「また会いたい」と思ってもらいたい。辿り着いた自分なりのSNSのあり方【美容師/アイリスト・石井絵理さん】#2
お客様や友達の特別な瞬間に携わりたいという強い気持ちから、美容師だけでなく、アイリストやブライダルのヘアメイク、ヨガインストラクターなど、さまざまなスキルを身につけたという石井絵理さん。
後編では、さまざまなことに挑戦し続けられる理由、美容従事者として大切なこと、今後の目標などについて伺いました。
教えてくれたのは…
美容師/アイリスト・石井絵理さん
美容サロン「ブランコ」でスタイリスト・アイリストとしてデビューした後に、フリーランスへ。現在は東武練馬にあるサロン「ビアンカ」にて活躍中。
現状に満足せず、挑戦し続けられる理由
――さまざまなことに挑戦し続けている石井さんですが、その原動力となっているものはなんでしょうか?
もうそれは愛ですね。私にとってのゴールは、友達やお客様を自分の力で綺麗にすること。それと私は本当に地元の友達が大好きで、ヨガもブライダルのヘアメイクも全部そのためだと言っても過言ではないです。
自分の力で髪も綺麗にしたいし、結婚式のときも携わりたいし、ヨガを通してもっと心地よく生きられるように教えてあげたい――。何をするにも友達に教えてあげたいなみたいな気持ちがあるので、色々なことに挑戦できたのかもしれないですね。
アシスタント時代は本当に友達にお世話になりました。夜の22時〜23時に地元から原宿まで来てくれて、シャンプー練習やパーマ練習とかにずっと付き合ってくれて。「えりは頑張ってるから、『頑張ってね』とは言わないね。無理しないでね」みたいな感じで、すごく応援してくれている気持ちが全員から伝わってきたんです。だからアシスタントのときから、友達にその恩を返したいと思っていて。
それで今来てくれているお客様や友達をもっと大切に、そしてもっと楽しい気持ちになってもらうために、自分の時間を有効活用できるフリーランスになることを選びました。
――石井さんはワークライフバランスが取れていると感じます。なかなか自分の時間をとることが難しいと思いますが心がけていることはありますか?
フリーランスで仕事を始めたときは、休むとお客様が減ってしまうんじゃないかと考えることもたくさんありました。実際に休みを取ることで、来なくなってしまう方もいて後悔することもありましたね。
フリーランスとして中目黒のサロンから今の東武練馬の「ビアンカ」に移ってからは、遠くなったということもあってお客様も減ったんです。でもここでしか出会えないお客様もいますし、減り続けることはないって思います。くよくよせずに全力で目の前のお客様に喜んでもらえるようにするのが一番いい。この考え方にたどり着いたのは、今いる環境やこれまでの自分がやってきたことがあるからだとは思っています。
あと私はすごく感情に振り回されやすいタイプなので波があるんですけど、ヨガを始めてから前よりも感情の起伏が少なくなったんです。
私は朝の時間に自分と向き合う時間をつくるようにしています。手作りのチャイを持ちながら、ヨガマットの上に30分くらい座って、呼び起こされる感情を受け止める。自分のありのままを見てあげる時間をとっています。自分の体や心に興味を持ってあげる時間はとても大事だと思うんです。それによって自分のなかでいいバランスが取れていると感じています。
「また会いたい」とお客様に思ってもらえるように
――美容師とアイリストなど、美容従事者として必要なことを教えてください。
「好き」を増やすことが大切だと思います。好きなものが増えた方が、人生も楽しいし仕事も楽しいと感じられると思うんです。ちょっと違うなと思っても、好きになれる部分ってあるはず。
そのためには色々なことに興味を持って知ろうとするのが大切なことなのかなと思います。
たとえば接客において、「好きな人をどうしたらもっと素敵にできるかな」「この写真のどういったところが好きなんだろう」って、好きな人のことだったらたくさん考えると思うんです。
お客様のなりたい像を明確に引き出してあげること、パーソナルな面からその人を知ることでよりお客様の理想のヘアやまつげをつくりあげられると思っています。
――今はSNSで集客する人が多いと思いますが、SNSに対してはどのように考えていますか。
2022年から2023年にかけて約3カ月間、インドに行ったんです。それまではフリーランスだし、インスタでしか集客する方法がなかったからSNSは続けようと思っていて。でもインドに行ってから、「SNSに時間をかけているけど、そもそも私はこの大切な1日を何のために生きてるんだろう」と考えていて、自分のなかでSNSよりも今を大切にしようという結論に辿り着きました。
それと「フォロワー数=すごい人、その人の価値」という風潮にも違和感がありましたね。
私の地元の友達でSNSを一切やっていない子がいるんですけど、会うとパワーをもらえるし、また会いたいなって思うんです。私は集客のためにインスタを頑張って…と思っていたんですけど、そもそも「この人にまた会いたい」って思ってもらえるのが一番大切だと感じるようになってからは、SNSよりも自分自身を高めていこうという考えになりました。
けれどやっぱり場所に関係なく、情報を発信したり受け取ることができる素晴らしいツールなので、上手く活用していきたいなと思っています。ビアンカは東武練馬周辺に住んでいるお客様がたくさん来てくださっているんですけど、もっともっとビアンカという素敵な場所を広めたいなと思っていますね。業務として淡々と投稿するのではなく、美容の楽しさなどワクワクできることを伝えていきたいなと考えています。
サロンを盛り上げるためにできること
――今後の目標について教えてください。
やっぱり「みんなでお店をつくりあげていく」というスタイルが好きで、ビアンカに入りました。形態としては個人事業主ではあるものの、一つのサロンに属してお店を一緒に盛り上げていくことにワクワクしています。
ビアンカは当初ヘアのメニューしかやっていなく、まつげの施術は辞める気でいました。でも中目黒に勤めていたときの先輩に「頑張って習得した技術は、絶対続けたほうがいい」と背中を押されて。オーナーに相談したときには「チャレンジしてみたら?転けてもどうってことないよ!」と、まつげパーマに必要なスペースや道具をすべて揃えてくださったんです。
そのときに肩の力が抜けて、ビアンカでもまつげパーマで感動してもらいたいって素直に思いましたし、それと同時にビアンカやオーナーのために頑張っていきたいなと思いました。
ビアンカのオーナーの接客スタイルは、常にリラックスしていて穏やかで誠実であることな気がしていて、実際にお客様が肩肘張らずにリラックスできる場所になっているんです。私もオーナーの目指しているサロンの雰囲気を一緒につくりあげて、盛り上げていきたいなと思っています。
――石井さんにとって働くということとは?
働くって、20代のときは多分生きがいだったと思うんです。
夜中の1時までカットの練習をしたり、朝8時には出勤して準備と練習をしていたので、ほぼ仕事が人生みたいな感じでした。でも今女性として自分のライフステージを考えていくなかで、将来的には家族を持ちたいなと考えているので、もし仕事が私の生きがいなら仕事ができない環境になったときに「私は生きがいをなくす」と思ったんです。
だから今の私にとって、働くことは「自分の可能性を広げられること」だと思っています。私は働きながら色々な人に出会って、誠実でいることやお金のことって大切だなと感じたり、社会人として人間として大切なことみたいなことを学んだと思うんです。なので、自分の可能性を広げられることなのかなと。
もちろん働くことって大切だけど、私は一番ではないと思っているんです。たとえばインドには働かないで路上で寝ている人もいますし、だからといって働いていない人が悪い人間かといったらそうではない。働いていないけどやさしい人もたくさんいますし、働いていることがその人の価値でもない。働くって人生においてはプラスアルファのことなんだと私は感じています。
石井えりさんの大切にしていること
1.仕事と自分のバランスを均等に保つこと
2.お世話になった方への感謝の気持ちを忘れないこと
3.自分の体と心に耳を傾けること
取材・文/菊地菜々