ハーブボールをさらに広めるためにハーブボールセラピスト協会を設立 セラピスト永田舞さん♯2
ハーブボールを主軸にしたトリートメントサロン リラ・ワリを主宰する永田舞さん。前編では、国産・農薬不使用で、助産師や薬学博士監修のこだわりのハーブボール、それを使ったトリートメントについて伺いました。
後編では、ハーブボール普及のために設立したハーブボールセラピスト協会の活動内容、サロン×スクール業×物販の相乗効果について教えていただきます。セラピストが長く仕事を続けるためのアドバイスは、今後セラピストを目指す方も必見!
お話を伺ったのは
ワタシライフサロン リラ・ワリ主宰 永田舞さん
株式会社マヴィーブル 代表取締役 一般社団法人ハーブボールセラピスト協会 代表理事
実母が出産で命を落とす。母親代わりに育ててくれた祖母の死とハードワークが重なり、心と体のバランスを崩す。旅先のタイで出会ったハーブボールにエネルギーをもらい、「がんばり過ぎている女性の心と体を元気にしたい」という思いから海外で学びを重ねる。2011年「ワタシライフサロン リラ・ワリ」開業。温かくて柔らかい手と母親のような安心感にファン多数。オリジナルブランド「ワロマハーブ」も人気が高い。
協会理念は「ハーブボールでエールをおくる」
――ハーブボールは販売もしているのですか?
「ワロマハーブ」というECサイトを運営しています。その他にサロンやスパ、オーガニック系のショップや百貨店のポップアップ等でも取り扱っていただいています。コロナ禍で販売数はすごく伸びていますね。デモンストレーションで店頭に立つと、皆さんハーブボールを当てた瞬間、「は~っ」と声がもれて、お顔が緩むんですよね。外に出られなかったり、人と会えない環境が続いて、自然のものに触れたい、硬い鎧を剥ぎたいと感じている人が多いのではないでしょうか。
――永田さんはスクール業もされているのですよね。
はい。最初は、ハーブボールを作ってみたいというお客様にワークショップで教えるようになり、それが口コミで広がって、あるセラピストの方から「ハーブボールを本気で学びたいから教えてほしい」という連絡をいただいたんですね。その方はセラピストとして10年以上キャリアがある方で、わたしはサロンを開業してまだ1年ちょっと。確かに当時は、そういった講座はまったくなかったので、熱湯の入ったポットにハーブボールを入れて施術したとか、とにかく使い方がハチャメチャだったんですよね。
プロ向けの講座をやるなんてまったく考えていませんでしたが、サロン開業2年後の2013年、プロ向け講座を開講。当時、好調だったアメブロに記事を投稿したら、1期生が3人集まりました。また翌月も翌々月も、毎回すぐ満席状態。1年以上受講を待ってもらうようなこともあって、びっくりしながらやっていたような感じでした。
――とても順調だったのですね。受講生はすでにセラピストの方が多かったのですか?
いろんな方がいました。助産師さんや会社員の方、ハーブやアロマを勉強したてで今後なにをやろうかという人もいました。遠方の方もいて、最初の頃は生徒さんを自宅に泊めたこともありましたね(笑)。
予想以上に生徒さんが増え、ハーブボールをもっと広めていければという思いで、2014年に「ハーブボールセラピスト協会」を設立し、2016年に社団法人化しました。
――ハーブボールセラピスト協会の活動内容は?
「ハーブボールでエールをおくる」という理念の下、活動しています。ハーブボールに触れることで、まずは自分と向き合い、自分にエールをおくる。自分の人生を生きられるようになると、他人にもエールをおくれるようになる。
資格・認定制度は、アドバイザーコースとセラピストコースの2種類があります。アドバイザーコースでは、ハーブの作用、ハーブボールの歴史・作り方・使い方、薬事法、ワークショップの開催方法、セルフケアを学びます。セラピストコースは、それに施術方法が加わり、ハーブボールだけで90分フルトリートメントできるような充実した内容です。
見せ方は違うがコンセプトはすべて共通
――サロン×スクール業×物販の相乗効果について教えていただけますか。
それぞれの見せ方は違いますが、コンセプトはすべて共通。自分に目を向けていない人に対して、自分を大切にしてほしいということ。わたしが最初に味わったハーブボールの受容感なんです。
それを直接味わいたい人はサロンに来てくれる。
その思いを一緒に広めたい人はスクールに学びに来てくれる。
ご自宅で味わいたい人はハーブボールを買ってくれる。
コンセプトにブレはないので、たぶん受け取ってくれる人にもブレがない。この10年がんばってきたからこそしっかり言葉にできるようになりました。コンセプトが伝わっていることが、サロン×スクール業×物販の相乗効果だと感じています。
――コンセプト、大事ですね。
商品の売り方も、サロンの選び方も何年か前とは違ってきていますよね。クーポンサイトで初回来店はあるけど、次にそのサロンを選ぶか、そのセラピストを選ぶかというときに、ここじゃなきゃダメだと思わせるものがないと選ばれない。ただほぐされたいだけならどこでもいいですよね。そうなったときに、その人がないと(コンセプトがないと)選ばれないんですよね。
自分に主軸を持って施術することが大事
――今後セラピストを目指す人にアドバイスはありますか?
セラピストの中には、相手に尽くし、お客様の要望をすべて聞かないといけないというスタンスの人がすごく多いんですね。それから、感受性が豊か過ぎて、お客様と一体になりすぎてしまい、自分が飲みこまれて壊れてしまう人も。セラピストの仕事が好きだったのに、それでやめてしまう人をこれまでたくさん見てきました。
できないと思っているのに最大限がんばろうと思ってしまう人が多いのですが、できないことはできないと断る勇気も必要です。自己と他者の切り分けを意識して、自分に主軸を持ちながら施術することがセラピストとしても、独立するにしても必要なんじゃないかなと思います。それから、人に触れる仕事をするなら、自分のコンディションをきちんと知って、メンタルバランスをどうとるかも必要ですね。
――永田さんはどうやってバランスをとっているのですか?
まず、自分の快・不快をクリアにすることが大事だと思います。わたしの場合、歌とダンスが好きなので定期的に練習しています。こんどの発表会ではBTSを踊るので、いま特訓中なんです(笑)。忙しいからこそ、頭を切り替える時間が必要。自己表現をしっかりすること=自分に集中することは、次の施術のパフォーマンスの向上にもつながります。
――最後に今後の展開を教えてください。
5月上旬くらいに長野サロンをオープンする予定です。今後は長野と東京を行ったり来たりの生活になります。長野は、実家をフルリノベーションして、2階の1室をサロンにしました。窓の向こうには全面空と山しか見えない場所で、とにかくリフレッシュしてもらいたい。日々忙しいと自分の感覚はどうしても鈍っていくので、自分に集中してもらえるような空間にしたいなと思っています。
目標は、「一家に一個ハーブボール」。せっかく日本のハーブを使っているので、各県のハーブボールが作れたら面白いなと思っています。同じヨモギでも、自分が住んでいる地域で採れたヨモギだとまた愛着が生まれるじゃないですか。
秋には書籍の出版も予定しています。ハーブボールには温熱作用などさまざまなメリットがありますが、それだけではない自分に対して目を向けることや生きること、そういうメッセージもうまく伝わるといいなと思っています。
永田さんがハーブボールの普及のために行ったことは
永田さんがハーブボールを普及させるために行ったことは以下の3つです。
1.サロン×スクール業×物販でのコンセプトの統一
2.ハーブボールセラピスト協会の設立
3.ネットショップ等での販売
生きる意味を失ったときに訪れたタイでハーブボールに出会い、自分を取り戻した永田さん。そのときの衝撃に突き動かされるように、サロンオープン、セラピスト協会の設立、物販と次々と行動を起こしていきました。永田さんは、3.11の3日後にタイに渡り、日本の惨状を見たときから、「いつか」という言葉を使わなくなったそうです。「先延ばしせず、いまを生きる→取捨選択ができるようになる→コンセプトが明確になる→コンセプトが明確になると、人が集まる」。転職、独立など頭に描いていることはあるけれど、なかなか行動に移せないという人は、この方程式を自分に落としこむ作業をやってみてはいかがでしょうか。
取材・文/永瀬紀子