分からないことは教え合い、支え合う。それが訪問美容師の魅力 パール美容室 関 京子さん#2
これからの将来設計を考えている方に、さまざまな「独立の形」をご紹介している本企画。前編に続いて、サロンを経営しながら訪問美容に携わっている関さんにお話を伺います。勤務していたサロンが突然閉店したのをきっかけに、訪問美容師となったいきさつをご紹介した前編に続いて、後編ではサロンワークと訪問美容の両立、訪問美容のやりがいについて語っていただきます。
お話を伺ったのは…
訪問美容 パール美容室
代表 関 京子さん
平成7年に山野美容専門学校を卒業後、チェーン展開しているサロンに10年ほど勤務。相模原市の老舗サロンに転職して5年勤めるも、オーナーから突然「閉店」を宣告される。その後、ご自身のサロン「パール美容室」を創設し、訪問美容師として活動している。
今は訪問美容の仕事がほとんど。
空いた時間にサロンワークをこなす日々
—–サロンではカットやパーマ、カラーリングの他にどんな施術をなさっていますか?
お客様のリクエストがあれば、足つぼマッサージとフェイシャルマッサージをしています。前に勤めていたサロンの若先生はマッサージがすごく上手で、ゴッドハンドと呼ばれていたんですよ。私のマッサージは若先生から教わりました。
—–訪問美容でもサロンと同じ施術が受けられますか?
ご希望があれば、何でも。ただ本格的なエステの施術をご希望の方には、若先生をご紹介しています。私はまだまだ先生の域には達していませんから(笑)
—–サロンワークと訪問美容と、どちらの仕事量が多いですか?
今は訪問美容が仕事の中心になりました。まず訪問美容の予約を決めて、その合間を縫ってサロンの予約を入れています。
仕事のことで困ったことが起きても仲間のサポートがあるから続けられる!
—–関さんは人に恵まれていますが、お店の営業活動には費用がかかりますよね?
これも人のご縁なんですよ。私が住んでいるアパートの大家さんのママ友が商工会議所に勤めていらして、「起業して10年以内の中小企業を対象に助成金を出しているからすぐに申請しなさい」と教えてくださったんです。難しい書類の記入法や必要な書類など、本当に手取り足取り教えてくださったんですよ。おかげで審査が通り、助成金をいただくことができました!
—–そのお金は何に使いましたか?
私はホームページをつくってチラシを刷りました。それと、地元の情報紙『タウンニュース』に広告を出したのも、助成金のおかげです。
広告が意外と反響があって、たくさんお問い合わせいただきました。平成30年11月に出した記事ですが、未だに「タウンニュースを見て、訪問美容をお願いしたい」という依頼があります。みなさん、「いつか利用する日があるかも」と思って、記事を取っておいてくださるんですね。
—–お客様が増えるといろいろな状態の方が多いので、ヒヤッとすることもあるのでは?
介護施設でスタッフの方に「この方は刃物に反応するので気をつけてください」と言われたことがあります。刃物を握ろうとするので、スタッフの方に付き添っていただきながらバリカンで髪を整えたことがあります。
—–失敗談などありますか?
地図が読めないことですね。自転車で個人宅に向かっていたのですが、地図がよく分からなくて2時間も迷ってしまったんです!
ナビがあれば迷わないし仕事の幅が広がるから…と周りの人たちにも勧められて、42歳になってから車の免許を取りました。
—–みなさんが関さんのことを応援しているんですね。その理由はどこにあると思いますか?
自分をさらけ出しているからでしょうか。すぐにバレちゃいますから、格好つけることはないですね。
—–訪問美容師のみなさんは、みなさんが支え合っていてすごくいい関係ですよね。
月に一度の勉強会でも、分からないことがあればみんなが教え合っています。サークルのような感じでしょうか。誰か困っている人がいれば助けたり、逆に助けられたり。本当にいい仲間たちです。みんなで仕事をするのが本当に楽しい。人の喜びが自分の喜びになっています。
美容師の仕事が楽しい、と思えるようになったのは、訪問美容を始めてからですね。サロンで働いていたときは、お客様の取り合いなど悶々とすることがありましたが、今はまったくありません。応援してもらっている感覚があります。
—–訪問美容師に向いている人はどんなタイプですか?
いつも何かが起こるので、ハプニングに動じない人が向いていると思います。それから決断力のある人ですね。
—–逆に訪問美容師に向いていないのはどんな人ですか?
人の話を聞かない人、我が強い人、協調性のない人は難しいでしょうね。
知らないお宅にお邪魔して髪を切るのですから、挨拶もできない暗い人より明るくて元気のある人の方がいいですよね。相手の懐にスッと入っていける人が理想だと思います。
—–関さんが訪問美容を続ける理由は何でしょうか。
「来てくれてありがとう」と言われるたび、「こんな私でも必要とされているんだ」と嬉しくなります。例えば、カットしている間ずっと会話をしなくても、カットが終わってから「さっぱりしましたね」と声をかけると、ニコッと笑ってくださるんです。こうした笑顔を見るたびグッときます。ご主人が寝たきりの奥様に「さっぱりしてよかったね」なんて話しかけているのを聞くと、もう嬉しくてたまりません。
ケアマネージャーさんから、「お年寄りは知恵をつけてくれるからね」と言われたことがあります。本当にその通り。ある介護施設で100歳近いお年寄りから「あなたたちはまだ若いんだから何でも好きなことをやりなさい」と言われました。何でも始めるのに遅いことはありません。いろいろ学ばせてもらっている代わりに、私から元気と笑顔、それからお節介の押し売りをしています(笑)
訪問美容師として独り立ちするための3つのポイント
1.ケアマネージャーや医療関係のスタッフとつながりを築く
2.訪問美容師のつながりを大切にして人脈を広げる
3.自分に適したオファーを選択する決断力を身につける
訪問美容師は初期費用が少なくて済むメリットがありますが、仕事が順調に入るまでには時間がかかります。そのためにもさまざまな情報にアクセスできる人脈づくりは重要です。訪問美容師だけでなく、地域包括支援センターや医療関係者のつながりを積極的に築きたいもの。関さんのように、困ったときに必ず救世主が現れる強運を身につけるには、人とのつながりを大切にすること。人脈を育てることが強運につながります。