【子育て応援メソッド】妊娠中に過去最高の売上達成!スタイリストの妊娠・出産をポジティブに捉える職場でありたい / AFLOAT NAGOYA 高橋未央さん ♯1
美容業界で働くワーママ・パパに仕事と育児の両立についてお伺いする「子育て応援メソッド」。今回のゲストは、AFLOAT NAGOYA(アフロートナゴヤ)で活躍するスタイリスト・高橋未央さんです。
高橋さんが第1子の息子さんを出産したのは2019年。約1年間の産休・育休から復帰した彼女を待っていたのは、コロナ禍で大きく様相が変化したサロン業界でした。働く環境や自身のライフスタイルが変わってもなお、トップサロンで働き続けること。それに伴い感じる苦悩や葛藤とは?
お話を伺ったのは・・・
AFLOAT NAGOYA(アフロートナゴヤ)
スタイリスト・高橋未央さん
地元・静岡の2店舗を経て、AFLOAT NAGOYAオープニングスタッフとして2010年入社。30・40代女性を中心に圧倒的な支持を得る実力派スタイリスト。2019年5月に長男を出産後、現在は時短勤務中。
特殊系サロンから、巻き髪フェミニンスタイルが得意なAFLOATへ
――美容師人生のスタートについて教えてください。
横浜の美容学校を卒業後、地元・静岡県にUターンしました。エクステンションやドレッド・コーンローなど特殊系スタイルを得意とするサロンへ就職し、2年程度そちらでお世話になりました。
――AFLOATとはまったくテイストが異なりますね。
そうなんです。ただ、特殊系ばかりではなく一般的なスタイルもやらないと、美容師としての幅が広がらないんじゃないかという考えは常に頭にあり、2年半ほど一般的な美容院で働いていました。そんな折、AFLOATが名古屋に初出店すると知人から聞き、有名店で働いてたくさんのお客様を担当したい、トップサロンの技術を見たい、可愛いスタイルを作りたい!これは絶好のチャンスだと思いました。
――トップサロンでチャレンジすることを決意されたんですね。
実は、一旦は採用が決まったものの、少し事情があってその話が流れてしまいそうになったんです。そこで、新店舗に着任予定の前代表がいる表参道へ直談判に行きました。同時にカットもしてもらったのですが、その帰り道にショーウインドに映る自分のスタイルがすっごく素敵で!本当に衝撃でしたね。髪型ひとつでこんなに気分を上げるなんて、AFLOATってとんでもないサロンだなと思いました(笑)。
「絶対にここで働きたい!」と決意も新たになり、無事にオープニングメンバーとして働かせてもらうことになったんです。
――スタイリストとしての移籍だったのですか?
いいえ、最初はアシスタントからのスタートでした。国内屈指のトップサロンで当時の自分が通用するとは到底思えなかったし、学びたいことがたくさんありましたから。実際に、入店後は技術だけでなく、接遇マナーも徹底的に鍛え直されました。最終的に2年間のアシスタント生活を経て、27歳頃にデビューしたんです。
――待ちわびたデビューはいかがでしたか?
心配しかありませんでしたよ(苦笑)。練習に練習を重ねてもなお、「私は本当に大丈夫かな」と心の中は不安でいっぱい。けれど同期たちと切磋琢磨し合い、周囲のサポートもあって、デビュー数ヶ月後には某大手クーポンサイトが実施するスタイルランキングで東海地方の上位に入りました。それをきっかけに、新しいお客様からもたくさん指名をいただくようになったんです。
人生のターニングポイントになった結婚と妊娠
――ご結婚はいつされたのですか?
2018年、34歳の時です。それまでとにかく仕事が忙しかったし、海外旅行やヨガインストラクターの資格取得などプライベートも充実していて、結婚願望はあまりありませんでした。けれど、やりたいことは全部やり切ったと、自分の中でひと段落したのがちょうどこの頃。
それに30代半ばを迎え、ずっと全力で走り通しだったせいか、体調を崩したり「疲れたな」と感じることが増えてきたんですよね。そんな時に今の夫と出会い、とんとん拍子で結婚することになりました。
――すごくタイミングの良いめぐり合わせだったんですね。
そう思います。仕事や将来のことを色々考えてしまうと、どうしてもためらったり悩んだりしちゃうと思いますが、私にとって結婚は、立ち止まることのなかった人生でひと息つくためにも、すごく重要な岐路となりました。
――妊娠が分かってから、職場でまず行動したことは?
安定期に入ってから代表に報告しました。経過によっては、繁忙期である12月に稼働できなくなる可能性もあるので、事前にフォローをお願いしなきゃと思って。一方、お店のスタッフたちには、妊娠6ヶ月になってはじめて知らせました。
報告後は「もっと早く教えてくださいよ」なんて後輩から叱られましたが、変に気を使われすぎても居心地が悪いなという気持ちもあり、その時期になってしまいました。
大きなお腹でお店に立ち続けた理由は、後に続く若手たちへの想い
――産休に入ったのは何ヶ月頃ですか?
出産の8日前です(苦笑)。予定日より2週間ほど早めに産まれたこともありますが、本当にギリギリまでお店に立っていたので、赤ちゃんを迎える準備もまるで整わないまま出産になりました。
――8日前?!つわりなど、体調面は問題なく勤務できていたのですか?
薬剤など人工的な香りは平気でしたが、人間の頭皮のニオイがダメになってしまって…。安定期前がちょうど夏場に重なったため、余計につらかったですね。込み上げてくるものをなんとか誤魔化しつつ、施術する毎日でした。
――それでもお休みを選ばなかった理由は?
オープン以来、数名の女性スタッフが産休・育休を取得したことはあるのですが、体調がすぐれず欠勤がちだったり比較的早い段階で産休に入ったりと、妊娠中も普段と変わらず勤務を続けられる子がいなかったんです。
そんな背景があったため、同じように私も休んでしまうと、お店の将来にとって良くないなと思いました。スタイリストの妊娠・出産はネガティブ事項であるという意識がスタッフ間に刷り込まれて、これから子どもを持とうとする若い世代が苦労する未来につながってしまうのではないかと危惧したんです。経過が悪ければ無理は禁物ですが、ありがたいことに騙し騙しでも勤務を続けられたため、頑張っている姿を見せることが自分の責務だと感じていました。
――職場全体の意識を醸成する必要性を感じたのですね。
私が良い形で前例のひとつになれるといいなと思いました。もちろん、妊娠したって仕事は変わらず続けろなんて他人に強要はしません。ただ、妊娠中でもちゃんと働き続けられるケースもあると周囲に知ってもらいたいという願いがありました。
だからこそ、単なるパフォーマンスではなく、数字の上でもなんとしても結果を出したかった。その甲斐あって、妊娠中だった2018年、スタイリストデビューしてから過去最高の年間売り上げを達成することができました。
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女性スタッフの妊娠・出産が否定的なこととして受け止められないように。自分がどう行動すれば職場の将来に貢献できるのかを考え、最大限の努力と実践を行った高橋さん。お店への愛情と、スタイリストとしての大きな誇りを感じたお話でした。
後編では、職場復帰してからの働き方・仕事観の変化などについて詳しくお聞きします。
取材・文/黒木絵美