと組む今のモデルでは、美容師の良さが出せないと感じていました

また、美容室の多くはピラミッド型経営ですが、それにも無理があると思ったんです。スタッフが低賃金で長時間労働になって、経営者だけが潤う。雇用されている側は長くは続けられないから独立し、また同じような形のサロンを作る。この負の連鎖を美容業界は何年も繰り返しています。ピラミッド型経営を続けても美容室ではうまくいかないのだから、その逆をやろうと思い、サロン内には店長を置きませんでした

スタッフからの総スカン。人格を入れ替えると決めて

坂口さんが独自の経営方法を確立した背景には、過去の苦い経験がある

――そのような思いがあって、プロダクション型経営に行き着いたのですね。

この経営スタイルに行き着いたのにはもうひとつのきっかけがあって、20代前半のときに人間関係で大失敗し、スタッフから総スカンをくらったことです。当時働いていた会社で僕は、どんどん売上をあげ、猛烈な早さで店長まで上り詰めました。それでお店のスタッフには「俺の言うことを聞いてたらええねん」と、強制的に自分に従うように接していました。

実際それでスタッフの売上はあがっていったんです。でもスタッフはまったく楽しそうではなくて、僕と口をきいてくれるスタッフがどんどん減っていく。今考えれば当然ですよね。スタッフは自分らしく働けていないから、充実感がない。人間関係が崩れると店の売り上げが落ちるのも簡単で、すべてがうまくいかなくなってきました

――今の坂口さんからは想像できない姿ですね。そこからどんなことを?

なぜそうなってしまうんだろうという疑問から、勉強をするようになりました。毎月10冊の本を読むと決め、人間の心理や成功哲学、帝王学などについて学び、セミナーやプログラムなど自分がいいと思うものは片っ端から受けました。経営者の方と知り合う機会も増え、お話することでも多くのことを学びましたね

そこで気付いたのは成功者が言っていることは全部同じで、相手のために行動しないといい循環が生まれないということ。本当に成功している人は、心が豊かだし、いい仲間がいて、お金もある。どれが欠けてもだめだと分かりました。そこでまずは形から入ろうと決めたんです。

――形から。

成功者が取る行動を完全に真似しました。たとえば笑顔であいさつする、人の目を見て話す。相手から相談をされたら傾聴して、アドバイスというよりは求められている答えを返してあげるとか。最初は違和感があったし、すごく苦しかった。それまでの僕はめちゃくちゃ短気で、人が嫌いで、群れないタイプで、自分さえよければいいと思って生きてきた人間だったので。人間を総入れ替えするような感じですよね。だから最初は成功した人を演じていました。でもそうするうちにどんどん結果がついてきたんです

――スタッフの方との信頼も取り戻せたのでしょうか?

徐々に、でした。最初はまともに話しも聞いてもらえないので、交換日記から始めることにしたんです。ノートを買ってきて、自分の思いなどを長文で書いて、スタッフ1人ひとりのボックスに入れておきました。最初はだれも相手にしてくれませんでしたが、ひとりの子がちょっと反応してくれて、そこから徐々に打ち解けていくことができたんです。失った信頼を取り戻すには本当に時間がかかるし、一段ずつ丁寧に上がらないといけないんだと感じましたね

そうやって学びと実践を繰り返しているうちに、マネジメントや経営学をどう美容業界に活かせばいいかも考えるようになり、行き着いたのがプロダクション型経営だったんです。

売上目標は不要。お客さまを喜ばせることができれば自然と売上はあがる

売上目標に意味はないと言い切る坂口さん

――具体的にはどのようにして、スタッフの個性を活かしているのでしょうか?

やっぱりどういう人生にしたいかを、聞くことですよね。美容師というのはあくまで人生を豊かにするための手段なので、人生をどうして生きていたいか、どうやったら今やっている仕事とつながるのかなどヒアリングすることを大切にしています。

――定期的にやりたいことを吸い上げる機会を設けているのですか?

いえ、自分がこんなことをしたいという思いがあったら、直談判しにくる形にしています。そこまでの行動力、主体性があって初めて、新しい事業というのは形にできると思っています

――売上目標もないとのことですが、それで10億円企業に成長したのはすごいですね。

開業当初から一度も会議で数字の話をしたことはないですね。美容師の仕事のゴールは、目の前のお客さまをハッピーにすること。それができていて、お客さまがまたここに来たいと思ったら勝手に売上はあがっていくと思います。会議で売上目標について話すのは僕はパフォーマンスだと思うんですね。あまり意味はない。

そんなことより、お客さまがどうやったら喜ぶか、どうやったら離職が減るかを真剣に考え、行動することが大事です。この業界は本当にシンプルだと思います。スタッフとお客さまが残るお店には利益も残る。そこに売上目標はいらないと僕は思うんです

また目先の利益にとらわれず、まず人に投資したことも企業が成長した一因ではないかと。うちの会社では歩合給40%バックを実現していますが、この導入もかなり早いほうだったと思います。ここまでがんばってくれたらこれくらい給料として支払えるという形で、条件面でも提示し、スタッフにとって魅力的な環境を作る。そのためには経営者の覚悟も必要です。うちのサロンには月給約150万円という20代半ばのスタッフもいますし、70万、80万円の給料はざらです。この循環に持って行くことができればスタッフも会社に残ってくれると思います。


坂口さんが経営に成功した3つの理由

1.スタッフの個性を活かすプロダクション型経営を確立した

2.過去の失敗から学び、相手に喜ばれる行動を取るようになった

3.売上目標を作らず、スタッフがお客さまを喜ばせることに集中した

後編では、開業からたった4年で圧倒的な結果を出している坂口さんに、経営者が大切にすべきマインドについて伺います。使命感に突き動かされ、行動しているという坂口さん。行動にモチベーションは必要なく、経営者が力を入れるべきなのはメンタルケアとのことです。また経営者に必要なのは覚悟を決め、人とつながって学び続けること。坂口さんが力を入れているオンラインサロン運営や今後の展望についても伺います。後編もお楽しみに!

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