ホームヘルパー(訪問介護員)として働くために
ホームヘルパーとは
ホームヘルパー(訪問介護員)とは、サービス利用者の自宅を訪問し、利用者の生活を支える仕事に就いている人の総称です。
過去には「ホームヘルパー1級・2級・3級」という資格が存在しましたが、厚生労働省
により「ホームヘルパー3級(正式名称:訪問介護員3級養成研修)」は2009年に、「ホームヘルパー2級(正式名称:訪問介護員2級養成研修)」と「ホームヘルパー1級(正式名称:訪問介護員1級養成研修)」、「介護職員基礎研修」は2012年度をもって廃止となりました。
2013年度には「ホームヘルパー2級」は「介護職員初任者研修」に移行され、「ホームヘルパー1級」と「介護職員基礎研修」は「実務者研修」に一本化されました。
仕事内容
在宅の高齢者や障害者の家を訪問して、「身体介護」「生活援助」「相談・アドバイス」をすることが主な仕事内容です。
【身体介護】
<介護対象者の身体に直接触れて行う介護>
食事、入浴(誘導、洗髪、体を洗う)、トイレ(誘導、下半身の清拭、おむつ交換)他、衣服の着せ替え、清拭(体を拭く)、服薬、床ずれ防止の体位変換、身だしなみ(歯磨き、爪切り、髪、ヒゲ、洗顔)などの介助を行います。ベッドから起こして車椅子に移動させる、自動車への乗降、歩行補助、車椅子での移動なども含まれます。
【生活援助】
<介護対象者の生活、日常の家事のお手伝い>
調理(配膳、下膳、食器洗い)、掃除(トイレ、風呂、キッチン、寝室など)、洗濯(アイロン、衣服の整理)、整理整頓、買い物、ゴミ出しなど、日常生活を援助します。
訪問介護では、生活援助は特に重要な仕事です。ただし、以下のサービスは生活援助には含まれません。
■介護対象者の援助に該当しないもの
利用者の家族のための家事、来客の応対など
■日常生活の援助の範囲を超えるもの
庭の草むしり、ペットの世話、窓ガラス磨き、大掃除、雪かき、正月の準備など
【相談とアドバイス】
介護対象者やその家族からの、身体、生活、介護についての相談を受け、それに対してのアドバイスを行います。
ホームヘルパーになるには
介護保険法(第8条2)では、「介護保険の対象となる訪問介護(介護予防訪問介護)業務に従事できるのは、『介護福祉士』及び『その他政令で定める者』」と、されています。
『その他政令で定める者』とは、「訪問介護員養成研修」課程、「介護職員初任者研修」課程、「実務者研修」課程のいずれかを修了し、修了証明書の交付を受けた人のことです。
「介護職員初任者研修」「実務者研修」の受講は、介護系資格の有無や実務経験に関わらず、16歳以上であれば誰でも受講できます。これらの研修で得られる資格は国家試験ではなく、各都道府県が指定した養成機関が実施しています。
資格はどこでとれる?
介護職員初任者研修と実務者研修は、ハローワークや社会福祉法人などの公的機関や専門学校などの民間機関で行われています。料金は研修地によって変わりますが、初任者研修は概ね10万円以下、実務者研修は概ね20万円以下で受けられます。
公的機関の場合、研修費は無料で、テキスト代のみで受講できるケースが多くあります。ですが、応募倍率が高い、開催日程が限られているなど、誰でも受講できる環境ではないようです。
学び方は研修施設によって、「通学のみ」と「通学+通信」の方法があります。民間の講座では通信(自宅学習)と通学(講義・実技スクーリング)を組み合わせた内容が多くなっています。研修期間は介護職員初任者研修が1か月~4か月程度、実務者研修が6か月(保有資格による)となります。
※看護師の資格を持つ方は介護職員初任者研修者とみなされます。
研修時間
介護職員初任者研修の受講時間数の合計は130時間です。
介護施設によっては、介護スタッフや介護補助員として働きながら無料で受講させてくれるところもあります。
実務者研修の受講時間数の合計は450時間です。ただし、既に「介護職員初任者研修」「ホームヘルパー(訪問介護員養成研修)1~3級」「介護職員基礎研修」「その他の全国研修(認知症介護実践者研修、喀痰吸引研修等)」を受講した場合は、研修課程の一部が免除されます。免除された後の残りの必要研修時間は下表の通りです。
平成28年度から、上級資格である介護福祉士の国家試験を受験するためには、「3年以上の実務経験と実務者研修の受講」が必須になります。
将来的に介護福祉士の資格取得を考えている場合は、迷わず実務者研修を受講しましょう。
介護職員初任者研修の難易度
これまでのホームヘルパー2級資格では、講座を受講すれば誰でも修了資格を取得できましたが、介護職員初任者研修では修了試験に合格することが必須です。「介護におけるコミュニケーション技術」や「認知症の理解」など、130時間の研修で学んだ介護に関する知識と実技に関して、ちゃんと理解できているかを筆記試験で問われます。
内容は国家試験のように統一されたものではなく、研修地によって異なります。合格率は90%以上とも言われており、講座の内容を理解していればほとんどの人が合格できると考えてよいでしょう。
給与・待遇
ホームヘルパーは所持している資格によって、資格手当などの待遇が異なりますが、ここでは厚生労働省
「平成26年賃金構造基本統計調査」による、ホームヘルパー全体の平均給与を見てみましょう。
■平均年齢:44.7歳
■勤続年数:5.6年
■労働時間:173時間/月
■超過労働時間:7時間/月
■月給:220,700円
■年間賞与:285,900円
■年収:2,934,300円
出典:厚生労働省
「平成26年賃金構造基本統計調査」
ホームヘルパーの仕事は過酷な割に給料が低いと言われています。
国税庁「民間給与の実態調査結果」によると、の平成25年(2013年)の日本人の平均年収は414万円(男性の平均年収:511万円・女性の平均年収:272万円)です。
この金額だけを見ると、確かにホームヘルパーの293万円という平均年収はかなり低いです。しかし、ホームヘルパーとして働く人の内、75.2%が女性です。女性ヘルパーの平均年収は291万円ですので、女性の全国平均よりも少し高いくらいです。男性ヘルパーの平均年収は301万円ですので、男性は全国平均年収と比較するとかなり低いです。
参考として、リジョブで募集している求人の給与についても調査しましたのでご覧ください。
初任給 月給:17~23万円(年収:234~282万円)
10年以上経験を積んだホームヘルパーの収入 月給:26~36万円(年収:305~488万円)
パート 身体介護:時給1,500円~2,000円 生活介護:時給1,300円~1,600円
ホームヘルパーの活躍の場
【訪問介護】
訪問介護を行っている事業所に所属し、利用者の居宅に訪問して介護業務をおこないます。事業所には福祉団体や民間の介護サービス会社(株式会社)、NPO法人などがあります。デイサービスと併設する施設も多くあります。
仕事の場は主に利用者の居宅ですが、自宅のみという訳ではなく、介護付き有料老人ホームや、住宅型有料老人ホーム、高齢者向け有料賃貸住宅などさまざまです。また、入浴介助を専門におこなう訪問入浴介護もあります。
【福祉施設】
施設で働きたいという場合も、ホームヘルパーの資格者は歓迎されます。職場には特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホームなどがあります。
【障がい者介護】
高齢者だけでなく、障がい者訪問介護の分野でも働くことができます(仕事内容によっては「ガイドヘルパー」の資格が必要となります)。高齢者、障がい者両方のサービスを行っている訪問介護事業所もありますので、仕事の幅を広げることが可能です。
求人を探すときのポイント
求人サイトやハローワークなどで求人を探す場合、チェックしたいポイントをまとめました。
■勤務先は自分の希望に合っているか?
先に述べたように、ホームヘルパーの勤務先はいろいろあります。訪問介護では「利用者一人ひとりに向き合いたい」「自分の都合に合わせて仕事がしたい」、施設勤務では「正社員を目指したい」「将来は介護福祉士として働きたい」など、自分の希望に合った職場を選ぶことが大切です。
■勤務地に無理はないか?
職場までの自宅や駅からのアクセスも大事なポイントです。訪問介護の場合は、さらに事業所から利用者の居宅へ行くので、移動だけで疲れてしまわないように、無理のない勤務地を選びましょう。自宅から利用者宅へ直行できるかどうかも確認したいポイントです。
■手当てや保険制度はどうか?
残業手当や夜勤手当はあるか、移動は労働時間に含まれるのかなども大事なポイントです。また、万が一、利用者宅で過失をおこしてしまった場合の保険制度についても調べておきましょう。
※リジョブ介護では希望のエリア・街(「関東」、「東京」、「神奈川」、「新宿区」、「練馬区」など)や、こだわりポイント(「日勤」、「夜勤専従」、「経験者歓迎」などをフリーワードで検索)に合わせてホームヘルパーの求人を探すことができます。
キャリアアップ
ホームヘルパーとしてキャリアを積んだ後は、施設のサービス提供責任者や介護福祉士、ケアマネジャー(介護支援専門員)を目指すことができます。
サービス提供責任者は、ホームヘルパー、ケアマネジャー(介護支援専門員)、利用者のパイプ役となり、介護サービスをコーディネートする仕事です。訪問介護事業所にはサービス提供責任者の義務付けられており、訪問介護サービスにはなくてはならない資格です。
サービス提供責任者になるには、実務者研修を修了することが必要です。受講資格はないので、経験の浅い方でも大丈夫です。通常450時間の研修が必要ですが、ホームヘルパー2級(介護職員初任者研修修了)の資格を持つ方は、320時間の受講で取得できます。
実務者研修を修了し、実務経験を3年以上積むと、介護福祉士の受験資格を得ることができます。また、実務経験を5年以上積むと、ケアマネジャー(介護支援専門員)にも挑戦できます。
ホームヘルパーは男性には不向き!?
全体的に女性が多い介護士の現場ですが、ホームヘルパーの男女比では女性が9割を超えると言われます。
ホームヘルパーの仕事は炊事、洗濯、掃除などの生活支援が多いため、日常的に家事を行っている女性の得意分野であるというのが大きな理由としてあるでしょう。また、登録制の場合は短時間でも働けるため、子育て中や扶養内で働きたいという女性が仕事をしやすい環境です。実際、ホームヘルパーはパートなど非正規で働く人が約8割と、他の介護職と比べてもかなり多いのが現状です。
そのような状況のなかで「正社員になれないのでは?」と思われる男性の方も多いようですが、ホームヘルパーで正社員を募集している事業所も多数あります。また、「家事が苦手」という不安も耳にしますが、決して男性が不向きだということはありません。
利用者がホームヘルパーに求めているのは家事のレベルだけでなく、介護技術やコミュニケーション能力、サービス精神です。実際に移動介助や入浴介助については、しっかりと高齢者を支えられる男性の方が安心できるという声もあります。もちろん、料理などのレベルアップは必要ですが、体力や技術面でカバーしつつ、利用者の気持ちに寄り沿った介護をしていくことで、男性も大いに活躍できる仕事です。
ホームヘルパーの魅力
資格の魅力としては、短期間で取得しやすいことがあります。規定の養成講座を修了すれば資格を取得できるので、介護福祉士などの福祉関連の国家資格に比べて短期間で取得しやすいのが魅力です。
また、現状ホームヘルパーは慢性的な人材不足であり、すぐに就職先を見つけることができます。経験者はもちろん、ブランクがある方も、就職や転職の際に苦労することはないでしょう。
働き方も、正社員やパート、派遣(介護派遣)やアルバイト(ヘルパーバイト)などが選べます。求人情報には「週2~3日」「1日数時間」「シフト希望OK」などの条件が多くあり、自分のペースや都合に合わせてできるのも大きな魅力です。
仕事のやりがい
ホームヘルパーの仕事の責任は大きいものですが、高齢者や障害者など、生活に支障がある人たちの支援をして、利用者の生活の質を高めることや、利用者が自立して暮らしていけるように日常生活を支えるということで、大きなやりがいを感じられます。
また、施設とは違い、自分一人で判断して行うことが多いため、臨機応変な対応が身に付きます。介護技術のスキルアップも早くなります。介護サービスの内容が多岐にわたるため、大変ではありますが、その分満足してもらえた時の喜びは大きいといいます。たとえば利用者の好みを考え工夫した料理が「美味しかった」と言われれば、大きなやりがいとなるでしょう。
利用者の中にはホームヘルパーとお話をすることを心待ちにしている方も多くいらっしゃるようです。また普段、介護をおこなっている家族にとっても、ホームヘルパーの存在は心強いものです。利用者やその家族の心の支えにもなっていると考えると、嬉しいものですね。