【子育て応援メソッド】時短勤務に変わって得られた新たな発見!ゆっくり丁寧に育む、お客様との信頼関係 / AFLOAT NAGOYA 高橋未央さん ♯2
美容業界で働くワーママにインタビューする「子育て応援メソッド」。ゲストは引き続き、AFLOAT NAGOYA(アフロートナゴヤ)のスタイリスト・高橋未央さんです。
トップサロンの第一線で活躍する中、結婚・出産という人生のターニングポイントを迎えた高橋さん。「スタッフの妊娠はお店にとってネガティブな出来事じゃない!」という想いから、出産直前まで施術を続けていました。
後編では、職場復帰してからの働き方・仕事観の変化などについて詳しくお聞きします。
お話を伺ったのは・・・
AFLOAT NAGOYA(アフロートナゴヤ)
スタイリスト・高橋未央さん
地元・静岡の2店舗を経て、AFLOAT NAGOYAオープニングスタッフとして2012年入社。30・40代女性を中心に圧倒的な支持を得る実力派スタイリスト。2019年5月に長男を出産後、現在は時短勤務中。
コロナ禍のお店の変容に衝撃。職場復帰はまさに浦島太郎状態
――産休に入る前、お客様の引き継ぎなどはどうされましたか?
以前付いてくれていたアシスタントが、ちょうどデビューするタイミングだったんです。お客様の好みと得意なスタイルが合いそうならその子に引き継ぎ、他に相性の良さそうなスタイリストがいればそちらへお願いしました。産休に入る直前は、お客様へのDMを書くのが日課でしたね。「また来店してくださるように」と祈るような気持ちとともに、約300枚は書きました。
――職場復帰はスムーズに進みましたか?
2019年5月からお休みをいただき、復帰は2020年4月の予定で調整していました。けれどコロナによる緊急事態宣言発令で、復帰を延長することになってしまったんです。結局お店に戻れたのはその年の7月からでした。
――ご自身のライフスタイルの変化だけでなくコロナ禍の変容を突然体感し、復帰後の戸惑いは大きかったでしょうね。
そうなんです。いざ戻ってみると、自分の知っているお店の雰囲気じゃなくなっていて衝撃を受けました。感染防止が第一優先の接客スタイルに変わっていたし、営業前後の若手の練習風景は見られなくなっていました。寂しいなと感じる反面、社会全体が変わったのだから受け入れるしかないと諦める気持ちもあり、なんとも言えない複雑な感情に襲われました。
働き方が変わったことで再認識した、美容師という仕事の面白さ
――現在の勤務形態を教えてください。
基本的には10:30から16:30の時短勤務です。お客様のご予約次第で早めに出退勤する日もあり、かなり融通の効いた働き方を認めてもらっています。
――時短勤務ということで、以前とは施術の進め方も変わったかと思います。
最も大きな変化は、アシスタントは付けず、全工程をひとりで行うようになったことです。そのため、1日に担当できるお客様は2〜3人が精一杯。お休み前は毎日10数人へ施術をしていたことを思うと、まるっきり異なる働き方になった感覚です。
――接客スタイルが変わって、仕事に対する意識の変化は生まれましたか?
達成感ややりがいが大幅にUPしました!お客様一人ひとりとじっくり向き合い、納得いくまで仕上がりを追及できるようになったためです。同時に、お客様側でも満足度が上がったんじゃないかと。スタッフが途中で入れ替わることなく、落ち着いて施術を受けてもらえるため、昔からのお客様ともさらに信頼関係が深まったように感じます。
まるで面貸しサロンのような状態ですが、現在のような余裕を持った働き方が、本来の自分の性格に合っているのかもしれません。新たな発見の連続で、改めて美容師の仕事を面白いと感じているところです。
――出産・育児を経験したことで、得意なスタイルや提案内容は変わりましたか?
やはり自分の実体験に勝るものはありませんね。出産前後の方へ、具体的なアドバイスができるようになりました。
例えば、産後はなかなか美容院へ行けないだろうから、髪は短く切っておいた方が良いと多くの女性が思いがち。でも、授乳中は赤ちゃんの顔に髪がかからないよう、後ろで束ねられる長さは残した方が扱いやすいです。また、子育てで忙しいママがボサボサの自分の頭を見たときに気分が一層滅入ってしまう…なんてことがないよう、長期間ラインが崩れにくいスタイルを研究したりもしています。
――お客様にはどういった方が多いですか?
30〜50代くらいの女性が中心です。皆さん長いお付き合いで、お母様やご姉妹を紹介してくださってファミリーで通ってくれている方も多いんですよ。
――長期のお休みを挟んでも、また戻ってきていただけるというのは感慨深いですね。
お客様には本当に感謝しかありません。予想外に育休が長引いたことで、復帰の際はやはり不安を感じていました。そんな中、また連日予約で埋まるくらい皆さんが待っていてくださったという事実は、私がスタイリストを続ける原動力になっています。
先頭を走るからこその苦悩。答えは急がず、自分のペースで見つけていく
――育児と仕事との両立を実践してみて、率直な感想を教えてください。
大変…ですね(苦笑)。家庭の方はなんとかなっていると思います。夫は朝早い出勤で仕事も忙しいですが、彼なりにできることはやってくれるし、私も「期待しすぎない精神」で(笑)。やってくれたらラッキー!くらいの気持ちで、何事もおおらかに構えて過ごすのが家庭円満の秘訣かなと思います。
一方、職場内に子育て中のスタッフがいないというのが少ししんどい部分。もしも身近にワーママ仲間がいれば、育児の愚痴も笑い話に変えられるのに、今は何か困りごとがあっても自分の胸の内で溜め込むしかなくて。
例えば、私はベビーカーで子どもを保育園に送ってから出勤しているため、雨の日は大惨事です。子どもは雨よけカバーの中にいるので大丈夫ですが、こちらは全身びしょびしょの状態でお店に到着。それでも美容に携わる職業ですから、身だしなみには気を配らなければなりません。大慌てでトイレで着替えて髪とメイクを直すのですが、リュックに入れていた着替え一式が浸み込んだ雨で全部濡れていた…なんてトラブルもありました。
おそらく周りの若いスタッフたちは、私がそんな風にバタバタしている理由なんて想像もつかないと思います。とはいえ「育児=ツラい」なんて悲観的に捉えられても困るし、結局は周囲に何も言わないという選択肢に落ち着いてしまうんですよ。
――高橋さんご自身が道を切り開いてきただけに、お店にとってもはじめて直面する課題が多いですよね。
働き方についてもそうです。都内の店舗を含め、出産を経た後もAFLOATで働き続けている女性スタイリストはごく僅か。身近にロールモデルがいないため、これから自分は一体どんなキャリアプランを描けば良いのか手探り状態です。
ただ、子どもの成長とともに新たな悩みや心配事も生まれるだろうし、性急に答えを出そうとせず、AFLOATでの私らしい働き方を模索していきたいと思ってます。その結果、お店の後輩たちにひとつの道標を見せてあげられるといいですよね。
――最後に、美容業界で育児との両立を目指す方へアドバイスを!
私がママ美容師や後輩からよく言われるのは、「高橋さんはお客様がたくさんいたから良かったですね」という言葉です。確かに私は比較的キャリアが長いため、お客様の母体数に比例して、戻ってきてくださった方もそれなりの人数いらっしゃいました。けれど、デビュー間もなくのうちに産休育休に入ってしまうと、復帰後はまたゼロからの再スタートになるケースが多いのではないでしょうか。美容師として長く活躍したいと考えているなら、出産時期などライフプランを立てておくことも必要だと思います。
とはいえ、最も重要なのは、普段から一つひとつの施術・一人ひとりのお客様との時間を大切にすること。その積み重ねこそが自分だけのオリジナルの武器であり、美容師を続けていくための宝となります。毎日を一生懸命、精一杯頑張っていればきっと大丈夫ですよ!
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仕事も子育ても大切にしたい高橋さんが意識している3つの視点
ライフスタイルの変化は悪いことじゃない。トップサロンで働く高橋さんが感じる、育児との両立に必要な意識とは?
1 自身の育児経験が、お客様への提案内容に幅をもたらす
2 変化を悲観しない!新たな気づきと学びの宝庫
3 若い世代のロールモデルのひとつになればという希望
取材・文/黒木絵美
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