【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】Vol.4/街もお客様の心理も変わっていく、そこにどう挑戦していくか/MINX銀座店 菅野久幸さん #1

コロナ禍での働き方は、「時短で高パフォーマンス」がキーワード。そんなwithコロナ時代を生き抜くために、どんな取り組みを行っているのか、そのプラス効果とは?

今回取材したのは、MINX銀座店で約60人のスタッフをまとめ上げる菅野久幸さん。大所帯の美容室における経営、スタッフ管理・教育について、このコロナ禍でどんな変化があったのか? 新しく始めた取り組みや働き方などについてお聞きしました。

お話しを伺ったのは…

MINX銀座店 ディレクター・取締役 菅野久幸さん

1978年山形県生まれ。大分美容専門学校通信課卒。MINXには1999年入社。原宿店店長や銀座店代表を歴任した後、取締役に就任。社内の教育・マネジメントも担当する。国内外の美容業界の発展のために尽力し、経営セミナーの講師としても活躍。中国では「菅野経営塾」というブランドを持つほどの人気に。

トップを務める銀座店は、月間売上6000万を超え国内のサロンで最高売上を達成。美容ミシュラン「KAMI CHARISMA2020・21」2年連続受賞サロン。

勤務システムの変化/スタッフの勤怠は完全デジタル化に。生産性をしっかりと計算し、最適な人数で営業する

——コロナ禍で、サロンの勤務体制は変わりましたか?

どの美容室でもそうだと思うのですが、コロナの影響で勤務スタイルがかなり複雑になってきましたよね。予約数によって自宅待機になったり、もし発熱した場合は早退して様子をみてくださいとか。

発熱期間は有給で休むけれど、そこから2週間は自宅待機ということで有給ではなく会社の指示で(出勤扱いで)休ませたりする。そういったいろんなパターンが出てくると、スタッフ数が多い場合、全員の勤怠の内容まで把握するのが難しくなってきます。

これまではシンプルなタイムカードを使っていたのですが、そのあたりをしっかり把握するためにも、完全にデジタル管理に移行しました。スタッフ全員が自分のIDカードを持っていて、出社したらセンサーにピッとかざし、出勤(退勤)が記録されます。そのデータが本部に転送される仕組みです。

もしその日の勤怠で何かあれば、係の者がメモをデータで残せるようになっており、本来のスケジュールと照らし合わせると状況がすぐに分かるようになっています。

——出社するスタッフの人数も調整されていたのでしょうか?

今、銀座店だけでスタッフは60名います。うちスタイリストが22名、レセプション6名、あとはアシスタント。かなりの大所帯です。

1回目の緊急事態宣言が明けて(2020年春)お客様が減っていた時期から、出社人数をコントロールしていました。若いスタッフがたくさんいて、一人暮らしも多いので、そうなると親御さんも心配しますよね。

去年の春先あたりは感染リスクをできるだけ避けるために、予約が入っていない場合は自宅待機にしていました。当時は7割くらいは自宅待機になっていたと思います。1ヶ月の生産性を仮に設定して、そこからさらに1日の生産性を計算し、必要なスタッフ人数を割り出す。その計算を元に、営業に出るor自宅待機の人数を決めています。

現在も、2割程度は自宅待機のスタッフがいる計算です。その日出勤の人たちは、当日の予約状況が朝の時点で分かるので、そこで調整を。朝礼の時に自宅待機するスタッフを伝えますが、空いているスペースがもしあれば練習等をするのは自由にしています。

毎日このスケジュール調整をするのは大変な作業ですけど、スタッフ人数が多いとそれだけで密になりかねないので、その辺はしっかり管理するようにしています。

——テレワークは活用していますか?

役職の会議はZOOMを活用しています。以前は本部の会議室に30名くらい集まってやっていましたけど、それはすべてリモートになっています。店舗レベルだと、スタッフたちのミーティングをサロンで行う際は、時間をきっちり1時間と決めています。

1時間で終わらせるために、資料の事前準備はしっかり行うようになりましたね。その日の議事録、資料類をミーティング前に必ずLINEで流しておいて、スタッフ全員が目を通します。議事録というのは以前から作ってはいたのですが、これを機に徹底して、データでいろいろ残しておくことで後からでも確認しやすいようにしています。

コロナ前は、ミーティングの中で一つ一つをその場で説明して話をしていました。そうなるとやはり2時間、2時間半とかかかってしまう。それを短縮するために、先に全員が資料に目を通しておいて、何か不明点や疑問が出てきたら質問するというスタイルに。事前の資料作りの作業は増えますが、結果的に効率はいいと思います。

集客のコツ/銀座で回遊率が高まっている20代にフォーカス。当日限定のクーポン打ち出しも

——銀座というエリア。お客様の流れ、動きにも変化があったかと思います。

集客に関しては、いろいろと見直したり分析したりして、改めてチャンスだと思っています。実は、新規のお客様で見ると、あまり落ちてはいないんですよね。

1回目の緊急事態宣言後は、確かに落ち着いている時期はありました。ですが、自粛が明けて6月〜12月の後半で見てみると、銀座店では1ヶ月に300人超えの新規のお客様が来てくださいました。内訳で言うと、既存のお客様は2〜3割減、新規のお客様は3割増といった感じです。

既存のお客様については、年齢層が高い方々が少し離れているのかもしれません。とは言え、おうち時間が増えたことで、改めて新しい美容室を探して来てくださった方が多いのも事実です。新規が増えたことで、土日は新規(フリー)を制限していた時期もありました。

銀座店はセット面が37面。席の間隔は結構広い方なので満席になるのはいいのですが、待合やシャンプースペースが混み合わないよう注意が必要で。滞在人数を毎時間カウントして、密と感じない人数をキープできるようコントロールしています。

——集客のために何かトライしたことはありましたか?

昨年の後半は、若手の子たちも自分の売り上げの自己ベストを出しているスタッフが多かったんですよ。コロナの影響でお客様の年齢層が多少下がったというのはあるのですが、来店数やリピート率、オーダー内容等のデータから、20代のお客様の回遊率が高いというのも分かりました。常に顧客の年齢層の変化に合わせて、クーポンや戦略を考えていましたね。

今回初めて取り組んだのは、当日限定のクーポンです。以前は土日に集中しやすかったご予約が、リモートワークや働き方の多様化で、平日や「今この時間に行きたい!」というニーズの高まりを感じました。

普段は在宅勤務がメインだけれど、今日は打ち合わせで都心部に出てきたから帰りに美容室にも行きたい。銀座の美容室で今日行けるところはどこだろう? という方に向け、新たに平日、当日限定クーポンを作りました。コロナ禍だからと安易にお値引きに走るのではなく、お客様のニーズに合わせて打ち出しを考えました。

来店を控えられているお客様にお値引きでご来店を促すのではなく、必要があって都心に来られている方や、時間帯を分散したご来店を希望されている方に喜んでいただけるような内容で進めています。

——20代の若いお客様が増えているのはちょっと意外でした。

僕もそういうデータを目にして意外と感じました。特に、銀座の1丁目・2丁目・3丁目あたりは街の客層としても若くなってきてますね。

例えば、うちの店舗の裏に日本一大きいロフトや無印良品ができたり、プランタンの跡地でもいろいろ始まっているし、そういったことも理由になっているのかと。5丁目・6丁目の方へ行くと、大人世代になっていく感じ。ここが8年前にオープンした時とは、銀座全体の街の様子もだいぶ変わってきました。

あとは、湾岸エリアの人たちが、今までは表参道とかに行っていたけれど、ここまで電車で10分とかからないので銀座に来るようになってきた動きも感じます。勝どきあたりも含めて、湾岸エリアの人口は増えていると思いますが、そこからの流れなのでしょうね。

接客の工夫/お客様の安心安全につながる感染症対策を徹底。会話は楽しく前向きになれる内容を心掛けて

——接客面でどんなことに気をつけていますか?

サロンワークは基本的にチームで動くのですが、コロナの状況で日に日にお客様の変化があるので、イレギュラーに組み合わせたりもしていますね。毎朝、スタイリスト全員分の予約数・内容をチェックして、できるだけ無駄のないチーム編成に。

感染者数の変動によっても予約数が結構変わってくるため、毎朝そういう調整の時間を必ず作っています。

お客様への接し方としては、こまめなアルコール消毒を始め、スタッフのマスクは不織布以外は禁止にしています。お客様との会話は、ネガティブにならないようにコロナの内容は極力控えようというのが共通の理解。来店される方は、来るのを楽しみに足を運んでいる。美容室以外はもうほとんど出かけていないという人もたくさんいます。前回MINXに来た以来、久しぶりに電車に乗りました、なんて人も。

そういった中で、気分が沈むような話ではなくて、新しい美容の情報やスキンケアの話なんかをした方が前向きな気持ちになれますよね。

——感染症対策として導入したものを教えてください。

まず、お客様が来店したら必ず検温していただきます。以前は、おでこや腕でピッとあてる体温計でレセプショニストが測っていましたが、自動で測れるマシンを導入しました。レセプショニストたちも、このコロナで仕事がいろいろと増えてしまったんですよね。

検温、一人一人にビニール袋を渡して荷物を入れてもらう、必要なお客様には手袋を渡す、不織布のマスクへの交換、お会計の際にそのマスクを回収、ビニール袋も回収、お釣りは直接触らずトレーでやりとり…。

細かい業務が一気に増えて、1日のお客様の数も結構多いため、せめて検温は機械に頼ろうよと。そういう経緯で、2020年の12月から導入しています。

お客様が出入りするエントランス付近には、「UVCウイルスキラー装置」というのを置いています。シザーなどを消毒する紫外線と同じ理論で、さらに紫外線の中でも最も殺菌力の高いUVCのランプで空気中の浮遊ウイルスやバクテリアなどを死滅させるというもの。

真夏や冬場など、窓を開けた換気が難しいシーズンでもクリーンな空気が保てるため、昨年夏から導入をしました。

(左)レセプション前の検温マシン。
画面に顔を写すと察知して、自動的に検温が完了。
現在の体温が表示される。
(右)UVCウイルスキラー装置。
終日ONになっており、サロン空間全体のウイルス対策に。

あとは「ウイルスコーティング」。サロン内の全ての床、セット面、ドライヤー、ドアノブなどあらゆる備品に、事前に人体に無害なコーティング処理をしていただきました。

特殊コーティングすることで、ウイルスが付着しても不活化させるというもの。一度の噴霧で2年ほど効果が持続するそうで、お客様が触れる可能性のあるものには全て行いました。

(左)ウイルスコーティングを店内で実際に行った様子は、
セット面に置かれているタブレットで動画を流して
お客様にも知ってもらう。
(右)この抗菌コートを実施している店舗には、
ブルーのシールの目印が。

アルコールスプレーは、昨年5月にオリジナルのものを作りました。店内でお客様に使っていただいたり、ご紹介いただいたお客様や誕生日等のギフトとして差し上げたり、もちろんお店で販売もしています。スプレータイプでアルコール70%以上、持ち運びできるサイズ感です。

MINXオリジナルのアルコールスプレー(写真手前)。
奥の大きいボトルはスタッフ用のアルコール消毒。
こちらもMINXラベル入り。

売り上げはどう変わった?/6月には異例の繁忙期を経験。2020年後半はさらなる新規獲得で盛り返す

<菅野さんの売り上げ変動イメージ>2020年3月〜

——コロナ禍で売り上げの変動が大きかったと思います。

2020年3月の時点で、例年と比べれば売り上げは少し落ちていましたね。4月の1回目の緊急事態宣言後、2週間お店を閉めていたのでそこは一気にダウン。GW中は銀座に人が本当にだっっっれもいなくて、お客様が僕も1人とか2人の日がありました。

このまま誰も来ない日が一体いつまで続くんだろうと、まさに目の前が真っ暗になった瞬間でした。自粛が明けると6月頃には一気にお客様が戻ってきて、突然忙しく。いつもだったら繁忙期は12月と3月とかなんですけど、それが急に6月のタイミングで忙しくなるっていう不思議な感覚を体験。

夏〜秋はやや落ち着いた感じで過ぎ、年末に向かってまた盛り返し、12月は6月と同じくらいの売り上げでした。7〜9月あたりで、来る人・来ない人というのがくっきり二極化した感じ。特に年配のお客様はそういう傾向があるようでした。

男性のお客様に関しては、そこまで変動がなかったとは思いますが、リモートがどんどん加速していくに連れ、数が少し減ったり来店サイクルが伸びたりというのはありますね。銀座・丸の内あたりはいろいろな企業の本社も多いですからね。界隈では、店舗縮小しているなんていう話も聞こえてきます。昨年以上に今年はもっと増えてくるんじゃないでしょうか。

2020年でいろいろ変わりましたね。今年改めて全店舗をリブランディングしなきゃいけないなと、正直感じています。エリアによっても状況がだいぶ変わってくるので、変化に対して常にアンテナを立ててリサーチして行く姿勢が大事だと思います。

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大人世代の客層が厚い銀座。リモートワークへの移行や自粛ムードの高まりが、来客数に影響したのは確か。それを新たにどう切り開いていくか? データ分析からのアクション、お客様への細かな気遣いまで、「できることは全てやろう」という菅野さんの言葉の前向きな力強さを感じました。

後編では、そんな菅野さんの1日のタイムスケジュールや、今後の動向などについてお伺いします。

▽後編はこちら▽
【コロナ禍の今、美容業界の「働く」が変わる!】Vol.4/加速するデジタル化、その一方で人間的な教えをどう伝えていくかもテーマ/MINX銀座店 菅野久幸さん #2>>

取材・文:青木麻理(tokiwa)
撮影:mika

Salon Data

MINX銀座店(ミンクス ギンザテン)

住所:東京都中央区銀座2-5-4 ファサード銀座2F/7F
TEL:03-5159-3838
菅野さんのInstagram:@minx_kanno

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