高技術をもっと地元に。ママさんでも通いやすいマンツーマンスクールを運営【MURU 代表 瀬谷美保さん】#2
愛知県犬山市で第1号店となるネイル&アイラッシュサロンを開業し、老舗サロンに育ててきた瀬谷美保さん。実は講師としてもベテランで、週の半分は授業を開いているそう。瀬谷さんが運営するスクールは「挑戦のハードルが低い」ことが特徴。ママさんでも通いやすく、自分のペースで技術を習得できるようにと様々な心配りが施されています。
後編では、スタッフへの向き合い方、手厚くみっちり育てるスクール「MURU academy」の運営について伺いました。
教えてくれたのは…
「株式会社MURU」代表 瀬谷美保さん
ネイリストとして美容人生をスタート。その後、マツエクの技術を独学で習得し、名古屋市内のネイル&アイラッシュサロンに勤務。28歳で地元・犬山市に戻り、ネイル&アイラッシュサロンを開業。愛知県内に3店舗を展開するほか、9年前に「MURU academy」を創設し、少人数制&マンツーマンの指導を自ら行う。二人の男の子のママ。
女性が長く働くためには「助け合い」が必要
――瀬谷さんが日頃からスタッフさんたちに親しまれているのが想像できます。
私がスタッフたちに頼ることもありますよ。スタッフから意見やアドバイスをもらうことも多いですし。よく話を聞くって大事だなとすごく実感しています。
あと、「常に技術を追求し続けている姿」「昔と変わらず、お客様目線のカウンセリングを行う姿」を私が身をもって見せていることも、スタッフたちにとって刺激になっているのかなと。
――リスペクトできる上司がいるのはすごく大きいですよね。
お客様を飽きさせないように、より多くの技術を提供できるように、今でも外部セミナーやトレーニングを受講し、自身のレベルアップをはかっています。今年43歳ですが、私がここでプレイヤーを辞めてしまったら、「アイリストの寿命は43歳なんだな」とスタッフが思ってしまう気がして。私が一年でも長くプレイヤーを続けていくことで、スタッフのプレイヤー寿命も伸びていくと思うんです。そうやって、独立しなくてもこの仕事を続けられるサロンにしていきたいなと。
――独立志向の強い美容業界で、「独立しなくても」という考え方はなんだか新鮮です。
女性って男性とは働き方が全然違うじゃないですか。「もっと働きたいのに働けない」という葛藤もあるわけで。そんなときに助け合える仲間がいるって大事だなと。私はスタッフがいたから仕事と子育てを両立できたし、息子たちにもやりたいことを選択させてあげられました。女性が長く働く上で助け合っていくことは今の世の中では大事なことだと思うんです。
地元の技術力を底上げするために。すきま時間に通えるスクールを創設
――瀬谷さんは講師歴10年目というベテラン。もともと「MURU academy」を立ち上げた経緯とは?
昔、私がマツエクの技術を習得しようとしたとき、通える範囲にスクールがなく、子どもが小さかったので遠方のスクールに通うことも難しくてもどかしい思いをしました。だから、小さいお子さんがいる方でも、保育園に預けている間にちょこちょこっと習えるようなスクールが身近にあれば「マツエクを学びたい!」という人が地元でもっと増えるんじゃないかと思って。
それで、1号店の犬山店を2年目で移転したとき、スクールを開く前提で大きめの店舗を借りたんです。
――競合店が増えるのはリスクじゃないですか…?
周囲からも「技術を教えてライバル店が増えたらどうするの?」と心配されていたんですけど、だったら私もどんどんレベルを上げていけば良いから問題ない!って。当時、地元ではマツエクの正しい技術を持っているサロンがまだ少なく、課題に感じていたんです。近隣のサロンの技術を底上げすることで、よりマツエクを気軽に楽しんでもらえるようになったら、地元のアイラッシュ市場も盛り上がるんじゃないかなって。
――他のスクールにはない「MURU academy」の特徴とは?
私(講師)と生徒さんの距離が近いことですね、一番は。
主婦の生徒さんが多いんですけど、「LINEは気軽に送ってきてください。私が起きている時間だったらいつでも返信しますよ」と伝えているので、お子さんが寝てから質問を送ってこられる方も多いんです。スクールによっては、「LINEでの質問は何回まで」と回数制限が設けられていたり、決められた時間にしかメッセージを送れないなどのルールがあるようですが、うちはそういう縛りはいっさいありません。「何でも聞いてください!」という感じにしています。
あと、マンツーマン指導なので、私と生徒さんのタイミングが合えば朝7時からオンライン授業をすることもあります。働いている方であれば出勤前に授業を受けることも可能。生徒さんの手が空いたときに通えるスクールにしているんです。
――確かにママさんでも通いやすそうです。カリキュラムは固定ですか?
ベースのカリキュラムはありますが、生徒さんによって進め方を変えています。「いつまでに独立したいか」「いつまでに就活をはじめたいか」といった目標設定を先に決め、それに向けて私が時間割を決めていくというスタイルに。
――技術指導だけでなく、独立や開業について学べるコースもあるようですね。
私自身、開業後に苦労したので、その経験を授業に落とし込んでいます。今まで苦労したことや成功したことなど、私がこれまで辿ってきた道のりや、メーカー、税金、不動産、その他手続き等の知識・情報も惜しみなくお伝えしています。
――手厚いですね! 実体験ほどためになる情報はないですよね。
そう言っていただけることが結構多くて。私が受けて良かったと感じた外部セミナーなども生徒さんにおすすめしています。私のところに来てくださる生徒さんは右も左もわからないような未経験の方がほとんど。今、こんなにたくさん情報が出回っている中で、やっぱり迷われている方も多いですからね。
マンツーマン指導なら、未経験の人も挑戦しやすく、吸収できることも倍に
――生徒さんに教える上で大事にしていることはありますか?
「焦る必要な全くないですよ」とお伝えしています。
得意なことも不得意なことも人それぞれ違います。「こんなに難しかったの!?」と驚く生徒さんは多いですが、技術は練習すれば絶対に上達していきますし、それこそマンツーマンでやっているので、周りと比べる必要は全くなくて、自分のペースで学んでほしいんです。
――今後もマンツーマンを貫く予定ですか?
自分が技術を習いに行くときも大人数制のセミナーは選ばないんです。マンツーマンで習うと吸収することも倍になるので。
あと、大人になるほど「面白そうだからやってみよう」と気軽に挑戦することが難しくなるじゃないですか。本当はできるのに。でも、マンツーマンならそのハードルが低くなる気がして。「誰でも通えますよ」「頑張ればアイリストになれますよ」という想いを込めて、できる限りマンツーマンにこだわっていきたいなと。
――スタッフさんに対しても、お客様に対しても、生徒さんに対しても、瀬谷さんからは愛情を感じます。それも経営の秘訣なのでしょうね。
うちのスタッフたちを見ていると、みんな優しいなと思うことが多くて。例えば、お客様に高いコースをお勧めするのって気が引けるじゃないですか。でも、彼女たちの提案を聞いていると、お客様のために親切心で勧めていることが伝わってくるんです。普段の小さな行動ひとつとってもそう。優しくすると相手からも優しく返されます。だから、スタッフが優しいとお客様も優しい方が集まって来るんですよね。お客様の体に触れる仕事をしている分、伝わるものってたくさんあると思うんです。だから、「人に優しい」ってすごく大事だなと。
子育ては私の母が仕事をしながら全面的にサポートしてくれました。本当に感謝しています。けれど、それでもサロンを軌道に乗せるまでには数年かかりました。優れた技術だけではサロンを継続することはできても、スタッフの力なしでは発展させることはできなかったと思います。だから、これからもスタッフと共に夢を叶えていきたいです。
長く続く経営に必要なこととは?
1.助け合える環境に整える。子育てしながら働き続けられるから
2.スタッフを大事にする。スタッフが根付けばお客様も根付くから
3.自身のスキルアップを忘れない。その背中を見てスタッフが育つから
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)