多様な働き方が叶うサロンとして。スタッフのより良い環境を模索しながら、業界をけん引する「mirror ball」中野剛志さん
日本の美容業界を支える企業の魅力を紹介する本企画。今回登場いただくのは、2008年に創業し、現在は日本各地に美容室、シェアサロン、ネイルサロン、アイサロンなどを約100店舗展開するなど急成長を続けている株式会社mirror ballです。
前編では代表取締役である中野剛志さんに、企業の成り立ちや理念、「mirror ball」の特徴を伺いました。
元々は飲食店を経営していたという中野さん。そこで美容師と出会い、「美容室の労働環境は、あまりよくない」という声を聞いたのがきっかけで美容室経営に興味を持つようになったといいます。
給与の透明性と、勤務の自由度が大きな課題だと考えた中野さんは、当時は珍しかった業務委託サロンを展開するように。その後も、スタッフにとってより良い環境が用意できれば会社は発展できるという考え方で、事業展開を進めてきました。
お話を伺ったのは・・・
株式会社mirror ball
代表取締役
中野剛志さん
大学卒業後、清掃員のアルバイト、移動販売の飲食店などを経て、たこ焼き居酒屋を経営。そこでの出会いによって、美容室経営に興味を持つようになる。2008年に株式会社mirror ball創業。当時は珍しかった業務委託サロンという形態で、美容室を展開するようになり、注目を集める。その後、正社員の雇用形態も取り入れ始め、現在はフリーランス美容師が活躍するシェアサロンなども含めて、多様な形で美容室を展開。ほかにもネイルサロン、アイサロンの展開にも力を入れる。
経営者としてのスタートは飲食店。美容業界の課題に伸びしろを感じて
――「mirror ball」創業のきっかけから教えていただけますか。
元々は、たこ焼き居酒屋を経営していたのですが、アルバイトとして雇っていたスタッフのなかに美容師が何名かいて、「美容室の労働環境は、あまりよくない」と聞いたことがきっかけでした。
飲食店も美容室も、最初からその業界で事業を起こすことを目指していたというわけではなく、起業をしたい思いだけがあって、たまたま流れでそうなったという部分が大きかったんです。そんな形でしたから、美容室を1店舗出したら居酒屋に戻ってもいいかなと思っていたのですが、出店してみたらまだまだ改善すべきところが色々と見えてきて。居酒屋に戻ることを考える暇がないまま、今に至るという感じです。
――具体的に、改善すべきところとはどんな部分だと感じていたのでしょうか?
一番大きな課題だと思っていたのは、給与の透明性と労働時間に関する自由度が低い点です。労働基準法の観点からも、グレーな部分が多いように見えましたし、美容室を経営している企業の多くが、組織としてきちんと機能していない点も課題だと感じていました。
私は美容師ではありませんが、美容室の経営の仕組みは非常にシンプルで、いいスタッフがいて、高い価値を提供できればお客様が集まると考えていたんです。給与や労働時間に関する課題点を解決しながら美容室経営ができれば、優秀なスタッフも集まって、お客様に提供できる価値も高まるということなので、伸びしろの大きい業界だという風にも捉えていました。
――それらの課題を解決できるのが、業務委託サロンという形態だったわけですね。
正直、給与の透明性と労働時間に関しての自由度が高くできれば、雇用形態にこだわりはありませんでしたが、当時はどちらも解決できる、一番いい形だと思ったのが業務委託だったんです。
――その後、「mirror ball」では正社員という雇用形態も生まれてきていますが、それは何かきっかけがあったのでしょうか。
業務委託サロンの経営はうまくいっていたのですが、子育て中の人など、ある程度は社会保障を求めている人いるということも分かってきたので、そういった人のための働き方として正社員の雇用形態も増やすことにしました。
――現在の業務委託と正社員の割合は?
現在は業務委託が約500名、社員が約200名で、業務委託が依然として多いのですが、正社員を希望する人が増えている傾向にあります。ほかにもシェアサロンを利用しているフリーランスが200名ほど在籍しているのが、現状です。
フリーランスへの転向や、マネジメントについて学べる機会も
――経営において大切にしている考えを教えてください。
経営理念は「すべてのお客様の笑顔のために」で、ミッションのひとつとして「顧客とスタッフに新しい美容の価値を提供する」を掲げています。スタッフが興味を持っていたり、提供したいと思えるようなスタイルやサービスがあれば、それを学びながら提供できるような環境を整えていきたいと思っています。
そうすればさらに美容の技術や知識を深められますし、お客様に対しても機能面としての美容の価値だけでなく、人生の豊かさにつながっていくような新しい価値が提供できるはずです。結果、それがお客様の笑顔につながっていくのではないかと思っています。
またスタッフを美容師としてだけでなく、美容の専門家としての立ち位置に引き上げていきたいとも考えています。たとえばヘアに関することだけでなく、コスメなどの知識や専門性を高めて、「この人に聞けば、間違いない」とお客様から思ってもらえるようになればいいなと。
実際、個人の売上にひもづくような形でヘアケア、化粧品などを販売するECサイトも運営をしていまして、美容の専門家としての模索を始めているところです。
――最近では業務委託のサロンも増えてきていますが、「mirror ball」ならではの特徴や、強みはどんなところでしょうか?
給与の部分では、勤怠の管理、残業の計算など、かなり細かくきっちりと行っていまして、その透明性は業界トップクラスといってもいいほどだと思っています。また、業務委託から正社員、正社員から業務委託など雇用形態を変えられる会社はほかにもあると思うのですが、シェアサロンの経営をしているため、フリーランスに転向できることも特徴です。フリーランスに転向する際は、お客様からの許可さえ出れば、顧客を連れていくこともできる仕組みになっています。
――素晴らしいですね。ほかにも強みはありますか?
店長以上の役職を持つ人に、マネジメントについて学べる研修の機会をしっかり設けていることです。
研修は月に1回、外部講師を招いて行っていて、経営学者であるドラッカーの考え方をベースに学べるようになっています。顧客は誰で、何を提供するかという基本的な事業設計の部分から学び、さらにはそういった知識を元に自分でPDCA(業務改善のためのフレームワークで、Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善をサイクル化していくことで業務改善をはかる)をまわしていける環境があるのが、ほかの会社にはない特徴です。
また独立支援にも力を入れています。独立にはいくつかの道を用意していまして、たとえば本人が会社から出資金を借り入れてフランチャイズ店としてオープンするケースや、黒字になるまではうちの社員として働いて黒字化したら買い取る、という方法も可能です。本人のリスクがほとんどない状態で、独立できるのが大きな特徴だと思っています。
海外への店舗展開も視野に。お客様の人生を豊かにしたい
――今後の目標について教えてください。
今後も年間14店舗ほどのペースで、店舗展開は続けていきたいです。新たな展開として構想しているのは、メンズの業態と、海外への店舗展開です。とくにアジア圏のサロン展開はまだチャンスがあると思っていますので、そういった展望も視野に入れていきたいと思います。
また先ほどお話したようにお客様の人生が豊かになるような、美容の価値を提供することは、大きな目標のひとつですので、引き続き力を入れていきたいです。
――最後になりますが、「mirror ball」にこんな人が応募してきてほしい、こんな人なら活躍できるという思いはありますか?
前提として美容師として活躍できるのは、美容やお客様が好きな人で、お客様をこんな風にしてあげたいというような顧客志向がないと厳しいとは思うのですが、あとの面では細かく求める条件はとくにはありません。働き方の幅はとても広いので、「こんな働き方はできないかな?」と考えているものがある人はぜひご連絡をください。
技術面でも、マネジメントでも成長志向の強い人が活躍できるのだと思います。ただ、明確にこうなりたいというビジョンがなくても、お客様によいものを提供したいという思いだけで成長できる人もいるもなかにはいます。なので、「こういう人が活躍できる」というのを一言で表すのは難しいのですが…。お客様や美容への強い思いがある人でも、ビジョンの一端が見えている人でも、美容に携わる人が力を発揮できる環境が整っていると思いますので、ぜひご応募いただければと思います。
働き方、独立の支援など、細かな部分にまで、スタッフを思う気持ちがあふれた「mirror ball」。また中野さんはどんな質問をしても丁寧に、そして真摯に答えてくださり、そういった姿勢が企業としての在り方にも表れていると感じました。
後編では、2023年12月に入社し、現在は「Eleanor銀座ANNEX」で正社員のスタイリストとして活躍している内山康子さんに、お話を伺います。