生活支援員と介護職員の違いとは?|福祉に関する支援・相談員の特徴を紹介
介護や福祉の分野では、さまざまな職種の人々が活躍しています。ところで「生活支援員」という仕事をご存知でしょうか。
ここでは、生活支援員の概要と要支援や要介護者にサービスを提供する介護職員との違いについて詳しくご紹介します。
生活支援員と介護職員はどこが違うの?
生活支援員はおもに障がいを持つ方に対して、自立した日常生活を送れるように相談や支援をおこなう役割があります。一方で、介護職員は要支援や要介護認定を受けた方に対して、安心・安全な生活を送れようにサポートをする役割を担っているのが特徴です。
両者は介護や福祉の分野で働く職種であるという共通点はありますが、仕事内容や就労先、年収などに違いが見受けられます。ここでは、両者の具体的な違いを確認しておきましょう。
1. 支援するおもな対象者が違う
生活支援員と介護職員では、支援する対象者が異なります。生活支援員は障がい者施設の入所者や障がい福祉サービスの利用者を対象としますが、介護職員は要支援者や要介護者など介護の見守りや支援が必要な方が対象です。どのような違いがあるのかを確認しておきましょう。
生活支援員|障害を持った方が中心
生活支援員は、障がい者施設の入所者や障がい福祉サービスの利用者など障がいを抱えた方を対象として支援をおこないます。身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者の方が、日常生活において判断や選択が求められる場面で、適切な行動をとれるように本人や家族へ相談や指導、助言をするのが特徴です。
また、資格の有無によって身体介護を含めた生活援助や本人や家族の困りごとや不安の解消のための支援を実施します。
介護職員|障害を持った方に限らない
介護職員のおもなサービス提供対象者は、介護や見守りが必要な高齢者です。障がいを持つ方への介護も実施しますが、生活支援員よりも幅広く、要支援や要介護認定を受けた方が快適な日常生活を送れるよう、支援やケアをおこないます。
食事や排せつ、入浴、移乗介助、おむつ交換、環境整備、事務作業や行政、医療機関との間での連携業務など仕事内容はさまざまです。
2. 働く場所が違う
生活支援員と介護職員とでは、働く場所に違いがあるのが特徴です。ここではそれぞれ、おもにどのような場所で働くのかをご紹介します。
生活支援員|就労移行支援事業所など
生活支援員は、障がい者に対する相談や指導業務をおこないます。そのため、知的障害者支援施設や就労移行支援事業所、介護サービス包括型のグループホームなどに配置されることが多いです。
グループホームのなかでも、外部サービス型では生活支援員は配置されません。障がいのある方が、快適で自立した生活を送れるように本人や家族の相談を受けながら、行政や関連団体と連携を図り、サポートをおこないます。
介護職員|特別養護老人ホームなど
介護職員は、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、デイサービス、サービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホーム、介護付き有料老人ホームなど介護施設に就労するのが一般的です。
デイサービス以外は夜勤があるところがほとんどで、交代制で利用者へのサポート、支援をおこなっています。
3. 年収が違う
生活支援員と介護職員とでは、年収に違いがあるのが特徴です。ここでは、令和3年賃金構造基本統計調査をもとにそれぞれの年収の違いについて具体的にご紹介します。
生活支援員|約404万円
令和3年賃金構造基本統計調査のうち、職業分類「福祉施設指導専門員」の統計情報によると生活支援員、就労支援員などの年収は約404万円です。施設の規模や性別、就労形態、経験やスキルによって差が出てくるものと思われます。
また、日本の平均年収と比較するとやや低いものの、高齢社会の進展にともない、生活支援員の需要の高まりによって給料や待遇の改善への期待も高まっているようです。
介護職員|約353万円
令和3年賃金構造基本統計調査のうち、施設介護員としての統計情報によると、介護職員の平均年収は約353万円です。生活支援員の年収と比べると低くなってはいるものの、都道府県や事業所の規模、保有資格や経験、スキルによって差があります。
介護福祉士など専門資格を持っており、現場のリーダーや責任者、管理者になると役職手当や資格手当がつくため、そのぶん給料に反映されるでしょう。また、夜勤回数が多ければ、夜勤手当も加わります。
4. キャリアパスが違う
生活支援員と介護職員とでは、働くために必須の資格はありません。経験を積むなかで、将来管理職や責任ある役職に就けるキャリアパスに違いがあるようです。ここでは、それぞれのキャリアパスの違いを解説します。
生活支援員のキャリアパス
生活支援員は、実務経験や研修の受講でサービス管理責任者になることが可能です。具体的には、生活支援員として相談援助業務に従事し、実務要件を満たしてさらに基礎研修として相談支援従事者初任者研修とサービス管理責任者研修の講義や演習を受けます。
そして、サービス管理責任者研修の実践研修を終えると責任者として配置されるという流れです。その後、5年に1度研修を受け、資格の更新をおこないます。
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介護職員のキャリアパス
介護職員のキャリアパスでは、ステップアップとして最終的に介護業界で唯一の国家資格である「介護福祉士」を取得できる流れがあります。具体的には介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修を受け、国家資格の受験資格を得るなどです。
その後、試験を受けて合格すれば介護福祉士の資格を得られます。介護福祉士の資格があると、現場のリーダーや責任ある立場を任せられる場面も出てくるでしょう。
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生活支援員以外にも! 福祉に関する支援・相談員の特徴と違いを紹介
生活支援員以外にも福祉の分野において、地域生活支援員や家庭生活支援員、生活相談員などさまざまな職種が存在します。ここでは、福祉の分野で活躍するおもな職種を確認しておきましょう。
1. 地域生活支援員
地域生活支援員は、日常生活自立支援事業において、認知症高齢者や知的、精神障がい者で判断能力に不安のある方に対し、行政手続きや日常の金銭管理のサポートなどをおこなう仕事です。
生活支援員が障がい者への生活や福祉的なサポートをおこなうのに対し、地域生活支援員は、認知症高齢者も利用対象に含みます。身体介護や生活援助ではなく、生活変化のチェック、書類整理、公共料金の支払いなどがおもな仕事内容です。
2. 家庭生活支援員
家庭生活支援員は、ひとり親家庭等日常生活支援事業において、母子家庭や父子家庭を対象にサービスを提供します。
生活支援員が障がい者の日常生活のサポートをおこなうのに対して、家庭生活員は、乳幼児の保育、食事の世話、住居の掃除、生活必需品の買い物、医療機関などとの連絡調整などがおもな仕事です。家庭生活支援員は、各家庭において親や子どもに対して支援をおこないます。
3. 生活相談員
生活相談員は、介護老人保健施設以外の高齢者福祉施設で、入所希望者や入所、通所している方に対して、相談、連絡調整業務をおこないます。
ケアマネジャーなど他職種との連携も重要で、生活相談員になるためには社会福祉士や精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格などが必要です。自治体により、求められる資格は異なるため事前に確認しておくとよいでしょう。
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4. 支援相談員
生活相談員がグループホームなど障がい者福祉施設に在籍するのに対して、支援相談員は、介護老人保健施設で入所者や入所希望者、ご家族への相談、指導業務をおこないます。
100人の定員に対して、1人の常勤支援相談員の配置が義務となっており、入所希望者に対して、自宅や病院を訪問し、情報収集をおこない、入所判定会議にて入所の可否を検討することも。このほか、レクレーションなどの計画や指導、ボランティアの指導、市町村との連携など業務内容は多岐にわたります。
5. 介護支援専門員(ケアマネジャー)
生活相談員が老人保健施設以外の高齢者福祉施設で、支援相談員が老人保健施設で就労するのに対し、介護支援専門員は居宅介護支援事業所や地域包括支援センター、介護施設などで勤務します。
生活相談員や支援相談員は相談業務、指導などがおもな仕事です。一方、介護支援相談員は、相談業務以外に介護サービスの利用者に対してケアプランの作成、状況把握やサービス事業所との連絡調整などをおこないます。
ケアマネジャー(介護支援専門員)ってどういう仕事?仕事内容や資格取得の流れを解説
仕事の特徴を押さえて自分に合った仕事や職場を見つけよう
介護、福祉に携わる職業は、生活支援員のほか、生活相談員、支援相談員、介護支援専門員などさまざまです。
それぞれ働く場所や仕事内容に違いがあるほか、お互いに協力しながら利用者や家族への支援をおこなうことが求められます。それぞれの仕事の特徴やポイントを押さえて、自分に合った仕事や職場を探してみてはいかがでしょうか。
引用元
job tag 職業情報提供サイト:障害者福祉施設指導専門員(生活支援員、就労支援員等)
job tag 職業情報提供サイト:施設介護員
job tag 職業情報提供サイト:老人福祉施設生活相談員
厚生労働省:地域生活支援事業について
厚生労働省:ひとり親家庭等日常生活支援事業について
厚生労働省:介護支援専門員、生活相談員・支援相談員の役割に係る規定の整理のお願い
東京都福祉保健財団:介護支援専門員(ケアマネジャー)について